表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/116

修行は続くよどこまでも……まあ悪くないけど

「九百九十九……千……お、終わったぁ……」


「すっごーいっ!! サーボ大分上達したねぇっ!!」


「問題点は多いですが、昼前に終わる様になっただけでも大したものです」


「そりゃあ……休みなしで続けていれば嫌でも上達しますよ……」


 毎日毎日、回復魔法をかけられながら昼夜を問わずぶっ続けで修行を続けている。


 いくら俺でも鍛えられるというものだ。


「よぉし、じゃあ今日もお楽しみの模擬戦と行こうぜぇ~……誰と戦うよ?」


 素振りが千回出来るようになってからは、模擬戦もセットになった。


 本当にいつぞやカノちゃんにしていたことが返ってきた形だ。


(だけどさぁ……相手が伝説の英雄ってのはひどすぎるぅ……)


「私とやろうよサーボっ!! 勇者同士で切磋琢磨しようよっ!!」


(ふざけんな……この中でもぶっちぎりで強いお前となんか戦えるか……)


「それとも僕と戦いますか……ちゃんと手加減はして差し上げますから」


(ふざけんな……近距離も遠距離もこなせるお前とどう戦えってんだよ……)


「いやいやぁ、やっぱりサーボの相手といえばこのあたしだろぉ」


(ふざけんな……目の前に居ても姿を霞ませれるお前に攻撃なんか当たらねぇよ……)


 自然と俺の視線はイーアス様へと向かう。


「あら、今日も私がお相手でよろしいのですか?」


「勿論です、俺の相手はイーアス様しか考えられませんっ!!」


(こいつも化け物だが……他の三人に比べればまだマシだ……)


「ふふふ、そのような嬉しいことをおっしゃられてはお断りするわけにはいきませんね」


「ちぇ、またイーアスかぁ……」


「はん、そーやって胸で男を誘惑しやがってよぉ……」


「ふぅ……いいですかイーアス、手加減するのはいいですが甘やかすのは無しですよ」


 露骨に不満そうな三人。


 どうやら俺を玩具か何かと勘違いしているようだ。


(もしくは活きのよいペット……こっちかなぁ……)


「と、トラッパーっ!? む、む、胸などと破廉恥なことをおっしゃらないでくださいませっ!!」


 そして下ネタに顔を赤くして反発するイーアス様。


 俺の知っている彼女とまるでイメージが合わない。


(まあ俺の時代まですげえ時間の隔たりがあるし……達観したってとこかなぁ……) 


「時間がもったいないですよ、早く始めてください」


 ちょっとイラっとしているっぽいマーセ様の目がイーアス様の胸を睨んでいるように見える。


 イキョサ様も羨ましそうに見ている。


 どいつもこいつも貧乳がコンプレックスなんだろうか。


「わ、わかりました……ではサーボ様、いつでもどうぞ」


 俺を見つめてにこやかに微笑んだイーアス様。


 その手にはいつぞやテプレさんが持っていた、十字架を模した杖が握られている。


「行きますよ……闇を打ち払う閃光よ我が名により力と成せ、聖輝光(シャイニング・レイ)


 俺が呪文を唱えると身体から魔力が抜け落ちる脱力感がして、同時にイーアス様の身体が激しい閃光に包まれる。


 それを確認する前に俺は鞘が付いたままの剣を構えて駆け出した。


 いくら魔法が使えるようになったとはいえ、俺ごときの魔力では皮膚を焦がすのがせいぜいだ。


 ましてこいつらが相手では何の意味もないだろう。


(大事なのはこの眩しい輝きだ……その中心にいれば何も見えないだろっ!!)


 その隙に一発でも攻撃を当てられればこちらの勝利判定になる。


聖祝鎧(セイント・プロテクション)


「っ!?」


 しかしイーアス様が詠唱なしで魔法を唱えると、何故か俺の魔法は反射されてこちらに向かってきた。


(こ、この防御呪文……魔法も反射できたのかっ!?)


 恐らく絶対的な力量差のあるイーアス様が使ったからこそだろうが、これは予想外だった。


「や、闇を打ち払う閃光よ我が名により力と成せ、聖輝光(シャイニング・レイ)っ!!」


 仕方なく二発目を放って相殺を試みる。


 正面で魔法がぶつかり合い消滅した、瞬間にそこから杖の先端が迫り俺の喉元に突き付けられた。


「勝負あり……ですね」


「ま、参りました」


 魔法を相殺することに気を取られている間に距離を詰められたようだ。


 俺の狙いを見抜いた上で逆に利用したのだろう。


 やはり手も足も出ない。


「イーアスぅううっ!! 甘やかすなって言ってんだろっ!! しっかり一撃食らわせろってのっ!!」


「そこで攻撃魔法なりで攻撃をして怪我をさせなさい……痛みに慣れさせるのも大事なことですよ」


(外野うるせぇ……絶対お前らとは戦わねぇぞ俺は……)


「……そういうことですので、サーボ様申し訳ございません……聖祈昇威(セイント・ブースト)


「え、イーアスさ……ぐふっ!?」


 イーアス様が魔法で自らの身体能力を強化すると同時に、杖を翻し柄の部分で俺の胴体を薙ぎ払った。


 俺の身体はあっさりと宙を舞い、数メートル以上すっ飛んで地面とぶつかり転げまわる羽目になった。


「い、痛ぇえええっ!!」


「痛みがないと人は案外負けたと認識できないものです……負けて自分が弱いことを受け入れて、その上でどう強くなるかを模索していくことが成長のコツですよ」


「うぐぐ……そ、それは……」


 確かに俺は才能がないと努力を放棄して、傷付かないよう安全圏に自分を置いて周りを見下して成長しようとしなかった。


(無能だから負けるのが当然だって決めつけて……戦おうともしないで……敗北と向き合おうとしなかった……)


 代わりに屑になり切ろうと自分に言い聞かせて、その場をごまかすことだけに全力を注いで……どんどん追い詰められていったではないか。


 身体は痛いがそれ以上にマーセ様の言葉が耳に痛かった。


「辛いかもしれないけど強くなるためだから頑張ろうねサーボ」


(そ、そりゃあ強くはなるだろうけど……)


 勇者の里にすらいない最高レベルの実力者に直々に鍛えられているのだから伸びないわけはないと思う。


 しかし余りにスパルタすぎる、普段から怠けていた俺にはきつすぎる。


「まあぶっちゃけお前才能ねえから頑張ってもある程度で頭打ちだろうけどな」


「うぐっ!? そ、そんな身もふたもないことを言われても困るのですが……」


「事実だからなぁ……そこんとこ、ごまかしてもしゃーねぇだろ……大事なのはそれを認めた上でどうすっかだろ?」


 トラッパー様の言葉は配慮に欠けていてきついが、大体正しい。


「最低限の能力が身に付けば取れる選択肢も増えます、それをどう活かせるかこそが大事なのですよ」


 マーセ様の言いたいこともよくわかる。


 俺がいくら修業したところでイキョサ様はおろか、テキナさんにすら届くことはないだろう。


 ただ最低限の自衛ができる能力があれば立ち回りは大きく変わる。


(俺の得意なペテンにしたって、動きと能力が伴えばもっと説得力を持たせられる……)


「私たちが皆で勇者を名乗るのではなくそれぞれ別の称号を誇っているように、サーボ様にもきっと貴方様にしかない何かがあるはずです」


 イーアス様の言う通りだとも思う。


 カノちゃんやシヨちゃんも戦闘能力では俺にすら劣るだろうが、物凄く活躍してきたではないか。


 口先だけの俺の無能発言とは違い、ちゃんと自分の出来ることできないことと向き合った上で能力を生かして……成長していったのだ。


 そんな立派な弟子たちに後付けで追いつこうとしているのだ。


 確かにこれぐらい苦労しなければ話にならない。


(け、けどもう少しぐらい労わってほしいんだが……はぁ……)


「いつまで寝っ転がってんだ……ほら、そろそろ移動すっぞ」


「は、はい……はぁ……」


 馬車に戻り、皆が乗り込んだのを確認してから馬を走らせた。


 模擬戦が終わってから俺たちの旅はようやく始まる。


 目的は魔導の使い手……ではなくカノちゃんの防具を作ることだ。


(魔導の使い手の居場所はわからねぇからなぁ……情報を集めるついでに作っておくべきだ……)


「それで……山に向かえばいいのですよね?」


「ええ、この時代では大抵の山に怪鳥ガルーダが巣を作っていますからね」


「ディキュウ大陸はぶっちゃけ田舎すぎて交易船も殆ど来ねぇからなぁ……そーいう魔物の力を借りて海を渡ったほうが早ぇんだよ」


「それはわかりましたが……本当にハラル王国に行けば何とかなるのですか?」


 俺の疑問に、皆が頷く。


「ドーマさんって人が道具に魔法を付加できるんだ……聖剣もその人に作ってもらったんだよ」


「あの方でしたらきっとトラッパーのローブを改良してくれることでしょう」


「べぇつにあたしはいらねぇんだけどなぁ……感謝しろよサーボ、あたしらは隠居するためにこの大陸に戻ってきてたんだからなぁ」


「はい、感謝しておりますよ……」


(ドーマ……ドウマ……魔法の装備……マジカルアーマー……ご先祖様ってところかなぁ……)


 便利な奴もいたものだ。


 俺の時代に居ないのが惜しまれる。


「ついでにサーボの装備も作ってもらおっか?」


「いいのですか?」


 それはありがたい、そして心強い。


「サーボ用の装備ねぇ……攻撃力の剣、防御力の鎧、移動力の靴、魔力補強の腕輪に指輪……駄目だ、どんだけ装備を盛っても役に立つ気がしねぇ……」


「装備で補強したところでサーボ殿が最前線に立つのは難しいでしょうねぇ」


「マーセ様もトラッパー様も……どうしてそんな厳しいことを言うのですか……」


「事実だろ」


「事実ですから」


 二人そろって同じことを言ってくる……ひどすぎる。


「ふふふ……」


「い、イーアス様ぁ……笑わないでくださいよぉ」


「申し訳ございません……ですが、あのマーセとトラッパーがこれほど息が合うところを見せるのは初めてでして……」


「あってねぇよっ!!」


「あっておりませんっ!!」


「あははっ!! 本当に息ぴったりだぁっ!!」


「「ぐぅっ!?」」


 イキョサ様にも言われて、マーセ様とトラッパー様が露骨に落ち込んで見せる。


「ふふふ、素晴らしいですねサーボ様……私とイキョサがいくら申してもずっと喧嘩してばかりだったのですよ」


「魔王と戦ってる時だってここまで仲良くしてなかったんだよ……凄いなぁサーボは」


(それって魔王より嫌われてるってことなんじゃ……うぅ……どうせ俺は屑で無能だよぉ……)


 ちょっと涙が出そうになる。


「そ、それよりも……魔王の名前が出ましたが、どのような戦いだったのでしょうか?」


「あれ? 知らないの?」


「はい、イキョサ様が仲間と共に魔王軍を打ち倒した道中は知られていますが……魔王に関してはいずれ復活するとだけしか……」


「……まあそこが伝わってれば上出来じゃん……大したことはしてねーからなぁ」


(そう言えばあっちのイーアス様も魔王退治は殆どイキョサ様が一人でやったみたいなこと言ってたしなぁ……)


「一応聞いておいてもよろしいですか……ひょっとしたら俺たちが戦う際に参考になるかもしれませんから……」


「本当に大したことはしておりません……トラッパーが囮になり僕が魔王への道を作り、イーアスが補助魔法をかけたイキョサが一人で突っ込み聖剣の一撃で討伐したのですから」


「ええ、私たちなどほとんど何もしていないも同然でした……結局最後はイキョサ一人に押し付けてしまいました……」


「そんなことないからぁ……皆がそうやって私が戦える状態を整えてくれたから一撃を決められたんだよ……ありがとうね皆」


 頭を下げるイキョサを見て、皆が困ったような笑みを浮かべた。


(俺らならどうだ……テキナさんが魔王と戦えるよう、カノちゃんが囮で俺が道を作りシヨちゃんが……無理だなぁ)


 全く真似できそうにない。


 一体どうしたらいいのだろうか。


 今考えても仕方がないことだが、本当に俺のパーティの貧弱さが浮き彫りになる。


(こいつらと比べると……本当に駄目駄目なんだなぁ……)


 俺自身が足を引っ張っていることは自覚していたが、まさかメンバー全員がこのパーティに遠く及ばないとは思わなかった。


 意外に……俺一人が無能だと考えていた時よりショックだった。


「まあそれはともかくよぉ、魔王の戦いは知られてねぇのに何でシーサーペントの方は伝承に残ってんだよ……一体誰がばらしたんだぁ?」


 トラッパーが話を変えるべく呟いた言葉を受けて、俺はちらりとイーアス様を見たが神妙な顔で仲間を見回していた。


 他の三人も互いに顔を見合わせるばかりで、誰もイーアス様へ疑惑の目を向ける者はいなかった。


「貴方しかいないでしょうがトラッパー、どうせ酒に溺れて漏らしでもするのでしょう」


「このあたしが酒に飲まれるわけねーだろうがっ!! 悪酔いすんのはおめぇだろマーセっ!!」


「僕が自発的にお酒を飲むことはありませんよ……あなたが罠を仕掛けでもしない限りはねぇトラッパーっ!!」


「あぁ……やんのかテメェっ!!」


「望むところですよ……今日という今日こそ叩きのめして差し上げますっ!!」


 いきなり馬車の中で争いが始まった。


(こんな狭い中でよくやるよ……)


 後ろを振り返り様子を窺ってみると、抜き身の刃で真剣に殺し合っている。


「ああ、まただよもう……やっぱりサーボが傍に居なきゃ駄目なんだねぇ……」


「いい加減にしてくださいませ……聖祈鎖(セイント・リストリクション)


 イーアス様の魔法が二人の身体を拘束した。


 そして……何をどうしたのかあっさり無効化したマーセ様と抜け出したトラッパー様は平然と喧嘩を続けた。


(やっぱり人間じゃねぇこいつら……)


 下手すればこの二人の実力はテキナさんを上回っているかもしれない。


 イーアス様にしてもカーマやセーヌよりは確実に強い。


 そこにイキョサ様が加わっているのだ、これなら魔王を倒せるわけだ。


「余計な真似すんじゃねーよっ!!」


「と、トラッパーやめてくださいませっ!!」


「もお……いい加減にしてよっ!!」


「邪魔をしないでくださいイキョサ……この愚か者に身の程を教えてやる必要があるのです」


 そんな伝説のパーティが身内同士で暴れ始めた。


 多分本気ではないだろうが、馬車が物凄い悲鳴を上げている。


「……チームワークなら俺たちのほうが上かもなぁ」


 ぼそりと呟いてしまう。


 あちらでは冗談めかして絆がどうとか言っていたが、お陰で俺たちの仲は悪くないと思う。


 少なくともこうして争うようなことはなかった。


 最もこちらの関係も喧嘩するほど仲が良いというやつだろうが、それでもやはり俺たちのほうがチームワークは上だと思いたい。


(帰りたいなぁ……早くあいつらの顔が見たいよ……)


 厄介ごとを持ち込む面倒な奴らだと思っていたけど……案外俺はあいつらに心を許していたようだ。


 恋愛感情はともかくとして、魔王退治が終わってからも共に歩むのも悪くないかもしれない。


「……サーボ、何考えてるの?」


 ずれた服を直しながらイキョサが運転席に顔を出した。


 そっと後ろを見ると積み重なって呻いている三人の姿が見える。


(流石最強勇者……レベルが違うわ……)


「少し元の時代に残してきた仲間のことを考えていました……」


「そっか……ねぇ、せっかくだしサーボの旅も聞かせてよ」


「……俺の視点からだと他力本願でとてもひどい話になりますよ」


「そんなことないと思うなぁ……良いから聞かせてよぉ」


「失望しないでくださいよ……じゃあ勇者の里を出るきっかけから……」


 俺は馬を走らせながらこれまでの旅路を説明していった。


 勇者候補に選ばれたテキナさんに指名されたこと、仲間に有力者を選ばせようとして失敗したこと。


 三人とも美女美少女揃いだったせいで里中の男から嫉妬されて殺されかけたこと。


「へぇ……私と違って未来の勇者はみんなそんなに綺麗なんだ……サーボが帰りたがるわけだねぇ」


「いえ、イキョサ様たちも同じぐらい美人だと思いますよ……魅力的な女性ばかりです」


「も、もう……そーいうお世辞はいいのっ!! それより続きっ!!」


「本気なんですけどね……勇者の里を出てからは……」


 道中で襲われている村を助けたこと、馬が怪我をして走っていく羽目になったこと。


 立ち寄った農場でならず者を退治して、そのまま寝ずに王都に向かう羽目になったこと。


「あはははっ!! お前苦労してんじゃねぇかっ!!」


「痺れ薬に眠り薬……全くどの時代もならず者のすることは変わらないのですねぇ」


「あと一歩で死ぬところでしたよ……皆さんも魅力的な女性なんですから気を付けてくださいよ」


「そ、そのようなことはございませんっ!! さ、サーボ様は先ほどからお世辞が過ぎますっ!!」


 気が付けば他の三人も復活して、俺の話に聞き入っていた。


「だから本気ですってば……王都イショサについてからは……」


 寝不足で訳の分からないうちに勇者許可証を貰ったこと、ワンナ村でカノちゃんが大盗賊認定を受けたこと。


 次の村で女に化けた魔物に勇者パーティが全滅しかけたこと。


「め、メロンサイズだとぉ……」


「な、なんと憎らしい魔物でしょうか……」


「ちゃんと退治したっ!? 手を出してないよねっ!!」


「も、もちろんですよ……それで次の村に向かいまして……」


 幻覚を操る魔物にやられかけたこと、帰り道でツメヨ国の王女プリスちゃんを助けたこと。


 勇者を辞めて逃げ出そうとして……魔物の群れに襲撃を受けているツメヨ国に向かう羽目になったこと


「魔物の群れ……なんか変だねぇ」


「私たちの場合は、国を落とす際には魔王が直々に出てきておりました」


「つーか、魔王軍自体そんな派手な組織じゃなかったからなぁ……ひたすら魔王本人が暴れてるのが脅威なだけで……」


「そうなのですか……まあともかく、ツメヨ国に入ってからは……」


 野盗に襲われている村を救出したこと、その村を拠点にして魔物の本拠地を潰して回ったこと。


 独裁者の才能を開花させたシヨちゃんに翻弄されながら、王都ツメヨへと乗り込んだこと。


「す、すげぇなそのシヨってやつ……」


「あはは……しかし、確かに我々の時代とは攻め方が違いますね……」


「人に化けて翻弄するような狡猾な真似をされていたら私たちは更なる苦戦を強いられていたでしょう」


「本当にねぇ、私たちの時は基本力押ししかなかったから……どうなってるんだろぉ?」


「一度やられて警戒しているのかもしれませんね……それでついに王宮へ乗り込みまして……」


 王女プリスちゃんに化けた魔物を打ち破ったこと、王座の間に居た魔物を殲滅したこと。


 シヨちゃんが独裁者として大暴れしながらも復興を終えたこと。


「……サーボは苦労してるんだねぇ」


「しかし見事な活躍ですよ……仮に内心がどうであれ被害者を一人も出さずに解決したのですから……」


「そりゃあお姫様に惚れられてもおかしくねぇわ……上手いことやったなぁお前……」


「いや正直困っているのですが……そうしてようやく落ち着けると思いましたらイショサ国から手紙が届きまして……」


 冒険者ギルドの看板娘のせいでリース国へ向かう羽目になったこと、大僧侶テプレ様をごまかして逃げ出そうとしたこと。


 カーフ村に向かう途中でサンドワームと出会ってしまったこと。


「結界ですか……発想は良いのですがそのような欠陥があるとは……開発者の顔が見てみたいものです」


(確か貴方じゃなかったですかねぇ、マーセ様……)


「まあサンドワームはあれで育つのがおせぇからなぁ……一度ふせぎゃぁ何とでもなるだろ……」


「一つの国全体を覆う結界を維持しているとは……そちらの大僧侶は頑張っておられるのですね」


「ええ、とても助かっております……話を戻しまして、その後は……」


 魔王軍の奇襲を退けながらサンドワームの巣を目指したこと、退治したサンドワームが残した宝箱からタシュちゃんと出会ったこと。


 ムートン君の余計な一言で一人で龍人族と対峙することになったこと。


「そうですか……カーフ村は……」


「力及ばず申し訳ございません……」


「いいえ、むしろ感謝させてくださいませ……サーボ様のお陰で犠牲者は最小限に抑えられたのですから……」


「しかしサーボは運わりいなぁ……悪運は無駄に強いのになぁ……」


「バランスはとれてるのかなぁ……それでドラゴニュートで一番強い人と対峙してどうなったの?」


 ギリィを口先でごまかし勇者候補にぶつけたこと、テプレ様と共に大聖堂を目指したこと。


 そこで皆で試練を受けて大変な目に合ったことを伝える。


「あははははっ!! さ、サーボずるぅいっ!!」


「ワイバーンの群れを相手にどうしようもないですからねぇ……あの時は生きた心地がしませんでしたよ……」


「それはともかくよぉ……大聖堂の試練ってなんだよ?」


「私も初耳でございます……それにマーセが残した宝箱というのも何でございましょうか?」


「本当にわかりませんね……詳しく聞いてもよろしいでしょうか?」


(これは……教えてもいいのか?)


「教えても大丈夫なのでしょうか……皆さまの行動にも関係することですし未来が変わってしまうのでは……」


「もしも過去に干渉することで未来が変化するのでしたらサーボ殿が来た時点でそれは起きていますよ……逆に変わらないのであれば何をしても既に歴史の必然として組み込まれていることでしょう」


 少し考えて、俺の時代に居たイーアス様の態度から判断して後者が正しい気がした。


 つまり俺がこの時代に来て色々するのは歴史の必然に組み込まれているはずだ。


(なら……いっか……)


「試練はイーアス様が残したものでして……」


 俺は試練の内容を伝え、隠し部屋の奥でイーアス様の魂と出会い会話したことを伝えた。


「ほ、本当でございますかサーボ様っ!?」


「ええ……ですから俺はイーアス様の姿を見た時点で、ここが過去なのだと受け入れられたのですよ」


「確かにサーボ殿は早い段階でここが過去だと認識しておりましたね……そちらの立場なら私たちが過去の英雄を騙っていると考えるほうが自然のはずですからね」


「イーアス……お前実はすげぇババァ……」


「ち、違いますっ!! 今の私はまだ二十代でございますからねサーボ様っ!!」


「わ、わかっておりますよ……そ、それで俺たちは一度王都へと戻りまして……」


 皆と別れて一人で田舎村に逃避したこと、ツメヨ国から難民と野盗が押し寄せて対処する羽目になったこと。


 ミリアさんに脅されて仕方なくツメヨ国へ向かう羽目になったこと。


「サーボってちゃんと勇者してるんじゃないの?」


「逃げ出したことはともかく、目の前の事態にきちんと対処しているのは見事だと思いますよ」


「ええ、食料問題の解決など……私たちですら成し得なかった偉業だと思われます」


「お前戦闘能力以外は才能あるんじゃねぇか?」


「……いえ、全部仲間のお陰ですよ……俺はただ流されていただけ……実際にその後も……」


 ミリアさんを囮に逃げ出そうとして失敗したこと、適当な言い訳を並べて逃げ出そうとして失敗したこと。


 キマイラに狙われて口先でごまかして他の皆に助けてもらったこと。


「この通り……俺は無様なものです……」


「そーかなぁ……むしろ大したことしてると思うけどなぁ」


「実際に誰も見つけられなかった魔物を見つけ出し、全員で戦える土台を作り上げた……見事な立ち回りだと思いますよ」


「そうですよサーボ様……そんなに卑下なさらないでくださいませ」


「だけどキマイラ一匹にそんな苦戦するとか……そっちの勇者は大丈夫なのかぁ……」


 トラッパー様が呆れたようにぼやいている。


「確か魔王城の門番もキマイラだったのですよね……強敵ではなかったのですか?」


「うーん、苦戦はしたんだけど……五体いたからねぇ……」


「ご、五体を同時に相手にしたのですか……良く突破できましたねぇ……」


「面倒だったけどそこまでじゃねぇよ……本当に大丈夫かよお前ら……魔王ははっきり言って桁が違うぞ……」


「困りましたね……話を聞く限りテキナ殿はともかく他の方がその調子では……」


(マジかよ……でも確かに四大幹部にすら俺らは手こずってるしなぁ……)


 これは本気でどうするか考えないといけないかもしれない。


 イキョサ様たちに劣る俺たちが、イキョサ様たちが戦ったより強い魔王と戦わなければいけないのだ。


 戦力不足をどう補うか、それは多分俺がどうにかしないといけない問題だ。


(まあその前に元の時代に戻る方法を見つけないと…………戻る方法と魔王を倒す方法……あれ?)


 何かが頭をよぎる。


 魔王と対等に戦うために……何か……いい方法が思いつきそうな気がした。


「…………ボ……サーボ?」


「あ、ああ……何でしょうか?」


「馬止まってんぞ……しっかりしろって」


 どうやら考え込んで手元がおろそかになっていたようだ。


 慌てて馬を走らせたところで、既にかなり日が落ちているのがわかった。


「もうこんな時間ですか……かなり山も近づいてきましたね」


「よぉし、近くにある村を探せ……そこに馬を預けて明日は走って一気に山を登るぞぉ」


「わかりました……」


 俺は思考と会話を打ち切って近くの村を目指して馬車を走らせるのだった。

 【読者の皆様にお願いがあります】


 この作品を読んでいただきありがとうございます。

 

 少しでも面白かったり続きが読みたいと思った方。


 ぜひともブックマークや評価をお願いいたします。


 作者は単純なのでとても喜びます。

 

 評価はこのページの下の【☆☆☆☆☆】をチェックすればできます。


 よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ