表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化コミカライズ】夢見る聖女は王子様の添い寝係に選ばれました  作者: 石丸める@「夢見る聖女」発売中
第五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/91

5 王子様の煩悩

 そこにあったのは、もうもうとけむりを上げる湯溜まり……温泉です!


「お、温泉です! な、何故でしょうね!?」


 おかしいです。私は確かにお花畑を設定したはずなのです。まさかまた煩悩が湧いて、温泉に書き換えてしまったのでしょうか? なんて破廉恥な!


 私が狼狽しながら王子様を見上げると、王子様も動揺してらっしゃいました。いつもの王子様らしからぬ、たどたどしさです。


「ご、ごめん、ルナ……多分俺のせいだ」

「えっ!?」

「せっかくルナが花畑を作ってくれたのに……俺が煩悩で温泉に変えてしまった」


 王子様は正直な告白をしながら真っ赤になってらっしゃいますが、私は驚きと過大なる萌えで仰け反りました。


「王子様がこの温泉を構築したのですか!?」


 そういえば以前も、私の夢をジャックして教室を再現していましたね。さすが頭脳明晰な王子様です! でも王子様は、私の顔が見られないほど恥じております。


「よく見てみろよ……輪郭がぼやけているし、表現が曖昧だ。それに湯の色がピンクで変だ」


 私は吹き出しました。動揺しているわりに、王子様はご自分の再現力をよく観察してらっしゃいます。


「先ほどの温泉で私が驚かせてしまったせいで、王子様はゆっくり入れなかったのではないですか?」


 もしや温泉への未練かと思ったのですが、王子様はヤケになっているのか、首を振りました。


「違う。だって、ルナが温泉でいきなりあんな姿を見せるから……」


 私は先ほどの失態を思い出して「あわあわ」としました。あの湯浴み着の記憶は忘れてほしいです!

 王子様は逸らしていた目線を私に戻しました。ムクれてらっしゃいます。


「ルナと二人だけで温泉に入りたいって思っちゃったじゃないか。俺だって、男なんだぞ」


 ズギャーン! と、私は頭のてっぺんに衝撃を受けました。

 え、なんと? 王子様は私と一緒に温泉に……入りたい?

 もう前半の文だけで打ちのめされているのに、最後の言葉は受け止めきれない威力があります!


「あ、そ、そ、そっかぁ~……」


 余裕のないタメ語のお返事しかできず、私は子供みたいに自分の足を見つめました。多分、興奮してすごい顔になっているので、王子様を直視できません。あの半裸の記憶と今の台詞が合体して、とんでもない妄想が広がっています。このままいくと、夢使いの煩悩が暴走しそうです。そして自ら墓穴を掘りました。


「せ、せっかくなので、その、ピンクの温泉に入ってみましょうか?」


 言いながら王子様を見上げると、驚いて目を見開いてらっしゃいます。


「え、ほ、ほんとに?」


 珍しくどもった王子様の純真なお顔に私はとどめを刺されて、足下がグラつきました。岩場も温泉も深い森も揺れています。ピンクの温泉は茹だったように泡を噴き出しました。


「わ! ルナ!? 夢が崩壊する!」

「は、はいっ、すみません! リビドーの限界を超えました!」


 皆様ご存知かと思われますが、私ルナはリビドーの上昇……いわゆるエッチな気持ちになると、夢から覚めてしまうのです。自分から入浴のお誘いをしておいて、自爆するという挙動不審な夢になってしまいました。


 でも……なんて、なんて美味しい夢でしょう! 眠る前の王子様は冷静に私の緊張を解いてくださったのに、本心ではあのような煩悩を抱えていたなんて……可愛すぎます!



 夜が明けて目を覚ました私たちは、顔を見合わせて笑いました。

 はぁ。夢を見るたびに王子様が好きになってしまいます。


 と……。

 このように朝から甘々で舞い上がっている私は、この後大変なことが起きるとは、想像もできなかったのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ