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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第2部第2章:彼女×カノジョ×かのじょ-after remain Story-

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146.残念系美少女は妹想いらしい(ただし一方的) ③


 放課後はさよりに付き合うことにしているのに、それを察しているのか姫ちゃんが声をかけて来た。


 それもかつて、俺の所に妹派遣をして来たチカという女子と一緒に。


 姫ちゃんが何を考えているのかなんて俺には分からないが、鮫浜と行動をしていた時に、何かを学んだうえで独自に動き出したのかもしれない。


 俺をずっと想ってくれているのも、純粋な想いであることくらいは分かっている。


 そのつもりなのに、どうしても鮫浜の影響を受けているように思えて、素直に受け取れないわけで。


「昼を一緒に……それなんだけど、クラスの奴と食べる為に来てるんだよ。だから姫ちゃんさえ良ければ、同席でいいかな?」

「同席……ですか?」

「いや、ほらっ! 俺は転校してきたばかりで、男のダチがいないからね。空気だと思っていいから。ソイツには目当ての女子がいて、姫ちゃんが目の前にいても声はほとんどかけて来ないと思うんだ」


 何で必死に言い訳をしているんだろうか。


 姫ちゃんを怒らせる、泣かせるようなことをしてはいけないという、俺の防衛本能が何故か働いてしまうわけだが。


「――それは彼のことですか?」

「え? あー……間違いなく、あのストーカー紛いの奴だね」

「それなら構いません。そのまま彼の腕を引っ張って、席へ行きましょう」


 鮫島の奴は分かりやすい野郎で、優雨が近くにいるのか学食の出入り口付近で、何かを凝視していた。


「そこのス〇ーカー! 飯を食うぞ」

「えっ? え? 高洲じゃないか! ま、待ってたぞ。えう? この美少女は誰だ?」

「とにかく席を確保だ」


 構図としては女子が二人と男子が二人で、仲のよさげな昼飯時に見える。


 しかし姫ちゃんは俺しか見て来ないし、チカは何かを警戒しているかのようにキョロキョロしまくっているし、鮫島は何も言うまい。


「コイツは鮫島といって、別のクラスのとある女子に夢中な奴だから、気にしないでね」

「鮫島……?」


 名前に反応してすぐにチカの反応を窺う姫ちゃん。


 俺と同じ反応をしているとか、どれだけ警戒しているのか。


「違うよ。似た名前ではあるけど、そもそも彼女の側近に男は一人だけだからね。それも腕の立つ男。鮫島君だっけ? この子は普通の高校生くん」

「そ、そうなんだ」


 何だ、ただの変態でス〇ーカーなダチだったようだ。


「――湊さんも疑いを?」

「あぁ、うん。鮫の付く名はどうしてもね」

「そう、ですか。湊さんもわたしと同じ思いを……」


 変な所でシンパシーを感じて嬉しそうにするとか、この子は本当にアレだな。


 真っ白すぎる顔を赤らめてうつむいてしまったので、チカという女と話をしてみるか。


「チカ……は、何で姫ちゃんの傍にいるんだ? まさかと思うが、鮫浜の関係者がこの学校に紛れ込んでいるとでも?」

「いるでしょ。間違いなく。その目的は、お兄さんの監視と……姫ちゃんの監視」

「え? 俺はともかく姫ちゃんも? な、何で? というか、さよりは違うのか?」

「さより? あぁ、お姉さんのことか。彼女は鮫浜にとっての脅威じゃない。だから違うよ」


 さよりは俺と違って勝手に転校して来て付いて来たが、鮫浜にとっては何の問題にもなっていないのか。


「それで、関係者は誰だ?」

「女子であることは間違いないけど、分からないんだよね。私は鮫浜に雇われた派遣に過ぎなかったわけだし? そこまで内部を知ることは出来なくて」

「いや、でも、姫ちゃんに情報提供してるんだろ? 何で分からないんだよ」

「あまり言いたかないけど、鮫浜あゆは知られていい情報だけは簡単に公開する人なんだよね。だから、お兄さんがこの学校に来ることも事前に分かってた」


 姫ちゃんが学園入学をやめて、この学校に入学を決めたのは本当に直前のことだった。


 そうだとしても、その前から転校のことを知ったということは、鮫浜は俺と長く付き合う気が無かったということになる。


「湊さん、鮫浜が湊さんと本気で付き合うとお思いでしたか?」

「そ、そりゃあ、告白したからね」

「クスッ……さよりに告白してすぐに振った湊さんが、それを言うんですか?」

「うぐっ」


 手痛いダメージカウンターとか、半端ないなこの子は。


「そ、それに関しては、さよりに謝っているよ」

「謝るってことは、付き合う気があるんですか?」

「そ、それは何とも言えないけど、嫌いじゃないし、付き合いも長いからね……」

「わたしは……湊さんのこと、本気ですよ」

「分からないんだけど、どうして俺なのかな? 姫ちゃんなら、他にもイイヤツは沢山いるよね。俺は自分で言いたかないけど、声と背中しか取り柄が無いよ?」


 自分自身にカウンターとか泣ける。


「好きになったことは悪いことですか?」

「そうじゃなくてね……」

「――湊さん。鮫浜に気を付けてくださいね。それと、お気づきかもしれませんが、近くにさよりがいます。わたしはこれで失礼します」


 さよりが近くにとか、何で分かるのか。姫ちゃんは鮫浜並みにやばいな。


 やはり妹ちゃんは色々と気を抜けない子なのかもしれない。


 美人さん過ぎるのもあるし、鮫浜よりも行動力があり過ぎる。


 そして同席していたはずの鮫島はすでにいないし、優雨ごときにどれだけなのか。


「……はぁ。俺の背中はお前を捉えているんだが? そこにいるんだろ?」

「お前とは誰のことかしら? わ、わたくしにはきちんとした名前が備わっているのだけれど……?」


 このくだりは何百回過ぎるしうざくて面倒だけど、嫌じゃないのが俺の問題なのかもしれないな。 


「そこの美少女のことだ」

「存じ上げませんわね」

「じゃあいいや、またな!」

「ま、待ってよぉ! お、お昼を一緒に……」

「残り15分くらいなんだが?」

「そ、そそそそれでいいわ! は、早く、早く!」

「分かったよ、さより」

「ふふん、当然ね!」

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