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新たな弟子と……三弟子勢ぞろい

「おかしいよこんなのぜったおかしいよどうして僕を見てくれないのサーボ様は僕だけのものだったのにおかしいおかしいおかしい絶対おかしいこんなの間違ってる絶対間違ってる直さないと直さないと直さないと……」


(カノちゃんが壊れたぁ……)


 新たな弟子を取って以来、カノちゃんはずっとこんな調子だ。


 血走った眼は常に見開かれて、ただただじっと俺を見つめてぶつぶつと何事かを呟き続けている。


 正直物凄く怖い、今すぐにでも逃げ出したい。


(し、しっかりしろ俺……今この場から離れたらシヨちゃんはどうなる……)


「サーボ様ぁ……シヨ怖いですぅ……もっと強く抱きしめてくださぁい……」


 当然そんなプレッシャーに晒され続けているシヨちゃんは俺にくっついて離れようとしない。


(気持ちはわかるけどさぁ……カノちゃんを刺激しないでよぉシヨちゃぁん……そして俺を睨まないでよカノちゃぁん……)


 尤も身の危険を感じているだけではなく、俺に見捨てられたなくないという思いから一生懸命くっついている面もあるようだ。


 何せシヨちゃんもここに来るまで、まだ本格的な修行が始まる前だというのにずっと駄目だしされてきていたらしい。


 お陰で既にこの歳で将来に絶望しかけていたところで俺に救い上げられたのだ。


 それが本当に嬉しかったらしく、ようやく見つけた希望である俺に縋りついて離さないようにしているのだろう。


(この子も俺を様付けで呼ぶほど崇拝しているし……先生って呼んでほしいよぉ……)


 尤も今大事なのはそんなことではない、とにかくカノちゃんを刺激しないためにもシヨちゃんには普通に接してもらわないといけない。


 そのためには俺が絶対に二人を見捨てないと分かってもらう必要がある。


 だから二人を平等を平等に、大事な弟子として扱おうと心に決めて早速指示を出す。


「ほ、ほら修行しよう……シヨちゃんもカノちゃんも木刀を握って素振りを……」


「いちにさんよんご……きゅうひゃくきゅうじゅうきゅうせん……終わった終わった終わったよサーボ様ほら早く僕と模擬戦そんな子放り捨てて僕と一緒に模擬戦早く早く早く早く……」


 木刀を手に持つと、凄まじい速度で素振りを終えるカノちゃん……もう俺よりずっとはやぁい。


(あ、あれ……お、俺抜かれたぁっ!? い、いやまだ力とか総合力じゃ俺のほうが上のはずだっ!!)


 この間までもすさまじい勢いで成長していたカノちゃんだが、ここのところの進歩は恐ろしいものがある。


 だけどこの背景にあるのも、俺に見捨てられたくないという思いなのだろう。


(僕だけを見てって……要するに目を離さないでほしいってことだもんなぁ……)


 だからどうしても邪険にできないのだ……決して怖いからではない、多分。


「お、落ち着いてカノちゃん……そうだ、じゃあ新しい弟子の面倒を見て……」


「僕はサーボ様を見るためにこの目はサーボ様を見るためだけにサーボ様のものなのに何で何で何で何でサーボ様から目を離さなきゃいけないのおかしいよサーボ様おかしいサーボ様おかしい絶対おかしい……」


「サーボ様ぁ、シヨはサーボ様に指導してほしいですぅ……こうしてずっと腕の中で抱え込んでてほしいですぅ……サーボ様はシヨを指導するの嫌なんですかぁ……うぅ……し、シヨ悲しくて泣いちゃいそうですぅ……」


(……弟子が言うことを聞いてくれない)


 果たして俺は本当に師として敬われているのだろうか?


 物凄い理不尽を感じる。


「あのねぇ君たち……そんなことじゃ立派な勇者になんかなれないよ?」


「うんいいよだって僕サーボ様のお嫁さんになるから勇者なんかどうでもいいしあんな称号クソ喰らえだよだからサーボ様は僕だけを見て優しく撫でて抱きしめてベッドに入って子供は何人作る僕は何人でもいいけど子供にばっかり構ってたら嫉妬しちゃからねちゃんと僕を見て僕だけを見て愛をささやいてねぇサーボ様サーボ様サーボ様……」


「ぐすん……や、やっぱりシヨは……勇者にはなれませんかぁ……うぅ……で、でもぉ……サーボ様の胸で泣かせてくれればぁ……サーボ様の腕の中ならシヨは……シヨは勇者コンテストの壇上よりここにいたいですぅ……ほ、他の人と違って優しくて有能なサーボ様に褒めてもらえればシヨ……それで満足出来ちゃいますからぁ……」


 里の人間なら逆らえる筈のない勇者という称号に対する思い入れを利用しようとしたが、無駄だった。


(カノちゃんいつの間に勇者の称号を振り切ってたのさぁ……それにシヨちゃんもこの間会ったばかりなのにそんなに俺に依存しないでぇ……)


「だからサーボ様早くそいつどっかやって捨てて処理してあっちやってできないなら僕がやるから早く手をどけて僕を抱きしめて受け入れて僕だけのものになってよ早く早く早く……」


「し、シヨは邪魔ですかぁ……うぅ……サーボ様にいらないって言われたらシヨはもう生きていけないですぅ……な、ならいっそのことサーボ様の手で殺してほしいですぅ……サーボ様がそうしてくれるならシヨはぁ……ぐすん……」


(だ、誰か助けてぇっ!!)


 病的なまでに俺を慕いすぎているカノちゃんとシヨちゃんが迫ってくる。


 この状況をどうすればいいのか……どうにかしてくれる奴が居れば何でもしてやりたい。


「……やれやれ、何か騒がしいと思えば……何をしてんだサボり魔のサー……ぎゃぁあああっ!!」


 一瞬視界に、前回の勇者コンテストで優勝したセーヌ殿が見えた気がしたが……気のせいだろう。


 特にカノちゃんの身体が霞んだかと思うと、何やらナイフから赤い液体が滴っているように見えるのも勘違いだろう。


「ど、どうしたセーヌっ!? さ、サーボよお主何をしたのだっ!? 怠けてばかりで飽き足らず、このような卑劣な真似までして恥ずかし……がはぁっ!?」


 一瞬視界に、前々回の勇者コンテストで優勝したカーマ殿が姿を現した気がしたが……気のせいだろう。


 またカノちゃんの身体が僅かにぶれたかと思うと、何やら足元に赤い液体が溜まっているように見えるのも勘違いだろう。


「……ちぃ、今日が生ごみの日だったらなぁ」


 カノちゃんのこの物騒な台詞も……多分ゴミの出し忘れとかだろう。


(……もう俺以外にカノちゃんを止めれる奴はいないのかぁ)


 やはり教育を間違えた気がする。


 とにかく外部からの助けは見込めないと悟り、俺は自分でカノちゃんをどうにかすべく口を開いた。


「カノちゃん、あのねぇ……」


「な、なにがあったのだっ!? カーマにセーヌっ!? こ、これは一体っ!?」


 そこに新たな声が聞こえてきた。


「な、何でもないから早くこの場を立ち去……っ!?」


 俺はこれ以上哀れな犠牲者を出さぬよう、その人に逃げてもらおうとして固まった。


 そこに現れた美しい女性に、俺は三度目になる胸の高まりを覚えたからだ。


「貴方は確かサーボとか……これは貴方がやったのかっ!?」


「……き、君は?」


「私はテキナと……いや、そんなことよりも何故里の者に手をかけたっ!?」


「い、いやそれは……カノちゃん駄目ぇええっ!!」


 気が付いたらカノちゃんがテキナさんの死角から攻撃を仕掛けようとしているところだった。


 俺の言葉でカノちゃんに気づいたテキナさんは、とっさにその場から飛びのいて攻撃を躱すことに成功した。


「くぅっ!?」


「ちぃっ!? よく避けたねぇっ!!」


(お、俺の指摘があったとはいえ……あのカノちゃんの攻撃を避け切れるなんて凄い実力者だ……)


「い、いきなり何をするっ!?」


「うるさいっ!! サーボ様を馬鹿にするやつなんかみんな僕が叩きのめしてやるんだっ!!」


「か、カノちゃん落ち着いてっ!! し、シヨちゃんちょっと離れて……」


「さ、サーボ様ぁ……シヨ怖いですぅ……もっと強く抱きしめてくださぁい」


「あぁああああっ!! お前お前お前いい加減にしろよお前ぇええええっ!!」


 俺にしがみ付くシヨちゃんを見てカノちゃんが頭を掻きむしりながらこちらに迫ってくる。


 ある意味好都合だ、この隙にテキナさんには逃げてもらうとしよう。


「て、テキナさんとりあえずこの場は俺に任せて……」


「き、貴様っ!! このような年端も行かぬ少女達を誑かすとはっ!! これだから男は……その性根をこの私が叩き治してやるっ!!」


(何でそうなるんだよぉおおおっ!!)


 何故か俺に、シヨちゃんの修行用に置いてあった木刀を突き付けるテキナさん。


「余計な真似しないでくれるっ!! サーボ様は僕の偉大なお方なのっ!!」


「さ、サーボ様はぁ……シヨの大事なぁ……た、誑かされてなんかいませぇん……」


「くぅっ!? このような幼気な少女の気持ちをここまで誑かすとは、この詐欺師めっ!! 今君たちの目を覚まさせてやるっ!! 私と戦えサーボっ!! 私が勝った暁には言うことに従ってもらうぞっ!!」


「い、いやそんなこと急に言われても……」


「問答無用っ!! 覚悟するがいいっ!!」


「っ!?」


 勢いよく飛び掛かってくるテキナさん、その勢いはこの里の誰をも上回っている……一部の例外を除いてだが。


(速度だけはカノちゃんに比べると遥かに見劣りする……けど力も技も見事だ)


 それでもカノちゃんの攻撃に慣れている身としては避けるのは簡単だ。


 シヨちゃんを抱きかかえたまま最小限の動きでテキナさんの攻撃を躱し続ける。


「くぅ……な、何故当たらないのだっ!?」


「動きは悪くないけど真っ直ぐすぎる……教科書通り過ぎてこれでは簡単に軌道が読めてしまうよ」


 尤もここまで能力が高ければ、大抵の相手は力差で強引に押しきれてしまうだろう。


 だからこそ、俺ぐらいの実力者に当たるまでその弱点に気づけずにいたようだ。


「だ、黙れっ!! 邪を払う閃光よ我が剣に宿り力と成せ、聖輝剣(シャイニングブレード)っ!!」


 良かれと思ってした指摘は彼女の怒りに油を注いでしまったようだ。


 俺に抱きかかえられているシヨちゃんのことも忘れ、魔法剣で最大の一撃を放とうとしてくる。


 避けること自体は簡単だが、テキナさんほどの実力者の攻撃が里に降り注げばそれだけの被害が出ることか。

 

 だからあえて俺は片手でシヨちゃんを抱きしめつつ、もう片方の手を伸ばす。


「聖なる意思のもとに全ての魔の業を打ち払い賜え、対抗呪文(アンチマジック)


「なぁっ!?」


 同時に切り札を利用してテキナさんの魔法を打ち消し、ただの木刀の一撃を素手で受け止めて見せる。


 魔法の消滅と俺に素手で止められたことにショックを受けたテキナさんが固まる。


 その隙に木刀を奪い取り、その切っ先を喉元へと突き付けた。


「っ!?」


「全体的に動きは悪くなかったけど……もう少し冷静に立ち回るべきだったね」


 もしもあそこまで直情的に動いていなければ、流石の俺ももう少し苦戦しただろう。


(まあそれでも訳アリとは言え俺に切り札を使わせてるんだから十分すぎる強さだけど……)


「さ、サーボ様ぁ……やっぱりすごいですぅ……シヨはこんな凄いお方の腕の中に居られて幸せですぅ……」


「まあ僕のサーボ様に敵うわけないんだよねぇ、流石サーボ様だぁ」


「くぅ……こ、この私が……このような下劣な男に……」


 称賛する弟子たちと、自らの敗北を嘆くテキナさん。


「まだこんなこと言ってる……あんたは負けたの、ほらサーボ様に謝って早く」


「そぉですよぉ……そ、それにサーボ様が勝ったんだから言いなりになるんですよねぇ……」


「くぅ……や、約束は約束だ……す、好きにするがいい……」


 そう言って悔しそうに俺の前で跪くテキナさん、正直どうしたらいいのかさっぱりわからない。


(いや、答えは出てる……今までと同じだ……)


「じゃあテキナさん……あなたも俺の弟子になってください」


「っ!?」


「っ!?」


「っ!?」


 俺の言葉が予想外だったのか息をのみ目を丸くするテキナさん……と他二名。


(何でこいつらまで驚いてんだよっ!?)


「な、なんでどうして僕以外の弟子を取るのおかしいよサーボ様は僕だけを見ていればいいのにどうしてどうしてどうして……」


「さ、サーボ様ぁ……し、シヨだけじゃ満足できませんかぁ……も、もっともっとシヨ沢山サーボ様に尽くしますからぁ……どうか捨てないでくださぁい……」


「くぅ……わ、私を下に敷いて屈辱を味わわせようと言うのかっ!!」


 三者三様で嘆く様子を見て、俺は深くため息をついた。


(どいつもこいつも互いを認めようとしねぇ……これじゃあ駄目なんだよぉ……)


「君たちは何のために修行をしているんだっ!! 強くなるためかっ!? 他人に認められるためかっ!? 違うだろうっ!!」


 心の中に抱いていた感情を爆発させる。


 このままじゃ協力も何もあったものじゃない、これでは来るべき時に仲間同士で足の引っ張り合いになりかねない。


 前々から思っていたことを、俺はこの場でぶちまけることにした。


「君たちの敵は誰だっ!? 魔物じゃないのかっ!? 人間はみんな仲間だ、協力し合えなくてどうするんだっ!!」


「……サーボ様を奪うやつが敵ぃ」


「……サーボ様を取る人は敵ですぅ」


「…………」


 何故かテキナさんが聞き入って、二人の弟子が不満げに愚痴っている……ふつう逆じゃないかなぁ。


 しかしこんなことで気落ちしても仕方がない、俺は言葉を続ける。


「ご先祖様も仲間たちと協力して魔王を退治した、大切なのは仲間同士の絆じゃないかっ!! 一人じゃできないことでも皆で協力して成し遂げる……それこそが勇者のあるべき姿じゃないのかっ!!」


「……それほど勇者としてのこだわりがありながら……いや実力にしてもこれほどの力を秘めていながら何故あなたは勇者コンテストに出場しなかったのですか?」


 テキナさんの疑問に、カノちゃんとシヨちゃんも同意するように頷いて見せた。


 確かにそれを教えたことはなかった、せっかくの機会なので俺の真意を話しておこう。


「……俺は人間同士で競い合う勇者コンテストに違和感を覚えていたんだ、さっきも言ったが大事なのはどうやって協力して戦うかだろ? だけど昨今の勇者コンテストは繋がりを否定する流れになっているっ!! だからあえて参加しないことで里の方針が間違っていると訴えたかった……無視されてしまったけどね」


「そ、それは……」


「……っ」


「さ、サーボ様ぁ……」


 三人とも考えたこともなかったようで……あのカノちゃんまで思うところがあるのかうつむいてしまった。


「だから俺はせめて弟子である君たちには絆を大事にしてほしいんだ……仲間と協力することを覚えてほしいんだっ!!」


「………」


「………」


「………」


 ついに無言になった三人、どうやらようやく俺の気持ちが伝わったようだ。


「……確かにサーボ様の言う通りだ、僕間違ってたよ」


「か、カノちゃん……ついにわかってくれたんだねっ!!」


 最初に頭を上げたカノちゃんが、前のように純粋な笑顔を見せてくれた。


 余りの嬉しさに涙がこぼれてしまいそうだ。


「そうだよねぇ、一人でできないことでもみんなで協力すれば出来るんだ……どうしてこんな簡単なことに気づかなかったんだろう……」


 本当に感心したようにつぶやいている、俺はその様子にようやく安堵した。


「……少し頭を冷やしたい、済まないが今日は帰らせてもらおう」


 テキナさんは複雑そうな表情でこの場を立ち去った、


「僕も今日のところは帰るよ、じゃあまたねサーボ様」


「わ、私も帰りますぅ……し、失礼しますぅ……」


 珍しいことに、いつもは俺の家にまで押しかけて共に寝ようとまでしてくる二人も帰って行った。


(それだけ俺の説得が効いたってことか……やっぱり何だかんだで俺のことを師として仰いでくれてるんだなぁ……)


 少し嬉しさを覚えながら俺も帰路につく……前にカーマとセーヌ殿を治療しようとした。


(あれ、居ない……まああいつらも自力で回復魔法使えるもんな……)


 腐っても勇者コンテスト優勝者だ、早い段階で意識を取り戻して自力で治療したのだろう。


 もう何も心配することはない、今度こそ俺は家に帰り久しぶりに落ち着いた時間を過ごした。


 そして次の日、どこかドキドキしながら俺はいつもの訓練所へとやってきた。


「いいかい、シヨちゃん……こう来たらこうして……」


「で、ですけどぉ……か、カノさん……ど、どうせならこうしたほうが……」


(お……おおっ!! あ、あの二人が仲良く会話してるだとぉっ!!)


 いつもならカノちゃんの重圧に押されて、俺が迎えに行くまで家から出れないシヨちゃんが先に来ていて二人仲良く何事か話し合っていた。


 恐らくカノちゃんが先輩として修業についてアドバイスをしているのだろう。


 余りの嬉しさに涙が止まらなかった。


(こ、こんな情けないところ見せるわけにはいかないよな……涙が止まってから出て行こう……)


 そう思いながらも俺はあの子たちが何の話をしているか気になって仕方がなかった。


 だからカノちゃんに気づかれないよう距離を取りつつ、会話に耳を傾けた。


「……確かに……シヨちゃんはこういう作戦を立てるのは得意みたいだね、よしそれでいこうっ!!」


「は、はいぃ……で、ですけどぉ約束のほうは……」


「嫌だけどわかってるよ、僕一人じゃサーボ様には勝てないからねぇ……ただ僕が一番だよっ!! シヨちゃんは二番、いいねっ!!」


「ざ、残念だけどわかりましたぁ……私じゃぁどうあがいてもサーボ様に敵わないですから仕方ないですぅ……」


(あ、あれ……な、なんか不穏な会話してるぞ……?)


「ふふふ、だけどシヨちゃんが協力してくれればサーボ様を倒しやすくなる……そうすれば何でもお願いを聞いてもらえる……あはは、どーしてもっと早く気付かなかったんだろうっ!!」


「うふふ……サーボ様を私たちのものにしちゃいましょう……カノさんが一番で私が二番……ねぇ」


(…………ってうぉおおおおいっ!! お前が昨日感心してたのはそこだけかよぉおおっ!!)


 どうやら俺を倒す手段として感心していただけのようだ。


 とてもいい笑顔を浮かべている二人、その表情には隠し切れない狂気が溢れかえっている。


「サーボ様サーボ様サーボ様、早く来ないかなぁサーボ様サーボ様サーボ様ぁ……」


「えへへ、サーボ様ぁ……貴方が私たちしか見えないようにちゃぁんと調教しますからねぇ……えへへぇ~……」


(……もう駄目だこの二人)


 先ほどまでとは違う涙が溢れて仕方がない。


 もう何もかも放り出して逃げ出したい衝動に駆られてしまう。


「ああ……ここに居られましたかサーボ様っ!!」


「っ!?」


 そんな俺の背後からテキナさんの声が聞こえた。


 当然あの鋭いカノちゃんが聞き逃すわけもなく、瞬間的にこちらへと振り返った。


「あぁ~サーボ様みぃつけ……な、何してるのっ!?」


「サーボ様ぁ、そこに……えぇっ!?」


 何故か二人とも露骨に驚いたような表情でこちらを見つめている。


(な、涙目なのがばれた……にしては驚きすぎだよなぁ……それに俺と言うか後ろを見てる?)


 不思議に思いつつ視線を追って振り返り、そこに立つテキナさんを見て……腰砕けになりそうになった。


「ど、どうかなされましたかサーボ様?」


「て、て、て、テキナさぁんっ!? な、何で首輪なんかつけてるんですかぁっ!?」


 何故かテキナさんは鎖付きの首輪を嵌めて、俺のことをうっとりとした眼差しで見つめている。


 その頬は赤く火照っていて、身体を小まめにくねらせている。


「あ、あれからその……帰って色々と考えまして……わ、私はサーボ様の思想に強く感激いたしましたっ!! そ、そんなサーボ様に刃を向けてしまったことが恥ずかしくてなりませんでしたっ!!」


「そ、そんなことどうでもいいからぁっ!! そ、それよりどうして首輪をつけてるのぉっ!?」


「わ、私なりに偉大なるサーボ様へ反抗した戒めと贖罪を考えまして……そ、それにい、偉大なるサーボ様への服従のあかしをと考えまして……に、似合っておりますか?」


(似合うとかそう言う問題じゃねぇだろうがぁああああっ!!)


 物凄く頭が痛い、泣きたい、苦しい、辛い。


「サーボ様サーボ様サーボ様どういうことどういうことどういうことねぇねぇねぇっ!!」


(俺だってわかんねーよぉおおおおっ!!)


「し、シヨも……首輪つけたほうがいいですかぁ……そ、それともサーボ様に着けて……えへへ、に、似合いそうですねぇ……」


(何で俺が首輪を気に入ってることになってんだよぉおおおっ!!)


「さ、サーボ様ぁ……そ、そのような目で見ないでください……は、恥ずかしい……」


(お前が勝手にしてきたんだろうがぁあああああっ!!)


 もう気絶してしまいたい、何もかも忘れて目を閉じてしまいたかった。


「見つけたぞっ!!」


「やはりここに居たかっ!!」


 さらにそこにカーマとセーヌまで乱入してきた。


(昨日の復讐かなぁ……けどこいつらの相手をしてるほうが全然いいわぁ)


「今日は何の用なのっ!? またサーボ様を侮辱するなら今度こそ……」


「サーボ先生っ!! どうかこの愚かなセーヌを弟子にして頂けないでしょうかっ!!」


「サーボ先生っ!! どうかこの愚物なカーマを弟子にして頂けないでしょうかっ!!」


「えぇ……な、なんでぇ……」


 何故か土下座して俺へ弟子入りを志願する二人、その首には勇者コンテスト優勝の証であるメダルはぶら下がっていなかった。


「昨日の先生のお言葉を聞いて目が覚めましたっ!! 私は自らの力に溺れた愚か者だと気づいたのですっ!!」


「……頭上げようよ、土下座はやめようよ」


「あなた様の立派な思想に感激いたしましたっ!! どうか拙者にも指導を……正しき勇者としての指導をお願いいたしますっ!!」


「……ごはぁ」


 文字通り血反吐を吐きそうなほどのストレスが押し寄せてくる。


(どうしてこうなるんだ……勘弁してくれぇ……)


 恐らくこの二人は俺の演説をする直前で意識を取り戻し、傷が治るまでの動けない間ずっと話に聞き入っていたのだろう。


 それで感心して考え直してくれたこと自体はとても嬉しい。


 しかしただでさえ弟子を持て余しているのに、これ以上増えたら俺の身体が持たない。


「い、今だっ!! 隙有りぃいいいっ!!」


「ひぃいいいっ!!」


 そんな崩れ落ちそうになっている俺を気遣うどころか、間髪入れずに襲い掛かってくるカノちゃん。


「これがサーボ様流の修行ですぅっ!! 皆も協力して攻撃してくださぁいっ!!」


「ひぃいいいっ!!!」


 更に全員に攻撃するよう発破をかけるシヨちゃん。


「す、素晴らしいっ!! こんな体調不良時にも修行を忘れないとは……ご協力しますっ!!」


「ひぃいいいいっ!!」


 勝手に感動して嬉々として攻撃に加わってくるテキナさん。


「お、俺たちも弟子として認めてくれるんですかっ!!」


「ありがたいっ!! では早速……参るっ!!」


「ひぃいいいいっ!!」


 そしてカーマとセーヌまで加わって来る。


(し、死ぬ……死ぬ死ぬ死ぬ殺されるぅうううううっ!!)


「だ、誰か……助けてぇえええええええっ!!」


 哀れな俺の悲鳴は誰に届くこともなく消えていくのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] テキナさんも壊れたぁ!? カーマとセーヌまで陥落してしまったのがヤバいですねえ このままでは村が……あれ?
[一言] 弟子たちがヤンデレ過ぎるw
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