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王都イショサ……今なんつったお前っ!?

「お主……サーボとか言ったか、一体何を考えておるのだ?」


「勇者としてただ人々を救うことだけを……ほらムートン君頭を下げようねぇ」


「めぇええ……」


 俺の言葉を理解してるのか、膝をまげて顔を床にくっつけるムートン君。


 本当にいい子だ、他の言うことを聞かない弟子と違って可愛くて仕方ない。


 だからご褒美になでなでしてあげることにした。


「めぇええ」


「ふふ、気持ちいいかいムートン君……ここがいいのかなぁ……」


「な、なにをしておるのかっ!? 王の御前でっ!?」


「さ、サーボ様ぁ……さ、流石に少し控えようよぉ……」


 カノちゃんがひれ伏したまま俺を引っ張る。


「分かってるって……ちょっとだけ手を離すけど我慢してねムートン君」


「めぇえええ」


「お利口さんだなぁ、よぉし後でたっぷり可愛がってあげるからねぇ」


「うぅ……私たちにはそんなことしないくせにぃ……サーボ様の意地悪ぅ……」


「全くだ……どうせなら私に首輪をつけて身体を撫でてくだされば良いのに……」


(うるせぇ……お前らみたいな危険生物に手を出せるかよ……食いちぎられるわ……)


 それに対してムートン君の穏やかな事、その顔を見つめているだけで心が安らいでくる。


「よしよし……それで何のお話でしたでしょうか?」


「勇者候補としての心構えを尋ねたかったのだが……もうよいわ」


「既に話は耳に入っておりますぞ……勇者の里で候補者に選ばれるために他の全ての者を動けなくしたとか……」


「領内の村に魔物の脅威から守るためと称して自らを称賛させるために弾圧して回り、被害を出しておることも聞いておる」


「これで本当に勇者を名乗るつもりだったのですかあなた方は……我々を舐めているのですかっ!?」


(うわぁ……物凄く誤解されてるぅ……)


 何やら頭が痛くなってくる……ムートン君を撫でて癒そう。


「挙句の果てに王座の間に魔物を連れ込み、我らの眼前で破廉恥な振る舞いを見せつけ……これらの愚行が許されると思っておったのか?」


「魔物じゃない、仲間ですっ!! ムートン君は俺たちの大事な仲間っ!!」


「ですがしょせんは獣でしょうっ!! 王座の間が汚れ……ひぃっ!? え、衛兵っ!?」


 仲間を侮辱しようとした大臣を殺気を込めて睨みつけてやると、奴は怯え切った様子で衛兵を呼び出した。


(ムートン君を馬鹿にするどころか刃まで向けるなんて……許せんっ!!)


 俺は無礼者どもを黙らせようと剣に手をかけようとした。


「サーボ様っ!? そ、それは不味いってばっ!?」


「放してくれカノちゃん、俺は仲間を侮辱されて許せるほど心が広くないんだ」


「し、しかし王様の御前で暴れるのはいくら何でも……」


「誰が相手でも関係ないんだよテキナさん……俺は仲間を守るためなら誰が相手でも戦うっ!!」


 絆を守るためなら何でもする、それが俺の出した結論だ。


 きっとこれこそが勇者としてふさわしい立ち振る舞いに違いない。


「さあかかってこい、お前らに勇者の力を見せつけてくれるわぁああああっ!!」


「さ、サーボ様が壊れたぁあああっ!! し、シヨちゃんどうしようっ!?」


「……やるなら徹底的に、証拠も残さないよう丸ごと消滅させましょう……そうすればあとはシヨが丸め込んでこの国ごと……」


「し、シヨよ……本当にそれでいいのかっ!?」


「え、ええい本性を現したかっ!? 構わぬ、どうせ彼らは勇者コンテスト優勝者リストに名前が載っていない者達だっ!! 大した実力は無いに違いないっ!! 倒してしまえぇっ!!」


 王様の号令を受けて衛兵たちが群れ成して襲ってくる……が、次の瞬間には全員が倒れ伏していた。


 カノちゃんが風のように彼らの合間を縫って通り抜け、気絶させたようだ。


「サーボ様に刃を向けるのは許さないよ……それはそれとして、謝っておこうよサーボ様ぁ」


「よくやったカノちゃんっ!! 残るはあの二人だけだっ!!」


「さ、サーボ様っ!? 本当に正気に戻ってくださいっ!!」


「俺は正気だっ!! 覚悟し……っ!?」


「め、めぇええ……」


 王様と大臣を排除しようとした俺の服の袖に食いついて止めるムートン君。

 

 見ればその瞳は悲しみに濡れている。


「む、ムートン君どうしたって言うんだいっ!?」


「サーボ様が暴走してて見てられなかったんだと思いますよぉ……落ち着いてほしいんですよきっとぉ」


「めぇええ」


 そうだと言わんばかりに首を縦に振るムートン君。


 こんな健気な姿を見せられて、これ以上暴れるわけにはいかない。


「大事な仲間たちがそう言うなら仕方ない、この場は収めようじゃないか」


「……僕たちが何を言っても聞いてくれなかったくせにぃ」


「露骨ですよサーボ様……私たちのことももう少し意識してください」


(うるせぇ、いつも俺の言うこと聞かねぇのお前らだろうが……)


「まあとにかくとしてぇ、シヨたちの実力はわかってくださったと思いますぅ……ですから勇者許可証の発行を早めにお願いしますねぇ」


「っ!? き、貴様らこれほどのことをしでかしておいてまだ勇者を名乗るつもりかっ!?」


「あららぁ、まだ認められませんかぁ……じゃあもう少し実力をアピールしたほうがいいですかねぇ~」


 シヨちゃんが俺に頷きかけるのを見て、王様と大臣は悔しそうにしながらも口を動かした。


「くぅ……わ、わかった……発行の準備にかかるからしばし宿で待つがよい……終わり次第声をかけようぞ」


「お願いしますねぇ……じゃあ一旦行きましょうか皆さん」


「出来るだけ早く人々を救いに行きたいので、あまり時間をかけないでくださいね」


「きょ、今日中に何とか発行いたす……だからお主らも下手な動きをする出ないぞ」


 王様の言葉に頷き返しながら、俺たちは王宮を後にした。


 番兵たちが怯えた視線で見送ってくる。


(弟子はともかく俺はそこまで危険人物じゃないんだけどなぁ……)


「はぁ……も、もうサーボ様ったら僕びっくりしちゃいましたよっ!!」


「まさかあそこまで傍若無人にふるまうなんて……流石のシヨもびっくりですよぉ……」


「全くサーボ様は我々とは比べ物にならぬ思考をお持ちだ……このテキナ、何度目になるかわからないゾクゾクと高揚……ハラハラしてしまいましたよ」


「めぇえええ」


 何故か皆して俺を呆れたように見つめてくる……いやテキナさんだけどこか艶っぽい視線だ。


(なにこの雰囲気……俺が悪いみたいじゃねぇか……)


 仲間をかばっただけだというのに酷い話だ。


「とにかく王様の言う通り宿で時間を潰そうじゃないか」


「そうだねぇ……宿屋で僕と同じ部屋で同じベッドで同じ布団にくるまって肌と肌を合わせてくっつけてついに僕とサーボ様が結ばれるんだねやっとだよずっと待ってたんださあ早く行こう早く今すぐ早く……」


「えへへ、じゃあお金を節約するためにもシヨと同じ部屋で寝ましょうねぇ……もちろんサーボ様の疲れをとれるようシヨなりに一生懸命マッサージして……うふふ……ちゃぁんとシヨしか見えないようにしちゃいますからねぇ……」


「サーボ様、眠る際は是非とも私の身体を寝具代わりにしてくださいませ……何でしたらそれ以上も……ね、寝息とかが邪魔にならぬよう口枷や目隠しをして……も、もちろん寝具ですので好きなように身体を弄び……もみほぐして構いませんので……」


「……ムートン君、一緒に寝ようなぁ」


「めぇええ?」


 可愛らしく首をかしげるムートン君に抱き着く。


(やっぱりこの子だけが癒しだわぁ……ずっとこうしていたいよぉ……)


 もちろんそんなことが許されるはずもなく、俺はムートン君に抱き着いたまま三弟子に引きずられていくのだった。


「さあベッドだよベッドほらほら服を脱いで早く早く早くぅうううっ!!」


「サーボ様の裸……し、シヨはドキドキしちゃいますぅ……この鞭でちゃんと跡がつくかなぁ……」


「つ、ついにサーボ様の寝具として私は……ああ、なんと破廉恥な……くぅ……心臓が破裂しそうだ……」


「めぇええ? めぇええ……」


「ありがとうムートン君、心配してくれて嬉しいよ……」


 目を血走らせている三弟子に背中を向けて、俺はムートン君の背中を撫で続けた。


「ほら早くぅ……いつまでそうして……っ!?」


「全くサーボ様はいつまで抵抗する気……カノさん?」


「さ、サーボ様……いい加減に覚悟を決めて……カノ?」


「……敵襲かい?」


「うん……しかも今までのとは比べ物にならないぐらい物凄く強い……それに速いっ!!」


 カノちゃんの感覚は疑う余地もない。


 俺たちは即座に戦闘態勢に移る。


 果たして時を置かずに激しい物音が聞こえてきたかと思うと、勢いよくドアが開かれた。


「王様に逆らう反逆者とは……さ、サーボ先生っ!?」


「王宮で暴れた狼藉者め、覚悟……サーボ先生っ!?」


「カーマ殿っ!? セーヌ殿っ!?」


「なぁんだ……道理で妙に隙の無い足取りだと思ったよ」


 入ってきたのはカーマ殿とセーヌ殿だった。


(そりゃあ今までの敵とは比べ物にならんわ……というか何で俺たちが敵みたいな勢いで乗り込んできた?)


「す、すみませんっ!? まさかサーボ先生がいらっしゃるとは思わず剣を向けるような不敬な真似をしてしまいましたっ!!」


「ああ、何ということか……この上は腹を切ってお詫びしたい所存でございますっ!!」


「いやいいから……それよりどうして俺たちを敵だと……そもそもどうしてこの場所に?」


「王都に居るってことはぁ……村は見て回り終わったんですよねぇ……それで私たちを探して王宮に向かって王様たちに頼まれたってところですよねぇ?」


 シヨちゃんの推測に二人は素直に首を縦に振った。


「シヨ殿の言う通り、拙者らは村を回り今にも襲い掛からんとしていた魔物たちを退治したのだ」


「女の姿でこっちを誘惑してくる魔物だとか、風と一体化して攫って来ようとする魔物とか……まあサーボ先生の下で修業した俺たちの敵じゃなかったですよ」


(人間に化けて誘惑してくる魔物……それはちょいと厄介そうだなぁ……)


「女に化けてたのによく気づけたねぇ……何か見分けることでもあったのかな?」


「見分けるも何も無駄に胸はデカい上に、出会ったばかりの男である俺を誘惑してきたんですよ……そんなのに引っかかる間抜けは居ませんよ」


 セーヌ殿が胸を張って自慢している。


(確かにそれじゃあモロバレだなぁ……魔王軍って案外間抜けなのか?)


「拙者が退治した風の魔物は何やら人間に絡みつき異空間に監禁してくるのでしたが……その空間ごと吹き飛ばしてしまえばそれでお終いであったよ」


 カーマ殿も自慢げに語ってくる。


(本当に魔王軍ってのは大したことないんだなぁ……何かもっと狡猾でやりづらい相手だと思い込んでたけどなぁ……)


 これなら俺たちならいくらでも手分けして殲滅していけそうだ。


「ただ、その……申し訳ないのですが……拙者が異空間から脱する際に放った魔法の一部が村に当たり……魔物を見ていない村人は拙者を……さらには指導者を攻め立ててきて……つい一暴れしてしまい……」


「お、俺の方も……魔物が巨大な蜘蛛になった際に飛ばした糸が村に当たって……やっぱり出てきた村人が見る前に退治してしまったので……それで俺と先生を侮辱されて……ついカッとなって……」


(おかしいなぁ、魔物から助け出した村々が感謝するどころか俺たちを非難する流れになってるぞぉ……) 


 こんな話が王様の耳に入ったら今以上に面倒なことになりそうだ。


「まあまあ構いませんよぉ、どうせサーボ様の偉大さを知らしめるために一度更地に……おほん、それよりもその先のことを聞かせてくださぁい」


(シヨちゃん今とんでもないことを口走ろうとしなかったかなぁ? 流石に俺の聞き間違いだよねぇ……そう思いたい)


 遠くない将来に弟子を世界の脅威として排除しなければいけない日が来ないことを祈るばかりだ。


「あ、ああ……それでまあ一応魔物も倒したし先生と合流しようと王都に来たんだが……」


「勇者の里の出身だと聞くと、すぐに王宮の王座の間へと通されれまして……」


「勇者コンテストに名を連ねている拙者たちに是非ともしてほしいことがあると言われ……」


「王様に逆らう不届きな反逆者を抹殺しろと、この場所に派遣されてきたわけです」


「……ふぅん、そうですかぁ」


 報告を聞いたシヨちゃんが、とっても怖い顔でニヤリと笑った。


 そして俺のほうを見て、静かに語り掛けてきた。


「サーボ様ぁ、ここはシヨにお任せしてもらっていいですかぁ?」


(良いわけないだろうが……お前みたいな危険人物に任せられるかよ……)


 間違いなく報復という名目で、この国を牛耳りにかかるに違いない。


 ただでさえ領内の村から反発が高まっているのにそこまでしたら、完全に犯罪者の仲間入りだ。


(どうにかして止めないとなぁ……)


「あのねぇシヨちゃん……」


「そう言えばサーボ先生はムートンという魔物を仲間にされたのですか?」


「大臣が薄汚い魔物を王宮に通したとか王様があの魔物が惑わしているだとか……そんな凶悪な魔物なのですか?」


「……シヨちゃん、やる以上は徹底的にやろうっ!! 二度と世迷言をほざけないようにしてやろうっ!!」


「はぁいっ!! サーボ様の許可が出ましたぁ、じゃあ皆さんで征……世直し国直しといきましょぉ」


「「「「「おおーっ!!」」」」」


 そして俺たちは早速シヨちゃんの指示の元行動を始めた。


 国家転……いや俺の仲間であるムートン君を愚弄した奴に天誅を下すためにだ。


「め、めぇええ……」


「大丈夫だよ、ムートン君……すぐ終わらせるからね」


「めぇぇ……」


 不安そうな顔をするムートン君に笑いかけて、俺は全力で王宮に向かって駆け出していくのだった。

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