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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第2部第2章:彼女×カノジョ×かのじょ-after remain Story-

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147.さよりさん、妄想するSS①


「さっき姫ちゃんと会ったぞ? さよりは気付いていたんだよな?」

「そ、そうなの? わたくしは湊の背中しか見えていなかったのだけれど……」

「オマエもそうなのか……鮫島と同じナカマなのか。別の意味でタッグを組めそうだな」

「え、鮫……」

「ああ、同じクラスに鮫島っていう男のダチ(仮)がいる。そいつの名字が鮫島だ」

「ふ、ふーん……眼中に無いわね。下々過ぎる者の姿は、わたくしの視界には映ることは無いわ」

「あぁ、そうか。それは残念なことを聞いた」

「ふふん、その言葉でわたくしをキレさせようとしても無駄だわ! もうかれこれどれくらい聞かされたと……どれくらいだったかしら?」


 コイツは昼休みが残りわずかということを分かっているのかいないのか。


 しかしこうも真正面で向かい合わせに座るだけで、注目を浴びるとは予想していなかった。


 発言だけ聞けば最高に残念な奴なのに、腕を組んで悩んでいたり、首を傾げたり……いちいち美少女すぎる。


「そ、そうよ! そうだわ!」

「何だよ?」

「そう! 湊と初めて出会った時から聞かされた言葉だわ! 何てしつこい男なのかしらね」

「嫌うか?」

「それも卑怯な誘い文句にすぎなくってよ?」

「いや、お前……そのエセ令嬢言葉が自然に身について来たのは、努力の賜物ってやつか」

「何を言うかと思えば、本物なのよ? 湊も本物の庶民じゃない! わたくしは本物なの! 分かるわけないわよね? 下々ですもの」


 段々と腹が立って来たと同時に、時計を見るともうすぐ予鈴が鳴る時間だ。


 結局安いパンを食べるどころか、紙パックの一気飲みしか出来なかった。 


「さより、左手を出せ」

「まさかと思うけれど、どこかへ連れ去ってくれるとでもいうの?」

「そのまさかだ。そこに行けば間違いなく、注目を浴びまくるだろうな」

「そ、そんな……いつかそうなると思っていたのだけれど、こ、心の準備はこれっぽっちも出来ていないのよ?」


 色々と妄想を隠さずに言い始めたが、転校したてで堂々と午後の授業をさぼるわけにはいかない。


「ってことだ。さより、来い!」

「ひゃうううう!? は、早すぎるわ! え、待って、式場はそっちなの?」

「とにかく走れ! そして黙れ!」

「は、はい……あなた」


 随分と顔を赤くしているが、運動不足なのか?


 その割には息を切らせているのは俺だけなんだが。


「はぁはぁはぁはぁっ……はぁ~……ま、間に合った、か?」

「こ、ここが式場なの?」


 妄想ダダ洩れか。それは置いといて、教室がやけに静まっているが、黙読の時間とかか?


『……おい、みなと。さくらの授業をサボるとは、いい度胸してやがるじゃねえか? あ?』

「デ、デスヨネー」

「はぁふぅ……」

『あ? 何だこの女……みなと、お前まさか……」

「いやいやいや、滅相も無い! あ、あれです! 昼はダッシュするのが前の学園のルールでして」

『へぇ……? じゃあ、みなと。お前、明日からあたしと昼はダッシュな』

「え、いや、その……」

『とにかく、教室に入りやがれ! 言い訳はたっぷりと聞いてやるよ。放課後にな……』


 妄想しっぱなしのさよりは幸せそうな顔をしながら、どこかの世界へトリップしていた。


 放課後にさよりに付き合う用事があるのに、とりあえず姐御の説教を聞くしかなさそうだ。

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