第10話　［朝から修羅場］

「……とも、……ろ……。二人とも起きろォォオオ！！」

「うわぁっ！？」

　僕は誰かの大声で目を覚ました。

　声がした方を向くと、吹雪が般若のように怖い顔で僕を見ていた。

「ど、どどどどうしたの、吹雪……」

「どうもこうも！　なんでなーくんは妹と一緒に寝てるの！！」

「え？」

　隣を見ると、華が僕の腕に抱きつきながらすやすやと眠っていた。

「わっ、華！？　なんで僕のベッドに？」

「んぁ〜〜。お兄ちゃんおはよー」

　欠伸をしながらぐいーっと伸びをする華。

「おはよぉ」

「うん、おはよう。それでなんで華は僕のベッドに？」

「え？　えぇっとぉ……」

　はっ……もしかしたら昨日のことを気にしていたのかもしれない。

「華、僕はもう大丈夫だよ。頭も打たなかったし。でも心配してくれありがとう」

「ん、んん〜〜♪」

「ぐぬぬぬ……。なーくんから撫でられるなんてなんて羨ま案件……」

　すると突然、僕と華の間に吹雪が割り込んできた。

「なっ、何するですか吹雪さん！」

「これ以上私の目の前でいちゃつくなら、私も混ぜてもらうわ！」

「こんのぉお！」

「…………熱いよぉ」

　僕は今両腕に抱きつかれている状態なので、どんどんと体温が上がっていく。

「だいたい！　もうそろそろ妹と寝るなんてダメよ！」

「別に何歳になってもお兄ちゃんと一緒に寝ても勝手じゃないですかぁ！？」

「いいやダメよ！！」

「ダメじゃないです！！」

　二人がぎゃあぎゃあと騒いでいると、ドアがゆっくりと音を立てながら開き、お母さんが覗いてきた。

「朝からうるさいわよ〜……」

　いつもは糸目で開いていない目が開いており、お母さんの鋭い眼光が僕たちを射抜いていた。

「「「は……はい……」」」

　一気に肝が冷えて、二人の喧嘩も同時に収まった。