12 オリビア様の夢 -1
連載再開しました!「オリビア様の夢」は全3話です。
辺境の村への旅は聖女様たちの治癒によって無事に任務を終えて、私たちアンディ王子殿下と騎士団の一行も、同じ道をたどって王宮に帰って参りました。
そうして、お休みしていた私の王子妃教育も再開されたのです。
辺境の旅の道中、ずっと一緒に行動していたオリビア様に仲良くしていただいて、あれこれ色々とあって私は本日…。オリビア様のご生家である侯爵家に参ったのでした。
侯爵家の馬車が宮廷にお迎えに来て、私は侍女のサラさんと一緒に豪邸の敷地内で降りました。
緑豊かな庭には薔薇が咲き乱れ、あちらこちらに芸術的な石像が立っています。真っ白な屋敷の壁に映えるローズレッドの屋根はオリビア様のイメージそのもので、このような華やかな侯爵邸に私は緊張してしまいます。
私は途中にある高度な細工の噴水に見惚れて立ち止まり、随分と時間を使ってしまいました。なかなか到着しない私に痺れを切らしたのか、屋敷から飛び出したオリビア様が迎えに来てくださいました。
「ルナ、よく来てくれたな! その噴水が気に入ったのか?」
「オリビア様。本日はお招きいただきましてありがとうございます」
私はバッタにならないように慎重にカーテシーをすると、オリビア様はそれに応えて胸に手を当てて、貴公子のようなご挨拶を見せてくださいました。なんてイケメン仕草でしょうか!
「ルナ・マーリン伯爵令嬢。我が侯爵家にようこそ。ふふ……。今日は私のためにこの可愛いドレスを着てくれたのかな。ねえ、そうだろう?」
はわわ。凛とした薔薇色の瞳が私を誘うように輝いています!
おっしゃる通り、今日はオリビア様にお会いするということで、なんとなくオリビア様の髪色であるマリーゴールドに似た色のドレスを選んでいました。
「あ、へ、はぁ。そ、そのようですね」
うわ、ダサい返事をしてしまいました! だってオリビア様があまりに素敵なので、同性なのにやっぱりドキドキしてしまうのです。
私は今更ながら、学園でオリビア様が女生徒たちに大人気な理由がよくわかりました。そこらの貴族男性が敵わないほどに、オリビア様は言動がイケメンなのです。
照れてメロメロになった私を、オリビア様は手を繋いで屋敷の中にエスコートしてくださいました。侍女のサラさんは黙って後ろからついて来ます。
このような豪邸に場違いな私が何故やって来たのかというと、王子妃教育の一環であるダンスのレッスンをオリビア様に指導してもらうためなのです。オリビア様は社交ダンスの名手であり、しかも男性役として踊るので、アンディ王子殿下の代役として練習相手を買って出てくださったのです。
案の定、アンディ王子殿下はオリビア様のご提案に渋りました。
先日の旅先でも、王子様は最後まで私がオリビア様に振り回されないよう監視されていたので、よほどの懸念があるようです。
しかし、王子様は先のエンバドル王国との戦いにおいて戦略と活躍が評価され、国防の会議に参加することが多くなったため、剣術部の活動も相まってご多忙なのです。だからなかなか上達しない私のダンスの練習に付き合う時間なぞ、ないのです!
婚約発表の場で恥をかきたくないという私の強い希望もあって、王子様は侯爵家にダンスを習いに行くことを許してくださいました。
ただし、サラさんというエリート侍女の監視付きです。
華やかな美術品に囲まれた真っ赤な廊下を進み、オリビア様に案内されてお邪魔したお部屋は……広くて豪華ですが、奇妙です!
「ひえ~! なんですか、このお部屋は!」
「ここは私の部屋だよ。どうぞくつろいでくれ!」
真っ白な壁を埋め尽くすのは、巨大な剣、長い剣、変な形の剣。それから盾も同じように、いろんな大きさの丸、三角、四角……といろんな形があって、武器だらけです! さらに鎧はお部屋の一角が混雑するほど、様々な造形のものが立っています。馬の武具まであるし、室内に騎士が沢山いるみたいで落ち着きません!
「うひゃあ……見たことない武器も沢山ありますね。これは槍? これは……蠅叩き?」
私は好奇心が勝って、つい気になる形の武器を手に取りました。
「これは肉叩きだ。こうやって使うんだよ」
敵の肉を叩く動作を見せてくださって、私は青ざめました。なんて怖い武器ですか!
「オリビア様は武器がお好きなのですね。こんなに多様な種類は初めて見ました」
「ああ。私は騎士の道具を集めるのが好きなんだ。好きなだけ見物してほしい」
私はお言葉に甘えて、様々なデザインの道具を見て回りました。私の夢にこのようなマニアックな武器が出ることは滅多にないですが、未知な物には好奇心が疼きます。
私がスケッチブックに剣の形を描いている間、オリビア様は興味深くご覧になっています。
「ルナは絵が上手だな。こうして覚えた物を夢の中で再現するのか。夢使いとはなんて面白い能力なんだ」
オリビア様は何かの使命に駆られたのか、クローゼットを開けると、中から大きな箱を取り出しました。
テーブルの上に置いてそれを開けると……中には予想外のものが入っていました!
いよいよコミカライズの連載がスタートしました!
『夢見る聖女は王子様の添い寝係に選ばれました』
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