156.さよりさん、妄想するSS②
「あ、あぁぁぁ……あれは姫よね? ど、どうして、湊の所に……」
「池谷さん、覗き見はまずいんじゃないかな……? いや、俺が言えたことじゃないけど」
「あら、あなた、まだ近くにいたというのかしら? 鮫……さめなんとか」
「鮫島ね。高洲のダチだから、名前くらい覚えて欲しいんだけど」
「もういいわ、湊はわたくしがしっかりと観察……監視したいの。お願いだから、離れて頂けないかしら?」
「そうだね、下々は近づいてはならない……だっけ? じゃあ、ごゆっくり……俺もゆっくり観察させてもらうよ……池谷さんと高洲をね……」
湊にお昼を奢ってもらおうとしていたのに、どうしてさっさといなくなっていたかと思えば……すでに学食に来ていただなんてあんまりだわ。
教室でわたしに声をかけてくるモブ男たちは、どれもこれも下民ばかり。
湊のように、ハッキリと姿が見える男はいないと言ってよかったわ。
それなのに、『高洲』と聞いただけで会話を返してしまったのは痛すぎたわね。
「高洲ならすでに学食に行ったけど? えーと、池谷さんだよね。学食に行く?」
「あなた……どなただったかしら?」
「鮫島だよ。高洲のダチ」
「鮫……湊はどこ?」
「そこまで夢中なんだね。それなのに警戒対象じゃないとか、同情するよ」
何やらぶつくさと何かを話しかけて来たけれど、湊が学食に行ったということであれば、行くしか無いわ。
そ、それなのに、姫が……どうして、あんなことを……あの子はまだ湊のことを?
湊と一緒にいる得体の知れない女も気にはなるけれど、姫には気を付けなければいけないわ。
湊の手はどんな味がするの? あ、あとで湊に聞いてみたい……




