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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第四章:彼女、カノジョ、そろい踏み

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64.優しくするならイケボと交換してくれ、ください。


 勢いとはいえ、下僕を自ら認めるとか俺は正気か? はっきり言おう。イケメンと仲良くして欲しくなんかちっとも無い。ただし、浅海は除く。浅海は、男の中の娘。これは俺だけのモノだ。と、心の中で言ったところで奴らには伝わらないわけだが。


「まぁ、なんだ……高洲が下僕なのは分かったけど、池谷さんだっけ。彼女マジでいいよな~」

「何がいいって?」

「綺麗すぎるし、お嬢様っぽいし、ツンデレっぽいだろ? あれこそ俺の求めていた理想の彼女だ。下僕の高洲に許可を求める必要なんて無いかもだけど、いいよな? 声をかけても」

「声くらい誰でもかける権利はあるだろ」

「そうじゃなくて、誘うって意味な」

「いいのでは? 池谷は誰のモノでもないだろうし自由だろ」

 選ぶのも彼女の自由だ。何故俺にわざわざ言うのかなこのイケメンは。まぁ、さよりにも選ぶ権利はあるしな。あいつの好みは真面目に分からんけど。


「休憩時間になったから俺行って来る。リーダー、そこで応援ヨロ!」

「ガンバレ」

「おう」

 では俺は岬先輩に泣きを入れて来よう。


「うっうっうっうっ……センパイ、僕には無理です、無理なんです。イケメンを盾にして武器であるイケボを使用すると、僕の心は持ちません。どうかご慈悲を下さいませんか?」

「た、高洲君……そんなに? ごめんね……イケボにそこまでプライドを持っていたなんて。じゃ、じゃあ、週一だけの裏メニューに変えてあげるから、それでいい? 時給もキミだけ高いよ」

「うっ……むむむ。そ、それなら……ハイ」

「そう言ってくれると信じてたよ! まぁ、今日はほら、あの子たちに注文されて反応も見れたし、成功したって分かったから、今後はそれでよろしくね」

「ハイ」

 プライドより金を取っちまったぜ。ハハハ……。


 岬先輩への懇願も完了したので、ホールに戻ると浮間の野郎はさよりをナンパしているし、闇の舟渡は闇天使でもある鮫浜の隣に無理やり座って声をかけているようだった。舟渡、生きろ。


「……で、湊。あんた本当はどっちの男?」

「何だよ、まだ俺に絡んでくるのか? しず」

「あゆとは関係ねえってあたしは言った。言ったぞ? あたしはあんたが好きなんだよ。だけど、二股とか嫌だからハッキリさせとかないと気持ち悪いってだけ」

「……どっちでもない」

「へぇ? あのお嬢様はそうじゃねえの? 明らか、あのお嬢さんの反応はそんな感じに思えたけどな。だからあのイケメンどもにもあっさり断ってるんじゃねえの? そうじゃねえならあんたの好きな女は?」

「さぁ……まだ分からないな。俺が好きって少しは思ってたとしても、あっちはそうじゃないかもだし。だからまだ答えようがない」

「そんなにいい声持ってんのに、自信ないわけか。何か、母性本能くすぐるタイプだな、あんた」

「それはどうも……優しくするくらいなら、イケボよりもイケメンと交換して欲しいけどな」

「面構えが有利なのは確かだけど、あいつらがそんなにいいとは思わねえけどな。ほら、見てみろよ? あゆに絡みまくってるあのイケメン。アレはやばいぜ? 肩に手を置くタイミングを見計らってるけど、どうなってもあたしは責任取れそうにない」

 鮫浜の肩に手を……だと? 許せん! 勝手に触れたら消されるぞ? あの野郎、イケメン風情が調子に乗りやがって! ここはひとつ、紳士な店員らしく注意をしてこよう。浅海がさっきから俺をジッと見つめて訴えて来てるから悶え死にそうだし。何なの、俺をこれ以上惑わすのやめて。


「お、お客サマ……当店はそのようなお店ではアリマセン」

「下僕くんか。ん? 女の子に肩を置くだけでそんなこと言うの? 普通じゃね?」

「イエイエ、それはあくまで同意のうえで成り立つ行為で」

「同意? それならされてるけどな。その証拠に、あゆちゃんは拒んでもいないし、嫌ですとかって言葉も発してないぞ? 別に嫌がる感じで無理やり置いてるわけじゃないよ? 嫌なら俺に一声かけてくるだろうし」

 鮫浜が声を出すのは、話しかけたい時だけだ。てめえなんぞに声なんかかけるかよ。というか、気配も消しているように見えるし、俺にはこのイケメンの行く末を心配したい。見えない力で葬りそうだから俺がとやかく言わなくても、勝手に消えてくれそうだ。だが、どうにもムカつく。彼女じゃないけど友達だしな。ここはもう、ビシっと言わないと浅海が怖い。浅海の為に鮫浜を守ろうじゃないか。


「おい、調子に乗るのもいい加減に……」

「あ?」

「ナンデモナイデス」

 ヘタレ以下です。ごめんなさい。すまん、鮫浜と浅海。俺はイケボかもしれんが、平和主義者。本物のイケメンな上に、もしかしたら怖い系のイケメンだとしたら喧嘩なんか売れないんです。ごめんね。


「……クスッ。高洲くん、ありがと」

 ええっ! 鮫浜が笑いながら俺にお礼を? ふ、不吉だ。ありがと? おいおい、不吉な何かの前触れかな? こんなに身の毛もよだつ言葉は初めてなんだが、とうとうこの偽爽やかすぎるイケメンの命の灯が消えるのか?


舟渡ふなとさん……私に触れるということは、最後まで覚悟がおありなのですか?」

「え? あゆちゃんの最後まで? そ、それって、最後までやれるっていみかな?」

「ええ……あなたの最後まで看ます。今すぐ肩から手を放してくれれば穏便に済ませますけど、どうしますか?」

 おや? 何だかさよりっぽい話し方なんだが、鮫浜の正体は何だろう? 浅海がさっきから臨戦態勢に入っているようにも見えるのが気になるぞ。もしかしなくても、浅海ってそういう立ち位置だったりしないよね? 鮫浜のボディーガード的な? ハハハ、違うだろ。きっと、好きな人を守ろうとしているに違いない。


「穏便に? あゆちゃんも下僕くんに負けじと面白いことを言うね。ますます好きになりそうだ」

 あれ、もう俺の呼び方は下僕で固定ですか、そうですか。爽やかすぎるイケメンは役目を終えたんだね。


「良かったら、あなたが手にしている携帯で私のことを調べてみませんか?」

「すごい可愛いからもしかしたらって思ってたけど、やっぱタレント? もちろん、調べるよ」

 携帯で鮫浜を調べる、だと? ほぅ、最近は個人もウィキってるのか? まぁ、俺はそういう趣味も興味もないし、そもそも俺のスマートじゃない携帯は検索すら出来ないわけだが。


「――え」

 ん? 何やら舟渡の動きが止まったぞ? やはり鮫浜には徐々に相手を石化させる能力が備わっていたのか。何て恐ろしい子なんだ。あの爽やかすぎるイケメンはもはや太刀打ちできないだろう。そうなれば鮫浜の方は大丈夫だろうから、さよりの方の様子をうかがうことにしよう。


「あゆちゃん……いや、鮫浜さんって……う、そだろ……? 何でこんな所にいるんだよ。何でファミレスにいて、普通に学園に通ってんだよ……」

「それが何か?」

「いや、だって……そんな……あの、俺、退学になりませんよね? 明日も明後日も学園に通えますよね?」

「ここのバイトで下僕になりますか? 高洲くんの」

「な、なります。だ、だからどうか、あの……」

「私のことは高洲君に言わないと約束してくれるなら、全治3か月くらいで許してあげます。どうですか?」

「さ、三ヶ月?」

「俺があんたを、舟渡とうやを……ね?」

 浅海は舟渡に何かを言っているようで、その直後に土下座をしている様子を見てしまった。アレは、恐らく浅海が男だったことに気づいて、同じく肩に手を置いたことを謝罪しているに違いない。


「そ、それで……いいです。その、全治したらここで彼を助けますので、どうか、どうかお願いします」

「ふふ……いいですよ。二度と高洲くんにちょっかいと、謝罪を求めさせるような態度を取らないのであれば、命までは……ね。浅海さん、ではお願いしますね。私は彼に声をかけて先に帰りますから」

「はい、あゆさん」

 おぉ? あの爽やかすぎるイケメンは浅海とどこかへ行くのか。そうか、鮫浜ではなく浅海にしたのね。正解だ! 男だけど美少女姿には違いなし。惚れても許す!


「高洲君、こっち来て」

「へ?」

「いいから、少しだけ外に」

「お、おぉ」

 今日は随分と可愛い感じがするな。言われるがままに、店の外に出てしまったぞ。客はさよりとその他の女子しかいないから出来るわけだが。


「キミは誰のモノ?」

「俺は誰のモノでもな――」

「ううん、私のモノだよ。でも、しばらくはさよちゃんに譲ってあげる。だから君は、さよちゃんの近くにいてあげてね。約束――」

「――っ!」

 つま先立ちでキスをされてしまったぞ。その努力はしかと、受け止めてあげた。まぁ、今日はそういう気分だったのだろう。軽めのキスだったし、少しだけ胸ドキしてしまったじゃないかどうしてくれる。


「それじゃあ、またね、湊くん」

「お、おぉ。またな、あゆちゃん」

「うん」

 あれ? 可愛いぞ。おかしいな。闇じゃない鮫浜の方だった。何でこんなに胸ドキしてんだろうな。

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