表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第2部第2章:彼女×カノジョ×かのじょ-after remain Story-

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

149/345

149.意味深な浅海のち、強制的に乗られる件。


 突然の浅海出現は色んな意味で、さよりがこの場にいなくて正解だと思ってしまった。


 慌てふためく優雨はまたしてもワーワーと騒いでいるが、浅海は気にも留めていないらしい。


 そもそも浅海が抱きしめて来る時は、大体が意味のある囁きをする時だと認識している。


『ワーワーワーワー! 湊くんがまたしてもハレンチだー!』


 そして優雨の叫びは、さより並に語彙力が乏しいので、放置でオーケーである。


「湊に会えて嬉しいよ」

「お、おおお俺もだぞ」

「体が震えて可哀想に……俺があの女子を叱ってやろうか?」


 もちろん、別の意味での震えなのは内緒にしておく。


「いや、そこまでしなくていい」

「湊は優しいね……変わらなくて安心する。でも……」


 鮫浜は近くにいるのだろうか? それとも雨降りの中で一人だけ姿を見せたとか……


「あ、浅海はどうしてここに?」

「……俺は湊に会いに」

「違うだろ? 本当は鮫浜の命令で様子を見に来たんだよな? そうだと言ってくれ」


 友達を疑うのは良くないが、鮫浜の護衛なのは本当だし、学園に残ったままなのは紛れもない。


「会いに来たのはマジだよ。まぁ、あゆさんが送り込んだ人間が、きちんと仕事をしているかを見に来ただけってところかな」

「や、やはり送り込まれていたのか……それも女子だと聞いたぞ」

「へー? それはチカという女がそう言っていた?」

「それも承知してるのか! その通りだけど、誰かまでは分からないらしい」


 男の娘姿の浅海にはかなり慣れていたはずなのに、思いきり抱き締めれば細身の腰がやばいことになりそうなくらい、浅海は細すぎる。


『湊くーん! と、美少女さん! 注目浴びちゃうー! 離れた方がいいよー?』


 空気すら読んでくれない優雨の大声が俺たちをハッとさせる。


 さすがの浅海も羞恥心をさらけ出すつもりはないのか、俺の体から離れた。


「優しいのは湊のいい所でもあるけど、程々にすべきかな……女も男も、ね。帰る前にこれだけはしておくよ」

「ん?」

「……ちゅ」

「ひえええええええ!?」

「湊、また会いに来るよ。それと、俺はもう護衛じゃない……じゃあね、湊」

 

 何だって? またも不意打ちな頬キスに意識がぶっ飛んでいたのに、意味深なことを言って消えるとか、勘弁してくれ。


 ツンツンツン……


「んだよ? 優雨」

「湊くんは美少女さんにキスをされまくる運命なの?」

「そんな運命あってたまるか!」

「えー? 優雨にキスされたくないの?」

「お前は美少女ではなく、危険な妹キャラだ」

「何だよ~! ボクをいじめたらおっかない人が湊くんに迫って来るんだぞ? 今のうちに謝ってよ!」

「はぁ? おっかない人? お前の兄か? どれだけ怖いのか、一度くらいは会ってみても……」


 いや駄目だ。何故に兄に会ってやらなければいけないのか、そこを良く考えて発言するべきだ。


秋晴しゅうせいは怖くないし、ただのへりくつ野郎だから! 今度会ってよね!」

「会う意味がないから断る! というか、お前にとっておっかない人ってのは誰だ? 会わないけど」

「その人はボクのようなか弱き女子にも容赦が無くて、すごく怖いんだぞ! 美少女さんにキスをされまくっている湊くんは、その人に怒られる必要があるよ」

「友達でも無い口ぶりで言われてもな。そんな奴がいたら、泣いて喜んでやるぞ! ほら、優雨! 今すぐおっかない人を、この場に呼んでくれ」


 浅海からのほっぺた不意打ちキスをされた衝撃。


 これを忘れさせてくれる優雨には、密かに感謝するが、容赦のない人からお叱りを受けれるもんなら受けてみたいものだ。


「あわわわわわ……」

「何だよ? 俺の顔を見て何を――」

「湊くん、ボクは帰るから……バ、バイバイバイ~」

「何だぁ? 逃げるように走り去るとか、何かいるのか?」


 こういう時は大抵、背後に恐ろしい形相で誰かがいるパターン。


 それに騙されるわけには行かない俺は、後ろを気にすることなく、チャリに飛び乗って走り去ることにした。


 誰も追いかけて来ている様子も無ければ、誰かがそこにいた気配も無い。


 俺を騙すとはいい度胸だ。後で叱ってやらねば……


 俺のチャリは改造をする前に戻してしまったこともあり、後ろに若干の重みを感じてしまうのはしょうがないと思っていた。


 しかし――そういう重みでは無かったと気付いた時には、腰に謎の手がかかっていた。


「後ろを見るんじゃねえぞ? そのまま指示通りに走りやがれ!」

「そ、そのお声は……あ、姐御でございますか?」

「だから何だ? あ?」

「い、いつから後ろに……?」

「お前が慌てて走り去ろうとした時にだ。そう簡単に逃げられると思ったか?」

「い、嫌だなぁ……というか、姐御は帰ったわけでは無かったんですね」

「お前があたしの下着を見たのは事実だからな。待ち伏せして、連れ帰るつもりだったが……お前はどこまで節操が無い野郎なんだ! そういう男は教育してやろうと思ったわけだ」


 なるほど、浅海のアレをばっちりと見られていたわけか。


 ついでに優雨にした土下座もきっと。


「みなとは、あたしの家で監……縄でくくりつけて、みっちり教育指導してやるからな?」

「それは怪しい指導方法ですか?」

「あぁ!? ざけたこと抜かしてんじゃねえ! とにかく、お前は今夜寝ることを許さねえ!」

「……言葉だけ聞いてれば、ワクワクしか出来ないんですけど、そうじゃないんですね?」

「ちっ、サカリ野郎が! あたしは真面目なんだ。誰かれ構わずキスなんかする野郎にさせてやるものかよ! とにかく、早く漕ぎやがれ! 濡れちまうだろうが!」

「で、ですよねぇ」


 これは思わぬご招待を受けてしまったようだ。まさか、姐御の家に強制的にお呼ばれコースかな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ