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新帝国の誕生

「タシュちゃん居ないね」


「この王都ツメヨだけでなく、他の村々へも支援物資を届けているようですし……シヨに指示を受けに来るところを捕まえたほうが確実だと思います」


「それもそうだね……行き違っても困るし、王宮へ戻りますか」


 ミリアさんたちと別れてから王都内を探し回ったが結局タシュちゃんを見つけることはできなかった。


 仕方なく俺たちは王宮へと戻り、シヨちゃんの元へ向かった。


「サーボ様っ!! おかえりなさいませっ!!」


 門番が戻ってきた俺を見つけるなり敬意を込めた目線を向けながら敬礼してくる。


(最初の頃は気分良かったんだけどなぁ……もうただ鬱陶しいだけだわ……)


 内心疲労を覚えながらも、何とか表には出さず穏やかに微笑むことができた。


「お仕事ご苦労様……シヨちゃんを知らないかな?」


「シヨ様は執務室にて皆さま方と話し合いをしておりますっ!!」


(そういえば協議がどうとか言ってたもんなぁ……うわぁ、参加したくねぇ……)


「ありがとう……なら少し待たせて……」


「おい、ヒメキ様を……サーボ様っ!! おかえりなさいませっ!!」


 奥から別の兵士が走り寄ってきたかと思うと俺を見るなりすぐに姿勢を正した。


「そんな改まらなくていいからね……」


「うん、サーボ先生はそんな偉ぶる人じゃないよぉ」


「ええ……ところで今ヒメキ様のお名前が聞かれましたが何事かあったのでしょうか?」


「ははぁ……いえ、実は……今朝から姿が見受けられず探しているのです……それで外に出ていったか確認しようかと思いまして……」


 奥から来た兵士の言葉に門番は首を横に振った。


「いや、ここは通ってないはずだ……引継ぎもないし俺が待機してからも姿を見ていないからな」


「そうか、どこに行かれたのやら……では失礼いたします」


「……ヒメキ様どうしたのかなぁ?」


「キマイラを討伐した日以来、調子がおかしいようでしたからね……心配です」


(自責の念に苦しんでんだろうなぁ……)


 ヒメキ様は上手く敵の策略に乗せられて、あちこち移動してマンティコアを増やす手伝いをしてしまったのだ。


 元々責任感が強い性格だったようだし、今も自分が許せないでいるのだろう。


(どうでもいいんだが……こいつらを追い払うにはちょうどいい言い訳かもなぁ)


「俺たちも手伝おうじゃないか……皆で手分けして王宮内を探してみよう」


「それはいいけど……一緒に行動しようよ」


「そうですよ、もうサーボ先生から目を離したくありませんよ」


(俺はお前らから離れたくてたまらねぇんだよ……少しぐらい自由時間をくれよ……)


「王宮内から出ないから安心してくれ……見つかっても見つからなくても執務室へ向かうから」


「うぅ……本当に?」


「……我々を置いて行きませんか?」


(疑りすぎだろぉ……よっぽど今回別れたのが堪えてたんだなぁ……)


「約束するよ……それに今回ばかりは次の目的地が別大陸で移動手段もないんだから勝手に行動しようがないよ」


「それはそうですが……」


「門番さん、サーボ先生が外に出ていかないように見張っておいてね?」


「わ、わかりましたカノ様っ!!」


(おい門番、いい返事をするな……まあ出ていく気はないからいいけど……)


「じゃあ早速手分けをしよう……テキナさんはこの階、カノちゃんは二階、俺はそれ以外を探してみるよ」


(一番広く人の出入りが多い場所をテキナさんに、部屋が多く細かい隠れ場所が多い二階は大盗賊に……俺は屋上でサボろう……)


「分かりました」


「はーい」


 二人とも走り去っていった。


 俺も行くとしよう。


 三階へと昇り、人々に顔見せするためのバルコニーへ向かった。


 何カ所かめぐり、目立たない所についていた屋根の改修用の梯子からさらに上を目指した。


(ここまでくればそうそう見つからんだろ……後は適当に時間を潰すだけ……やっと自由だぁ……休めるぅ…… )


 登り切ったところは簡易足場代わりのためか、平らになっており立ち上がるスペースがあった。


 そしてちょうどいい昼寝場所を探そうとして……見つけてしまった。


「……どうされました、ヒメキ様?」


「さ、サーボ殿っ!? サーボ殿こそどうしてこのような場所に来られたのだっ!?」


(怠けに来たんだよ……お前こそこんなところで何してんだよ……)


 斜めの屋根に器用に腰を下ろし、眼下に広がる街並みを眺めていたようだ。


 まさかここで放置するわけにもいかない。


 俺は内心ため息をつきながら、ヒメキ様の隣に座った。


(結構滑るな……気を付けねぇと落ちちまう……危ねぇなあこいつ……)


「ヒメキ様を探していたのですよ……皆さま心配しておられましたよ」


「そうであるか……本当に妾は駄目な王女であるなぁ……」


 自嘲するようにつぶやいたヒメキ様。

 

「そんなことはありませんよ……」


「いいや、自分でもわかっておる……この光景を見よ……荒廃した領地……全て魔物を引き連れて歩いた妾の責任である……」


 王宮の屋根からは遠くまで見通すことができた。


 瓦礫処理に追われる人々、城壁を修繕する人々、荒れ果てた道を整地しなおす人々。


(確かに荒れ果ててるけどみんな頑張って直してるじゃねえかよ……気になるならお前も働けよ……)


「気にしても仕方がありませんよ……大事なのはこれから何をするかです……」


「……怖いのだ、何かをするのが」


「どういうことでしょうか?」


「……この度妾がしたことは全て裏目に出てしまった……全て良かれと思ってしたことが……最悪の事態を引き起こしたのだ……」


 膝を抱えてうつむいてしまうヒメキ様。


「人々を救助しているつもりが魔物を救助していた……魔物を見分けようとするサーボ殿を非難した……魔物の囮になるサーボ殿を手助けしようとして足手まといとなった……」


(そういえばそうだな……こいつカノちゃん以上の疫病神かもしれねぇ……)


 上には上がいるものだ、全く持って恐ろしい。


「妾が何かすると……不幸を招く……そんな気がしてならないのだ」


(いや本当にな……ちょっと距離置こう……怖い怖い……)


「気にすることはありませんよ……全ては魔王軍が悪いのですから……」


「……サーボ殿の言うこともわかっているつもりだ……だが、どうしても……考えてしまうのだ……」


 声が震えている。


 顔が見えないからわからないが泣いているのかもしれない。


「妾が手を貸したら全て駄目になるのではないか……本当は人々の邪魔になっていないか……そのような事ばかり頭に浮かぶようになっていく……」

 

(んな深刻にとらえんなよ……責任感強すぎだろ……)


 付き合いきれない。


 俺はもう無視して眠ってしまうことにした。


 身体から力を抜いて横になる。


「うぉっ!?」

 

「っ!?」


 体勢を変えたせいで屋根に引っかかってた部分が滑った。


 俺の身体は屋根の角度に沿って落ちていく。


(ゲゲッ!? や、やべぇっ!?)


 上手くバルコニーに引っかかれば怪我で済むが、まっすぐ大地まで落ちたら死にかねない。


 俺は慌てて何かを掴もうと手を伸ばした。


「サーボ殿っ!!」


 その手をヒメキ様がとった。


 そして、何故かヒメキ様は一緒に滑り落ちることもなく俺を支えることに成功した。


(ど、どうして……ってお前が座ってるところも足場になってたんかいっ!!)


 身体で隠れていたがどうやらヒメキ様は屋根改修用の足場に座っていたようだ。


 おかげで踏ん張りがきいて、落ちかけで大して速度のついてなかった俺を止めきれたのだろう。


(こ、こいつ本当に疫病神だっ!!)


 ヒメキ様につられて座ったところでこれだ。


 シャレにならない。


 さっさと逃げたほうが良さそうだ。


「ありがとう助かりました、ヒメキ様が居なければ俺は死んでいたかもしれません……ではこれで……」


 早口でまくし立てて立ち去ろうとする。


 しかしヒメキ様は俺の手を掴んで離そうとしない。

 

「妾は……今妾は役に立てたのか……」


「ええ、ヒメキ様のお陰です」

 

(死にかけたのがなぁっ!! いや頼むから離してぇえええっ!!)


「無我夢中で手を差し伸べていた……しかし、そうか……妾は今人を助けられたのだな……」


 何やら呆けた様子で、しかしどこか嬉しそうに呟いているヒメキ様。

 

「ひ、ヒメキ様……そろそろ手を放していただけないでしょうか?」


「あ、ああすまぬっ!! すまぬ……が、もう少し握っていてはいかぬだろうか?」


 手放すどころかむしろ両手を添えて包み込んでくる。


(ひぃっ!? や、厄が……厄が移ってくる気がするぅううっ!!)


「ひ、ヒメキ様ぁあっ!?」


「温かいな……サーボ殿の手は……妾が助けた……いや、わざと落ちるふりをしてくれたのであろう?」


「あ、あははバレてしまいましたか……余計な事をしてすみませぇええん」


(も、もう何でもいいから早く話を打ち切って逃げないと……絶対不幸になるっ!!)


「ありがたい……ふふ、あれだけ悩んでいたのに……サーボ殿が落ちると思ったら全て吹き飛んでおった……そして助けられた……はは、我ながら単純なものだ……」


「いえいえぇえええっ!! ヒメキ様は素晴らしいですぅうううっ!!」


(だから離してぇえええっ!! いやぁああああっ!!)


 ただでさえ不幸なのに、これ以上不運を押し付けられてたまるか。


 力づくで振りほどきたいが、足場が不安定なので余り強く抵抗もできない。


「いや、素晴らしいのはサーボ殿だ……またしても救われてしまったな……感謝してもしきれぬ」


「いいえぇ、気にしないでぇええ……そ、それよりもう降りましょうっ!! ほら行きましょうっ!!」


「うむ、そうであるな……このようなところで無駄に使っている時間はないっ!!」


 どうやら元気づいたようだ。


 だけどどうでもいい。


「サーボ殿、妾はもう一度頑張ってみるぞっ!! 領民のため、人々の為、王女として働こうぞっ!!」


「素晴らしぃいいいいいっ!! ですからほら、降りましょおぉおおっ!!」


 俺は何とかヒメキ様を連れて降りることに成功した。


「ではサーボ殿、妾は行ってまいるぞっ!!」


「行ってらっしゃぁあああいっ!!」


(も、もう二度とこっち来るなよぉおおおっ!!)


 後で手を念入りに洗っておこう。


「いずれこの恩は返させてもらう、では失礼っ!!」


 ヒメキ様は勢いよく去って行った。


 バルコニーに残された俺は、ようやく安堵の溜息をつくことができた。


「はぁ……疲れたぁ……」


「サーボ先生、こんなところでどうしたのだ……ですか?」


「ああ、タシュちゃん……おかえり」


 ちょうどそこへタシュちゃんがやってきた。

 

 バルコニーに居たので目立ってたようだ。


「サーボ先生……うわぁ、タシュちゃんも見つけちゃったんだ……流石だなぁ」


「今ヒメキ様とすれ違いこちらだと伺いまして……探し人まであっさりと見つけて、お見事ですサーボ先生」


(あはは……もうどうでもいいや……)


 もう抵抗する気力もなく、俺は力なく頷くことしかできなかった。


「私を探していたのか……いたんですか? 何の御用でしょう?」


「……タシュちゃんの力を借りたいんだ」


 俺たちは次の目的地についての情報を伝えてた。


「むむむぅ……サーボ先生の言葉なら是非とも協力したいのだが……ですが……それは難しいのだ……です」


「どういうことだい?」


「実は私が龍の里から攫われる少し前辺りから海上に妙な霧が発生していて……その中を飛んでいると方向感覚が狂わされて気が付いたら元の場所に戻ってしまうのだ……です」


(船も駄目で、飛行対策の霧まで発生している……魔王軍かなぁ……)


「龍の里と近いこの大陸や近場の小島間であれば行き来もできるのだが……そちらの大陸までは難しいのだ……です」


「なるほど……しかしそれは困りましたねぇ……」


(東西南北の端に最高幹部が居る小島がある……攻め込まれないようにしている可能性が高いなぁ……面倒くせぇ……)


 俺としてはそこまで攻め込むつもりはないが、大陸間の移動もできないのは困りものだ。


「サーボ先生、どうしましょうか?」

 

「……俺たちだけで考えても仕方がない、シヨちゃんも交えて話し合おう」


「そうだね、シヨちゃん物知りだから何か良いこと知ってるかもしれないからね」


「ちょうど私も執務室に呼ばれてますから付いていくぞ……です」


 皆で執務室へと向かう。


「サーボ先生、来てくれたんですねぇ」


「サーボ先生……ようこそ……」


「サーボ先生、よくきてくださいました」


「おおサーボ殿、ご足労感謝する」


「サーボ殿、よくぞ参ったっ!!」


(げげっ!? 何でヒメキ様がっ!?)


 シヨちゃんとプリスちゃん、テプレさんとこの国の王様が居るのは予想の範疇だ。


 だがまさかさっき別れたばかりのヒメキ様まで合流してるとは思わなかった。


(に、逃げてぇえええっ!!)


「実は相談があってきたのだが……話し合いは終わっているのですか?」


「はい、ヒメキ様も加わってくれたおかげでスムーズに行きましたぁ」


「実は……私たちの国を……一つに纏めてはどうかという……お話でした……」


「そうなれば私の結界を敷いて皆さまを守ることができますから安全に暮らすことができるようになります」


 それは壮大な計画だ。


(確かに魔王軍からの侵攻を防ぐにはこれ以上無い手かもしれないが……良くまとまったなぁ……)


 連合国ともなると主導権争いが勃発しそうなものだ。


 しかし考えてみればプリスちゃんはあの調子だし、大僧侶のテプレさんが権力を求めることもない。


 そしてツメヨ国は一番領土の広い国だ。

 

 自然とこの国の王が盟主となることで話が付いたのだろう。


(結果的にツメヨ国の一人勝ちって感じか……俺としては非常時の安全地帯が増えるのはありがたいから別に構わないけどな……)


 そして省かれるイショサ国……まあ勇者の里があるからあそこはあそこで安全だろう。


「そ、それは凄いねっ!! 流石シヨちゃん、よくそんなこと思いついたねっ!!」


「ああ、全く大したものだ……ちなみに国が一つにまとまるとなると名称はどうなるのだ?」


(そのままツメヨ帝国……あるいは一文字ずつ取ってツメヨ国を最初に並べてツバリ国、あるいはツリバ国……似合わねぇ……)


「満場一致で決定しましたよぉ」


「ヒメキ様が……提案して……くださりました」


「ええ、まことに素晴らしい名前だと思います」


「うむ、我らが盟主の名前を取ってサーボ帝国……これしかあるまいっ!!」


「うぉおおおおいっ!!」


 つい我慢しきれず感情のまま叫んでしまった。


(ふざけんなっ!! 勝手に盟主に祭り上げてんじゃねぇええええっ!!)


「ど、どうしたのだサーボ殿っ!? な、何か不満でもあられたのかっ!?」


(不満しかねーよっ!! どいつもこいつも不思議そうにこっちを見んじゃねぇえええっ!!)


 こいつらはどこまで俺を目立たせようというのか。


「お、俺はただの勇者であって……国の盟主などという立場にはふさわしくないよっ!!」


「ですが……その……サーボ先生は……私たちの……旦那様……ですよね?」


「ええ、ですから自然と各々の国の代表となるべき立場でございますから何も問題ないと思われます」


「そ、そうであるぞっ!! 妾たちの旦那となるのであるから胸を張って王を名乗ってよいのだぞっ!!」


(いつどこで誰が決めたんだよそんなことっ!! 誰もお前らの旦那になるなんて言ってねーよっ!!)


「流石サーボ先生ですよねぇ……いつの間にかヒメキ様も口説き落としてるんですからぁ」


 全く心当たりがない、なさすぎる。


 ばっとヒメキ様を見ると嬉しそうに笑っている。


「サーボ殿は来るもの拒まずとのことであるからな、当然妾も第七夫人として立候補させてもらったぞっ!!」


(来るもの拒みまくりだよっ!! 勝手に張り付いて離れねぇだけだっ!!)


「ヒメキ様ぁ、残念だけどついさっき第八夫人まで決まっちゃったんだよ」


「ミイアど……とミリアも是非とのことで……まあサーボ先生の素晴らしさに触れれば当然の話なのですが……」


「何とっ!? では妾は第九夫人ということであるなっ!! だがサーボ殿に愛してもらえるのならば何も問題はないなっ!!」


(か、勝手に話が……俺の話のはずなのに俺を置いてきぼりに話が進んでいくぅううっ!? な、なんだよこれぇっ!?)


 咄嗟にヒメキ様の父親である王様へ視線を向ける。


 何か言ってもらいたいところだったが、重々しく頷くばかりであった。


「腕白で不束な娘であるがどうかよろしく頼む……そしてできるだけ早く孫……いや次代の後継ぎの姿を見せていただきたい」


(納得すんなぁああああああっ!!)


 もうこの親子は駄目だ。


 他に切り崩せそうな場所としてテプレさんへ目をつける。


「そもそもリース国は大僧侶が代々指導者になるしきたり……俺が勝手に即位するわけには……次代の大僧侶こそが……」


「ご安心くださいませ、この度の活躍でサーボ先生の名前はリース国に広まっております故反対する者はおりません」


「し、しかしだねぇ……古くより続く伝統を勝手に破るのはどうかと思うのだよ」


「その点も問題ございません、その伝統の開祖であるイーアス様直々に許可を頂いておりますし……件の試練を乗り越えたサーボ先生は立派に大僧侶を名乗る資格もございますから」


(イーアス様ぁあああああっ!! あんたも敵かぁあああああっ!!)


「サーボ先生すっごいねぇ、勇者に続いて皇帝と大僧侶の称号も持ってるなんて……大盗賊の称号も名乗ってみる?」


(だから勝手に称号を盛り付けるなっ!! 俺は何者なんだよっ!?)


「流石はサーボ先生だ……です、私も龍の里の族長となった暁にはこの国に加われるよう尽力させていただく……ですっ!!」


「お願いしますねタシュさん、それまでに私は人間界を纏めて異種族と交流できる下地を作り上げてみせますぅっ!!」


(し、シヨちゃんっ!? つ、ついに世界征服への意志を隠そうともしなくなったぁっ!?)


「素晴らしいっ!! ついに世界はサーボ先生の元に一つになるのですねっ!!」


「私たちも……サーボ先生の為に……協力……いたします……」


「うむ、ぜひとも世界中の国をサーボ帝国に統一して世界平和を実現させようではないかっ!!」


「……げほぉ」


 ストレスで胃がやばい。


 冗談抜きで死んでしまいそうだ。


(ど、どうして……どうしてこうなるんだよぉおおおおおっ!!)


「さ、サーボ先生どうしたの?」


「さ、サーボ先生っ!?」


「感極まって崩れ落ちちゃったんですねぇ……えへへ、シヨまた頑張っちゃいましたぁ~」


(ち、違うに決まってるだろうが……絶対分かってて言ってるだろシヨちゃんよぉおおっ!!)


 やはりシヨちゃんこそが一番危険だった。


 早い段階で魔物の餌にしなかった俺が馬鹿だったようだ。


「そうであるか、うむ……早速サーボ殿のお役に立てて第九夫人として嬉しい限りであるぞっ!!」


(こ、この疫病神ぃいいいいいいっ!!)


 そして俺を不幸に貶めるヒメキ様……この二人のコンビがやばすぎる。


 どうにかして引き離す必要がある。


(や、やっぱり一刻も早くこの国を逃げ出そうっ!! シヨちゃんを連れ出そうっ!!)


 俺は何とか呼吸を整えるとさっさと逃げ出すべく肝心な話題を口にした。


「ま……まぁ……はぁ……はぁ……と、ともかく……じ、実は皆に相談が……あってね……ふぅ……ふぅ……」


「ああ、そうだったね……実は次の目的地なんだけど……」


 上手くしゃべれない俺に代わってカノちゃんとテキナさんが事情を説明してくれた。


「確かに……少し前から……交易船が……駄目になったって……情報が……ありました……」


「魔王軍の侵攻がありましたから対策する余裕がありませんでしたが……困りましたねぇ」


「ふむ、確かにそれは大変な事態であるな」


「うーん、ゼルデン大陸への移動手段ですかぁ……でも飛んでいくのが無理なら船で行くしかないですよねぇ」


 シヨちゃんの身もふたもない発言に驚く一同。


「だけど船がどうなってるのか情報もないんだよ?」


「そうですけどぉ、空を飛んでいくと元の場所に戻されちゃうけど船は一応戻っては来てないんですよねぇ?」


「確かに言われてみればその通りだ……けどシヨちゃん、流石に危険じゃないかなぁ」


「だけどどのみち行かなきゃいけない以上は危険性は無視して可能性のある手段を選ぶべきですよぉ……」


(とんでもないこと言うな……可能性より安全性が第一だろうが……)


「何より私たちにはサーボ先生が付いてるんですよぉ、どんな危機が迫ろうと恐れる必要はないですよぉ」


 シヨちゃんがまたサラっと俺に責任を丸投げしてきた。


「シヨの言う通りだっ!! 我々にはサーボ先生が付いているのだから何を恐れる必要もないっ!!」


「そうだよっ!! シヨちゃんの言う通りサーボ先生が居るんだから安全じゃないかっ!!」


「そう……ですね……サーボ先生が居れば……恐れることは……ないですもんね……」


「そうだ……ですっ!! サーボ先生が解決できないことなどないのだから……ですからっ!!」


「その通りです、サーボ先生がおられるのなら何も恐れることはありませんねっ!!」


「全くであるっ!! サーボ殿……いやサーボ先生が居られればあらゆる困難は向こうから逃げていくであろうっ!!」


(俺が逃げたいよぉ……うぅ……)


 どいつもこいつも俺に何もかも押し付けて来やがる。


 勘弁してほしい。


 何より遭難必死な危険すぎる船旅などごめんだ。


(何とかしねぇと……だけどどういえば回避できるんだ?)


 聖剣を取りに行くと方針を決めたのも、別の大陸に行くと目的地を決めたのも俺だ。


 この状態でやっぱり危険だからやめようと言うのは難しい。


(いや言えば従うだろうけど、そしたら旅自体が中止になる……聖剣自体は取りに行かなきゃいけないんだよなぁ……)


 理想を言えば他の奴に危険を押し付けたいところだ。


(カーマとセーヌに……だけどあいつらが聖剣を手に入れたとしてもこっちに譲るとは思えないなぁ)


 あいつらとて勇者であることに誇りがあるだろうし、それに見合った実力も持ち合わせている。


 なら聖剣を手に入れれば使いこなそうとすれど、別パーティのテキナさんに渡そうという発想にはならないだろう。


(やっぱりテキナさんたちを譲り渡したかった……けどそれももう無理だよなぁ……)


 今回の件で三人は俺と離れるのが軽いトラウマになっているぐらいだ。


 もうどんな手を使おうと彼らのパーティへ合流することはないだろう。


(どうするか……遭難の危険性を承知のうえで別の大陸に渡って聖剣を回収しつつ今度こそ隠居するか、諦めてこの場で勇者としての立場を受け入れて魔王軍の進軍を待ち構えるか)


「サーボ先生?」


 三人の弟子が見ている。


 俺が救った女たちが見ている。


 皆が好意的な視線で見ている。


 誰もが間違った俺を見ている。


 この大陸ではどこに行っても同じ視線を向ける奴しかいない。


(これじゃあ今回の危機を回避しても、いずれは別の危機を押し付けられるのが落ちだなぁ)


 もうこの大陸には俺の……屑で無能なサーボとしての居場所はないだろう。


 ならば多少の危険を覚悟してでもマシな場所へ向かったほうがよさそうだ。


(俺が俺らしく生きていける場所を求めて……行くしかないか、新大陸……)


 皆に向かい軽く首を振って見せると、俺は覚悟を決めて大声で叫びあげた。


「船ができ次第出航しようっ!! 世界中の人々が我らの活躍を待っているっ!!」 


「「「「「「「おーっ!!」」」」」」」


(そして今度こそ逃げきってやるっ!! お前らからも、魔王軍からも、勇者の称号からもなぁっ!!)

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