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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第八章:ダークネス エンジェル

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106.ダークネス ストリーム⑧


「ご注文はお決まりですか?」


「ええ、ダージリンを頂こうかしら。うふふ、店員さん……いえ、湊さんかしら?」


「かしこまりまし……あの? どなたさまですか?」


「八十島浅海の母ですの。覚えていらっしゃらないかしら? 一度お会いしましたけれど」


 おぅ……いつぞやのマダムではないか。本物のイケメン浅海の、男バージョン時にいた人か。それだけで話しかけられるほど俺は浅海にとって大事なダチなのだろうか。


「湊さんは彼女さんがいるとあの子から聞いておりますけれど、彼女さんとは仲良くしているのかしら? 鮫浜……あゆさん。あゆさんは元気にしておいでかしら?」


「いえ、鮫浜さんは彼女じゃないですが、元気だと思いますよ。僕の彼女は別の子……いえ、まだ彼女じゃないですね」


「別な子のお名前は?」


「それはさすがに……」


 個人情報だしな。それにしても、鮫浜が俺の彼女確定とかって浅海はどこまで忠実なんだか。


「湊さん。あの子を救って頂いてありがとう。これからも仲良くしてくださいね。もし彼女さんと上手く行かないようなら、浅海をお婿さんか、あゆさんをお嫁さんにしても構わないですわ」


「どちらもごめんなさい」


 それはおかしいだろ。確かについ最近、頬にキスされたけど。というか、以前はそんなことは絶対しなかった奴なのに、何で急に女子っぽいことをして来たんだろうな。男の娘なのは間違いないわけだし。


 まぁ、風呂の時にアソコを見たわけじゃないが……さよりと比べても比べてはいけないくらいに胸がアレだぞ? 本人も男だって言ってるしな。ん? お婿? あぁ、ですよね。俺の妄想乙。


 それとあゆさんをお嫁さん? あぁ、浅海の家とは近しい関係だったか。マダムに許可を貰っても本人次第だろ。よく分からん人だな。


「おい、湊! オーダー取って来い。さぼんじゃねえよ」


「悪い、行って来る」


 てな感じで平和すぎるバイトである。すごく久しぶりな気がしないでもないが、俺と二人だけで忙しいのに、しずはやけに嬉しそうだった。バイトするのがよほど楽しいのか。それは何よりだ。


「磯貝さんと高洲君、休憩行ってきていいよ」


「あ、はい」


「何飲む? あたしが奢るよ」


「じゃあ炭酸」


 通常は、同じホールの男女が同時に休憩になぞ行けないわけだが、某イケメンの奴らがいなくなったのを機に、岬先輩はまともな大人な方たちをホールに入れてくれた。おかげで同時に休憩に行くことが出来ている。


 しずとはメールでしか会話をしていなかっただけに、たぶん初めてまともに話をすることになる。俺には色々聞きたいことがあった。鮫浜に近い、いとこのしず。彼女が知っている範囲で聞いておきたかった。


「しず、色々聞いても大丈夫か?」


「あたしが答えられる範囲までなら」


「鮫浜はイトコで間違いないんだよな? ものすごい財力の令嬢で合ってるか?」


「あゆはイトコだな。で、あたしは庶民。あゆは……令嬢ってやつとは違う。計り知れない財力なのは違いないけどな。何をしているかはあたしも知らないな」


「庶民? あぁ、だからバイトしてるんだったか。ウチの学園は自称だろうが他称だろうが、そこそこの財力が必要なんだが、しずは転校して来たからそれは当てはまらないってやつか?」


「痛いとこつきやがるな。ウチは普通だよ。あゆとは全然比べられない。あゆは……」


 しずは庶民か。だからさよりにちょっかいだしたのか? 見下すようにお嬢様ぶってたしな。今はどうだろうな。さよりは多分、庶民に近いお嬢様だろうとは思う。それでも俺は気にしないけど。


「あんた、あゆと付き合う気があんの? それともあの池谷って女を選ぶのかよ?」


「それはまだ……ただ、さよりとはいい感じっていうか」


「ハッキリと決めないと、あゆはあんたを諦めないと思う。そのさよりってのと付き合うにしても、それでも籍でも入れない限りは厳しいかもな」


「何でそこまで俺のことを?」


「……さぁね。あゆじゃないと分からねえし。てか、最後に誰も選ばなかったらあたしにしときなよ。あたしは一途だし。同じ庶民だしな。そういうことだから、よろしく!」


「待った! 浅海のことを教えてくれ」


「浅海? あいつはあたしらよりも綺麗な顔立ちしてるから好きじゃないけど、湊と知り合わせてくれたいい奴だね。あの場にいた池谷さよりによくもまぁ、笑顔を向けられたものだよ。あんたがいたからかもしれないけどさ、いなかったらあの女はただじゃすまされなかったかもな」


「何? どういう意味だ?」


「まぁ、それを言うならほたるもそうだけどな。あたしとあんただけが部外者で、あの三人だけが当事者ってやつ。てか、この話は楽しくないしやめとく。それにほたるの奴、あたしに黙ってやめたみたいだし」


 やめた? ほたるって確か、屋内プールで出会ったロリっ子だったっけ。あんまり記憶に無いけど、友達でもなかったのか。


「やめたってのは学園をか?」


「他に何があるって? とにかくさ、浅海にしてもあゆにしても、深入りしない方がイイと思うぜ? あんたはいい奴なんだし、あたしと……その、もっと仲良くしてくれたら嬉しいからさ」


「お、おぅ」


「休憩終わり! ほら、気合入れろよ、湊」


「だな、サポートよろしくな、しず」


「おうよ!」


 鮫浜のことは結局大して分からないままだ。そうなるとやはり浅海しか知らないってことになるが、何で俺はこんなにも鮫浜のことを知りたいんだろうか。さよりが好きなのは変わらないが、同時期に出会った彼女たちのことをもっと知らないと、気が済まなくなっているということかもしれない。


 鮫浜とはもっとコミュニケーションを取らないと、何にも分からないまま終わりそうで嫌だ。明日はさよりの家に行くと約束しているからさすがに連絡は取らないけど、来週は鮫浜に積極的に話しかけてみるか。

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