180.令嬢による候補の為の教育 B-3
急かすようにして命令してくる嵐花なのに、その姿は何だか楽しそうにも見える。
「ほら、さっさとやりやがれ! みなと、あたしを失望させんなよ」
「失望って……これ、今回だけですよね?」
「お前次第だな。あたしに触れたいだろ?」
今さっきルリと交際させた張本人なのに、嵐花の言葉は、明らかに俺の気持ちに気付いているようにも思える。
それはともかく、俺を挑発している嵐花はすでに脚線美が露わになっていて、薄いソックスを脱がすだけの簡単なミッションだったりする。
ちなみに今回は地下部屋ではないので、土足ではない。
「な、中々に綺麗な足をしてますね……肉付きといい、骨格もいい……足フェチが追っかけて来るのも、分からないでもないかも」
「何だ、まさかあのため口野郎のことを知ってんのか?」
「一応知ってますが、友達じゃないです」
「み、みなとだから触れさせているし、見られてもいいと思っているんだ。他の野郎に見られても嬉しくないんだからな? あたしの将来の……」
「えっ? どういう意味で――ぶへっ!?」
「う、うるせーな! 細かく気にする奴は、顔を挟めてやるぞこの野郎!」
すでにその足で顔を挟まれているが、これはこれでいいような……
「湊……さま、お姉さま……楽しそうなの」
「え、あっ! こ、これは……」
「うふふっ、楽しいわよ! ルリもみなとが悪態ついたら、お仕置きしていいのよ?」
「うっ、うん。する、するの!」
放置のような感じになっていたルリは、俺と嵐花のじゃれ合いを羨ましそうに見ていたようだ。
それに気づいた嵐花だったが、すかさずフォローを入れる辺り、俺と違って冷静に物事を見ているらしい。
「……どうした? あたしの足に挟まれて昇天でもしたか?」
「感触を味わっているところですよ」
「じゃあ、次な!」
もはや色気とかエロ要素が度外視の、からかわれ相手になっているような気がしないでもない。
「へ? あの何を……?」
「見りゃあ分かんだろ? 両腕を上げたままにしてやるから、そのまま脱がせな!」
嵐花が着ている服は胸元をゆったりとさせたチュニックワンピースで、腰元にはお高いベルトでウエストにアクセントを置いた何ともワイルドな格好なわけだが、脱がせるのは難易度が高そうである。
「あん? ベルトは飾りだ。それともそれも外したいのか? ふっ……みなとはそこまであたしにアレか」
「な、何のことですかね」
分かってて挑発してるとしか思えないが、楽しそうにしているので黙っておく。
「嵐花が恥ずかしがることってあるんですかね?」
「失礼な野郎だな。あたしにだって恥じらいくらい備わっているぞ! だけどよ、あたしはみなとより年上なんだ。あたしが恥ずかしがってたら、みなとはどうする事も出来なくなるだろ?」
「それも嬉しくなりますけどね」
こうして言葉のやり取りをしているだけなのに、楽しく思えるのはどうしてなのか。
「あん? あたしばかり見つめてないで、ルリもかまってやれよ! 彼氏だろ!」
「い、いや、まぁそうなんですけど……」
「ルリ! こっちへいらっしゃい!」
「え、ちょっ!」
「……みなと、あたしが気になるような野郎になって見せろよ! そうじゃねえと……」
何かを言いたそうな嵐花だったが、彼女の気持ちはどこにあるのだろうか。
「お姉さま?」
「うん、みなとの前に立ってお待ちなさいね」
「はい」
「いいこと? ルリはもっとあざとく、強くおなりなさい。そうしないと、わたしがルリからみなとを奪ってしまうかもしれないわよ?」
「そ、そんなの、嫌なの」
何気にサラッと本心を出したかのように聞こえたが、恐らく冗談だろう。
嵐花に言われて気合を入れたのか、ルリは俺の前に立って命令を下して来た。
「湊、跪くの!」
「あ、こうかな?」
「駄目! お馬さんのようになって欲しいの」
こんな天使が服を着たようなか弱いロリッ子に、命令されても怖くも痛くもないが、嵐花に睨まれてもキツいので、言うとおりにした方が良さそうだ。




