聖剣を求めて
「ようこそ勇者サーボ御一行よ」
一夜明けて早速王宮へ向かった俺たちはあっさりと中へと通された。
頭を下げて自己紹介を済ませると、隣の大陸で起きた出来事を伝える。
「人に化ける魔物に四大幹部……さらに魔王か……この国でも魔王軍の狼藉は起こっておったがこれほどの事態だとは……」
「魔王軍の脅威は本物です、もはや一刻の猶予もございません……この国にあるという聖剣をぜひお譲りいただきたい」
「……言われることはごもっともである、出来得るならばそうしたいところであるのだが……まことに申し訳ない……聖剣を渡すことはできぬのだ……」
そう言って頭を下げる王様。
「そ、それはどういうことですかっ!?」
テキナさんが声を上げると気まずそうに王様は口を開く。
「聖剣は……今はこの国にはないのだ……」
「……王女のフウリ様が特別な剣を振り回していると聞いておりますが……それとは関係があるのでしょうか?」
「流石勇者殿……ごまかしは聞かぬな、その通り我が愚女であるフウリめが『あ』殿から奪い取り……そのまま出奔してしまったのだ……」
「何とっ!?」
(おいおい……何考えてんだよフウリ様よぉ……)
まさか家出までしているとは思わなかった。
「元々王族としての暮らしに窮屈さを感じていたようであったがまさかここまでするとは流石の余も思わず止めきれなかった……本当に勇者の方々には申し訳ないことをしてしまった……」
そう言って旅人相手に再度頭を下げる王様。
本当に申し訳なく思っているのだろう。
(だけど関係ねーよ……ちゃんと娘ぐらい躾けろよ……)
「それで……娘さんはどの辺りにいるかはわかっているのでしょうか?」
「いや、どうも領内を巡り魔物を退治して回っておるようだ……全く冒険者の真似事などして遊び惚けて……情けない限りである……」
(一カ所には留まってない感じかぁ……本当に厄介だな……)
最も海はシーサーペントのせいで通行不可能だったから別の大陸に行かれていないのは救いだ。
(ある意味助かったけど……放っておいたら海を渡りかねないなぁ……)
一度港町に戻って監視してもらっておいたほうがいいかもしれない。
「せめてものお詫びと言っては何であるが、他のことであれば助力は惜しまぬ……何かあらぬか?」
「もう一つ、魔力の霧を何とかしたいので魔導の使い手を探しているのですが……心当たり等ありませんか?」
俺の言葉に王様はゆっくりと首を横に振った。
「少なくともこの国にはおらぬな……しかし隣国のドウマ帝国ならばあるいは……」
話によるとどんどん新型の魔法兵器を開発しているらしい。
「その制作にあるいは関わっておるのかもしれぬ……」
「なるほど……」
確かにあり得ると思う。
しかしあの国は魔王軍と通じている可能性が高い。
(出来れば近づきたくねぇけどなぁ……そういえば勇者『あ』殿はどうなんだ?……)
「……この国の勇者である『あ』殿は空を飛ばれてましたが特別な魔法を使っているのではないのですか?」
俺の言葉に王様は首を横に振った。
「あの者は基本的に魔法は使わぬのだ……代わりにスキルという特別な能力で活動しておる」
「スキル……とは?」
「この大陸独自の戦闘法である……魔力を魔法として放たず体内に循環させることで各種能力の強化を行う技の総称のことを言うのだ」
「僅かにですが聞いたことがございます……確か魔法剣の応用として発展した技術だとか……」
テキナさんの補足に僅かに納得がいった。
魔法として放つのではなく身体や武具の一部に魔力を宿らせて威力アップを図るのだろう。
「そのスキルって奴に空を飛ぶものもあるってことかな?」
「いや、あれは勇者『あ』殿だけしかできぬ……特別なのだ……」
そう言って王様は少し疲れたようにため息をついた。
「周囲を薙ぎ払うための回転切りで浮力を得て飛び上がり、突進して敵をせん滅するオーラ突きを連続使用して高速で移動しておるのだ」
「……そ、そんな使い方ありなのですか?」
「本来スキルは魔力を循環させる関係上、再使用には時間がかかるはずなのだが……魔力を完璧に調整することでそれを零にしておるようなのだ」
「それは何とも……」
(……化け物じゃねぇか)
しかしわざわざそんな面倒なことをしているのなら魔導の使い手の関係者ではないだろう。
魔導の使い手ならば、それこそそういう魔法を作ったほうが早いからだ。
(振り出しに戻ったか……)
まあ俺は魔導の使い手のほうはそこまで本腰を入れて探すつもりはない。
(下手に見つかって霧が何とかなったらそれこそ敵の本拠地に乗り込む羽目になりそうだからなぁ……)
俺の役目は聖剣の回収までだ。
それが終われば今度こそ隠居してやる。
(仕方ねぇ、何とかフウリ様を見つけ出して力づくででも聖剣を奪うとするか……)
当面の方針は決まった。
もうここに用はない。
俺たちは王様に頭を下げて王宮を後にした。
「サーボ先生、この後はどうするの?」
「魔王軍との繋がりと魔導の使い手のことを思えば、速やかにドウマ帝国へ向かうべきだと思いますが?」
「それとも聖剣の確保を優先しますかぁ?」
(安全なほうに決まってるだろうが……)
「魔王軍はどんどん手ごわくなる、俺たちがキマイラを退治したことも知れている以上この国に派遣されるのはそれ以上の実力者である可能性が高い……なら先にこちらの戦力を補強すべきだ」
「そうですね……サーボ先生のおっしゃる通りです、私はまた目の前のことしか見えなくなっておりました」
「すぐにでもドウマ帝国の人々を助けに行きたいテキナさんの気持ちもわかるけどね、俺たちが負けたらそれこそ助けを求める人々を救うことはできなくなってしまう……まずは自分たちの状態を完璧に仕上げないとね」
テキナさんが落ち込まないようフォローしつつ聖剣の確保の重要性を説いてみる。
最もこんなことしなくても俺の言葉ならこいつらはあっさり納得する。
「そうだね……じゃあ早速フウリ様を探しに行こうっ!!」
「そうしましょう……しかしそうなるとどこを探すべきか……」
「まずは港町に戻ろう……万が一にも大陸外に移動されたら面倒なことになる」
「それに船員さんや私たちに感謝してた港町の人にも協力してもらいましょぉ……人手は多いほうがいいですからねぇ」
異論もなく早速人力車で港町へ向かう俺たち。
「あっ!? サーボ先生、また『あ』殿が空を駆け抜けていきましたっ!?」
(忙しなく動き回ってんなぁ……)
「あれじゃあ追いつけないよねぇ……」
「まあいずれ向こうからやってくるって言ってましたし、とりあえずは放置ですねぇ」
「そうだね、今は先に聖剣を手に入れてしまおうじゃないか」
(そしてできれば隠居……と行きたいが魔王軍がいるんだよなぁこの大陸……)
やはり何とかしておきたい。
色々と考えておこう。
「サーボ先生、港町が見えてまいりました」
「そうだねぇ……あれ、何か騒がしいなぁ?」
何やら人々が入り口に集まっていて、ちょうど戻ってきた俺たちを見て声を上げている。
「ゆ、勇者サーボ様っ!?」
「ああ、何ということだ……ちょうどいまフウリ様と『あ』殿が立ち去ったところだというのに……」
「それは、一体どういうことでしょうか?」
話を聞いてみると今さっきフウリ様と『あ』殿は俺たちに会いにここへ来ていたらしい。
「すれ違いですかぁ……困りましたねぇ」
「何処に向かったかはわかりますか?」
尋ねてみると俺たちを追って王都へと向かったらしい。
「わかりました……サーボ先生、すぐに追いかけましょうっ!!」
「……いや、またすれ違いになったら困る……ここで待とうじゃないか」
(サボる口実発見……船の上で休めば宿代タダ&結界付きで安心安全だぜ)
「それもそうですねぇ……あの速度ならすぐにでも戻ってきそうですからねぇ……」
念のために住人に俺たちがここで待っていることを王都へと伝えてもらうよう頼んだ。
後は待つだけだ、俺たちは船に戻り二人がやってくるまで休むことにした。
そして、丸一日が経過した。
「……来ませんねぇ」
(助かるっちゃぁ助かるけど……丸一日たってやってこないとは思わんかったわぁ……)
「サーボ先生……このように無為な時間を過ごしてよいものでしょうか?」
「聖剣を手に入れるために必要なことをしているのだから無駄ではないよ……それにこういう時にでもゆっくり休んでおかないと非常時に戦えないじゃないか」
真面目なテキナさんを諫めながら俺は休暇を楽しむことにした。
そして二日目、未だに二人は姿を現さない。
「どうなってるんですかねぇ?」
(確かにおかしい……)
既に伝言は王都に届いているはずだ。
なのにどうしてやってこないのだろう。
「サーボ先生、我々も動くべきではないでしょうか?」
「そうしてすれ違ったらお終いだからね……情報が入るまで我慢しよう」
(テキナさんはすぐにでもドウマ帝国に向かいたいんだろうなぁ……俺は絶対にごめんだけど……)
このままここに居続けたいぐらいだ。
そして三日目になった。
「勇者サーボ様ぁ……大変ですぅ……」
王都に俺たちのことを伝えに行った住人が青ざめた様子で戻ってきた。
「あのお二方はサーボ様が王様に話した情報を聞くなり、ドウマ帝国へと向かって行ったそうでございますっ!!」
(マジかっ!? それはありがたいっ!!)
代わりに危険なドウマ帝国に向かってくれたのだ。
感謝しかない。
「なんと……サーボ先生、我々も後を追いかけましょうっ!!」
(まあこうなるよなぁ……けどここからドウマ帝国までは結構かかる……)
その間に『あ』殿が優秀なら何とかなっているだろう。
「そうだね、じゃあ俺たちもドウマ帝国へと向かうとしよう」
港町の人々にその旨を告げて、俺たちはドウマ帝国へと向かう支度を始めた。
「中々会えないねぇフウリ様にも『あ』さんにも……」
「しかしドウマ帝国に向かっているのならば道中で出会うこともあるだろう」
「だといいけど……また空を飛んでいかれたら手も足も……」
「そうだ、サーボ先生っ!! ワイバーンで空を飛んでいきませんかぁっ!?」
(冗談じゃねぇ、そんなことしたらあっさり到着しちまうじゃねぇかっ!?)
「いや、仮にも魔物での移動は危険だよ……人々に不安を与えてしまう……」
「ですけどぉ、人力車よりずっと早いですし……何より空を飛んでるから『あ』殿ともコンタクトをとれるかもしれませんよぉ?」
(だからそれが嫌なんだよ……って正直に言うわけにも行かないしなぁ……)
「それに一応ワイバーンも戦力になるし……」
「サーボ先生、私もそうしたほうがいいと思います……」
三人ともワイバーンで移動する気満々のようだ。
何とか説き伏せたいが……上手い言葉など思い浮かばない。
(どうすっかなぁ……)
考えに考えて、結局俺はこの提案を受け入れることにした。
仮にも紛争地域に向かうのだ。
確かに身の安全を考えれば戦力は多いほうがいい。
また非常時に空へと飛んで逃げれることも大きい。
(何より人力車で移動するより……俺の監視に隙が出来そうだしなぁ……)
俺はまだ隠居をあきらめてはいない。
何とかこいつらの目をごまかして逃げ出せるかもしれない。
そう思って俺はワイバーンで移動することにしたのだ。
早速背中から滑り落ちないよう座席を括り付け、テキナさんの誘導で飛び立った。
「速い速い~っ!!」
「やっぱり空を飛ぶと全然効率が違いますねぇ~」
「うむ、この調子なら数日でドウマ帝国までたどり着けそうだな」
(はぁ……どうか俺がたどり着くまでに全部片付いていますように……)
祈ってから気づいた。
俺の願いなど叶ったことが殆どなかったことにだ。
(嫌な予感しかしねぇ……)
何か致命的な間違いを犯してしまったような気にさえなりながら、俺たちはドウマ帝国を目指すのだった。
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