309.闇天使、許婚の永久追放を企てるSS
湊くんと二人きり……そんな機会は、ほとんど無い。無いのに、全てこの男のせいで、計画が狂った。
監禁は失敗したけど、外のデートでやり直せれば彼はまた、私に惹かれてくれる……そういう手筈だったのに。
「どこに行きます? このまま誰も知らない島にでも飛んじゃいますか~」
「……奇遇ですね。同じことを考えていました。というより、飛ぶことしか考えていなかったです……」
「おおお! さすが、俺の嫁さん!」
「では、すでに手続きは済んでいますから、一緒に空港へ行きましょう? りょうさん」
「な、名前呼び! じゃあ俺もあゆ……と呼ばせてもらう!」
「……」
これは湊くんに再会するまでに整えていた、綿密な計画。
会長の許可も得られているし、湊くんもいない……誰にも遠慮する必要は無い。
鮫島と二人きりで、私はとある外国に飛び立った。
「りょうさん、私たちは特別ゲートで入国するから、こっちに来て」
「おお、さすが鮫浜! 俺より力が効くな~」
「こっち、こっちに……」
「これがハネムーンという奴なのか!」
「……うん、そうだよ。私は先に手続きを済ませてくるから、りょうさんはここでずっと待っててね」
「あゆのためなら待つぜ!」
浮かれすぎた男ほど、操作は簡単だった。
後は私のクローンを向かわせて、鮫島を鮫浜に改名……いるはずの無い鮫浜アユと、永久にいさせてあげる……、
「あゆ~あゆ~! まだかい?」
「うん、今行くね……」
湊くん、もうすぐ邪魔者がいなくなるから、楽しみに待っててね。




