51.とある闇天使さんの日常 SS②
彼のことは出会う前から知っていた。というよりは、引っ越しの下見で見た。池谷さより……さよちゃんの家は一番奥。私の家は手前。彼の家を挟み撃ちするなんて、なんて楽しみなのだろう。しかも、二階の私の部屋から彼の部屋へは、足を上げたらすぐに移れる。こんなことはきっと無い。彼は運命の相手なのだと確信した。
滅多に会うことのない親と、その親同士の交流で池谷家と食事をすることになった。さより、姫。話に聞いていた通りの外見だった。さよちゃんは、同い年。姫は一つ下の中学生。外見こそ、美少女と呼ばれる程に綺麗な子達だけど、彼には釣り合わないと思った。そして、さよちゃんは外見とはまるで違いすぎる人格が入っていた。それにはちっとも驚かなかった。同じなんだって思えたから。だから友達は無理でも、さよちゃんと呼ぼう。果たして、私と同じかどうかを観察するために……。
「あゆ……とお呼びしてもいいかしら?」
「私はさよちゃん……と呼ぶから。それでいい」
「それにしても、あの背中の店員は素敵だと思わない? きっと振り返ってもイケメンに違いないわ」
「クスッ……どうだろうね。それよりも、彼の着ているホール用の制服。あれはいいよね……イケメンなんてどうでもいい。肉体さえしっかりしていれば」
「肉体? そ、そうなのね。ほら、注文ボタンを押して彼を呼びましょ?」
「ふふ……楽しみだね」
彼を見たさよちゃんは、どんな反応するのかなんて、分かってしまうけど、私は彼を間近でじっくり眺めるとしよう。これからの長い長い付き合いの為に……。




