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魔王復活っ!? そんなことより消火消火ぁあああっ!!

 あれから二年が過ぎた、いつも通り里の外れで弟子を指導しながら俺は絶望的な思いに苛まれていた。


「一二三四五六……九百九十九千……す、素振り終わりましたサーボ様……きょ、今日も私に折檻……で、ではなくご指導をお願いいたしますっ!!」


「一二三四五六……千九百九十九二千……こっちも二刀流での素振り終わったよサーボ様ぁ、さぁ今日という今日こそ僕の物に僕しか目が入らないように僕と一緒に僕と僕と僕と僕と……」


「一、二、三、四、五、六……九百九十九、千……わ、私も少し遅れちゃいましたけど終わりましたぁ……み、皆さん準備は良いですかぁ? 今日こそ勝ってぇ……えへへ……サーボ様ぁこの鞭気に入ってくれるかなぁ……」


「一二三四五六……九百九十九千……流石シヨ殿、この歳でこれほどとは……拙者ももっともっと鍛錬せねば……そのためにも本気でやらせていただきますよサーボ先生」


「一二三四五六……九百九十九千……まさか俺達にここまで秘められた力があったなんて……流石はサーボ先生、その気持ちに応えるためにも全力で行きますよ」


(ふざけんなっ!! 目で追えない速さで素振りできる化け物五人同時に相手にして勝てるわけねーだろうがっ!!


 どいつもこいつも成長が著しい。


 俺の指導が的確に効果を発揮しているのもある。


 それ以上に実際に強くなることで俺への敬意もまた強くなり、狂信的な勢いで修業を続けているのも理由の一つだ。


 更には仲間同士で、今までのように競い合うだけじゃなく親身で協力し合うようになったのも大きいらしい。


 おまけに協力するようになったことで皆、全ての能力を鍛えるよりも自らの長所を伸ばすようになったことも彼らの異常な戦闘力に拍車をかけている。


(自分の足りない所は仲間に補ってもらう……そう考えれるようになって枷が外れたんだろうなぁ……)


 それ自体はいいことだ、俺も絆を大事にしてくれることを覚えた弟子たちの成長がとても嬉しい。


 だからといって模擬戦で本気で殺しにかかってくるのは勘弁してほしい。


(シヨちゃんが的確に……殺す気で行かないと勝てないって指示を飛ばしてるからなぁ……皆も信じてるしさぁ……)


 切り札があるとはいえ、はっきり言って未だに敗北していないのは奇跡だ。


 既に全員が二重魔法とスキルを習得している。


 能力面でもテキナさんはほぼ俺と互角、カーマとセーヌも僅かに落ちる程度だ。


 カノちゃんはさらに動きに磨きがかかった。


 もう俺のあらゆる攻撃はかすりもしないし、最近は攻撃を受けても傷口を見るまで気づけないことすらある……時々切り札すらターゲットを絞るやつなら避けることもある。


 シヨちゃんだけはまだそこまで行っていない、年齢の問題もあるがやはり能力面の才能には恵まれていないらしい。


 尤もそれでも勇者コンテストでギリギリ優勝を狙えるぐらいの強さは身についている……しかし何より恐ろしいのはその戦略戦術眼だ。


 余りに指示が的確過ぎて、一番若いにも関わらずこのチームの司令塔と化している。


 あのカノちゃんですらシヨちゃんには渋々と従っている……飴と鞭で調教したと言うがやり方を教えてほしいものだ。


「テキナさんは正面から攻撃、カーマさんとセーヌさんは味方への影響を気にせず全力で範囲魔法を使い続けてください」


「分かったぞシヨっ!! サーボ様の体力と魔力を消耗させればいいのだなっ!!」


「了解だシヨ殿、何もかも消滅させる勢いで魔法を放とうっ!!」


「わかったぜシヨちゃん、サーボ先生ならそれぐらいしないとかすりもしないもんなっ!!」


(どんな化け物だよ俺はっ!? そんな攻撃躱しきれんのカノちゃんぐらいだってぇのっ!!)


「僕はねえ僕は何をすればいいのねえ僕もサーボ様を攻撃したいサーボ様の血を浴びたい舐めたい嗅ぎたいサーボ様を近くで見たいサーボ様を……」


「カノさんはサーボ様を注視して、いつもの切り札を使い終えた瞬間に一撃で仕留めてください……いいですか、絶対に急所を狙って意識を断ち切るつもりで……じゃないとサーボ様には勝てませぇん」


(や、やっぱり切り札への対処まで考え始めてるぅっ!! というか本気でマジで殺しにかかってくんじゃねぇよっ!!)


 完全にオーバーキルしてでも俺を仕留めようとするシヨちゃんとその仲間たち。


 本当にこいつらは俺のことを師だと思っているのだろうか。


(やっぱりもう駄目だ……これ以上模擬戦を続けたら俺が死んでしまうっ!!)


「……いや君たちは十分強くなった、これ以上人間相手に戦って変な癖が付いたらイケナイ……これからは魔物を相手に経験を積んでいくべきだ」


「何で何で何でどうしてどうしてどうしてどうしてサーボ様が僕の相手をしなきゃ僕の相手はサーボ様だけでサーボ様以外どうでもいいのに何でサーボ様から離れて他に行かなきゃいけないのおかしいよおかしい絶対おかしい……」


「私はぁ……今のままじゃぁ魔物さんなんか怖くてとても立ち向かえませぇん……サーボ様を調教し……攻略して自信がつくまで続けたいですぅ……」


「私もまだまだ未熟ですっ!! ぜひともサーボ様に直接乱暴され……指導を受けたいのですっ!!」


「それにサーボ先生、この辺りに出没する魔物は弱いものばかりですぞ」


「サーボ先生に指導を受ける前の時点で全部討伐済みですし……何ならあの程度素手だけでも瞬殺できますから……」


(そうだよねぇ……知ってたよ畜生っ!!)


 俺なりに考えて口にした言い訳はあっさりと切って捨てられた。


 やはり俺はこういう口先でごまかすことは下手くそのようだ。


「ほらほらほらサーボ様早く早く早く早く早く早く早……っ!?」


 恐ろしいまでの早口で俺を煽っていたカノちゃんが、不意に頭を捻りある方向を向いた。


「ど、どうしましたぁカノさん?」


「何か……来るっ!!」


「何かって……っ!?」


 遅れてそちらに意識を集中した俺も微細な振動と物音がすることに気が付いた。


 まだ目に見えないほどの距離だが、微かに聞こえる咆哮から魔物の大群が迫って居るのだと分かった。


「こ、これは……」


「何という数だ……」


「一体何なんだ……」


 ほぼ同時にテキナさんとカーマ殿とセーヌ殿も気づいた。


「カノさん偵察っ!! カーマさんとセーヌさんは万が一に備えて里に戻って報告して防備についてください」


「分かったっ!!」


「了解だっ!!」


「任されたっ!!」


 シヨちゃんの指示を受けた三人が即座に駆け抜けていく。


(非常事態とは言えさぁ……俺の指示には逆らったくせに何でシヨちゃんには二つ返事なんだよぉ……お前らの師匠はおれだぞぉ……うぅ……)


「テキナさんとサーボ様はここでカノさんの報告を待って対処、多分お二人には前線で戦ってもらうことになりますぅっ!!」


「分かったぞシヨっ!! やりましょうサーボ様っ!!」


「う、うん……」


 的確な指示に俺も従わざるを得ない……本当に俺の立場はどうなっているのだろうか。


「ただいま、見てきたけど雑魚の群れだったよ……何なら僕一人でも一秒で全滅できるけど倒してきたほうが良かった?」


「いえ、何が起きているかわからない以上は皆で協力して対処したほうがいいです……敵の内訳を教えてください」


「ええとワイバーンが五十匹に、その背中に同じだけ見たこともない魔物が乗ってて……そいつらの足元を炎の魔物が百二十匹に……」


 カノちゃんの報告を聞く限り、どうやら魔王が倒されるのと同時に絶滅したと言われる魔王軍の魔物が群れを成しているようだ。


(ま、まさかこれは……魔王軍っ!? 魔王が蘇ったのかっ!?)


「つまりこれも魔王軍の侵攻の可能性がありますねぇ……前に魔王を退治した勇者の血筋を最優先で潰しに来たんですかねぇ」


 俺と全く同じ発想に至ったらしいシヨちゃん……の口調は非常にのんびりとしている。


「そ、それって……魔王が蘇ったってことっ!?」


「な、何ということだっ!!」


 内心驚愕している俺と同じ様に、カノちゃんとテキナさんも流石に動揺した様子を見せた。


「そうみたいですねぇ、これは厄介なことになりそうですぅ」


 シヨちゃんだけが余裕ぶった表情で何か考え込んでいた。


「シヨちゃん、もう少し緊張感をもたないと……幾ら目の前の敵が大したことなさそうだとは言え相手は魔王だ……気を緩めちゃ駄目だよ」


「ですけどもしもサーボ様が魔王だとしてぇ、この里を攻めるときはどんな戦力で攻めますぅ?」


「そ、それは……一度倒された相手だから出来る限り精鋭を集めて奇襲で仕留めにかかるかなぁ」


「そうですよねぇ、そして今回のこれはカノさんが察知しちゃったけど一応奇襲でしたぁ……もちろん構成している部隊も勇者と戦えるであろう精鋭で構成されているはずですよねぇ……」


 シヨちゃんの言葉に、ようやく何が言いたいのかわかってきた。


「あの雑魚の群れが精鋭なのぉ?」


「そう言うことですぅ……多分その程度でしかないんですよ魔王軍はぁ……サーボ様の敵じゃないんですよぉ」


(えぇ……い、いやそんなことは……だけどなぁ……)


 確かに迫っている魔物は大したことがない、それを統べる奴の力量も知れるというものだ。


「まあサーボ様の言う通り実際に戦ってみるまで油断は厳禁ですけどぉ、そんな緊張して気を張り詰めさせる必要はないですよぉ……リラックスしていつも通りの実力を出し切ったほうがいいですよぉ……」


「は、はい……そうしますです」


 まさしくシヨちゃんの言う通り過ぎて、俺は頷くしかなかった。


(じゅ、十歳の子に諭される師匠……俺って一体……?)


 何だか情けなさすぎて虚しくなってきた。


「シャァアアアっ!!」


「グォオオオオオっ!!」


「ピギャァアアアアっ!!」


「サーボ様、見えてきましたよっ!!」


 テキナさんの言う通り魔物の姿が見えてきた。


(あれ、カノちゃんが言ってたより数が多くないか?)


 敵の種類はともかく、数がかなり違って見える。


 尤も大した差はない、これなら俺一人でも魔法一つで全滅できそうだ。


「……よし、さっさと全滅させて……」


「待ってください、サーボ様ぁ……カノさんが言っていたより魔物数が多いですぅ」


「おかしいなぁ、確かに確認したんだけどなぁ」


「ええ、カノさんが見間違えるとは思いません……つまりここに来るまでの間に増えたんだと思いますぅ」


 確かにカノちゃんが間違えていないのならそう言うことになるが……それがどうしたというのだろう。


「せっかく魔物がヨワヨワなんですから今の内にそのからくりを見破っておきましょう」


「し、しかし万が一にも被害が出る可能性を考えたら先手必勝で倒しておいたほうが……」


 俺の抵抗にシヨちゃんはにこやかに笑って首を横に振った。


「カノさんの反応速度とテキナさんの戦力、そしてサーボ様の切り札でも対処できない何かがこの敵にあると思いますかぁ?」


「…………あるわけないですよね、はい」


(逆にそんな力があったら、そもそも戦っても勝てねぇ……やっぱり観察して弱点を見抜く必要があるわなぁ……)


 完全に論破されて、俺は小さくなる。


「では私はどうすればいいシヨよ?」


「テキナさんとサーボ様は適当に力を抜いて戦闘、カノさんは敵を観察して魔物が発生するからくりを見抜いてくださぁい」


「わかったよ、じゃあ頑張ろうねサーボ様」


「うん、僕も頑張るぅ……うぅ……」


 もうあきらめてシヨちゃんに従うことにする。


 早速攻めてきた敵に剣を……抜くまでもないので素手で挑もうとする。


「おやぁ、貴様らは何だぁ?」


「っ!?」


 唐突にワイバーンの背中に乗っていた奴らが声を発した。


「私たちはこの先に居る勇者の里の者ですぅ……あなた方こそ何者なんですかぁ?」


「ふははは、聞いて驚けっ!! 我らは偉大なる魔王様の僕っ!! ついに魔王様は蘇られたのだっ!!」


 やはり魔王が蘇ったらしい、これは大変なことになりそうだ。


「その魔王軍がどうしてこんな田舎の里に攻めてくるんですかぁ?」


「そこはかつて魔王様を討伐した勇者の血筋が住む村なのだろうっ!! だからこそ全力で叩き潰しに来たのだっ!!」


(やっぱりこれが全力なのかぁ……)


 もしかしたらやっぱり大変なことにはならないかもしれない……この程度ならいくら来ても相手にならない。


「へぇ、これが魔王軍の総力なんですかぁ……多いようで少ないんですねぇ」


「馬鹿めぇっ!! 我らの魔力を見よっ!!」


 そいつらが嘲笑いながら呪文を唱えたと思うと、大地に新たな魔物が生み出された。


「この通り、我々は無限に兵力を増やせるのだっ!!」


「それは厄介ですねぇ……」


「だけどシヨちゃん、生み出された奴と上の奴は同じ魔力の流れを感じる……多分作った奴を倒せば消えるよ」


 オリジナルの魔法を作り出せる俺は、魔力の流れが良く見える。


 だからこそ分かったことだ……その事実をシヨちゃんに耳打ちする。


「ふはははは、分かったら絶望して死んでいくがいい弱者どもよっ!!」


 俺たちとの実力差も気づかず哀れに吠える魔物の親玉たち。


 呆れながら横目でシヨちゃんを眺めると、軽くうなずいてくれる。


 ようやく許可が下りた、俺はため息をつきながらこの茶番を終わらせることにした。


(この規模なら二重魔法を使うまでもないな……)


 下手に強すぎる魔法を打って周囲の環境に影響が出ても困る。


 俺は無詠唱魔法で一掃することにした。


「「「「天雷撃(ライトニングボルト)」」」」


「「「「あっ!?」」」」


 そして同じ発想に至ったみんなも同じ魔法を同時に唱えて……相乗効果が発揮された。


 空から雷が……いやもはや神の裁きとでも言わんばかりの閃光が降り注いだ。


「っ!?」


 魔物は文字通り一言だって喋ることもなく、一瞬で消滅した。


 魔法が当たった大地も蒸発していく。


 それどこか余波で、周囲のあらゆるものが燃えていく。


 離れた場所にある森林地帯や、里の住居にも火災が発生して一気に燃え広がっていく。


「や、ヤバいよサーボ様ぁああああっ!! こ、これどうしようっ!!」


「い、急いで消火しましょうサーボ様ぁっ!!」


「そ、そうしましょうっ!! でなければサーボ様の責任になってしまわれるっ!!


(お、お前らこういうときだけ俺を責任者として持ち上げるんじゃねぇえええええっ!!)


 さらっと全員で俺に責任を押し付けようとする三弟子……もういい加減にしてほしい。


 尤も言ってること自体は事実なので俺は移動しようとして……何かを感知した。


 カノちゃんも何かに気づいたようで周囲を見回し、少し遅れて俺たちの周りを輝きが包み込んだ。


(こ、これは転送魔法っ!? ちぃ、罠だったかっ!!)

 

 尤も奇襲にしてはおざなりだ、カノちゃんの攻撃に比べれば予兆がバレバレだ。


「聖なる意思のもとに全ての魔の業を打ち払い賜え、対抗呪文(アンチマジック)


 事前に察知できていたこともあり、俺は何とか対策の魔法を放つことに成功する。


 あっさりと何者かの転送魔法を打ち払うことに成功する。


「な、なんだったんだ今のはっ!?」


「転送魔法だ……恐らく魔王軍の罠だろうね」


「ど、どこからでしょうかぁ……カノさん分かりますかぁ?」


「少なくともこの辺りからじゃないよ……よほど遠くからだろうね」


(どこの誰だか知らんが、とんでもない敵がいるみたいだなぁ……)


 こんな攻撃を繰り返されたらたまらない。


「サーボ様ぁ、この厄介なちょっかいを止められますかぁ?」


「まあ任せてくれ……聖なる意思の元に悪意ある業へ戒めを、封印呪文(ストップ・マジック)


 一度俺たちに新たな魔法をかけて、もう一度術者がちょっかいを出してくるのを待つ。


 果たしてすぐに俺たちを輝きが包んだ、かと思うとその輝きは色を変えて一瞬で飛んでいく。


「凄いなぁサーボ様、ちなみに何をしたの?」


「魔法をかけてきたやつに跳ね返って、その呪文の魔力を利用して動きを封じる……そんな感じだねぇ」


 これで術者が強ければ強いほど長い間動けなくなる。


「流石サーボ様ですぅ……これで何の問題も……あぁっ!?」


「どうしたのシヨちゃん、何か問題で……あぁっ!?」


「い、一体どうしたのだ二人ともっ!? 里に何か……あぁっ!?」


「し、しまった……忘れてたあっ!!」


 俺たちの視線の先で、勇者の里はメラメラと燃え落ちていく。


 それどころか森林地帯の火災も大変な規模になっている。


「い、急いで消火するんだぁあああっ!!」


「「「は、はいぃっ!!」」」


 慌てて走り出した俺たちは、その後全力をもって消火活動にあたるのだった。


(ま、魔王軍よりこっちのほうがやばいわぁっ!! 畜生ぉおおおっ!!)

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[一言] 魔王軍相手より自爆ダメージの方がでかいとかw 一周目とはえらく展開が違いますね。
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