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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
3章:彼氏彼女じゃないわけで

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301/345

301.さよりさん、目撃するSS


「全く! 湊は一体どういうつもりをしているのかしら!」


 さよりは俺と彼女契約を交わしたあと、ずっと納得が行かないままで、街中を彷徨い続けていた。


「いつもはぐらかすし、たった二文字の気持ちも口にしないし、あんなに根性が腐った野郎だなんて、思わなかったわ!」


 などなど、誰にでも聞こえる声量の独り言が、洩れまくりだった。


『ははは、顔だけは綺麗なのに、妄想癖とか。独り言洩れてんぞ?』


 周りが見えずに歩き続けるのは、さよりの悪い習性だが、相変わらずトラブル野郎を呼んでしまうらしい。


「頭に来ているせいで、雑音が聞こえて来るわ。これも全てあの男のせい!!」

「おい、シカトすんなよ! 一応令嬢だろ、あんた」

「ふふん、当然ね! そういうあなたは……鮫なんとか」

「いい加減覚えろよ、残念美少女が!!」

「はぁ~……やはり違うわね。そうやって心に余裕が無い対応をして来る辺りが、アレと違う所なのかしらね」

「あ?」


 さよりと遭遇する確率が何故か高い鮫島もまた、あゆを探してうろついていたようだ。


「あゆなら近くにいないのだけれど、いたとしてもあなたとは不釣り合いだと思うわ」

「高洲とはお似合いってか?」

「……それも違うわ。湊はあゆに近づいているんじゃなくて、様子を見ながら彼女の言うことに素直なだけなの。どうしようもない男だわ」

「そうだろ? どうしようもねえ奴だからこそ、鮫浜に相手をされてんのが気に入らねえ!」


 さよりは鮫島の言葉に、何も答えなかった。


「ところで、あなたいつも声をかけて来るけれど、寂しいのかしら? 友達もいなさそうだし……」

「一応いるぜ? 最近はお互い忙しくて会ってねえだけで」

「負け惜しみ……そんなところみたいね。どうでもいいけれど」

「そういうあんたも、何が良くて高洲に付きまとっているのか、思い直せばいいものを」


 お互い様と言いたかったさよりは、またしても押し黙った。


 それくらい鮫島は、面倒くさい男と認めたらしい。


「あらっ? アレは……あゆ?」

「あんた目だけはいいんだな。サンキュー! 彼女に会えればそれで……あん?」

「……そういうことなのね」

「悪いが俺は高洲を許すつもりは無いんでな。あんたは帰れよ」

「くだらないわ」

「あぁ、そうかよ」


 さよりと鮫島が目撃したのは、あゆに連れられている高洲湊の姿だ。


 鮫島は迷うことなく、あゆがいる所に向かって行く。


「……あの学校に行っているはずの湊が、どうしてあゆといるのかなんて……本当に、どうしようもない男。わたしはアレの為に、出来ることをやるしかないんだわ」

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