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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
悪役令嬢編

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305/345

305.栢森嵐花のキモチSS ②


「――ったく、何だって年下連中と同じ教室に通わなければならないんだ」

「お言葉ですが……」

「言わなくても分かっている! それで? 手筈は整えてんだろうな?」

「ご用命のまま、男はお嬢の隣になるようにしております」

「池谷は離したか?」

「一番前と一番後ろ。端と端。問題は無いかと」

「あたしと高洲だけは席替えなしな!」

「ええ、抜かりなく」


 高洲湊をモノにする為、栢森家の令嬢は今か今かと、彼の登校を待っていた。


 栢森の狙いは自分に従い、逆らわず、理想に近い教育を受けさせて、好みの男にするということを掲げている。


 そして用意周到な登校日。


 あたしは高洲湊に出会うことになる。


 あの背中がそうか……顔の作りも悪くはない。


「そこの背中野郎! 邪魔だ!!」


 高洲湊という男に、出会って早々に威圧したつもりだった。


 妙に慣れてやがる……すでに鮫浜に仕込まれてやがんのか?


「あたしのことは姐と呼びやがれ!」

「で、ですよねぇ。美少女というより、姐御って感じっす」

「あ?」

「いやいや、凄まれても……」


 年上慣れしているのか、高洲は栢森に怯えることなく接している。


 これならすんなりと言うことを聞かせられそうだと、彼女は笑みを浮かべていた。


「何だ、笑えるんじゃないすか。美貌……とまではいきませんが、可愛いっすね!」

「……本気の言葉か? あ?」

「俺はハッキリ言うタイプなんで、思わなければ言いませんよ」

「へえ……気に入った! 高洲のことは今から、みなとって呼ぶからな! みなともあたしのことを呼び捨てで呼びな!」

「ら、嵐花らんか?」

「ふふっ」

「……え」


 おっといけねえ。しばらくは楽な言葉遣いでコイツに印象付けねえとな。


 コイツが偽名であげていた浮間とかいう野郎を調べてみたら、案の定、鮫浜に飼われているチンピラだということが判明した。


 後々に厄介を持ち込んで来そうだが、同じクラスにはすでに面倒な野郎がいる。


 みなとへの態度次第では、ソイツに圧をかけておく必要がありそうだ。


「おい、そこの……」

「は、はい、何です?」

「みなとの情報は逐一、あたしに寄越せ! いいな?」

「お、お任せ下さい!」


 鮫島とかいう奴は、常に腰が低いが目の奥に光る何かがあった。


 みなとを知れるとはいえ、要警戒な野郎として伝えておくことにする。


 そしてみなとを舎弟にしてから数日後、妙な野郎が絡んで来るようになった。


「あぁ、うぜえ! 何がおみ足だ、くそが!」


 あたしを栢森と知ってか知らずか、高洲に出会う前から、ちょっかいを出して来る奴がいる。


 コイツを逆に利用して、高洲に興味を持たせて近づけさせるのも、手かもしれないな。

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