335.白と黒の教室 1-1
さよりに先導され、廊下で待っていたあみを見てみると、何やら青ざめた顔になっていることに気付く。
それにはさすがに気付いたらしく、さよりも言葉に詰まっている。
「え、ど、どうした? ここが俺たちのクラス……だよな?」
「……あみ、帰る」
「あなたも湊に感化されてサボり魔になったというのかしら?」
「……」
「サボり魔やめろっての! マジでどうしたんだよ? 何で急にそんな」
まさか教室の中に嵐花が座っているとかか?
しかし確か嵐花とあみは出会ったことがないはず。
試しに教室をのぞいてみると、少なくとも俺が思っていたような馴染みの顔は見当たらない。
もっとも嵐花がいた場合でも、朝早くからいるのは考えられないし、そもそもまだ来ている人はまばらだ。
そうなると他の何かで青ざめていることになるが、気にしても仕方ないので教室に入ることにする。
「あみの自由でいいが、俺らは入るぞ」
「そ、そうね。あなた、どうするつもり?」
「……高洲の隣に座って我慢する」
「そ、それで平気なら……いや、席は自由じゃないけどな」
「……」
全員揃ってみないとこのクラスがどうなのかが分からないが、あみは一体何に青ざめていたのか。
「だ、大丈夫なの?」
「俺にも分からないからな。多分何とかなるだろ」
「一体どうしたというのかしらね……」
普段は気にしていないさよりも、さすがに耳打ちして来た。
俺たちは転校生ではあるが、出戻りなので改まって自己紹介は無いと聞かされていた。
だがあみが青ざめた理由はすぐに判明する。
まさかこんな形で出会うことになるとは、思ってもみなかったからだ。
さよりは予想こそしていなかっただろうが、『でしょうね』などと呟いていた。
「――というわけで、勝手に座っているそこの三人組! 前に立て」
おいおい、マジかよ。
この男教師は空気を読めないのか?
「高洲くん、池谷さん……それと、沖水あみ。前へ出て来てください。白先生の言うことを聞いて欲しいです。白が黒になる前に、ですよ」
「そうだぞ! 鮫浜あゆさんの言う通りだ」
白って、そのまんまかよ。
白が黒にとか、何かを思い出すがそれは俺だけの記憶だ。
「さよりは驚かないんだな」
「やると思っていたわ。あなただって、予想くらいはしていたのではなくて?」
「片隅くらいにはな……しかし、同じ学生とかじゃなくてこんな形かよ」
「あゆの妹……の割には嬉しそうじゃない所を見れば、やはり沖水と鮫浜は違えていたのね……」
「まぁな」
あみはすっかりと表情を落としている。
すでに向こうは気付いているし、教壇に行くしかないわけだが。
女教師じゃなくて副担任的な感じなのだろうが、そう来るのか。
栢森の当主と何を話して、何を言われたのか。
「フフ……高洲くん、早く」
「あ、はい」
教育的指導とか色んな意味で受けることになると思うと、今までとは対応も変えねばならないということになりそうだ。




