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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第三章:彼女たちの変化

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46.池谷さよりはデレたいらしい 2


 当初の出会いは舌打ちからだったと記憶している。それがこちら「ちっ、近くだと肩を落としまくるくらい、ガッカリレベルな奴。本物のイケメンとドリンクバー一つ! あぁ? うぜえな」だったはずなのに、どうしてこうなった? 何かのアニメの影響を受けまくって、言葉遣いやら知識やらをそこから拾っていた、ただの偽お嬢様のはずだった。特に初期は「残念」というキーワードでスイッチが切り替わって、お嬢様から特攻隊長的な言葉になっていたのに。それなのに、こんな「はわわ」なさよりは想定外だ。鮫浜にしてもそうだし、俺の背中とイケボ以外に興味のない女子には、可愛い部類の女子がいない。どちらかというとキツイ系が圧倒的だ。それがどうしたことでしょう? あれほど暴力性満載のお嬢様が、ビフォーなアフターになってしまったではないですか。


 どっちがいいかと言えば、もちろん可愛い方がいいに決まっている! だがしかし、何かこう……刺激が足りない。はっ!? いつの間にか罵られることに快感を覚えた? そんなことはないはずだ。単に耐性が付いただけだろう。耐性と言えばさよりは最初、背中だけに全神経を集中させていたようだから、俺の声に関しては全くもって、特に何も気づきもしていなかった。それが背中に慣れてきたせいか、声の恐ろしさ? に気づいてきて、ああでもないこうでもないことを罵って来た。それが今や、腰砕けの威力を体感しているではないか。何か言葉を放つだけで、赤面しながらペタんと床に座り込むのは反則過ぎる可愛さだろう。俺の声には耐性が無いのか、もしくはアニメ好きだからか、中の人を想像するようになったのかは定かじゃない。


「さよりん。姫ちゃんは?」

「姫は受験生だわ。あなたには中学生時代を過ごして来なかったというのかしら? 暗黒時代だったとしたら謝罪して差し上げるわ」

 おや? さよりんだと耐性が付くのか? よく分からないな。さよりと呼び捨てることと、さよりんといったどこかのモンスターみたいな呼び方に何の違いがあるのか。


「――さより……」

「はうっ! み、湊……あのあのっ、わたしの部屋に行くの?」

「あ、あぁ、さよりが招待してくれただろ? だから行くよ」

「で、でもでもっ……心はまだ準備中で、だから、えと……」

「そうか、それならリビングルームでもいいぜ? さよりの準備が出来たら行かせてもらうよ」

「ひゃあああ」

 うーむ。やはりこれが素か。これを最初から出してくれさえすれば告白をしたかもしれないのにな。でも、鮫浜と一緒にいた時はお互いに見えない壁を作っていたのかもしれない。友達じゃないのに一緒に家族ぐるみでファミレスとか、そうすると威勢を張る? いや、互いに強い自分を見せていたのかもしれないな。鮫浜は強い以前に、微笑みの天使かと思っていたのに、あんな得体のしれない闇を常に抱えているとは思いもしなかった。そしてさより。悪魔からアホの子になって、残念な美少女で確定かと思っていたのに、可愛すぎる女の子じゃないか。どうしてくれる! 


「湊、あの、あのね……」

「うん? どうした?」

「……チュッ」

「――っ!」

「えへへ、好き」

 頬にソフトすぎるキスとも呼べないキスだけど、やばい空気だ。これはこのまま押し倒しても許されるレベルだ。しかしリビングルームなんぞで押し倒そうもんなら、ガチャっと偶然入って来た母親あるいは、姫ちゃんが俺を半殺しにするかもしれない。俺の理性は鮫浜によって強化済みだ。そう簡単には崩れない。そう、一番の問題は今もどこかで鮫浜に見られていることを考えなければならない。でもさすがにさよりの家の中には設置してないはずだが。


「どうしたの?」

「家の中に監視カメラがあるのかな……と」

「カメラならあるよ? どうしたの?」

「ホワイ?」

「だって、お父様の……」

「あーはいはい、分かります。それはきっと企業秘密だな。さよりは言わなくてもいいよ」

「そ、そうなの?」

「お茶のお代わりいいか?」

「う、うんっ! 待っててね」

 さて、探すか。差し当たり、贋作とおぼしき絵画に小さな穴がありそうなんだが、違うかな? それか、天井全体がカメラかもしれない。やたらと明るすぎる照明は目くらまし効果があると見せかけてのカモフラージュかもしれないしな。


「――ねえ? 高洲はそこで何を?」

「おわっ!」

「高洲、お久しぶり。わたしに会いに来た? それとも迎えに来た?」

「ひ、姫ちゃんか。というか、まだ俺のことを?」

「決めたから変わらない」

「そ、そうか。強いな」

「そう、強い。それで何を?」

 まさかお宅の隠しカメラを探しまくりなんですなんて、誰が言えるのか。しかし姉のさよりに比べると明らかに知能は姫ちゃんの方が上だ。下手な言い訳が通じるとは思えない。だとしてもどうすればいいんだ?


「ひ、姫ちゃん。キミの部屋を見たい。い、いいかな?」

「高洲はわたしを襲う?」

「ええ? そ、そんなことしないよ?」

「そうか……」

 部屋に行くだけで女子を襲うとか、ケダモノじゃないか。俺は理性溢れるナイスガイですよ? 


「高洲。部屋に入ったら、変わるけど……いい?」

「ん? 変わるって何が?」

「わたし」

「はひ?」

 そうか、人格チェンジ祭りですね、分かります。まぁ、姫ちゃんの素はすでに知っているから驚きはしないけど。俺の妹にでもなってくれるのだろうか。落ち着け、俺。そんなアホなことになるはずがない。

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