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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
悪役令嬢編

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304/345

304.栢森嵐花のキモチSS ①


「あぁ!? また駄目だっていうのかよ! ったく、どいつもこいつもビビりやがって」

「そう申されましても、嵐花さまは栢森の跡取りであり……将来を供にするとなると、生半可な気持ちだけでは……」

楓子ふうことユウはどう思う?」

「……お嬢の好きなように」

「オレに言われても困るな」

「ハッキリ言いやがって! さすが栢森付きの女と言うべきか」


 栢森かやもり家の跡取りであり、関わるもの全てを任された一人娘の彼女は、男運が無い。


 正確にはその手段に問題があると、メイドの間では常識となっていた。


「あんな男に時間を使い過ぎて留年なんて、そんなのありかよ!」

「学業に関しては甘やかさないとの申しつけを受けておりますので……」

「あぁ、もう! どこかにいねえのかよ! あたしに従順になりそうな男は!!」

「……そのことですが、栢森に転校して来る男がいまして……あの鮫浜の男だったようですが――」

「鮫浜? あぁ、あっち側の令嬢か。それで、その男の財力は?」

「いえ、それが……」


 鮫浜の男だった奴を自分の男に出来れば、力を誇示しやすくなるうえ、本当に夢中になって好きになれるかもしれないと、彼女は思い始めた。


「普通の男ぉ? あの鮫浜がか?」

「何でも東上学園では、背中とイケメンボイスで人気が高かったとか……」

「声はともかく、逞しい背中の男は好きだな! ソイツの名は?」

「高洲湊……鮫浜に追放されるという形で、転校して来ます」

「……ふん、逃がす為のやり方をするなんて、そこまでの奴かよ」


 鮫浜の元男……ねぇ。それなら、そのまま鮫浜に返すことなく、あたしの男にしてやるか。


「あたしのクラスに手配しといてくれ!」

「それともう一人……高洲湊にくっついて転校して来る女がいますが、どうされます?」

「女の名前は?」

池谷いけがやさより……」

「あぁ、成り上がりの池谷か。放置しとく」


 高洲湊をあたしの男に育て上げて、あたし好みに教育して……ふふ、楽しみだな。

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