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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第2部第3章:新たなる恋芽生え

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159.為すがままに、修羅場を作る…… 前編


「悪い、待たせた」

「彼は……高洲の友達?」

「んあ? 誰が?」

「そこ、見てる人……」

「ん? うおっ!?」


 廊下に出たはいいが、教室の中から俺らのことを覗いている野郎どもがいて、思わず仰け反りをしてしまった。


 というか、同じクラスなのに知らないのか? 鮫島並に存在感無さ過ぎだろう。


 それとも一方的な想いだけ募らせて、話しかけてもいないのか。


「みちる、そこで少しだけ待ってくれるか?」

「……?」

「すぐ済ませる」


 本人がすぐ近くにいながら、声もかけないほどのヘタレ野郎か。


 そんな奴なら嵐花仕込みの言葉遣いで追い出せば何とかなりそうだ。


『そこの砂庭すなばと野郎ども! てめえらのしてることは、天井に仕掛けてるカメラでバッチリ残るからな! 覚悟しとけよ!』


「カ、カメラ……マ、マジか」「そんな学校だったのか?」「く、くそ、高洲湊、覚えてろよー!」


 などなど、ハッタリで退散させることに成功。


 学園じゃあるまいし、普通の学校の天井にカメラなんて仕掛けるはずがないだろうに。


「高洲、カメラ?」

「あぁ、冗談だ」

「あれがそう?」

「へ?」


 俺より背がやや高いみちるが指さした天井に、何となく小さな穴が見えていて、何かの気配を感じた気がした。


 まさか鮫浜か……? この高校に俺を指名し、追放してくれたのは彼女に間違いないが、ここでも権力発動は勘弁して欲しい。


「……違う。違った」

「ち、違ったのか? じゃあ、あの穴は何だ?」

「空気穴……多分、そう」


 よく分からない答えだったが、よくよく見ればカメラではなく、壁の穴だった。


 さすがに権力チートでも、普通の高校でそれは無いだろう。


「高洲、部屋に行く。そのまま住む?」

「そのことなんだけど、夏休みに入ってからでいい? その方がバイトもしやすいし……」

「ずっと一緒。そういうこと? 汗だくで、振る……」

「ハ? 何のことだ?」

「鍋」

「あ、あぁ……鍋ね。いや、俺が料理するわけじゃないよね?」

「教えるから、やって。将来役に立つ」

「将来か……ファミレスの時はホールだったからな~。覚えておくのは悪くないが……」

「じゃあ、今日教えるから行く。高洲、家に泊まって行く?」


 優雨のクラスに来たからといって、みちるに何かの話があったわけじゃなかった。


 予想はしていたが、やはり家にお呼ばれしてしまうのか。


「チャリに……乗るから。手を繋いで導き……して?」

「何で手を繋ぐ必要が? いや、そうやって首を傾げるのやめてくれる? 無意識だとしても、困る……」

「……?」


 何気ない仕草に弱すぎる俺もどうかしているが、最近どういうわけか、手に関係することばかりだ。


「と、とにかく行くことは行くけど、泊まるつもりは無いぞ?」

「添い寝は?」

「だから泊まらないって!」


『――湊さん、どこに泊まるんですか?』


 おいおい、マジで!? さよりとみちるが会うことは避けられたのに、ここで姫ちゃんとか。


「ひ、姫ちゃん!? え、何で?」

「……誰?」

「ええと、何て言えばいいのか……」


池谷いけがや姫です。湊さんは私の――』


 彼女でもないしさよりの妹なのは事実だが、あまりよろしくないことを言いそうだ。


 これは制止せねば。


「わわわわ! ま、待った! 姫ちゃん!」

「……あっ……ん、む……」

「ご、ごめん! く、苦しくさせてごめんね? すぐに手を離すから!」

「もう離すんですか……? 私、湊さんの手、好きですよ?」

「汗掻いてるし、さよりには不評だったし……あ」

「――さより? 湊さん、さよりにも同じことをさせたんですか?」

「ふ、不可抗力だっただけで、わざとじゃないからね?」

「……」


 非常にやばいことを口走ってしまった。


 みちるがいる前だというのに、姫ちゃんに主導権を握られてしまいそうになるのはどうなんだ。


「高洲、その子は妹……?」

「あーそ、そうとも言える。俺の……じゃないけど」

「じゃあ、高洲の妹も一緒に?」

「へ? い、一緒に……とは?」

「家に」

「いやいやいや! それはおかしいよ! みちるはそもそも、この子のことを知らないわけだし。姫ちゃんも、知らない人の家には行かないでしょ?」

 

 どっちも危険な女子だった。


 知らないのにさすがについて来ないだろうし、泊まることも無いだろう。


「泊まり? その人の家にどうして湊さんが? あぁ、バイトの人です?」

「な、何で知ってるの?」

「情報開示されてますから。知らないのはさよりだけ……ですよ」


 全てお見通しな上でのやり取りを演じて見せたのか。


「と、泊まらないけど、送るだけ……かな」

「高洲と高洲じゃない妹も来るならいいよ?」

「良くないだろ……」

「その妹もバイトする?」

「へっ? バイト?」


 俺だけにじゃなく、まさかの追加募集とか、予想外過ぎる。 


 バイトと同時に引っ越し出来ると思っていたけど、即決しないから考えを変えたとか?


「湊さんがバイトすると、そこに住むことになるんですよね?」

「そうなる。妹もやる?」

「……考えます。とりあえず、湊さんと一緒にその家……お店に行かせてもらいますね」

「高洲、チャリの後ろに妹を乗せて付いて来て」

「ああ、まぁ……」


 みちるに好きとか嫌いとか、そういうのは感じていない。


 しかし姫ちゃんを連れて行くとか、それはどういう展開になるのだろうか。


 思わず寒気を感じてしまいそうになる。


「湊さんの腰に手を回して構いませんよね?」

「そうしないと危ないからね。それは構わないよ」

「――よかったです。さよりだけ帰して、本当に……よかった」

「……え?」

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