修行と魔王軍と……長かったなぁ
「どうだいドーマさん、魔王探知機はできそうかな?」
「何とか……この国の人達が設備を貸してくれたから今日中には出来そうだよ」
「それは良かった、じゃあ出来上がり次第早速出発しよう……ところでこの剣は一体何なんだい?」
「ああそれは探知機を作るついでに作ってみたの……魔王退治役に立つかなぁって」
「へぇ……どれどれ」
気になったのでちょっと手に取って確認してみる。
(うーん、これは中々の強度だなぁ……魔術的な細工もしてあるみたいだし……というかなんか見覚えあるぞこれ?)
少し考えて思い出す。
「聖剣……か?」
「ふぇぇ? そ、そんな大げさな名前つけなくても……ただの剣だよぉ」
謙遜……というより本気で困惑した様子で呟くドーマさんだが、これは間違いなく俺の時代で手に入れた聖剣と同じものだった。
(これドーマさんが作ってたのか……それもこんなにあっさりと……)
ハラル王国で伝説の武器として封印されていたものが、まさかこんな簡単に作り上げられるとは思わなかった。
「ただ持ってる人の魔力を少しだけ増幅するの……片手間に作ったからその程度の効果しかないし、本当にただの剣みたいなものだよ~」
(確かに魔力が増幅されているみたいだけど……俺からすれば誤差みたいなもんだなぁ……)
当然俺以上の能力の持ち主であるテキナさんにとっても、大差がないことになる。
(やっぱりあれは素の威力じゃねぇか……何が聖剣の力だ……あの化け物さんめ……待てよ、今この剣を壊してしまえば歴史は……また作り直されるのがオチだな……)
やはり歴史は変えようがないのかもしれない。
「はぁ……」
「ど、どうしたのマシメ様っ!?」
「いやちょっとね……俺は外でみんなに修行をつけてくるから出来たら探知機を持ってきてくれ」
「わかったよっ!! 任せてっ!!」
力強く頷いてくれたドーマさんを残して、俺は一旦王国の外へと向かった。
そこでは俺の指示に従って修行している弟子たちの姿がある。
(こっちの弟子は俺の指示に従ってくれてる……やっぱり弟子ってのはこうあるべきだよなぁ……)
どうしてこうも違うのだろう。
別に特別三弟子と違う指導をしているつもりはない。
だから本人たちの性質に寄るところが大きいような気がする。
(俺の指導は悪くないんだ……きっとそうだ……)
「あっ!! マシメ様っ!! 私たちスキル使えるようになったよっ!!」
「こりゃあ便利だわ……」
「本当によくこんな技を思いつきましたね、マシメ様」
「まあ偶然ね……」
そう言いながら周りを見ると、ハラル国の住人が遠巻きにこっちを見つめているのが分かった。
先日のキマイラ討伐によって、俺たちは魔王軍から国を守った英雄として尊敬の念を集めるようになったのだ。
(物凄く注目されてるなぁ……)
中には俺たちの修行法を真似ている人もいる。
(そう言えばこの大陸ではスキルが当たり前の技術として広まってた……こうして広がったのかなぁ……ああ、またしても歴史通りに動かされてしまったのかぁ……)
ひょっとしてこの歴史の壁が俺にとっての最大の敵なのではないだろうか。
(勝ち目が見えねぇよ……い、いや魔王さえ退治すれば……こればっかりだなぁ俺……)
しかし本当にそれ以外に歴史を改変する方法を見いだせないのだから仕方がない。
「それに無詠唱魔法もですわ……流石に難しいですけれどきっと習得して見せますわ」
「君たちならきっとできるとも……イキョサちゃんはどんな感じだい?」
「ちゃぁんと魔法使えるようになったよっ!! これもマシメ様のお陰だよっ!!」
嬉しそうに笑うイキョサちゃん。
彼女は特異体質で、魔力こそあるが魔法を放つことができなかったのだ。
代わりとばかりに身体能力が異常に成長していたようだが、流石に魔法が使えないと苦しいことになるかもしれないので俺の切り札で使えるようにしてあげたのだった。
(魔法も使えるみたいだけど身体能力も異常なままだし……こいつも俺より強くなりそうだなぁ……)
もしも二重魔法を習得したら素の身体能力を考えれば、間違いなく俺をも上回りそうだ。
それこそテキナさんに匹敵するバケモノになるのではないだろうか。
(流石は伝説の勇者だよ……それともテキナさんが先祖返りしているというべきかなぁ……)
「まあこっちは順調に強くなってるぞ、これならあたしらも魔王と戦う上で足手まといにゃぁならねぇよ」
「それは助かります……俺一人では勝てるかわかりませんからね」
「でも、この間倒した大幹部の言葉が正しかったら普通に勝てちゃうと思うけど……」
イキョサちゃんの言葉に俺は先日捕らえた魔物のことを思い出す。
自称、魔王軍唯一の大幹部と称するそいつは魔王の半分ほどの実力がある自分が負けるわけがないと喚き散らしていた。
(だけどどうも納得がいかないんだよなぁ……あいつの魔力の総量は四大幹部と同じぐらいだったもんなぁ……)
もしもそれが本当なら、俺の時代の四大幹部が揃えば理論上は魔王より強いということになってしまう。
幾らなんでも魔力で作られているというのに、合計したところで作り主より強くなるとは思えない。
だからもっと詳しいことを聞きたかったのだが、プライドが傷付いたのか自害すらしようとするものだから何も聞き出しようがなかったのだ。
(シヨちゃんなら上手いことやったんだろうなぁ……あの化け物さんめ……まあない物ねだりしても仕方ないしなぁ……)
だから結局、探知機に使うため毛を少し刈り取った後で退治してしまった。
(魔王さえ退治すれば全部片付くし、ならもういっその事力をつけて確実に倒す方法を考えるべきだよなぁ……)
そう思ったからこそ、探知機が完成するまでの間にイキョサちゃんたちに修行をつけることにしたのだ。
そしてそれは思った以上の成果を上げている。
元々実戦を繰り返して基礎的な部分が出来上がっていたこともあり、俺の指導で長所を伸ばすとすくすくと成長していったのだ。
後は無詠唱魔法と二重魔法さえ習得すれば、俺たちのパーティと同じぐらいの戦力になるはずだ。
(そしてこの戦力で魔王を倒せたという歴史的事実がある以上は、もしもここで倒し損ねて俺の時代で戦うことになっても退治可能ってことになるよなぁ……出来ればそうならないようにしたいもんだけどなぁ……)
「……実際に魔王を見るまで何とも言えないからね、とにかく修行して強く成っておくに越したことはないよ」
「はぁい……頑張りまぁす」
「その意気だ……おお、ちょうど敵がやってきたよ」
「グルルルル……」
異質な鳴き声が聞こえて、頭を上げてみればフレイムドッグの群れがこちらに迫ってくるところだった。
どうも魔王が次の標的に選んでいるのはこのハラル国のようで、大幹部を撃退した日から毎日のようにこうして魔物の群れが襲ってくるのだ。
そんな奴らから民間人を守る意味を兼ねて、こうして弟子たちを外で修行させて魔王軍の相手をさせていた。
(実戦経験も積めるしありがたいことだが……何で魔王が直々に攻めてこないんだ?)
幾らなんでも俺たちが大幹部を倒したことは気づいているはずだ。
なのにそれより遥かに弱い魔物ばかりで攻めてくる理由はさっぱりわからない。
「やれやれ、まだ懲りねぇのかよ……」
「流石にこれは何か企みがあるような気がしますが……」
「そうだねぇ……だけどまずは目の前の敵に集中しようじゃないか」
幾らこれの裏に何か狙いがあるとしても、だからと言って無視していいわけがない。
「そうでございますね……ではいつも通り私たちでお相手をいたしましょう」
「お願いします、俺は万が一に備えてここで待機していますから……」
(民間人が巻き込まれて犠牲が出たら大変だからなぁ……)
尤もさっきまで見ていた人たちは、魔物の姿が見えた時点で自主的に避難している。
だから特に何をすることもない……気を抜くことさえしなければそれでいいだろう。
「うぅ……い、行くよぉっ!!」
「へいへい……」
まずイキョサちゃんとトラッパーが先陣を切って魔物の群れに飛び込み、片っ端から叩きのめしていく。
「我が魔力により邪悪なる者を打ち払う衝撃を発せよっ!! 炎爆撃」
「我が魔力に従い壮大なる大空よ悪しき者への天罰を齎せ、天雷撃」
後方から魔法で援護するマーセさんとイーアスさん。
(バランス良いなぁ……俺たちとほとんど変わらないはずなんだけどなぁ……)
同じ四人組だというのに、こっちはコンビネーションが綺麗に取れている。
おかげで特に指示を飛ばすこともなく、安心して見ていられる。
だから……それに気づくことができた。
(なんだ……空に妙な魔力が……っ!?)
不意に轟音が鳴り響くと同時に、空から無数の強大な火球が降り注いだ。
「えっ!? な、なにっ!?」
「こ、こりゃあ魔王のっ!?」
「よ、避け切れないっ!?」
「あぁっ!?」
「ちぃっ!? 時間停止っ!!」
咄嗟に解き放った魔法が、まさに火球がこちらに当たる直前でギリギリ間に合い効力を発揮する。
世界の全てが止まり、何とか一息つくことができた。
(あ、あぶねぇっ!? まさかこんな奇襲を仕掛けてくるとはっ!?)
恐らくあの魔物の群れでの襲撃は、この攻撃をするための隙を誘発するものだったのだろう。
事実俺がもし戦闘に参加していたら切り札も間に合わなかっただろう。
(一体どこから……まあ、先にこの魔法を無効化しておくか……)
「対抗呪文」
いつものように切り札で魔法の効力を無効化することで、無数の火球を打ち消していく。
そうして改めて周囲を見渡し、魔王が居そうな場所を探した。
(……どこにも居ねぇ、どうなってんだ?)
しかし俺の視界が届く範囲に魔王の姿はなかった。
(そう言えば俺の時代でも魔王から転移魔法を喰らったけどそん時も近くにはいなかったよなぁ……まさか魔王は長距離から魔法攻撃できんのかっ!?)
もしそうならばこちらからは反撃のしようがない。
(くそ、カノちゃんが居れば居場所を探してもらうのに……ああもう、やっぱり俺には三弟子が必要なのかっ!?)
さっきから何度もあの子たちのことを思い返している。
ずっと一緒に居たからだろうか、俺はあの子たちの能力を前提に物事を考え過ぎている。
(それだけじゃない……何だかんだで俺はあいつらが大事なんだろうなぁ……けどやっぱりまだ帰りたくねぇ……)
今あの子たちの狂気に触れたら心が折れてしまいそうだ。
何せこっちでは、弟子らしい弟子に囲まれていてとても居心地がいいのだから。
(今はそれよりもこの場面をどう乗り切るかを考えよう……イキョサちゃんたちだって俺の大事な弟子なんだからな……)
改めて現状を確認する。
魔王軍の魔物はイキョサちゃんたちの活躍のお陰で全滅状態だ。
また空から降り注ごうとしていた魔王の攻撃は完全に打ち払った。
だけど狙われている状態は変わっていないはずだ。
(このまま連発されても困るし、時間差で攻撃されて俺の切り札が間に合わなかったら大変な被害が出る……)
恐らく直撃を喰らっても俺たちは防御魔法を使えば耐えられるだろう。
しかし近くにあるハラル王国や、下手したらゼルデン大陸そのものが耐えられない可能性がある。
(そうなれば歴史は変わる……けど、そんな犠牲の出る方法で歴史を変えるのは許容できねぇ……)
こうなると俺に出来ることは、この場で何とかしのぎ続けることぐらいだろう。
(仕方ない、俺一人で何も思い浮かばない以上は……仲間と相談するしかないなぁ……)
他に何も思い浮かばず、だからこそこの状況を打破するために俺は一旦魔法を解いて仲間の知恵を借りることにした。
「うわぁ……あれぇ?」
「くぅ……って、どうなってんだっ!?」
「これは……マシメ様がやってくださったのですか?」
「ええ、何とか……」
「流石ですわマシメ様っ!!」
時間を動かすとイキョサちゃんたちが一変した現状を理解して、すぐに俺の元へと近づいてくる。
さらに王国の方からドーマさんも駆け寄ってきた。
「い、今凄いのが……な、なんだったのっ!?」
「ドーマさんっ!? あ、あのね多分魔王の攻撃が……だよねマシメ様?」
「恐らくは……ですが近くに魔王の姿は見当たら……っ!?」
「ま、マシメ様ぁっ!?」
不意に俺の身体を妙な輝きが包み込む。
(転移魔法かっ!?)
魔力の流れからその魔法の種類を看破した俺は……むしろ好都合とばかりに笑った。
恐らくどうやってかはわからないが、俺が魔法を無効化したと知って強引に呼び寄せて叩き潰すつもりなのだろう。
(上等だっ!! このまま遠距離から攻撃を喰らい続けるよりずっとましだっ!! 待ってろよ魔王っ!!)
だから俺はあえて抵抗せず、魔王の魔法を受け止めた。
「「「「「ま、マシメ様ぁっ!?」」」」」
「安心してくれ、俺は大丈夫……」
そこまで告げたところで光は一層激しく輝きを増していき、俺の視界は白一色に染まっていくのだった。
(さあて、ようやくだなぁ魔王様よぉ……お前を倒して俺は歪んだ人生を取り戻してやるっ!! 覚悟しやがれよっ!!)
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