表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化コミカライズ】夢見る聖女は王子様の添い寝係に選ばれました  作者: 石丸める@「夢見る聖女」発売中
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/91

【おまけ】明晰夢について

ルナはどうやって好きな夢を見ているのでしょう?

作中に出てくる明晰夢について、コリンナの質問にルナが答えるおまけのコーナーです。

 コリンナさんはほっぺを膨らませたまま、瞳を輝かせました。


「て……天国の雲……!」


 ふふふ。想像通りの反応です!

 私はコリンナさんにバートさんお手製のメレンゲのお菓子を食べてほしくて、お昼時間に学園の裏庭にお誘いしたのです。


「はぁ……流石の宮廷シェフでございますね……!」


 うっとりするコリンナさんに、私もご満悦です。お友達と一緒にごはんを食べて、おやつタイムまで楽しめるなんて。ずっと憧れていた、(ほが)らかな学園生活。青春でございます!


 コリンナさんはメレンゲを食べながら、周囲を見回しました。


「ここは誰もいなくて落ち着きますね……。あの、せっかく二人きりなので、ルナさんにお聞きしたいことがあるのですが」

「おや。何でしょう?」

「その……夢使いの聖女は、好きな夢を見られるのですよね?」

「はい。明晰夢のことですね?」

「明晰夢とは……いったい?」

「夢を自分の好きなようにコントロールして、展開できることですよ。私の場合は眠る前に妄想した内容がそのまま夢になります」


 私が説明すると、コリンナさんは「ほえ~っ」と感心しました。


「夢使いってすごい能力なんですね!」

「いえいえ、コリンナさん。明晰夢というのは、訓練すれば誰でもできるようになりますよ?」

「えっ、本当ですか……!?」

「はい。眠った後に夢を見たら、〝これは夢だ〟って夢の中で自覚するのです」


 コリンナさんはキョトンとしました。


「えっ……? それだけ?」

「もちろん、一回ではうまくいかないと思いますが、あきらめずに何度もやってみるんです。それこそ、二度寝、三度寝して」

「ほほう……」


 コリンナさんは企むようなお顔をなさいました。どうやら明晰夢に興味があるようです。私は幼い頃から(やしな)った明晰夢について、さらに説明しました。


「最初は夢だと気づけなくて悪夢に翻弄(ほんろう)されたり、意味のわからない夢を見たり。だけど〝夢だ〟と気づけた時は明晰夢のチャンスです! 自分は空を飛べると信じれば、本当に空が飛べるのです」

「え~っ……そんな簡単に?」

「だって夢ですから。空も飛べるし、好きな場所に行けるし、したい格好だってできるのです」


 コリンナさんはゴクリと喉を鳴らしました。


「じゃあ……明晰夢を習得したら、一晩中、何時間も好きな夢が見られるのですね?」


 私は「あはは」と笑って首を振りました。


「いえいえ。睡眠には浅い眠りと深い眠りがあって、それを波のように繰り返すのだそうです。睡眠を研究した書物によると、夢というのは浅い眠りの時に見ることが多く、それは短い時間の連続なのですよ」

「じゃあ、明晰夢ってわりと短いのですね……」

「はい。だって、疲れを癒すための睡眠ですから、何時間も明晰夢を見ていたら疲れてしまいます」

「確かに……」

「私は浅い睡眠時に見た明晰夢を、次の波で続きを再開したり、また別の明晰夢を見たりするのです」

「え、えええ、すごい……! やりたい放題!」


 コリンナさんは興奮して立ち上がりました。


「これも訓練を重ねてできるようになりましたが、慣れれば誰でもできますよ」

「わ、私、訓練したいです! 明晰夢を見たいです!」


 コリンナさんの力強い宣言に、私はちょっと心配になりました。随分と力が入っているようなので。


「あの。コリンナさん? 明晰夢は誰でも見られるとはいえ、あまり一生懸命になると弊害(へいがい)もあるというか……」


 コリンナさんは急に不安顔になって、座り直しました。


「ど……どんな害があるのですか?」

「二度寝、三度寝とするうちに寝過ぎたり、睡眠中に何度も覚醒して寝不足になったり。はたまた、夢のことばかり考えて現実と夢がゴッチャになると厄介(やっかい)ですね」

「ひえっ、それは困りますね……」

「だから気長に、一つだけ好きな夢が見られたらいいな、って気持ちでチャレンジするといいです」


 コリンナさんは勢いを落ち着かせて「なるほど」と頷きました。そしてウズウズしたお顔になると、さらに質問を続けました。


「あの……ルナさんはアンディ王子殿下と、どのような夢を見てらっしゃるのですか?」


 私は飲んでいたお茶を「ぶほっ」と咳き込みました。


「そ、それは、夢使いの聖女の守秘義務ですので! 秘密ですよ!」


 コリンナさんはペロリと舌を出しました。


「すみません……どのようなラブラブな夢なのかと気になって……」

「ラ、ラブラブって……」


 私は王子様といつも一緒に見る甘い夢を思い出して、いやらしくニヤけてしまいました。

 コリンナさんは「はあ~」と溜息を吐きました。


「それにしても、素人の私が明晰夢が見られるようになるには、随分と時間がかかりそうですね……」

「あの。コリンナさんはどんな夢を見たいのですか?」


 私の質問に、コリンナさんは頬を染めました。


「そ、それは……お恥ずかしい内容で……いくらお友達のルナさんでも、言えません……」


 お友達のルナさん、という言葉に私はグッと気分が上がりました! コリンナさんは私をお友達と認めてくださるのですね? 私は嬉しさのあまり、前のめりになりました。


「コリンナさん。夢使いの聖女の力とは、明晰夢で好き放題するだけじゃないですよ?」

「え……?」

「好きな夢を、手を繋いだ相手と一緒に見ることができますから」


 コリンナさんはハッとしました。


「そっか……アンディ王子殿下と同じ夢を見てらっしゃるのですものね?」


 私が手を差し出すと、コリンナさんはさらに目を見開きました。


「え、まさか……」

「午後の授業まで十五分ありますから、一緒にお昼寝しましょうか」

「え、ええー!? 夢使いの貴重な力を、私なんかに使って良いのですか!?」

「だって、コリンナさんはお友達じゃないですか」


 私の言葉に、コリンナさんは満面の笑みを輝かせました。


 学園の裏庭の。暖かな芝生の上で。

 私とコリンナさんは、手を繋いで仰向けになりました。

 恥ずかしくて言えない、とおっしゃっていたコリンナさんの見たい夢ですが、夢を共有するなら聞かねばなりません。コリンナさんは赤面しながら教えてくださいました。


「その……私の父が昔、私にプレゼントしてくれた本なのですが……」


 はい。コリンナさんのお父様といえば、選書に癖がある司書のコナーさんです。


「筋肉隆々(りゅうりゅう)の主人公が、棍棒(こんぼう)を使って山賊どもを打ちのめすのです。一振りで山が吹き飛ぶほど強いヒーローで……」


 へっ? なんだか想像していた内容と違いました。コリンナさんのことだから、三強騎士様とかおっしゃるかと思ったら……。


「それで私……一度でいいから、マッチョな大男になって活躍してみたくて……」


 ぐっ、いけません。私はせり上がる笑いを必死で堪えました。人の見たい夢を笑ってはいけません! 夢使いの、名にかけて!


「な、なるほど~、マッチョなコリンナさんですか」

「いえ、完全なる大男でお願いします」


 コリンナさんのお強いリクエストに、私はこだわりを感じて何だか嬉しくなりました。


「わかりました。今日はひとまず、大男になって棍棒を振り回しましょう」


 コリンナさんは仰向けのまま、笑顔でこちらを向きました。


「あの、それで、ルナさんには小さなお猿さんを演じてほしくて……」

「へっ?」

「大男の相棒は小さなお猿さんなのです……すばしこくって可愛いけど、これまた強いのです」


 私の中でイメージが増幅して、物語の世界が広がっていきました。コナーさんが選ぶ本ですから、よほど面白いのでしょうね。


「コリンナさん。今度その本を貸してくださいませんか。私も読みたいです」

「ええ、もちろん……!」


 私とコリンナさんは微笑みあいました。

 お友達と夢を。物語を共有する。なんて素敵なんでしょう。

 私は残り少ないお昼時間を大切に使うために、コリンナさんの意識を引っ張りながら、速攻で寝落ちしました。 


「ふごっ……」


 それで、コリンナさんがどのような大男になり、私がどんなお猿さんになったかって?

 それは秘密です。

 だって、夢使いの聖女の、守秘義務ですから!

第三章はこれで完結です!ありがとうございました!

物語は少しお休みを挟んで4章に続きます。「ブックマークに追加」を押してお待ちくださいね。少しでもお楽しみいただけましたら、★★★★★印のボタンで評価をお願いできれば幸いです!

そしていよいよ、今作の書籍が発売されました!

とっても可愛い表紙と挿絵なので、本屋さんで見つけてくださいね。

『夢見る聖女は王子様の添い寝係に選ばれました』


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ