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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第三章:彼女たちの変化

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45.池谷さよりはデレたいらしい 1


 鮫浜もそうだけど、何故かさよりの奴も俺の家に勝手に入って来ることに抵抗がないようだ。妹の姫ちゃんといい、姉のさよりといい……一度でも入ってしまえば、男子の家に入ること自体に何の疑問も浮かべないのだろうか。ちなみに今は、俺の部屋にさよりが侵入している。前回は勝手に荒らされた挙句、秘蔵すぎる危険なディスクを燃やせないゴミに捨てられてしまった。中身をまだ見ていないのに、凄く泣きたいくらい悔しい。密かにポチっとクリックして入手していたのに……また奥底から探すしかないのだが、予算不足につき実現出来ていない。


「探し物は何ですか? 見つけにくかったりするんですか?」

「は? 何かしら? どこかで聞いたことのあるフレーズに聞こえなくも無いわね。何かのアニメの……」

「おっと、その口はそれ以上開いてはいけない」

「んーんーんー……!」

 思わずさよりの口を手で塞いでしまったが、この行動がおかしなことにはならないよな? さほど問題ないだろう。そもそもコイツが俺を卑猥だのワイセツだのとほざいているのは、俺の声に対してであって、さよりにとった行動に対してはそんなことを言われていない。だからきっと大丈夫だと思われる。


「おっと、悪い。苦しかったか?」

「か……」

「か?」

「間接キス……じゃなくて、あ、あなた! どこまでわたくしをはずかしめるつもりなのかしら? あなたの手は普段からあなたの口とか色んなところに触れているじゃない! これは間接的なわいせつ罪に当たるわ! 責任を取って頂くしか道は残されていないわ」

「はっ? おま……それ言い出したら社会で生きていけないだろうが!」

「も、問答無用よ! さぁ、今すぐに来ていただくわ!」

「どこにだよ!」

「わ、わたくしの部屋に……家に決まっているじゃない! ほら、早く!」

「何でそうなるんだ」

「愚問ね。さすが愚民だわ」

 いやいや、関係性ないぞそれは。


「き、来なさいよ。姫にちっとも会いに行かないなんて、それでも夫なの?」

「バカかッ!」

 残念すぎる美少女から格上げして、綺麗な肌のさよりさんになりつつあったのに、一気に陥落したぞ。何でコイツこんなに残念なの? 生まれ持った……かどうかは分からないけど、せっかくの美少女が役立ってない。


「あうあぅ~だ、だってだって……」

「あー、分かったから。行くから。てか、初めて行くのにそんな理由で行っていいのかよ? 親父さんとかと鉢合うのは嫌だぞ」

「ま、まだ帰って来ないもん……サービス残業って言ってたし」

「あー……マジで尊敬する。さすが社畜の鑑」

 しかしコイツの言葉遣いが会うたびに幼くなってきているのは気のせいか? 残念というタブーな言葉を俺が言わなくなったのもあるが、暴力性はどこかに消えてしまったように思える。自分のことをか弱い乙女だとか抜かしていたが、か弱かったら回し蹴りなんかお見舞いしてこないだろうに。


「お、お邪魔します……」

「よ、よく来たわね! あなたがわたくしの家に入るだなんて、世界が崩壊しても無いものだと思っていたのだけれど、意外にあっさりと訪れてしまったわ」

「お前が連れて来たんだろうが! アホなの?」

「お前お前って、わたしのことはさよりって言って欲しいって何度も言っているじゃない! 湊こそ学習能力に異常がありまくりなのではなくて?」

「――さより」

「はう~……」

「ど、どうした? 何で腰砕けてるんだよ?」

「き、気のせいよ。ほら、は、早く上がりなさい。お茶が冷めてしまうわ」

 何とご丁寧な。俺は立派なお客人扱いじゃないか。真夏に熱いお茶とか通だなコイツ。そう言えば姫ちゃんのお出迎えが無いが、夕方でも帰って来てないのだろうか? 親父さんはともかく、母親くらいはいてもおかしくないが。


「なぁ、さより」

「はわわわわ……」

 んん? そういや、体育祭のイケメン対抗リレー後からさよりの様子がおかしくなりすぎてる気がするが、まさかあのセリフを真に受けているんじゃないよな? いつもは俺の声に対していやらしいだの、みだらだのと罵るくせに、それどころか声をかけるたびに動きが止まって歩けなくなってるぞ? とうとう俺の声にも石化発動能力が実装されたのか? 今なら残念というキーワードにも効果があるんじゃないだろうか。


「さよりのオムネさんはあゆとは比べられなさ過ぎて残念過ぎるんだが、自覚はあるのか? 残念娘」

 大事なことだから二回くらいは言ってあげた。普段なら絶対言わないし、言うとリアル鉄拳が飛んでくるから言わないけど、今なら平気な気がする。


「い、今なんて?」

「残念娘……と」

「グスッ……湊はどうしてわたしをいじめるの? 嫌いなの?」

 あれっ? お前もか? ご近所さん同士で人格が入れ替わる祭りなの? いやいや、さよりの初期はもっとこう、暴力性あふれた言葉が羅列してたよ? どうしてそんなに乙女なの? 好きになってしまうじゃないか。泣くとかあり得ん。そんな甘々なキャラじゃないはずなんだが……。もしや鮫浜にどこかの世界へ飛ばれたのか? あり得る。


「え、えーと、ごめんな。嫌いじゃないから、泣くなって」

「ほんとにホント? 好き?」

「好――」

 おっと、これは危険だ。こんな一部分だけを見せられて好きとか言ってしまうと、鮫浜が乗り込んでくるかもしれない。いやでも、マジでコイツは性格が変わったよ? それとも今の姿が本物だとでも? だとしたらやばいな。思わず抱きしめたくなるくらいの小動物感がある。俺と大して身長が変わらないから小動物とは言えないけど。いつものお嬢様風の言葉遣いの方が慣れてしまっただけに、戸惑い気味だ。

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