304.栢森嵐花のキモチSS ①
「あぁ!? また駄目だっていうのかよ! ったく、どいつもこいつもビビりやがって」
「そう申されましても、嵐花さまは栢森の跡取りであり……将来を供にするとなると、生半可な気持ちだけでは……」
「楓子とユウはどう思う?」
「……お嬢の好きなように」
「オレに言われても困るな」
「ハッキリ言いやがって! さすが栢森付きの女と言うべきか」
栢森家の跡取りであり、関わるもの全てを任された一人娘の彼女は、男運が無い。
正確にはその手段に問題があると、メイドの間では常識となっていた。
「あんな男に時間を使い過ぎて留年なんて、そんなのありかよ!」
「学業に関しては甘やかさないとの申しつけを受けておりますので……」
「あぁ、もう! どこかにいねえのかよ! あたしに従順になりそうな男は!!」
「……そのことですが、栢森に転校して来る男がいまして……あの鮫浜の男だったようですが――」
「鮫浜? あぁ、あっち側の令嬢か。それで、その男の財力は?」
「いえ、それが……」
鮫浜の男だった奴を自分の男に出来れば、力を誇示しやすくなるうえ、本当に夢中になって好きになれるかもしれないと、彼女は思い始めた。
「普通の男ぉ? あの鮫浜がか?」
「何でも東上学園では、背中とイケメンボイスで人気が高かったとか……」
「声はともかく、逞しい背中の男は好きだな! ソイツの名は?」
「高洲湊……鮫浜に追放されるという形で、転校して来ます」
「……ふん、逃がす為のやり方をするなんて、そこまでの奴かよ」
鮫浜の元男……ねぇ。それなら、そのまま鮫浜に返すことなく、あたしの男にしてやるか。
「あたしのクラスに手配しといてくれ!」
「それともう一人……高洲湊にくっついて転校して来る女がいますが、どうされます?」
「女の名前は?」
「池谷さより……」
「あぁ、成り上がりの池谷か。放置しとく」
高洲湊をあたしの男に育て上げて、あたし好みに教育して……ふふ、楽しみだな。




