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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
5章:日常、再び

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341.華麗なる令嬢と庶民 ②


 さよりをさよりらしくしたはずなのに、またしても赤面少女に逆戻りである。


 それはともかくとして、庶民の俺にとって最大にして最難関な場に来てしまった。


 ゴージャスで真っ赤なシルクのレースカーテン……もはやそれしか出て来ない俺の語彙力。

 そんな煌びやかなパーティなる場に俺は来ている。


 さよりをエスコートする為に来たわけだが、肝心の彼女はいつもの挙動不審な女の子ではなく、極上美少女ここに現れり的な恐ろしく綺麗な彼女となって現れた。


 あれが俺の彼女――

 くそう、やっぱり成り上がりでも令嬢として見れば、庶民の俺には眩しすぎて近づきがたいぞ。


 さよりは令嬢同士の挨拶で忙しくしているようだし、適当に歩くことにした。


『そこの庶民・ザ・庶民! 端を歩けよ!! 邪魔だ』


 ほぅ……? 

 やはりいるのか、こんなふざけたことを言い放つ輩が。


「いかにも俺は庶民だが、そういう貴様は喧嘩上等な金持ちか?」

「あ? 庶民が口答えしてんじゃねーよ! そもそも何で庶民がここにいやがる!! どの面下げてここに来てるってんだ。とっととそこからどけよ! この――」


 名無しの偉ぶり野郎が庶民に喧嘩を売るとは、コイツは一体何なんだ。

 いっちょまえにしやがって……


 そう思っていたが、急に青ざめているじゃないか。

 とりあえず大ごとにしたくないので、俺はひたすらピカピカすぎる床だけを眺めることにした。 


「――そこにいるのは高洲くん? そしてあなたは……どなた?」

「あ、あぁぁぁ……」

「いかにも! 俺は高洲くんですが、ワケあって顔を上げられません。あしからず」

「まさか、この場において庶民だとか、そうでないだとかで言葉遣いを荒々しくしている……そうなのですか? そして彼にこのようなことをさせている……」

「ひぃっ――!? ぼ、僕は汐見の家の……」


 おや? 汐見しおみだと!?

 いつかどこかで出会っている気がするが、どこだったか。


「どうぞ、大人しく去って頂けます? そうじゃないと、消しますよ?」

「わああああああああああ!!」


 何やら恐ろしいモノでも見たかのようにして、全力ダッシュで逃げて行ったじゃないか。

 汐見くんか、随分とイキっていたが急に弱体化したな。


「助かりましたが、あなたは?」

「ふふっ、顔を上げていいよ?」


 床を見るのも飽きて来たので助かった。

 そうして顔を上げると――


「会えたね、高洲くん」

「あ、あゆ……か?」

「……ん。そうだよ」


 そうか、さよりの令嬢レベルだといないと思っていたが、やはりいるのか。

 短くて丸みのある黒髪はいつもと違って、長く伸ばしたストレートになっていた。


 短い髪だったはずだが、ウィッグでもつけているのか。

 正確な歳は分かっていないが、やはり大人びた雰囲気を醸し出している。


「浅海と一緒にいるんだろ?」

「いるけど、それが?」

「すでに知っているだろうけど、俺は彼女がいる」

「……うん、だから?」

「いや……そう言われても」

「来て?」

「いや、俺は行けないんだけど、どこに?」

「浅海がいる所に連れて行くから、来てくれると嬉しい」


 やはり浅海と来ていたのか。

 上手く行ってくれたなら心配することは無いが、俺一人だけであゆに付いて行くのはあまりに危険だ。


「彼女と行っていいか?」

「さよりなら挨拶で忙しいと思うけど」

「うぐ……」

「……嫌いになった? 高洲くんは、もうあゆと離れる? 離れるのかな?」

「そ、それは……」

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