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【書籍化コミカライズ】夢見る聖女は王子様の添い寝係に選ばれました  作者: 石丸める@「夢見る聖女」発売中
第二章

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【閑話】輪っかの夢(前編)

閑話第2弾はムフフ……。

ルナと王子様の"特別な夢"をお楽しみください!

 遅ればせながら。

 今夜はアンディ王子殿下のお誕生日を盛大にお祝いするために、王子様を思いきりファンタジーな夢にご招待しました!


 私はお姫様のドレスを。王子様はお伽噺(とぎばなし)に出てくるような王子様然とした装いで。

 猛スピードで、飛ぶ雲に乗っています!


「きゃはははは!」

「お、おい、ルナ! 飛ばしすぎじゃないか!?」


 おっと。いけません。王子様を楽しませるはずが、自分がはしゃいでしまいました。

 雲のスピードを落として、私は前方を指しました。目前にはピンクと水色が混ざった夢色の空が広がり、星々の下に大きな雲が島のように浮かんでいます。


「王子様、あそこが終点です!」


 小さな雲から降りて大きな雲の上に立つと、王子様は唖然と周囲を見回しました。

 そこには雲でできた巨大なテディベア、うさぎ、ポニーやキリンが飾られていたのです。


「どうですか!? 可愛いものをいっぱい作ってみました! 恐竜もありますよ!?」


 王子様はお口を開けたまま、しばらく雲の広場を見学して戻って来ました。


「ルナ。まるで幼稚園みたいな……素敵なお祝いをありがとう」

「豪雪の国では雪まつりというのがあって、雪でいろんな像を作るんです! それをヒントに、雲で真似してみました! ほら、ゾウさんのすべり台も!」


 王子様の肩は少し揺れていて、「クックック」と笑いを(こら)えているように見えます。


「ルナには俺が子供の姿に見えてるのかな?」


 王子様の呟きに、私は改めてそのお姿を確認しました。

 お伽噺の王族のような衣装は、私が遠い雪国の民族衣装の図録から再現しました。立派な十八歳になられた王子様に美しい銀色のファーと夜空色の大人っぽいベルベットがしっくりとお似合いで……。


「とっても色っぽいです!」


 王子様は絶妙な笑みを(たた)えて私の前に歩み寄りました。

 自分よりもうんと背が高い王子様を仰け反るように見上げます。

 あ、大人でらっしゃる。しかも色っぽいだけでなく、剣術を(たしな)んでらっしゃるせいか、細身ながら騎士のような逞しさも感じます。

 私は王子様に対して急に男性を意識してしまい、真っ赤になりました。

 え? この方が、私の婚約者になるお方? このあまりに尊い王子様が??

 現実を思い出して「あうあう」とオットセイになった私に、王子様はとびきり優しい笑顔で、そして決め台詞のようなお声で私の名を呼んだのです。


「ルナ」


 いつも呼ばれている名前。だけどその響きには心というか、愛……というか。温かさが籠っていて、私は何か特別なことが起こる予感でいっぱいになりました。

 王子様のバイオレットの瞳にはピンクと水色の空色が混ざって映り、星々が輝いています。なんて美しい光景でしょうか。

 私はうっとりと見惚れていましたが……突然、王子様の後ろにおかしな物を見つけてしまいました!


「あっ!? あれは何ですか!?」


 私が指す方向を、王子様も振り返りました。

 背後にあるのは、ピンクと水色の空。だけどまるで月のように、大きな金色の輪っかが宙に浮かんでいたのです。

 はて? 私は輪っかを夢に登場させた覚えはありません。


「あの輪っかは何でしょうね? キラキラと光って綺麗ですが……」


 言いながら王子様のお顔を見上げると、あら? 見たことのないお顔をしてらっしゃいます! 真っ赤になってお口に手を当てて、瞳が潤んでいるではないですか!


「王子様? どうされたのです!?」


 私がお顔を覗き込むと、王子様は反対側に(そむ)けます。


「い、いや、何でもない」

「何でもなくないですよ、様子が変です! もしかして、あの金色の輪っかが怖いのですか!?」


 私はもしやと思ってもう一度、空中の輪っかを見上げました。王子様を狙う新たな何かが、夢に侵入したのかもしれません!

 私が王子様を守ろうと毅然(きぜん)と前に出ると、王子様は慌てて私の腕を掴んだのでした。


「ち、違うんだ、ルナ!」

謎の輪っかの正体とは??

後編へ続く…!

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