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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第二章:美少女たちの恋活祭り

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34.池谷さよりと恋のわがまま 中編


 屋内プールに着いた俺たち。肌に触れただけで大騒ぎをするお子ちゃまなさよりは、果たして華麗なる変身を遂げてくるのだろうか。男の俺は服を脱いで水着という名のサーフパンツを穿いているだけなのだが。流されまくるプールにはこれで十分である。どうせ口先だけのさよりも、泳げない言い訳として鑑賞されるだけの水着を着てくるとばかり思っていたのに、周りのざわつきと同様に俺も彼女の姿に石化せざるを得なかった。


 なん……だと……? あいつ、本物の美少女だったのか。今はあの箇所だけを視線から外しているだけに、周りの男たちと同じ反応をしてしまったじゃないか。くそっ、不覚だ。それに気づいたのか知らないが、勝ち誇ったように近づいてくるさよりは、相当あざとい。


「どうかしら? 下等な輩にはわたくしのこの姿に、視力と思考力が追い付かなかったのかしらね? ふふ」

「まぁまぁだな、お前にしては。確かにさよりは綺麗だ。だがお前には欠点がある。他の男たちはそこに気づいていないだけにとても残念だ。俺が初めからお前にそういう態度を出しているのも、それが関係しているんだからな」

 偽とはいえ、気品漂う立ち姿と細すぎる細腕と足。俺より少しだけ身長が低いとはいえ、姿勢が正しすぎるだけに俺よりも背が高い風に見えてしまう。泳ぐつもりが無いのか、鮮やかすぎる水色の水着の上にサイズオーバーなTシャツを着ている。さらにはパーカーだ。そして下はデニムのショートパンツを穿いている。胸は上手く隠しているが、へそと色白すぎる素足は男たちの視線を奪っている。


「今なんと?」

「ん? さよりが綺麗だ……と」

「くっ、ゆ、許してあげるわ。湊が気づいていないのならいいわ」

 あぁ、残念って言葉のことを聞いてきたんだな。そうだけど、何か? なんて言うと怒ることも判明している。そういう時はポジティブなことを先に伝えればお咎めなしということも分かって来た。そもそも今の姿で人目を気にしない暴言は、さより自身を傷つけてしまいかねん。おれはそこまで鬼畜ではない。


「で、お前は泳ぐのか? 英才教育とやらで。パーカーを羽織ってるということは見学コース確定なんだが」

「あなた、ファッションセンスが皆無すぎるのね。何だか哀れに思えて来たわ。いえ、初めから憐みをもって接しなければいけなかったわね。可哀想な湊には、わたくしを一生懸命に見つめる権利を与えて差し上げなくてはならないわね」

「大した自信だが、泳げないんだろ? 水中で息継ぎは出来るのかよ」

「……出来ないし」

「今出来ないって言ったか?」

「うぅ……ムカつくムカつく」

 そんなことだろうと思ってた。泳げるもしくは、泳ぐつもりならそれなりに動ける格好で来るだろ。どう見ても自分を見せたいがための服装にしか思えないぞ。


「お前、黙ってればそれなりなんだから、その格好じゃ泳ぎに来たというよりは、ナンパされに来ましたと言っているようなもんだぞ? 言っとくが俺は守れるほど強くないんだからな。何もそんな見知らぬ男どもに見せる姿にならんでも……」

「み、湊に見せたかったから、だから……」

「いや、だから何で俺に? 他にもイケメンはうじゃうじゃいるぞ? 好きでもないくせにどういうつもりで――」

「う、うるさーい! うるさいうるさい! 湊のバカッ知らないっ!」

「えええ? お、おいっ! さより、どこに行くんだよ!」

「ついて来るな! 顔を洗ってくるのよっ!」

「そ、そうか。転ぶなよ、さより」

「……ムカつく」

 何だあいつ、素直なのかムカついているのかどっちなんだよ。それにしても、相変わらずキレやすいんだな。あんなに美少女なのに、何か残念なんだよな。俺以外の男ならホイホイ釣れそうなのにな。


「みーなっとっ!」

「おわっ? な、何だ」

 顔を洗いに行ったらしいさよりを見送りながら見守っていると、俺を呼びながら背中に誰かがダイブしてきた。明らかに水着だろうな。しかし、さよりと同様に背中からドキドキワクワクするような感触は得られていない。だが俺を呼びつつ背中アタックしてくる奴に心当たりは一人しかいない。それもわざと甘える声で来る奴だ。


「浅海だろ?」

「お! さすが俺のダチ。惚れ惚れする背中が仁王立ちしてたから、一発で分かっちまったよ」

「そういうお前は美少女スタイルで来てるのかよ。また髪伸びたんじゃないのか?」

「分かる? このままいけば湊理想の髪型になるかもな」

「それはよきかな……ってか、浅海は一人か? なわけないよな」

「うん、知り合いの女子たちと来たぜ。あぁ、そうそう……二人ともウチの学園に転校してくるらしいから、湊的には恋のチャンス到来じゃね? しかもそのうちの一人は、湊のことをあの子から聞いていて会う前から好きになったとか。良かったじゃん! 彼女出来るかもよ?」

「あぁ、いや、うん」

 落ち着け、俺。目の前の美少女は、浅海であって女じゃない。絶対コイツ、確信犯だろ。


「嬉しいだろ? 湊」

「な、何を言うのかな? 浅海は」

「俺は嬉しいよ。プールでも会えるんだから。それが偶然なのか運命なのかってね」

 ああ、くそう。あざとすぎるぞ浅海。嫌いになんてなれるはずがない。何で俺より男してるんだろうな。

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