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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第九章:闘う美少女たち

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121.下僕先輩→庶民先輩→高洲兄さん←今ココ


 何故かここにきて、学園の行事やら授業やらが慌ただしくなって来た感があるが、きっと今まで俺が美少女たちにかまけて来過ぎたせいだろう。そう思うことにした。


 それはそうと、今日のバイトは鮫浜が唯一出てくる日だったのに、彼女の姿は無く代わりに消えたはずのイケメンが復活していた。あぁ、幻の鮫浜……いや、あゆの可愛らしい姿と態度をもう一度見たかったのに、二度目のチャンスは与えられなかった。


「高洲君、鮫浜さんはやめたけど、彼が戻って来たから安心してホール入ってね」


「え、誰です?」


「やだなぁ、忘れちゃったの? イケメンの舟渡ふなと君だよ? ほら、爽やかな……」


 そういや、そんな裏イケメンがいたような。でも確か、あゆの肩に手を置いたってだけで闇に葬られてしまったんじゃなかったのか? 夏から丁度三ヶ月くらいは経ったけど、許されたのか?


「なぁ、シズ。俺を守ってくれ!」


「あ? 何で? あたしのキャラを勝手に改変すんなよ。てか、舟渡だっけか? あの男、いい奴だぜ」


 騙されてるぞ、シズ。あんな裏すぎるイケメンはいないぞ。爽やかでお優しいイケメンじゃなかったぞ? 人間、三ヶ月で劇的に変化したら苦労なんてないぞ……ってあれぇ?


「あっ! 高洲兄さんじゃないですか! お久しぶりです!」


「ハ、ハ、はは……はい?」


「僕ですよ! 舟渡とうやです。あ、とうやってお呼びくださいね」


「ど、どうも?」


「とうやですよ? 呼び捨てで構わないんで! それと僕を是非ぜひ、舎弟にしてくださいっ!」


 こ、怖いぞ。何で? もしや別の世界に旅立って、人格そのものを書き換えて来たのか? 気のせいかイケメンではあるけど、顔立ちがフツメンになっている気がしないでもないが、何事かな。


 舎弟って、俺はソッチ側じゃないんだけどな。これももしかして、あゆに何かしたからのことなのか? だとしたら、浅海はともかくとしても、あゆはソレが出来る人間ってことなんだよな。


 信じたくはないが、そうだとしたら全てにおいて辻褄が合う。だからと言って、今になって今以上の怖れを抱くとかにはならないけど。そんなことを悟られたら、きっと彼女は強硬手段に出てしまうだろうし。


「えーと、とうやくんに聞きたいことがあるんだけど」


「はいっ! 何ですか? 何でもお聞きください」


 もはや別人である。しかも純粋無垢な瞳ですよ? 明らかに裏がありまくりな人格はどこかに流されたのかな? もしくはそれらを一ミリでも俺に見せれば、即座に消されてしまうとか? ははは……笑えん。


「友達って聞いてるけど、浮間のことで……」


「あいつには気を付けてください。兄さんの恋人さんを狙ってます。奪うまで執拗な奴ですよ」


「恋人じゃないけど、気を付けるよ。奪うっていうのはどれくらい……?」


「全部。唇から、気持ち、全てですよ……そういう意味じゃ、俺よりタチが悪い……あ、いや、僕の独り言です」


 あぁ、うん。本質は変わらないのね。しかし本音を聞けた。あいつ、まださよりを諦めてないのか。あんな思いまでさせといて、それなのにあゆや浅海は浮間を放置かよ。どうにもその辺が許せないな。


 浅海もさよりとは分かち合えない姿勢を崩していないせいか、さよりと話している時は俺に近づいても来ないしな。それか、あゆにそう言われているのか。俺の頬にキスをしたことを相当キレたあゆだから、そのことを気にしているのかもだけど。


「……その兄さん呼びも、鮫浜の命令?」


「いえいえ、これは僕の意思ですよ。なので、僕は兄さんを守りますよ! もちろん、浮間から」


「そ、そうすか」


「ハイっす!」


 忠実な舎弟の誕生である。あゆのことを何か聞けたらと思っていたけど、それは恐らく舟渡の命にかかわることっぽいので聞かないでおく。その代わりでもないけど、浮間のことを聞けたのは幸いだった。


 難なくバイトを終えて、家に帰ると当然だが妹ちゃんが玄関で俺を出迎えてくれた。どうやらクローンでもないようだ。だとしても、俺の予想では似ているけど、本当の妹ではないんじゃないかなとさえ思い始めた。


 そしてもはや当たり前の添い寝である。添い寝の時間は、唯一のコミュニケーションタイムになった。所謂一つの本音タイム。俺と、鮫浜チカあるいは、あゆのことを知る人間だけの会話タイム。


「チカちゃんは学校の友達とは良好なの?」

「何ですか? わたしを妹じゃなくて友達にしたいんですか? それとも彼女候補に?」

「何でそう取るのかなぁ。そうじゃなくてね」

「……姫がいますよ? 彼女は姉たちと違って、気兼ねなく話せる友達。敵とかそんなのじゃないし」

「何で鮫花と池谷は敵なの?」

「……敵って思わないくらい、格下だけどね。池谷のモノを使ってやってるのが鮫浜だし……」


 なるほどな。池谷の社畜もとい、さよりの父親が鮫浜の為に働いているってことか。それは何とも、下請け的な感じか。それだと敵というより、格下とか下に見るよな。だから初期のあゆとさよりって、お互いにぎこちない感じがしたのだろうか。友達じゃないって言ってたし、ライバルは正解ではあるけど。


「……スー……スー――」


 添い寝の本音タイムは終了だ。それにしてもこんな素直ないい子が、あゆの妹とかマジで疑うレベル。やはり、俺はまだあゆの本性すらも見つけられていないってことなのだろうか。


 見えているのは彼女の闇というか、病みの部分だけを見ちゃってるだけだ。あゆは、さよりのように本当はもっと無邪気に笑う女の子かもしれない。それを知ったら俺はどっちを選ぶことになるんだろうな。

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