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【書籍化コミカライズ】夢見る聖女は王子様の添い寝係に選ばれました  作者: 石丸める@「夢見る聖女」発売中
第五章

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16 すべての愛を王子様に

 オーケストラの演奏が始まって、私と王子様は向かい合って手を取りました。重厚な音楽が私たちを包み込み、会場の全員が二人のダンスに注目しました。


 王子様はいつものようにスマートにリードしてくださいます。私は身を委ねつつも、自分の愛が王子様に伝わりますようにと、思いを込めて踊りました。ステップを間違えようが、変なアレンジを加えようが、関係ありません。今できる、私のすべての愛を王子様に……。

 夢中で踊りながら王子様を見上げると、いつもは余裕のある気取ったバイオレットの瞳が、まるで乙女のように潤んでいました。感情を(こら)えるように唇を噛み締めていて、そのお顔もたいへん色っぽいです!


 ジャン!

 音楽が鳴りやんだと同時に得意げにポーズを決めた私は、感極まった王子様に抱き締められました! あら? ここは互いにポーズを決めるところですが、アレンジでしょうか?


「ルナ! なんて可愛いんだ!!」


 私は王子様のお声に我に返って真っ赤になって、観衆からドッと歓声が上がりました。

 英雄の登場から愛のダンスで婚約を発表した私たちは、皆様から大きな祝福をいただきました。こんなに沢山の方々から華やかにお祝いしていただけるとは、なんて幸せなことでしょうか。いつもは日陰にいる私がこんなに明るく輝けるのは、すべて王子様のおかげです。


「好きです。王子様」

「俺もだよ、ルナ」


 耳元で告白しあった私たちは赤面する顔を見合わせて、皆様に改めてお礼のご挨拶をしたのでした。


 それからは大変でした。

 王子様とご一緒に、ありとあらゆる王族やら他国の皇子やら、そうそうたる面々にご紹介していただいて。

 しかし外国語はすべて側近のクリフさんが通訳してくださるし、私がどんなに狼狽(うろたえ)てどもっても、皆様は賛辞を述べるばかりだし、私はだんだんと(ほが)らかになってきました! 王子様のおっしゃる通り、今夜は何でも許される権力を持っているようです!

 大勢の客人の中から男装の麗人が……オリビア様が駆け寄って来ました。


「ルナ! さっきのダンスは最高だったな! 見たことない振り付けだったけど、アレンジしたのかい? たいした度胸だ!」

「あ、いえ、あれは意図せず自然とああなってしまって……」


 ひええ……自分で思う以上に、自由に踊っていたようです。


「そうか。愛を描いた結果だな。百点満点の愛だった!」

「全部オリビア様のおかげです。学園でもずっと練習に付き合ってくださって」

「いやいや。ルナの実力が開花したのさ。次のダンスはぜひ私と……」


 オリビア様は申し出の最中に、横からグイと押されました。


「ルナ・マーリン令嬢。次は僕と踊ってよ。相談のお礼をしてくれてもいいだろ」


 えっ? ノアさんです!

 いつも美少年なノアさんですが、今日は煌びやかに正装なさっていて、美少年ぶりに拍車がかかっています。


「えっ、ちょ、え?」

「ほら、早く」


 私はノアさんにサッサと連れられて、ダンスの輪の中に入りました。

 王子様よりも強引な、でも軽やかな手つきで、ノアさんは私をエスコートなさいました。近距離で美少年の顔を見つめるのは緊張します。


「バッタのカーテシーに勝手なダンス……。さすがのルナ・マーリンだったな」


 ひえ! ノアさんは私の失態をよくご覧になっています。私が「あわあわ」していると、ノアさんは「ふん」と笑いました。


「でも堂々としていて、なかなか良かった」


 あら? お褒めいただけました!

 ノアさんはクルリと私を回転させると、受け止めてポーズを取りながら耳元でおっしゃいました。


「僕のアンディをよろしくね」


 そのままノアさんはスッと離れると、いつの間にか隣にいたクロードさんに私は引き渡されました。

 ノアさんの最後の言葉には、切ないくらいの王子様への愛がこもっていました。やはりノアさんとは王子様推しとして、同志でございます!

 私の手を取ったクロードさんは真顔でおっしゃいました。


「ルナ。俺とも踊ってほしい」

「はい、喜んで! お義兄様」


 クロードさんは満面の笑みになって、妹を思いやるようにエスコートしてくださいました。このように優しくて逞しいお義兄様が私にできるとは、なんたる光栄でしょうか。

 こちらを眺めている王子様が視界に入りますが、憮然としつつも晩餐会の無礼講として静観なさっているようです。


「俺とノアは学園を卒業したら、正式にアンディの近衛騎士となる。俺はルナのことも絶対に守るよ。二人が大好きだからな」


 クロードさんの素直な告白に、私は胸がジンとしました。


「クロードお義兄様……」


 そのまま流れるようにオリビア様に引き渡され、途端に情熱的なリズムに引き込まれました。いつの間にか観客に囲まれる中、ドラマチックなポーズで曲を終えた私に、ダンスの申し込みが殺到しました。ありとあらゆる貴族の方や他国の王族の方々や……私はこれまで成し遂げたことがないほどのお相手を熟すことになったのでした!

ラスト1話!明日で5章完結です!

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