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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
悪役令嬢編

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306/345

306.帰りたくなかった場所に帰されていた件


「……ん~んんん……ぬあっ!? って、あれ?」

「えへへ……起きたぁ? 駄目だよぉ、どうして逃げたの~?」


 な、何でベッドにこの子が寝ているんだ?


 それも際どい格好で。


「に、逃げたって、どこから? いや、というか……ここは病室ですよね?」

「逃げたのは、キ・ミ。もちろん、寮からだよ? ここはお部屋。また借りに来たんだよね?」


 そんなバカな……さよりにおんぶされ、危険じゃない普通の病院に送られたんじゃないのか?


 どうしてここに戻って来ているのか。


 南中女子寮の部屋にいつ連れて来られたのか……それも、浅利姉妹の危険な彼女の方に。


「か、借りるって何を?」

「ん~? 封筒の中身を使って脱走したんだよね~?」

「や、学校から自由な日をもらっただけで、逃げたわけじゃ……」

「そうなのぉ? だけど、使ってくれたよね~」


 タクシーに乗る為に、仕方なく使わせてもらったお金の封筒のことだろうが、後で返せばと思っていたのが間違いだったのか。


「じゃあ、新しい封筒を渡すね~」

「い、いいですって! 今すぐは無理ですけど、後でバイトして返しますんで!」

「借りは返してもらわない主義だから~モノになってくれたってことで合ってる~?」

「ち、違いますよ」


 何なんだ恋海(この子)は。


 浅利姉妹の姉の方が安全に思えたのに、一番危険な子から借りを作ってしまった!?


「具合は良くなったよ? だから~キミの局所に新しい借りを入れておいたよ」

「きょっ局所……!?」

「無防備なキミも好き~じゃあ交代して来るね~」

「う、受け取れませんって! というか、局所って……」


 どうやらここは病院ではなく、さよりもいなく、南中女子寮の部屋に戻されてしまったらしい。


 途中までは、確かにさよりの優しさを感じていたはずなのに、そこからの記憶が全然無い。


「生きてたんだ、ふーん? つまらない奴」

「お、お前……」

海夏みなつって呼べよ! お前って上から言われるとマジムカつくんだけど?」

「あ、あぁ……そうだったか」

恋海あいかから借りを作って、すぐに返さなかっただろ?」

「手持ちが無いんだよ」

「見たくないしどうでもいいけど、そんなところに借りを増やして、どうなっても私は知らないからな!」


 好きで借りを作ったわけじゃないのに、酷い言われようだ。


 しかしタクシー代として使ってしまったのは、完全に俺のミスでもある。


 浅利姉妹の姉は鮫浜や嵐花とは、まるで種類が違う危なさがありそうだと感じていたのに、女子寮から出る為にお金を使ってしまったのは、真面目に悔やまれる。


「それと高洲!」

「な、何?」

「……お帰り」

「た、ただいま」

「もう出て行くなよ? モノにするって決めたんだからな!」


 何だ、ツンデレか?


 浅利姉妹の言葉はどこか危なく聞こえるが、実は彼氏が欲しいとかじゃないだろうな。


 嵐花に言われて南中女子付属に来たはいいが、本当に数日後には帰れるのか?

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