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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
4章:カノジョの想い

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328.初めての不意打ちと恍惚と


 果たしてあゆに通じるのだろうかなんて、思ってはいけない。


 しかし今なら嵐花に気をとられているし、普段は全く隙のない彼女でも、今回は行けそうな気がする。


「おい、ミナト……お前何して――!?」

「――湊く――っ!?」


 あゆに近づく前に嵐花に見つかってしまったが、もう勢いで突っ込むしかない。

 そう思いながら、前も見ないであゆにタックル? する勢いで突進した。


「ううーん……」


 状況がはっきり分からんが、さっきあゆに羽交い絞めされた時みたく、視界は真っ暗で何も見えない。


 これは成功か? それとも、よろしくない所へ突っ込んだのか?


「……んっ――」


 んん? 何やら頬の辺りがムニュムニュしているが、マシュマロでも食べていたか?


 それに手の中には収まりきらないくらいの、特大フカフカなあんまんを鷲掴みにしている感覚さえしているじゃないか。


 実はさっきまで夢を見ていて、気付いたら栢森家のご馳走の施しを受けていた夢落ちだったりする!?


「ん……ん、うん……湊くん自ら、見せつけるなんて、彼氏の証……見せつけたい? つけたいんだよね?」


 ん、何が?


 いやいや、確かにあゆの彼氏に戻ったが、誰に何を見せつけている?


「ミ、ミナト……お、お前……」

「その声は嵐花? 俺が何か……」

「て、てめえのしていることをよく見やがれ!! バカ野郎!!」

「え?」


 落ち着け、俺!


 まず、俺は起きている。

 そして手の平にはフカフカなアンマ……ん? いや、これはアレですね、もう分かってます。


 さらに言えば、マシュマロなんぞ食べる暇も余裕も無ければ、栢森家に来てから何も口にしていない。

 

 つまり――


「望んでいた、いたよ? でもまさか、人に見せつけるのが好きだったなんて、湊くんは凄い男の子だった。改める、改めてあげるね?」


『う……おっ!? いやいやいやいやいや!!』


 音が出たわけじゃないが、膝を擦り剥くぐらいの勢いのままに、ズザザザとあゆから離れてすぐに顔を床に擦りつけた。


 今まで俺からあゆにどうにかしたことは無い。

 しかしさっきまで感じていた感触は、見たことが無いあゆの紅潮した顔と切れる寸前の嵐花を見れば、一目瞭然である。


 よりにもよって、嵐花を始めとした栢森かやもり家の侍女とか、ルリなどなど……

 あゆのオムネさんに顔をうずめ、鷲掴みにしていた……という何とも恐ろしいコトをしていた。


 どう考えても人前で堂々とする行為じゃないし、俺を守ると言ってくれている人の目の前ですることじゃない。


「ひ……」


 あゆはもはや俺しか見えて無いのか、舌なめずりをしながら恍惚とした表情になっていて、正座の姿勢のまま、ペタンと足を崩して座っている。


 反対に、嵐花は震えた拳に思いきり力を込めまくりながら仁王立ちしているんだが、これは天国と地獄かな。


 本気であゆとヨリを戻すつもりはまだ無かったのに、どうしてこんなことになるのか。


「てんめぇえええ!! ミナトォォォ! 歯ぁ、食いしばりやがれぇぇぇ!!」

「ひえええええええ!!」

「逃げんじゃねええええ!」


 絶対に殴られる。

 幸か不幸か、栢森の屋敷はとてつもなく広いし、とにかく逃げまくるしかない。


 何でタックルしたんだ、俺。

 イメージ通りに行けば、あゆを拘束して……ではなくて、羽交い絞めに、では無くて!


 あゆの動きを封じて説教をしていたはずだったのに!


「ミナト!! 待ちやがれ、このガキーー!!」

「待たない、待たない!!」


 追いかけて来ているのは嵐花だけだと思いきや、やはりというか栢森の彼女たち総出で俺を追いかけて来る。


 その中でも足の早いのはユウだ。

 あの楓子ふうことかいう中性的な女子だったら、間違いなく捕まっていたが、彼女は関わらないようなので助かった。


 どうしよう、どうすればここから逃げ出せるっていうんだ。


 こうなればかつて嵐花に教育された地下へ逃げるか?

 いや、でも……そのまま監禁でもされたらシャレにならんぞ。


「こっち……」

「んっ?」

「姿勢を低く、屈みながら来て……」

「あ、あぁ」


 どうやら部屋のどこからか助け舟を出してくれているようだが、部屋の中からの声なので籠っていて誰なのかが分からない。


 しかしそんな迷う時間は無い。


 この際誰でもいいので、屈みながらどこかの部屋に侵入を試みた。


「はぁぁぁぁ……やばかった」


 ――って、あれ? 誰もいない部屋?


 栢森の家の内部を知り尽くしている人間じゃなければ、この部屋には誘導出来ないはず。

 一体誰の声だったのか。


「やっぱり、来たね。キミ……」

「――へっ?」

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