祝勝会……おれにとっては激励会
投稿時間が遅くなりました、申し訳ございません。
今後は出来る限り二十時半~二十一時半には投稿するようにしたいと思います。
「では皆さん、準備はいいですね……乾杯っ!!」
「「「「「「「「「「「乾杯っ!!」」」」」」」」」」」
俺の音頭で皆が杯を持ち上げてお酒を飲み干した。
魔王退治を記念して、皆で祝勝会を開くことにしたのだ。
会場はちょうど全ての大陸の中央に僅かに残った浮遊大陸だ。
参加者は……俺を除けば女性しかいない。
各国の代表者と勇者の関係者、という名目で俺の夫人候補が勝手に集まったのだから当然だ。
「サーボ先生……おめでとうございます」
「ありがとうプリスちゃん、調子はどうだい?」
「ふふ……サーボ先生のお陰でとてもいいです……何よりサーボ帝国の一つとなって負担が減りましたから……」
「そっかぁ、よかったねぇ」
にこやかに微笑むプリスちゃん、その頬はお酒のためか赤く染まっている。
皆と共同して政治を行うようになり、外交で虚勢を張る必要もなくなり元気を取り戻しつつあるようだ。
「サーボ先生、おめでとうですっ!!」
「ありがとうタシュちゃん、調子はどうだい?」
「とってもいいのだ……ですっ!! 我が龍人族の里もサーボ帝国に加わりたいと言い出すようになったぞ……ですっ!!」
「それは凄いねぇ」
笑いながら語るタシュちゃん、何でも里帰りするたびに人間の国のご馳走をお土産に持っていったところ美味しさの余り帰順したがる者が増えているという。
さらに俺がギリィとワイバーンの群れを一人で蹴散らしたことになっているらしく、それもまた高評価に繋がっているらしい。
「サーボ先生、本当にお見事でございました」
「ありがとうテプレさん、調子はどうだい?」
「とても順調でございますわ、全ての大陸に結界を敷き終わりましたのでもう魔物の被害に怯える者はおりません」
「ありがとう、助かるよ」
結界は過去の英雄たちとの協力により、異種族を排除しない形に改造されている。
考えようによっては危険だが、今のところは全ての異種族と人間は仲良くやれている。
このままずっと平和が続いてくれることを願うばかりだ。
「サーボ先生、ついにやりましたねっ!!」
「ありがとうミイアさん、調子はどうだい?」
「いい感じですよぉ……そういえば冒険者ギルドでサーボ先生のランクをイキョサ様以来二人目となるSSSにするって決定したみたいですよ」
「そうなんだ、それは光栄だよ」
勇者ランクも同等に変化するのだろうか……最もイショサ国もサーボ帝国に飲まれた以上は制度がどうなってるか分からない
「サーボ先生、魔王退治の成功おめでとうございますっ!!」
「ありがとうミリアさん、調子はどうだい?」
「いいですよぉ……ダナともきちんと離婚しましたし、それにヒメキ様がたくさんお城のお仕事をさせてくれて充実してますっ!!」
「それは何よりだね」
ミリアさんは王宮でヒメキ様の補佐として、サーボ帝国の管理に見事な手腕を発揮しているようだ。
「サーボ先生、魔王退治という偉業をこれほど早く成し遂げてしまわれるとは実に見事であるっ!!」
「ありがとうヒメキちゃん、調子はどうだい?」
「完璧であるっ!! ついに世界全土がサーボ帝国の領土となり、妾も忙しい日々を送っているがとても充実しておるぞっ!!」
「無理しすぎないようにね」
ヒメキ様は一番王族らしく政治を行っていて、プリスちゃんやテプレさんなどはかなり助けられているらしい。
逆に元イショサ国の王様は肩身が狭いらしく、最近は隠居すら考えているようだ。
「サーボ先生、ご苦労様でした」
「ありがとうマーメイさん、調子はどうだい?」
「悪くはないのですが……最近、鳥人族と龍人族の仲が良すぎる気がして困っています」
「それは大変だねぇ」
セーレちゃんに抱かれているマーメイさんが俺にそっと耳打ちしてきた。
ずっと鳥人族の面倒を見てきた人魚族だが、同じサーボ帝国の一員となった龍人族が急接近されて横取りされないか不安のようだ。
人魚族は全体的に母性愛が強い種族のため、鳥人族のお世話係を取られたくないらしい。
「サーボ先生、魔王を倒しちゃうなんてやっぱりすごいなーっ!!」
「ありがとうセーレちゃん、調子はどうだい?」
「すっごくいいぞーっ!! タシュが紹介してくれた龍人族はみんな優しかったんだぞ~……何で前追いかけられたんだろう?」
「きっとセーレちゃん達がいい子だって伝わったからだよ」
鳥人族は自分たちより優れていて共に空を飛べる龍人族にとても懐いてしまった。
むこうも純粋な鳥人族に慕われるのは悪い気がしないらしく、まるで姉のように振る舞い始めているようだ。
もっともやはりセーレちゃんにとっての一番はマーメイさんのようで、二人の関係については心配する必要はなさそうだ。
「サーボ先生、おめでとうございます」
「ありがとうアイさん、調子はどうだい?」
「はい、良好です」
「それは何よりだよ」
嬉しそうな笑顔を浮かべているアイさんは、もう素顔を曝け出している。
ドーマ様との邂逅と、どうやらフウリちゃんとの和解を経て自らを受け入れられるようになったらしい。
「サーボ先生、よくやったぞっ!!」
「ありがとうフウリちゃん、調子はどうだい?」
「この無敵のフウリ様はいつまでも落ち込んでいるはずなかろうっ!! アイと共に頑張っているぞっ!!」
「流石フウリちゃんだ」
かつてのように不敵に笑うフウリちゃんだが、どうやら人を思いやれるようになったようで国民からも少しずつ支持を得始めた。
そしてアイさんと共にゼルデン大陸の治安維持に勤しんでいるらしい。
「サーボ先生、この度の偉業はお見事でした」
「ありがとうルーフさん、調子はどうだい?」
「お陰様でエルフ族はどんどん発展しております、本当に感謝しかございません」
「君たちもみんな仲間なんだから協力するのは当然だよ、気にしないでいいよ」
エルフ族もまたサーボ帝国の一員となり、外部の人間を受け入れるようになった。
人間としてもエルフ族の美貌に惹かれて移住する者も多いらしく、お陰でどんどん生活レベルは上がっているようだ。
(仮にも世界平和が実現するなんて……凄いよなぁ……)
全ての大陸に住む人々が、種族も何も関係なく目の前に集まって笑い合っている。
その光景を見ていると、流石の俺でも自分の行った偉業の素晴らしさを実感できてしまう。
「やったねサーボっ!!」
「おめでとうございますサーボ様っ!!」
「流石勇者サーボさんだねぇっ!!」
「イキョサ様、イーアス様、ドーマ様……ご協力ありがとうございました」
「いいんだよそんなことぉ……それよりそろそろ他人行儀な呼び方止めてよぉ」
「そうでございます、私たちのことも皆さまと同じ様におよびくださいませ」
「私たちもサーボさんともっと仲良くなりたいんだよ」
「わかりました、では改めて……ありがとうございましたイキョサちゃん、イーアスさん、ドーマさん」
俺の呼びかけに嬉しそうに笑う三人。
「サーボぉ、よくやったぞぉ~」
「しゃーぼしゃん、すてきでしゅぅ~」
「どう……したのですかマーセ様っ!?」
こちらに近づいてきたマーセ様は目の焦点が合っていなくて、呂律も回っていなかった。
「いやちょっと酒飲ませただけ……こいつすっげぇ弱いんだよ」
「わ、わかってるなら飲ませないでくださいよトラッパー様ぁっ!?」
「今日ぐらいはって勝手に飲んだんだよ……それよりあたしらのこともいい加減、他の奴らと同じ様に呼べよぉ~」
「しょーれすよぉ……さーぼしゃん、みずくさいれすよぉ~」
「わ、わかりましたからしっかりしてくださいマーセさん……トラッパーさんも介抱してあげて……」
「解放すればいいんだなぁ~、ほらマーセ脱げ脱げぇ~~」
「いえぇ~い、ぬぎましゅぅ~っ!!」
トラッパーさんに煽られるままに服に手をかけるマーセさん。
「ちょ、ちょっと……だ、誰か止めてっ!?」
「ま、マーセはしたないですわよっ!?」
「ああ、イーアスの奴邪魔しやがってぇ」
「もぉ恥ずかしいことしないでよぉ」
「ご、ごめんね騒がしくして……ほら皆行こうね」
イキョサちゃんたちが二人を連れて行ってくれた。
(ああ、助かったぁ……目に毒だよ本当に……)
マーセさんの行為だけではない。
ここにいる全員が美女美少女揃いで、俺にはどうにも居心地が悪い。
(しかも全員が俺を……俺なんかに……)
いたたまれなくて、俺はそっと会場を離れて外で草をハミハミしているムートン君のところへ向かった。
「めぇえええっ!!」
俺に気づくなり草を食べるのを止めて近づいてくるムートン君。
「ありがとうムートン君、調子はどうだい?」
「めぇええ」
俺の言葉に頷いたムートン君がその場にしゃがみ込んだ。
どうやら俺を労わってくれるつもりらしい。
ありがたく背中を貸してもらおう。
「ふぅ……久しぶりだねぇ、こうして休むのも」
「めぇええ……」
「ふふ、本当にフカフカだなぁ……気持ちいいよムートン君」
柔らかさを堪能しながら、そっと手を伸ばし身体を撫でてあげる。
気持ちよさそうに身悶えするムートン君。
俺はしばらくの間、ここで休ませてもらうことにした。
「サーボ先生、こんなところにいらしたのですか?」
「テキナさん、どうしたんだい?」
「勿論サーボ先生とお話がしたくて探しておりました……隣よろしいでしょうか?」
「ええ、勿論」
「では失礼します、ムートンよ背中を借りるぞ……うむ、いい感じだ……」
俺の隣に腰掛けたテキナさんがムートン君に体重を預けて心地よさそうにしている。
「お疲れ様テキナさん、今までありがとうね」
「サーボ先生こそこれまでの旅路、ご苦労様でした」
「俺は何もしてないよ……殆ど魔物退治はテキナさんにまかせっきりだったからね」
「何をおっしゃいますか、サーボ先生が指示をくださったからこそ動けたのですよ……それに先生は見事に魔王を退治して見せたではないですか……」
テキナさんがまっすぐ俺を見つめてくる。
俺のことを心の底から信じている、眩しいまでに美しい瞳だった。
出来ることならば曇らせたくない……ずっとこの目で見ていてほしい。
(だけどそれじゃあ……俺は屑のままだ……)
勘違いと誤解で積み上げた好意を恥知らずに受け入れることはできない。
かといってこのまま放置するわけにもいかない……責任を取るべきだ。
だからこそ俺も、まっすぐ見返してはっきりと言った。
「違うんだ……俺は本当は……無能なんだよ」
「……サーボ先生?」
「イキョサちゃんたちと修行して、沢山の装備で補正をかけてようやくここまで成れただけなんだ……本当の俺は戦う力のない雑魚なんだよ」
「……冗談はおやめください」
「本当なんだよ……俺はただのむ……っ!?」
テキナさんが俺に向かいゆっくりと手刀を放つのが見えて、とっさに掴んで止めた。
「ふふふ、やっぱり強いではないですか……質の悪い嘘はおやめください」
「い、いや今のはテキナさんが手加減したから……」
「確かに全力ではありませんでしたが手加減などはしておりません……それに今も……捕まれた腕を動かすことができません」
「っ!?」
言われて掴んでいるテキナさんの腕を見ると、筋が浮き出ていて物凄く力が籠っているのがわかった。
だけどまるで……弱々しい抵抗にしか感じられない。
(な、なんでだ……魔法で強化しない俺がどうしてここまで……あぁっ!?)
そこで俺は魔王退治の最中に起きた出来事を思い出した。
足りない魔力を補うために俺と一体化したあいつ。
あの瞬間から何故か同じ自分とは思えないほどの能力があったあいつの力の全てが俺に上乗せされている。
その結果、俺はテキナさんに素で勝てるほどの実力になってしまっていたようだ。
「本当にお強い……これほどの力を秘めておきながら一切偉ぶろうとなさらなかったサーボ先生はやはり素晴らしいです」
「い、いやこれは誤解なんだよっ!?」
(ま、待ってくれっ!! せ、せっかく誤解を解こうとしてるのにさらに勘違いを重ねないでくれっ!!)
「いいえ、サーボ先生と共に在ったこのテキナにははっきりわかっております……サーボ先生の真なる実力が……」
(ぜ、全然わかってねぇえええっ!!)
「違うのっ!! お願いだから信じてテキナさんっ!! 俺本当に弱くて雑魚くて屑な無能だったのよぉおおっ!!」
「戯言はそれぐらいにしてください……それよりもサーボ先生、魔王退治が済んだ記念にお願いしたいことがございます」
(ざ、戯言じゃないもぉん……うぅ……)
俺なりに決死の覚悟で苦しみながら懺悔したのにこれだ。
物凄く泣きたい。
しかしもうこの場ではこれ以上何を言っても無駄だろう。
「な、何かなぁ……テキナさんには本当にお世話になったから出来る限りのことはしちゃうよぉ~」
「そ、そうですか……で、ではその……い、今こそ……そ、その……き、き、キスを……していただけないでしょうかっ!?」
(そう来たかぁ……)
ずっとごまかしてきた行為、屑な俺がどうしても譲り切れなかった最後の一線。
できれば全ての誤解を解いた後で、きちんと気持ちを確認してからしたかったが……こうなったら仕方がない。
(またごまかしても良いんだが……もうそういうのは止めよう)
テキナさんなりに覚悟を決めてお願いしてきたのだ、俺も正直に応えよう。
「……テキナさん、目を閉じてくれないかな?」
「ひゃいっ!?」
どうやら俺の返事は予想外だったようで、噛みながらも慌てて目をぎゅっとつぶったテキナさん。
本当に美しく魅力的な女性だと思う……何よりこんな俺に付いて来てくれて嬉しかった。
だからせめてものお礼として俺は顔を近づけると……その掴んでいるテキナさんの手の甲にキスをした。
「は、え……えぇっ!?」
「すみませんが、今はこれで勘弁してください」
(これが限界だ……臆病者な俺の精一杯だ)
「あ、あうぅ……さ、サーボ先生……い、意地悪ですよっ!!」
「何がですかぁ~?」
テキナさんの叫び声を聞いてシヨちゃんがふらふらと近づいてきた。
「し、シヨ……い、いやその……な、なんでもないのだ……し、失礼しますサーボ先生、また後程……」
「ええ、また後程……」
シヨちゃんに追及されないようにか、慌ててその場を立ち去るテキナさん。
(今最後に俺を睨みつけてったよなぁ……うぅ、後が怖い……後が……あればだが……)
「行っちゃいましたねぇ……じゃあ代わりに隣失礼しますねぇ~」
「どうぞどうぞ……シヨちゃんも今日までお疲れ様、本当に助かったよ」
「そう言ってくれると嬉しいですけどぉ……私やっぱり足手まといでしたよぉ」
「そんなことないよ、シヨちゃんの助けがなかったら俺たちはここまで来ることができなかったよ」
シヨちゃんの手腕で国を立て直し、情報を集めてくれたからこそ俺たちは行き詰らずに済んだのだ。
何よりこうして全ての国々が一つとなり、世界平和が実現したのは間違いなくシヨちゃんのお陰だった。
「俺が手の届かない所をいつもフォローしてくれて……シヨちゃんが指揮してくれるから二手に分かれても平気だった……よく頑張ってくれたよシヨちゃん」
「えへへ、ならよかったですぅ……シヨね、サーボ先生の為だと思ったら一生懸命頑張れちゃうんですよぉ……本当にサーボ先生はすぐ離れちゃいますからねぇ」
ニコニコと嬉しそうにシヨちゃんが笑いながら俺を見つめてくる。
俺のことを無邪気に信じ切っている、可愛らしくも綺麗な瞳だった。
(だけど今度こそ……ちゃんと告白しないと……)
屑から脱却して、本当の俺として向かう覚悟を決める。
じゃないと彼女たちの好意に応えられないから。
「それはね、俺が屑だったから……一人で何度も逃げようとしたからなんだ……ごめんね」
「……サーボ先生、何を言ってるんですかぁ?」
「俺は本当は自分のことしか考えてなくて……他人を踏みつけてでも生き延びようとする屑だったんだよ……」
「もぉ、サーボ先生ったら……そんなこと言われても説得力ないですよぉ~」
笑い飛ばそうとするシヨちゃんに、俺は淡々と事実を告白していく。
「最初の村で魔物と会った時、俺は君たちを囮にしていつでも逃げれるように馬車で待機してたんだ」
「戦うつもりが無かったらそもそも村に行きませんよね?」
「い、いやそれは……ほ、ほら蜘蛛の魔物が居た村でも君たちを館に追いやって一人で楽してただろ?」
「もしも自分本位な人間だとしたら女の人にも手を付けますよねぇ……」
「ち、違ってその……そ、そうだよほら風の魔物の……」
「うぅ……私は早々と捕まってしまいましたよぉ……」
「い、いや責めるつもりじゃ……じゃあその次の……」
いくら説明しても全て論破されてしまう。
本当に微妙な理由があってのことなのだが、シヨちゃんの言葉運びが上手くて否定しきれない。
「し、信じてシヨちゃんっ!? お、俺は本当に屑で無能なダメ人間だったんだよぉっ!!」
「もぉサーボ先生ったら……大体本当に自分の命が大切な人間だったら……魔王の残した魔法から私たちをかばうために飛び出しませんよぉ」
「そ、それは……」
(そ、その時には真人間になろうと努力してたからぁ……ど、どうしてわかってくれないのぉっ!?)
「無駄ですよぉ、サーボ先生が実はサーボ帝国の主になりたくなくて卑下しているのはもうわかってるんですからぁ……全くずっと一緒に居た私がその程度見抜けないわけないじゃないですかぁっ!!」
(全然見抜けてねぇええええっ!!)
どうして一番肝心なところだけ節穴なのだろうか。
「うぅ……と、というか俺がサーボ帝国の主になるのを嫌がってたのはわかってたのぉっ!?」
「勿論ですよぉ、だってサーボ先生は権力とか興味ない人なの知ってますから」
「じゃ、じゃあどうしてこんなことしたのぉっ!?」
「世界平和のためですよぉ……勇者サーボの異名ならきっと統一できると思いましたけど予想通りでしたねぇ」
(ひ、酷すぎるぅううっ!!)
いくら世界平和のためとはいえ俺の意志を完全に無視するとは、恐ろしい子だ。
(い、いや……本当はシヨちゃんが影の独裁者やりたいだけなんじゃないかっ!?)
「安心してくださいよぉ、サーボ先生が居なくてもしっかりやって行けるよう政治システムは組んでありますから……本当に嫌なら名前だけ貸して関わらなくても大丈夫ですよぉ」
「そ、そうなんだ……」
ほんのちょっとだけ安心した。
「だけどそれはあれだけの女の人の想いを踏みにじることにもなりますよぉ……サーボ先生に出来るんですかぁ?」
「……」
俺は力なく首を横に振った。
勘違いが元だろうと何だろうと俺を信じて付いて来てくれた子たちの想いを利用するだけして捨てることは、今の俺にはできない。
「ふふふ、やっぱりサーボ先生は……素敵で立派なお方ですぅ……」
(ああ、シヨちゃんの勘違いも解けないのかぁ……酷すぎるぅ……)
ようやく覚悟を決めたというのに、どうしてこう上手く行かないのだろうか。
なんだか泣けてきた。
「だけどねぇ……そんなサーボ先生に、シヨは……ちょっとだけ我儘言いたいなぁって思っちゃうんですよぉ」
「ずっと頑張ってきたシヨちゃんの我儘なら……喜んで聞くよ」
「えへへ……嬉しいですぅ……じゃあ……私だけみんなよりちょっとだけ先に……キス……してほしいですぅ」
(シヨちゃんもかぁ……)
できればごまかしたい、せめて俺の本性を理解してもらうまでは待ってほしい。
だけどこの真剣な気持ちに応えたいと思っている自分がいる。
なら下手にまたごまかしを重ねるより、素直になろうと思う。
「じゃあシヨちゃん……目を閉じて」
「は、はいぃっ!!」
俺に肯定されるとは思わなかったようで、慌てて目を閉じて顔を突き出すシヨちゃん。
本当に可愛い魅力的な女性だと思う……何よりこんな俺に付いて来てくれて嬉しかった。
だからせめてものお礼として俺は顔を近づけると……その頬にキスをした。
「え、えうぅっ!?」
「とりあえず今日のところはここまでにしておこうね」
(これが限界だ……弱虫な俺の精一杯だ)
「そ、そんなぁ……さ、サーボ先生ぃ……意地悪ですぅ……」
「どうしたのシヨちゃん?」
気が付いたら近くにいたカノちゃんが首を傾げていた。
「か、カノさん……い、いいえぇ……な、なんでもないですぅ……さ、サーボ先生また後でぇ……」
「ええ、また後で……」
カノちゃんから逃げるように急いでその場を立ち去るシヨちゃん。
(シヨちゃんも俺を睨みつけてったよなぁ……うぅ、本当に後が怖い……後が……あれば……)
「行っちゃった……まあいいや、代わりに隣座っていい?」
「いいよ、座って……カノちゃんも今日まで俺に付き合ってくれてありがとう」
「ううん、いいんだよ……サーボ先生こそずっと僕と一緒に居てくれて……ありがとうね」
お互いに頭を下げる俺たち。
(だけど今度こそ……ちゃんと言わないと……)
せめてカノちゃんには本当のことを告げたい。
ずっと一緒に居てくれた……最初に俺を外へと連れ出すきっかけになったこの子には俺の全てを知ってほしい。
「あのね、カノちゃん……実は俺言わなきゃいけないことがあるんだ」
「え……えぇっ!?」
俺の言葉を聞いたカノちゃんは……何故か派手に驚いて顔を真っ赤にした。
(い、言い方間違えたかな……また変な誤解してないか?)
とにかく言い切ってしまおうと思い口を開いた。
「あのね、俺は本当は……どうしようもない人間なんだよ」
「わ、わかってるよぉ」
「えっ!?」
俺の言葉を肯定したカノちゃん。
(ま、まさか気づかれてたのかっ!? いつの間にっ!?)
しかし考えてみればカノちゃんとはずっと二人きりで修業をしていた。
付き合っている時間は他の誰よりも長い。
まして大盗賊の観察力なら、俺の演技に不自然な点を見抜けてもおかしくはない。
「そ、それなのに……俺を慕ってくれてたのか……」
「そ、そうだよぉ……だ、だってそれでも僕……サーボ先生が大好きなんだもん……」
「か、カノちゃんっ!!」
感情が溢れる、自分でも整理がつかない。
喜びなのか悲しみなのか苦しみなのか、何もかもごちゃまぜで判断が付かない。
ただ一つだけ……愛おしい気持ちが一番強いことだけが分かった。
だから気が付いたらカノちゃんを抱きしめていた。
「ず、ずっと俺は……自分をどうしようもない奴だと思ってた……こんな俺だと知ったらみんなから嫌われるんじゃないかって……」
「大げさだよサーボ先生は……皆だって多分……ううん、少なくとも僕はその程度でサーボ先生を嫌いになんかならないよ……」
「……ありがとうカノちゃん」
自分のことが自分で嫌いで、こんな俺は誰かから本気で好かれるわけがないと思い込んでいた。
だけどカノちゃんはそんな俺を知った上で好きだと言ってくれた。
ならもう、この気持ちを抑える必要はない。
「カノちゃん……俺は……君が……好きだ」
「……へへ、嬉しいなぁ……僕も……サーボ先生が好きだよ……少しぐらい優柔不断でも……平気なんだ……」
(……優柔不断?)
何かおかしい。
いや俺は屑で無能だが判断力だけは優れていて、結論だけははっきりと出していたはずだ。
「か、カノちゃん……え、えっとその……俺ってそこまで優柔不断かなぁ?」
「だ、だから少しだけだよぉ……本気で好意を向けてくれる女の子の気持ちを否定できないんでしょ……それであんなにたくさん奥さん作っちゃってさぁ……普通なら軽蔑されるところだからね」
(そ、そういうことかぁああっ!!)
どうやら俺が勘違いしていたらしい。
そしてカノちゃんも俺の悩みを勘違いしていたようだ。
(俺が告白したかったのはそれじゃねぇ……というか第何夫人とか勝手にそっちが言い出したことだろうがぁあっ!!)
物凄く納得がいかない。
だけどここまで盛り上がってしまっては、もう何を言っても無駄だろう。
(うぅ……俺の誤解が解ける日はいつ来るのか……そんな日が在ればいいなぁ……)
「だ、だけどサーボ先生……その……じゅ、順番的にさ……ぼ、ぼくが最初の弟子なんだから……ちょ、ちょっとだけ優遇してほしいなぁ……何て……駄目、かなぁ?」
カノちゃんが恐る恐るという感じで俺の顔を見上げた。
(……今更カノちゃんだけ断るわけにはいかないよなぁ)
「……わかったよ、じゃあ目を閉じて」
「……うん」
目を閉じて俺に顔を近づけるカノちゃん。
本当に美しくも可愛らしく成長したと思う、初めて会った時の初々しさが懐かしい。
俺を連れ出すきっかけを作ってくれて、こんな俺に最初から最後までずっと付いて来てくれた。
今の俺があるのは全てこの子のお陰だ。
だからせめてものお礼……いや、俺は俺の欲望に従い顔を近づけ……唇を奪った。
「ん……っ」
可愛らしい吐息と、柔らかい唇の感触。
初めてする口づけの感触は、時を忘れさせるほど甘美だった。
「……ぷはぁ……き、キスしちゃった……ぼ、僕サーボ先生と……あ、あうぅ……」
顔を真っ赤にして目を回すカノちゃん。
本当に可愛かったけど、俺はそっと顔をそらした。
(このまま見てたら虜にされちまう……離れられなくなっちまう……)
「うぅ……ぼ、僕ちょっと頭冷やしてくるねっ!! つ、続きは後でっ!!」
「ええ……続きは後で」
カノちゃんも立ち去っていくのを見送り終えると、俺も立ち上がり移動することにした。
とある場所の土を掘って、中に隠しておいた荷物を取り出す。
そこから俺の装備一式と魔力補充用の魔法水を取り出し大量に身体に装着した。
これもそれも全て……再び魔王と戦うための準備だった。
俺は歴史を狂わさないために、過去に戻りもう一度魔王と戦う覚悟を決めたのだ。
(あの場所で出会った俺は……つまりそういうことだ)
前から考えていた、万が一魔王との戦いで戦力が足りなかった場合……少し先の未来から援軍を連れてこようと思っていたのだ。
例えば二時間先と四時間先と六時間先に居るイキョサちゃんを連れてくれば、絶大な戦力となっただろう。
最悪はそうするつもりでいて、だからこそあの場所に居た俺がそういう未来から来た存在だと気づけたのだ。
(実際にあの場所にあの俺が居なきゃ全滅してたからなぁ……だからあの役をやらなきゃ駄目なんだ……)
本当は恐ろしいし怖い、歴史の必然説が正しいのならば俺はあそこで確実に死ぬということだからだ。
逆に言えば必然説が本当に正しければ俺がわざわざ行動しなくても、何かしらで辻褄はあうはずだ。
だけどそれでも俺が、死を覚悟してまで戻る理由は……必然説が百%正しいと言い切れないからだ。
(万が一だけど……もしかしたら魔導の使い手は……時を超える手段の持ち主は意図して歴史を変えてしまえるかもしれないから……)
もし俺が過去に飛ばない事で歴史が変わり、あの時点で誰の助けも来ないことになればカノちゃんとシヨちゃんはもとより他のみんなも助からないことになる。
そんなリスクは背負えない……俺の弟子たちがみんな死ぬという未来だけは許容できない。
何より俺は、あの時あの場所で祈った内容を忘れていない。
(俺の命でも何でも差し出すからって祈っておいて……今更自分の命惜しさで止まれないよなぁ……)
だから俺は歴史を狂わさないため、再度魔王と戦う決意を固める。
(けど……死んでなんかやるつもりはねぇ……どんなことをしてでも生き延びてやるっ!!)
それこそ何をしようともみんなと共に生き残ろう、たとえ決められた運命を踏みにじることになったとしてもだ。
そして最後に祝勝会会場の盛り上がりを遠目に見て、皆の顔を焼き付けた。
盛り上がっている皆、その中で特に大事な三人の弟子の姿を見かける。
『サーボ先生、また後程……』
『さ、サーボ先生また後でぇ……』
『つ、続きは後でっ!!』
「……わかってますよ皆さん」
(約束したからな……もうあいつらに嘘はつかない……絶対に生きて戻ってやるっ!!)
そして俺は誰にも見られないようにそっと呪文を唱えるのだった。
「我が命を糧に生まれよ新なる魔の法則よ……遥かなる時の彼方へ我が身を運びたまえ、時空跳躍」
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