表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第2部第1章:メモリーズリターン~カノジョになるにはまだ早い!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

137/345

137.土下座と男と友達と


 錯乱していたさよりを残し、嵐花なる年上女子に引っ張られながら教室に入ると、舎弟化はもはや確定だということが判明した。


「何だ……お前があたしの隣かよ。ってことは、その時点で、お前の運命は決まりきっていたってわけか」

「どんな運命ですかね?」


 答えなんて分かってはいたが、一応無駄な抵抗でとぼけていると年上女子さんは、俺の顔をぐいっと引き寄せて、ヘッドロックをして来た。


「ギブギブギブ!」

「痛くねえだろうが! あたしの顔を見ろ!」

「へっ? うおっと!? 顔というかオムネさんが近いっす」

「見たら絞めんぞこの野郎!」

「見ません」

「いや、見ろっつってんだろうが! 舐めてんのか!」


 中々注文が激しい人だ。見ようと思ったら、顔よりもオムネさんが近いから見ただけなのに……


「お前が変なことしたらどうなるか分かってんだろうな? なぁ、年下」

「もちろんですとも、年上さん」

「いい度胸してやがる。名前をきちんと憶えてやる! 名前を言え」

「えーと、浮間です」

「浮間ぁ? 本当か? 下の名前は?」


 はて、浮間の下の名前は何だったか。どんな奴だったかも覚えていないな。


「み、湊! 悪いけれど、あなたのことはわたくしが呼びやすいように決めなくては駄目だわ! さぁ、湊――あ、あなた、何をしているというのかしら!?」


 あぁ……コイツは空気を読まない、いや、読むことは不可能女子だったか。


「あん? 湊だぁ? お前、湊っていうのかよ……浮間ってのは名字か?」

「多分そうです」

「湊の名字は高洲に決まっているじゃない! う、浮間だなんて、そんな聞きたくも無い名前を言わないで頂戴!」

 

 さよりの前で『浮間』はタブーだった。偽名はもっとよく考えるべきだったが時すでに遅すぎた。


「たかすみなと……なるほどな。思っていたより切れ者か。それで、そこの女は彼女か?」

「いえいえいえ、違います!」

「わ、わたくしが湊の彼女ですって!? 違うわ! 将来を誓い合った伴――」

「どっちでもいい。湊はあたしのモンだ! もちろん、湊に選択権は存在しない。理解したか?」

「かしこまりました。さぁ、授業を受けますか」


 こんなやり取りで一日を終えたら楽なんだが、すでに担任が来ていて授業が始まっていた。


 もしかしなくても年上女子は、担任とダチみたいな関係で注意を受けない特別待遇かもしれない。


「湊はあたしのモン……ど、どういう意味なのかしら……」

「とにかく池谷も席に着け」


 さよりは優雨と遭遇した辺りから色々混乱しまくっていたが、そのうち元に戻ると思って放置した。


 隣の席に君臨しまくる年上女子改め、嵐花さんはその後は大人しく真面目に授業を受けていたので、あまり気にすることなく、そのまま放課後に突入していた。


「なぁ、そこのイケボ」


 どこからともなく男の声が聞こえて来る。


 しかしイケボと呼んでくる男でいい目にあったことが無いので、素直にシカトを決め込む。


「う……おっ!? な、なに?」


 シカトして教室を出て行こうとすると、俺の進行を妨げるかのようにして、土下座の男が見えている。


 教室に残っていた連中の心の声が聞こえて来るようだ。


 舎弟は、やはりソッチ側なのだと思われているに違いない。


「頼む! 俺とダチになってくれ!」

「な、何? いや、土下座やめろ。土下座をして俺の進行を邪魔するってだけで、友達にはなりたくないぞ」

「わ、分かった! 今すぐ立ち上がるから見捨てないでくれ!」

「やめろ! その発言は別の意味に聞こえてしまいそうでトラウマになる」


 どうしてこうも普通の状態で話しかけて来てくれないのか。


「わ、悪い。興奮でつい……」

「いや、それもやめて」


 どこからどう見ても、かつての『浮間』を思い出すチャラそうな男だ。


 しかしそんなにイケメンでもない(高洲湊視点)ので、話は聞いてあげることにした。


「で、俺になんか用か?」

「俺を男にしてくれ!」

「本当に殴りたい事案だぞ? そういうの興味ないんだが……ソッチ系か?」

「そ、そうじゃなくて、椿さんと仲いいんだろ? 俺もあの子と仲良くなりたい!」


 椿……? はて……あぁ、アレか。


「アレがいいのか? ボクっ娘だぞ?」

「アレがいいんだ! だが、椿さんには兄がいて簡単には近付けそうにないんだ! そこに来て、高洲だ。転校して来たばかりの高洲と仲良さげにしているところを見た。イケボで寄って来たんだろ?」

「さぁな」

「と、とにかく、俺は椿さんに近づきたい。高洲は何とも思っていない! だろ?」

「転校初日だしな。思うも何もよく分からんが、確かに興味は無いな」

「そこで取引と行こうじゃないか!」

「何の?」

「隣の席の栢森さんの情報だ。舎弟にされて困っているんだろ? 彼女の情報は他の誰よりも持っているし、知っている。少しでも知っておけばこの先、苦にならないはずだ」


 強制舎弟化は確かに納得が行かないが、取引にすらならない気がしないでもない。


「まぁいいけど、それならバイトの情報も教えてくれ。ダチになるんならな」

「バイト? あぁ、転校して前の所はやめたクチか。いいぞ!」

「じゃ、成立だな。それからイケボじゃなくて、高洲って呼んでくれ」

「分かった。俺のことは、鮫島って呼んでくれ! 鮫島さめじまりょうだ。よろしく!」

「あぁ、よろしく」


 もしや初めて男の友達が出来たのか? 純粋な形では無いけど……しかし。


 鮫島か……鮫浜に名字が似ているが、関係無いよな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ