表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/116

セーレ様と俺

「いい、セーレちゃん……サーボ様の言うことをよぉく聞くのよ?」


「うん、わかったっ!! マーメイの為ならセーレは頑張るぞっ!!」


「あぁ、いい子ねぇセーレちゃんっ!! とってもいい返事ですよっ!!」


「……そろそろよろしいでしょうか?」


 あれから丸一日かけてようやく大陸への移動を伝えることができた。


「いいぞっ!! セーレはいつだって準備はできてるんだからなっ!!」


「格好いいわぁセーレちゃん……だけど忘れ物がないかだけ確認しましょうねぇ」


「大丈夫だぞっ!! 全くマーメイは心配性だなぁっ!!」


 言いながら早速一人で飛び立とうとするセーレ様。


「あのぉ、俺を置いて行かないでくれませんか?」


「あれ? 一緒に行くのか?」


「……ええ、二人で行こうと話が決まったじゃないですかぁ」


 セーレ様は一人を抱えて飛ぶのが限界らしい。


 だから色々と考えて、何よりこっちのほうが安全そうだし俺が付いて行くと決めたのだ。


「やっぱり僕が行こうか?」


「私が行ってもいいですよぉ?」


「結界さえなければ私が行っても良いのだが……」


 何故かセーレ様はみんなから大人気だ。


 テキナさんも目が覚めてから餌……もとい食事を食べさせて喜んでいた。


「よーしっ!! じゃあ皆で行こうじゃないかっ!!」


「凄いっ!! 流石セーレちゃん天才の発想ねぇっ!! 私もついていくわぁっ!!」


「……いや、どうやって行くんですか?」


「皆で空を飛べばいいんだっ!! 大丈夫、セーレが飛び方を教えてやるっ!! こうやって翼を動かすといいんだぞっ!!」


 本当にお馬鹿すぎて話が進まない。


「いや、セーレ様しか翼持ってませんから……それに霧のせいで俺たちじゃ行き来できないんですよ……」


「そうなのか? 仕方ないな、じゃあ一人で……どこに行けばいいんだ?」


「だぁかぁらぁ……俺を連れてリース国の洞窟に向かうんですぅうううっ!!」


「リース国ってどこだ?」


「ああああああああああああああっ!?」


(もういやだ……もう俺帰るぅうううっ!!)


 こんな海に出てきたのが間違いだった。


「さ、サーボ先生落ち着いてぇっ!?」


「サーボ先生、しっかりしてよぉっ!!」


「サーボ先生、そんなに取り乱されては皆の示しになりませんよっ!?」


「どーした勇者サーボっ!? 何かあったのかっ!? セーレが助けてやるぞっ!!」


「きゃぁセーレちゃん素敵ぃいっ!! サーボ様もセーレちゃんの魅力にやられちゃったんですねぇっ!! わかりますよぉっ!!」


(もうお前ら全員黙っててくれ……できればどっか行ってくれぇえ……)


 辛い、きつい、厳しい、心が痛い。


(ああ、そうか俺って……話が通じねぇの駄目なんだなぁ……)


 弱点だらけの自分に新たな欠点を発見してしまう。


 口先だけで生きているからこそ、会話が成り立たない奴を相手にすると思いっきりダメージを受けるらしい。


(道理で俺を勘違いして予想外の方向に話を持っていく弟子たちが苦手で仕方ないわけだ……納得いったわぁ……)


 しかしどちらにしてもこの状況では苦手なセーレ様を避けるわけにはいかない。


(いや、逃げてぇけど……部屋に引きこもろうかなぁ……)


 本気で考えそうになるが、何とか堪えた。


「とにかく俺を連れて飛行してください……後のことは指示しますからぁ……」


「わかったぞっ!! じゃあ今度こそ行ってくるぞっ!!」


「ええ、お願いしますぅっ!!」


「帰りは私を目印にすればいいからね……セーレちゃんファイトっ!!」


「うん、行ってくるーーっ!!」


 背中に俺を担いだセーレ様が飛び上がる。


「それでどっちに行けばいいんだ?」


「ええと、あっちの方ですね」


「わかったぁっ!!」


 俺の指示に従ってセーレ様は早速移動を開始した。


 中々の速度だ。


 タシュちゃんには敵わないだろうがそれでもこの速度なら半日で往復できそうだ。


(はぁ……やっと話が進むぜ……)


「あぁっ!? あれを見ろサーボっ!!」


「何ですか……鳥ですかねぇ」


「渡り鳥さんだぞっ!! 見に行こうかっ!?」


「行きません……まっすぐ飛んでください……」


 寄り道しようとするセーレ様を諫める。


「わかったぞ、まっすぐ飛べばいいんだな……虹さんだぁっ!!」


「はいはい、綺麗だねぇ……いいからまっすぐ飛ぼうねぇ……」


 寄り道しようとするセーレ様を諫める。


「わかったぞ、まっすぐ飛べばいいんだな……おお、下でお魚さんが跳ねてるぞぉっ!?」


「うわぁ、可愛いねぇ……良いからまっすぐ飛ぼうねぇ……」


 寄り道しようとするセーレ様を諫める。


「わかったぞ、まっすぐ飛べばいいんだな……あ、あれは……」


「まっすぐ飛べって言ってるだろうがぁああああっ!!」


 我慢できず怒鳴ってしまった。


(こんなの耐えられねぇよ……新手の拷問かよぉ……)


「ひぅっ!? み、耳元で怒鳴るなよぉ……うぅ、怒られたぁ……パパにもママにもマーメイにも怒られたことないのにぃ……ぐすん……」


(甘やかされすぎだろう……道理でこんな子に育つわけだよ……)


 露骨に怯えて飛行速度も落ちてしまった。


 顔も涙目だ。


 ここで機嫌を損ねても仕方がない。


「……すみません、怒鳴ってしまって……しかし今もあの魔物に苦しむ者が居ると思うと一刻も早く移動を済ませてしまいたいのです」


「うぅ……本当に悪いと思ってるかぁ……もう怒鳴らないかぁ?」


(会話の内容より俺が怒ってるかどうかだけを気にしてやがる……ガキにもほどがある……)


 どう見ても成人している年齢だというのに、いくら何でも幼過ぎる。


「ええ、もう怒ってませんよ……セーレ様はいい子ですからね」


「な、なら……いい子いい子しろぉ……謝る時は頭を撫でるんだぞぉ……」


(マーメイ様かな、こんな変な躾……というか甘やかし方したのは……)


 訳の分からないルールだが、逆らう理由がない。


「はいはい、いい子いい子……セーレ様は素晴らしい子ですよ」


「……えへへ、そうだぞっ!! セーレはいい子なんだぞっ!! 見てろよぉっ!!」


 あっという間に元気を取り戻し、移動速度も元に戻った。


(単純というか何というか……これはこれで面倒くせぇ……)


 しかし大体の扱い方はわかった。


 途中で目移りするのはともかく、褒めながら指示すれば言う通りに動くだろう。


 事実、途中で何度も寄り道しようとしたが最終的には俺の指示を優先して移動してくれた。


「ええと確かこの辺りに……あそこですっ!!」


 お陰で何とか無事に目的地へ到着することができた。


「ここかぁ……何か暗くてジメジメしてて……楽しそうだなっ!!」


「そうですか……じゃあ進みましょうか……」


「よーし、行こうっ!!」


 意気揚々と進み始めたセーレ様。


 もちろん道がわかるはずもなく勝手に進んでるものだから道を間違えまくっている。


「サーボ行き止まりだぞっ!?」


「だから右だって言ったでしょ……」


「わかった……あれ、分かれ道がない……出口だっ!!」


「まっすぐ下がらないで……戻ってきちゃったでしょ」


「そうなのかぁ、じゃあもう一度挑戦だっ!!」


「だから走って行かない……そこは右だぁあああっ!!」


 何度も同じところに引っかかりながら、何とか最奥の大聖堂へ辿り着くことができた。


「サーボぉ……あんまり大声出さないでよぉ……ぐすん……」


「ごめんなさい……ほら、いい子いい子……セーレ様は強い子でしょ……いい子いい子……」


「えへへ……そうだ、セーレは強いんだぞっ!! えっへんっ!!」


(め、面倒くせぇ……今までで一番厄介だこいつ……)


「はぁ……では隠し通路を開きますから……」


「あっ!? 何か本が置いてあ…………」


(……馬鹿め)


 勝手に本に触れて試練を開始したセーレ様が泡に包まれて浮かび上がった。


 セーレ様ごと泡を叩き割りたい衝動に耐えながら事態の推移を見守る。


 しばらくして泡が割れてセーレ様が落下した。


 もちろん隠し通路は開いていない。


「……あれぇ、ここどこぉ?」


「お目ざめですかセーレ様……」


「あ……サーボ? パパとママとマーメイはぁ? マーメイどこぉ……セーレを置いてっちゃヤダよぉ……ぐすん……」


「いえ、セーレ様は夢を見ていたんですよ……」


 俺は試練について教えた。


「そっかぁ……そうだよなぁ、あんな都合のいい話無いもんなぁ……うぅ……マーメイぃ……ぐすん……」


(物凄くショックを受けてる……恥ずかしがってるわけでもないし、どんな夢を見たんだよ?)


「とにかく、先に進みましょう……確かこの女神像に触れれば……開きましたよ、行きま……っ!?」


 顔を上げた俺は、またしても泡に包まれているセーレ様を目撃した。


(何考えてんだこいつは……)


 まさか自ら進んで二度も試練を受ける奴がいるとは思わなかった。


 流石に無視していくわけにもいかず、俺はセーレ様が試練を終えるまで待つことにした。


「……あうぅ……ここはぁ……サーボぉ……マーメイはどこぉ?」


「ですからここにはいません……早くマーメイ様のところに戻るためにも用事を済ませ……だから駄目ですってっ!!」


 性懲りもなく本に手を伸ばしたセーレ様を抑えた。


「もう一回……もう一回だけぇ……もう一回見たら満足するからぁ……」


「それは絶対終わらない奴です……ほら、先に進みますよ……」


「ヤダぁ、意地悪しないでぇ……セーレはここで遊んでるからサーボだけで用事済ませてきてよぉ」


「これは玩具じゃありません……それにここで見た夢の内容はこの先にいる人に見られてるんですよ……いいんですか?」


 俺の言葉にセーレ様は身体を震わせ、弱々しい目を向けてきた。


「そ、そうなのか……み、見られちゃったのか……うぅ……ど、どうしよう……あんなのバラされたら……マーメイに泣かれちゃうよぉ……」


「大丈夫、あの人はそのような事をする方ではありませんよ……何せあの大僧侶イーアス様なのですからね」


「……本当なんだな、信じていいんだな?」


「ええ、あの大僧侶イーアス様ですから……知ってますよね?」


 俺の言葉にセーレ様はフルフルと頭を横に振るのあった。


「知らないよぉ……人間なんか殆ど見ないし、話したのだって今日が最初だよぉ……」


(世界を救った伝説の英雄を知らねぇのか……信じられねぇ……)


「……魔王はご存じですよね?」


「うん、魔物の親玉だろぉ……マーメイがとっても危険だから近づいちゃいけませんって口酸っぱくして言ってたもん……」


(……まあ、間違ってねーけどさぁ……言い方ぁ……)


 頭が痛くなってくる。


 どうやら本格的にこいつと俺は相性が悪いらしい。


 さっさと用事を済ませて別れるとしよう。


「ならいいのです、では先に進みましょう……」


「わかったよ……何か暗くて狭いなぁ……ちょっとワクワクするなっ!!」


 すぐに元気を取り戻したセーレ様。


 こういうところも含めて、子供にしか見えない。


(仮にも長がこんなのでいいのかぁ……こいつの一族ってどうなってんだよ……)


 どうでもいいことなのに気になって仕方がない。


(マーメイ様はこいつのことを頭がいいって褒めてたなぁ……もしもそれが種族内で比較してという意味だとしたら……)


 俺はセーレ様並の知性しかない集団を想像してみた。


『お腹空いたなー、狩りにいこうっ!!』


『おおー、行こう行こう……蝶々だーっ!!』


『わーい、蝶々蝶々ーーっ!!』


『どこいった蝶々ーっ!! ああ、お腹減ったなーっ!! 狩りに行こうっ!!』


『行こう行こう……雨だーっ!!』


『わーい、水浴び水浴びーーっ!!』


『気持ちいいなぁ……お腹減ったぁ、狩りに行こうっ!!』


『行こう行こう、ああーー雷がなってるーっ!!』


『近くで見ると迫力あるぞーっ!! お腹空いたぁ……けど真っ暗になっちゃったぁ』


『でも今度こそ狩りするぞ……痛い、木にぶつかっちゃったぁ……ぐすん……お家帰るぅ……皆どこぉ?』


(……三日で滅ぶな……いや、三日持つかなぁ……)


 俺に関係ない話のはずなのに物凄く不安だ。


 自分のことしか考えていない俺でこうなのだ。


 勇者として人のことを思いやれる三弟子や、ずっと共にいたマーメイ様がセーレ様のことを気にするのも頷ける話だ。


「ふっふ~ん……おお、小部屋があるぞっ!!」


 人の気も知らず鼻歌を歌いながら、勝手に奥の部屋に突撃するセーレ様。


 後から部屋に入ると、目を輝かせたセーレ様がイーアス様を見上げていた。


「煙さんが人の形してるっ!! すごいぞサーボっ!!」


『うふふ……初めましてセーレ様、私は大僧侶のイーアスと申します』


「おお、しゃべったーーっ!! 何でセーレの名前知ってるんだっ!?」

 

『先ほどの試練を受けていらっしゃいましたね……あの試練は私が与えたもの、内容はわかっているのですよ』


 イーアス様の言葉を聞いて、セーレ様は叱られた犬のように小さくなった。


「あ、あの……さっきの夢のことは内緒にしてね……絶対だよっ!!」


『ええ、わかっておりますよ……ふふ、可愛らしいお嬢さんですねサーボ様』


「まあね……それよりも聞きたいことがあるんだ……」


 俺はイーアス様にシーサーペントと霧のことを伝えた。


『どちらも心当たりがございます、まずは霧のほうを話させていただきます……大陸間の霧はおっしゃられた通りです』


 イーアス様が言うには当時もやはり人魚と鳥人族が霧を張っていたらしい。


『それは両種族の方に協力していただければ問題は無くなるはずです……ただ、外洋の方は恐らく魔王軍の仕業でしょう……』


 どうやら魔王は魔力が関わる現象は大抵再現できてしまうのだそうだ。


『当時シーサーペントを退治しに出向いた最中に霧の張り方を覚えて外洋へ発生させているのでしょうね』


「なるほど……四人の幹部の元に辿り着かせないためか……困ったもんだなぁ……」


『しかし魔力で発生させているということは魔法の一種とも言えます……巧みな魔導の使い手ならば打ち破る手も思い浮かぶでしょう』


「……イーアス様やテプレさん、あるいはテキナさんでは駄目なんですか?」


 魔法にはどうにも詳しくなくて、魔導とやらがよくわからない。


『はい、魔導の使い手とは簡単に言ってしまえば新たな魔法を開発できる方のことです……これは純粋な魔力の大きさとはまた別の才能が必要になります』 


(なるほどね、要するに新しい魔法として霧を払う魔法を作らせればいいわけだ……)


『ただ私の時代にもそのような能力を持つ方は数を減らしておりました……あるいは今の時代では……』 

 

 確かに魔導の使い手など聞いたこともない。


(まあそれは後々考えればいい……どうせ俺はそこまで付き合うつもりはないしな……)


「分かりました、それはこちらで考えるとしますよ……それよりももう一つの方はどうでしょうか?」


『シーサーペントですね……交戦したとおっしゃいますから気が付かれたでしょう、あの驚異的な再生能力と執念こそがあの魔物の一番の武器なのです』


「全く厄介な敵です……なぜ今になって暴れだしたのか……先ほど魔王が退治したとおっしゃいましたが魔王軍の侵攻と関係があるのですか?」


『恐らくは……実はあの魔物は、とある種族が魔王軍への対策として人工的に作り上げた防衛装置だったのです』


「……その種族とは?」


『もう滅んでしまいました……暴走したシーサーペントによって……そして制御を失った魔物は目に映る全てを攻撃し始めたのです』


(余計なことしやがって……制御できねえもんを開発すんじゃねえよ……)


『海の中で暮らす者、海の上を通る者、海洋に近づく者……当然そこを通りかかった魔王軍も……私たちも例外ではありませんでした』


「それで……魔王か勇者、どちらかが倒した後に生き返ってまた別のほうを襲ったのですね」


『そうではありません……当時暴れていたシーサーペントは雄と雌の二体いたのです』


(う、うわぁ……それは嫌すぎるぅ……)


 悪い意味で予想外だった。


 本当に作り上げた種族は何を考えていたのだろうか。


「そ、それで片方を魔王が……片方を勇者イキョサ様が対処したのが真相ということですか?」


『はい……魔王はシーサーペントを付近の海水ごと蒸発させて退治し、我々は防御魔法をかけて体内へ侵入し核となるコアを破壊して退治いたしました』


 何でもコアが周囲の海水を用いて破損個所を強制修復するので、それさえ壊せば退治できるのだという。


(そういうことか……だけど、二体とも封印じゃなくて退治しただと?) 


「しかし二体とも退治したというのなら今暴れているのは……封印されていたとも聞いていたのですが?」


『非常用かあるいはプロトタイプとして実戦に投入されなかったものが残っていて……恐らく当初の目的である魔王軍の脅威を検知して動き出したのではないでしょうか?』


(ずっと封印されていた……作った奴らが秘匿するためにかけておいた……まあ流石にそこまではわからんなぁ……)


 最も大事なのはそこではない。


 重要なのは退治できるという事実のほうだ。


「ちなみに他に退治する方法はありませんか……もしくは封印の方でもよいのですけど……」


『申し訳ありません、我々もその手段しか思い浮かばず……封印の方も種族が滅んだ以上調べようもないでしょうから……』


「そうですよね……むしろ体内のコアを破壊する方法に気づけただけでも大したものです」


『あれは……ふふふ……笑ってはいけないのですけど……戦闘に飽きたトラッパーがマーセを海に突き落としてその隙に逃げようといたしまして、それで食べられたマーセが退治して……ふふ……あの二人はいつもそんな調子でして……サーボ様と話していたら思い出してしまいました……』

 

(うわぁ、すげえな大盗賊トラッパー……憧れちゃうなぁ……)


 俺もそれぐらい思い切った行動を取れるようになりたいものだ。


『話が逸れましたね……私から提供できる情報はこれで全てですが、何か他にお話しすべきことはございますか?』


「うーん……セーレ様は何か……っ!?」


「むにゃむにゃ……マーメイもっとたべていいぞぉ……えへへ……すぴー……」


 床に寝っ転がり丸くなって涎を垂らしながら寝言を洩らしているセーレ様。


(寝てやがる……道理で静かだと思ったよ……はぁ……)


『ふふふ、可愛らしい……鳥人族はまるで変わっておりませんね……』


「当時からこうだったんですか……良く全滅しないなぁ……」


『ええ、大陸間の海は天敵が少ないことと人魚族との同盟が強固ですから……確か性別に関係なく族長同士が婚姻する習わしだとか……』


「……なるほどね」


 共依存にも近いマーメイ様とセーレ様の関係が見えてきた気がした。


『この子のお相手は女性なのですよね……道理であのような夢に縋りたくなるわけです……』


 同情するかのようなイーアス様の視線。


 同性であることを指摘する発言。


 何となくセーレ様が見た夢の内容を理解した気がする。


(……同性じゃぁ子供はできねぇもんなぁ……俺と同じで理想と現実が絶対一致しないってやつか……)


 夢にマーメイ様が出たようだから自分の子供ではなく、二人の子供が欲しいのだろう。


 叶うはずのない夢、だからこそ幻想と知りながらもあれほど何度も手を伸ばしてしまったわけだ。


(現実ってのは……どうしてこう思い通りにいかないのかねぇ……)


 酷い話だ。


 けれども生きている以上は現実を受け入れるしかない。


 少なくとも俺はそう考えて、自分に見合った生き方をするように心がけている。


 たとえそれが……俺の夢や理想から正反対のところにあると理解していてもだ。


(じゃねぇと迷惑をかけるだけだからなぁ、俺だけじゃなくて周りの大事な……)


 頭を振って思考を吹き飛ばす


 大事なのは今をどう生きるか、俺がどう生き抜くかだけだ。


 余計なことを考える余裕はない。


「セーレ様、起きてください」


「ん……ふぁぁ……寝てたぁ……セーレ難しい話苦手だぁ……」


『ふふふ、もう少しわかりやすくお話しすべきでしたね』


(幾らわかりやすく説明してもこいつは理解しようとしねーと思うけどなぁ……)


「ですがもう話は終わりました……一度マーメイ様のところまで帰りましょう」


「もういいのか……じゃあセーレたちは帰るけど……あの本ってお土産に持って帰っちゃ駄目かなぁ?」


『ごめんなさい、あれは一つしかないのです……それにこの場所を離れれば何の意味もなくなってしまいますよ』


「残念だなぁ……マーメイにも……ううん、いいやっ!! わかった帰ろうっ!!」


 早足で部屋を飛び出してセーレ様の後に続いて部屋を出て、一度だけイーアス様に頭を下げた。


「では失礼します……また何かあればご相談に乗ってください」


『はい……サーボ様、頑張ってくださいませ……』


(俺は頑張らねぇよ……頑張らせるだけだ……)


 手を振ってその場を後にして、俺たちは洞窟から出ることにした。


 流石のセーレ様も来た道を戻るだけなので道に迷うことは一度しかなかった。


(まさか天井付近に人一人通れそうな穴が開いてるなんて……だけどわざわざ迷い込むなよ……)


「さぁぼぉ……蜘蛛の巣がぁ……セーレの翼がベトベトになっちゃったぁ……」


「はぁ……ほら、取ってあげるから翼を向けなさい」


「はぁい……ぐすん……自慢の翼なのにぃ……皆、綺麗だって褒めてくれたのにぃ……マーメイも大好きだって……うぅ……」


「分かったから……今綺麗にしてあげますから……セーレ様は強い子でしょ、泣いてはいけませんよ」


(本当に面倒くせぇ……図体のでけぇガキは手に負えねえなぁ……)

 

 俺は頑張って真摯な態度を装いながら、セーレ様の翼を掃除するのだった。

【読者の皆様にお願いがあります】



 この作品を読んでいただきありがとうございます。

 

 少しでも面白かったり続きが読みたいと思った方。


 ぜひともブックマークや評価をお願いいたします。


 作者は単純なのでとても喜びます。

 

 評価はこのページの下の【☆☆☆☆☆】をチェックすればできます。


 よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ