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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第二章:美少女たちの恋活祭り

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35.池谷さよりと恋のわがまま 後編


「それで浅海と一緒に来たっていう二人は?」

「あの子たちなら今は髪を直しに行ってるよ。何? 会いたいの? というか、湊こそ誰かと来てるんじゃないの? 鮫浜さんとかと」

「いや、さよりだ」

「……へぇ~あっちから誘ってきたってやつかな? 俺はてっきり鮫浜さんかと思ってたのに。意外と抜け目ないね」

「ん? 鮫浜とは確かにその、キスしたけど付き合ってないぞ? 彼女は教室でも平気でキス出来る子だしな。もちろん、さよりともそういうのじゃない」

「そっか、それならあの子たちにもそういうチャンスはありそうだね」

「浅海……お前、何考えてんの? 俺のことが好きなんじゃなかったの? 友達として」

「うん! 好きだよ。友達だから。だけど、湊と付き合う子は俺が認める子の方がいいなぁって思ってるよ」

 コイツ、やはりイケメン要素ありまくりのナイスなガイ。友達は俺が守る! だが認めた子なら許す。みたいなところか。ということは、さよりのことはそうじゃなくて鮫浜ならいいってことなのか。どこまで裏情報を知っているんだろうか。なんて恐ろしい男の娘なの。


「湊のくせにムカつく。どうしてわたしがこんな思いまでして誘ったのか分からないじゃない。バカ……どうして気づいてくれないの。どうしてあゆばかり……」


「あなた、泣いている?」

「お嬢様? 違うのかなぁ? でもスタイルいいなぁ」


「えっ? どなたかしら? それに泣いてなどいないわ」

 さよりが化粧室に行った頃、浅海が話していた二人の女子と鉢合わせをしていた。この時がもちろん初対面であり、面識も何も無かったのだが、軽くバトったとかなんとか。


「嘘だね。涙を流さなくても、泣いてただろ。惜しいね、そんなに綺麗なのに。それなのに片想いって奴か。ウケるし、哀れすぎ。相手はもしかしなくてもただのクラスメイトだな」

「可哀想だね~ただのクラスメイトかぁ。それならほたるがその人をもらってあげよっかなぁ」

「ざけんなよ、ほたる。アレはあたしのだ。もちろん、あゆには好き勝手させるつもりなんてない」

 どうやら一人は、ややキツイ口調のS要素な女子で、もう一人は自分大好きっこなのか、ただのぶりっ子のようだ。しかしどちらも初期の鮫浜とさよりに似ている気がする。二人よりも毒性が強いかもだが。


「ふふ、あなたたちがどなたなのかはどうでもよいことですけれど、ここに長くいるつもりなどなくってよ? わたくしには連れがおりますの。では、ごきげんよう」


「別にあたしらも好きでここに来たわけじゃない。連れの彼の方が見た目しっかりしてんのに、ウチらが髪乱してたら恥ずかしいからな」

「ほたるも同じ~」

 さよりはああ見えて自分に敵意を向けている女子はすぐに分かるらしく、だからこそ同じクラスの女子とも未だに仲良くなれないらしいが、人見知りすぎるだけだと思われる。


 明らかに不貞腐れながらさよりが俺を見つけて向かってくる。そして、向かってくるさよりの少し後ろからも、二人の女子がこっちに歩いて来ているのを確認出来る。ということは、あの二人が浅海の連れなのだろうか。遠目からではハッキリ見えないが、さよりの態度と関係があるようなことがあったかもしれない。


「み、湊! 待たせたわね」

「いや、女子って時間かかるもんだろうし、気にしなくても……あぁ、浅海もここに来てたみたいで、お前がいない間、ずっと話をしていたんだ」

「浅海……? あぁ、同じクラスの。奇遇にもほどがあるというものね。ご機嫌いかがかしら?」

「あははっ、池谷さんはどこにいてもそんな感じなんだね。だけど、湊だけにはそうじゃないのかな?」

「何を言うのかと思えば、下らないことをおっしゃるのね。浅海さんは、もう少し賢い方だとばかり思っていたのだけれど、違ったのかしらね」

「どうだろうね。少なくともそんな格好までして、湊の気を引こうとする池谷さんほどじゃないと思うけどね」

「――あなた、食えないわね」

 ちょっとお二人さん? 何で喧嘩腰? 友達になったんじゃなかったのか。そう言えば自己紹介の時には、浅海の綺麗さにかなり驚いていたんだよな、さよりは。


「あっ! 湊くんだ~! そうだよね? ね?」

「本当だ、高洲さまだぁ!」

 ホワット? タカスサマ? あれ、俺は何様だっけ?


「お帰り。丁度いいから紹介しとくよ。彼女たちが今度、ウチの学園に転校してくる予定の二人なんだ。そして、湊に合いそうな子たちだよ」

「へ?」

 俺を高洲さま呼ばわりした子は、これまた随分と小柄な子だな。ツインテールとは萌える要素抜群じゃないか! 独断すぎる偏見だが、ツインテの子は妹キャラと見た。そして初めから人懐っこいはずだ。そしてもう一人の子は、身長はさよりよりやや低いがスタイル抜群で胸もある。髪も長いしポニーテールだし、萌える要素はばっちりだ。だが、どことなく鮫浜に似た感じの雰囲気なのは気のせいだろうか。それにしても紹介前から俺の名前を知っているのは何故だろう。浅海がすでに教えていたのか? それも俺を見ただけで分かるとか、どれだけ詳細に教えていたのやら。


「キミが高洲湊たかすみなとくん? あの子が言った通りの隠れた良さがあるな。あたしは、磯貝いそがいしず。ファミレスでも会えるから楽しみにしてるよ。()()()

「あ、どうも。あ、ファミレスの紹介に来れなかった磯貝さん? そうか、なるほど。で、あの子って?」

「そのうち……や、すぐに分からせてあげるよ。それと、あたしのことは……しずと呼んでいい。外でも二人きりでも、学校の中でもそう呼んでいい。それなら、あの子よりも勝ることになる」

「へ? い、いや、初対面なのにいきなり名前呼び捨てってのはさすがに……」

「――呼ぶだけだろ。気にすんなよ」

 姉御肌か? でもどこか命令形女子なんだよな。フレンドリーよりも、どこか怪しげすぎるぞ。


「高洲様。ほたるは、海野うみのほたるだよ~! ほたるは高洲様のモノになるの。だから、よろしくなの」

「そ、その様って何かな? ほたるさん」

「そのままだよ。あと、ほたるのことも呼び捨てしてね? そうじゃなかったら、痛い目に――」

「え?」

「っていうのは、もちろん冗談だよ~」

 何なんだこの子。萌えツインテで妹キャラかと思ってたのに、やばい系か? 転校生のそれも美少女ってワケありしかいないのか? それでも磯貝さんだけは唯一、俺の理想のスタイルではあるが、それでもどこか嫌な予感しかしない。そこそこの身長で上から系の女子だとすれば、俺なんかは太刀打ち出来ないぞ。


「ちょっと、湊! わたくしをシカトしないでくれるかしら? わたくしと来ているのはあなたですわ。ここにいる方たちはそもそも何も関係の無い関係であって、無駄に話をする必要がなくってよ?」

「お、おー、悪いなさより。ってことで、浅海。俺らは行くよ。また学校で会おうぜ!」

「おっけ。分かったよ。じゃあ、またな湊!」

 見た目だけはたぶん、ここにいる本物の女子たちよりも美少女なのに。俺よりも男らしいなんて、何だかむなしいぞ。浅海と友達で良かったと心底思う。


「それであなた、わたくしがいない間に流されまくるプールに入っていたのかしら?」

「なわけないだろ? さよりと来たのに一人で泳いで何が楽しいと? もちろん、浅海とは立ち話していただけだしな」

「そ、そうなのね。わたくしとそんなに一緒に泳ぎたかったのね……」

「いや、誘ってきたのはお前だからな? 結局泳ぎもしないし、水に入ることも無かったじゃないかよ。何がしたかったんだか」

「わ、分からないの? わ、わたくしがこんな格好になったのに」

「んん? ってか、トイレに行くまでにナンパされなかったか? 俺はむしろそれが心配だったぞ」

「し、心配? 湊がわたしを……」

「そりゃあそうだろ。お前、綺麗なんだし。しかもそんな男に対して挑発的な格好は、誘ってくださいと言ってるようなもんだろ。肌白いしヘソ見えてるし、まぁ……だから――」

「み、湊……」

「とにかく帰るんだろ? 着替え終わったら出口の所で待ってるから、迷わずに俺のとこへ来いよ?」

「う、うん」

 そうやって素を出してれば可愛いのにな。オムネさんは置いといても、それ以外を素直にしてくれれば、さよりのことをもっと見たいし、一緒にいたいって思えるんだけどな。結局、わがままに付き合わされただけだった。

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