57.とある闇天使さんの日常 SS③
私は人が嫌い。男子でも女子でも必要以上に関わりを持たれたくない。それは親との関係がそうだから。一人娘だからと最初こそは可愛がられた。けれど、親の力関係で近づいてくる人間には心が無い。それはすぐに分かった。そういうことならと、私も自分の心に蓋をした。お嬢様だとか、そんなことを呼ばれても嬉しくも無ければ、何の得にもならない。そうして親同士の交流で出会ったのが、さよちゃん。彼女も私と同様に、自分の心に蓋をしているらしい。だけど、引っ越しと同時に私とさよちゃんの運命は彼に委ねられた。
「ちっ、本物のイケメンいねーのかよ! 店員、ドリンクバー一つ!」
「さよちゃん、聞こえちゃうよ」
「いんじゃね? あっちも気づいてるし」
さよちゃんの素はこうじゃないとすぐに分かった。何故なら、彼の魅力に気づいたから。ああいう乱雑な言葉を使えば、男の彼は反応してくるからだ。私も自分を隠して、その辺のか弱き女子を演じることにした。それでも、本音は隠せなかった。
「高洲君、学園で会っても話しかけなくていいです。腹が立つので。本当に、無理に話しかけなくていいので」
彼は戸惑っていた。これは私の本音。だけど、彼なら話しかけてきても嫌じゃない。出来れば私から声をかけたい。彼以外では、浅海。浅海は昔からの馴染み。彼は味方にしておきたい。そうじゃないと、高洲君に近付けない。
「高洲君、これからもっと、もっと……私と話をしてね。私の心の蓋を開けられるのはキミだけだよ……」




