102.とある闇天使さんの日常 SS⑨
高洲君にはこれまで積極的に接してきた。彼はとてもピュアで、奥手な男の子。私から攻めて行かないと恋ということに気づいてもくれないはず。私は人が嫌い。少し話をしただけで馴れ馴れしく近づいて来る奴こそ、自分のことしか考えていないからだ。
さよりがまだ転校してくる前から教室でずっと彼を見ていたけど、裏が無い子だって分かった。友達も作らず、増やそうともしない。浅海だけが友達だったらしいけど普段は話をしない。彼は私に似ている、そう思えた。彼になら私のことを話してもいいかもしれない。
そんな時、高洲家の隣にさよりが引っ越しをして来た。池谷の人間が私に逆らおうとしているのは、ミエミエだった。彼は私が見つけた男の子。私のモノを後から来て奪おうだなんてそんなの許さない。
「池谷さより? さよりって、中学は共学だよね? もしかして……」
「ええ、そうよ。だけれど、わたくしはお父様の仕事が上々になったことを機に、令嬢になるの。庶民だということを捨てるの。その時のわたくしの思い出も捨てるわ。女子のグループって、面倒すぎたわ。あんなことは二度とごめんだわ。いくら自分たちよりも綺麗だったからって、よってたかって……」
「その子のことも忘れたの?」
「そうね。覚えていないわ。わたくしはリーダーではなかったもの。あぁ、でも……途中で邪魔しに来た男の子がいたの。その男の子には感謝しているわ。途中で過ちを犯さずに済んだもの。わたくしは悪に染まるわけには行かないのよ。そうじゃなきゃお嬢様と呼ばれる資格なんてないじゃない?」
「そう、だね……さよりがそうならそれでいいんじゃない? でも、本人はずっと覚えているよ……きっとね」
さよりはグループにいただけ。手を下した本人じゃない。だけど、浅海にとってはそんなのは関係がないこと。彼の抱える気持ちは使える。浅海を使いつつ、高洲君に近づこう。
高洲君は過去を忘れ去ろうとするさよりには似合わない。浅海をそうさせた彼女は私の敵……敵だよ。




