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厄介な弟子たちと……魔王ってヤバいの?

「さあカノさん、勇者の実力を見せつけてやって下さぁいっ!!」


「や、やぁあああ……これぐらいでいいかなぁ?」


「ぐ、ぐわぁああっ!! これはとてもかなわないぞぉ、退散だぁああっ!!」


 王宮へ攻め込んでいたキメラント君は、カノちゃんに飛び掛かられるとすぐに棒読みな悲鳴を上げて逃げていった。


「おおっ!! 流石は勇者様っ!! あれほど巨大な魔物をこうもあっさりとっ!!」


「流石だっ!! 勇者カノ様万歳っ!! 偉大なリーダーのシヨ様万歳っ!!」


「うふふ、それほどでもありませんよぉ~」


(お、俺の立場はどこに……もう隠居してやろうかなぁ……)


 兵士たちに褒めたたえられるカノちゃんとシヨちゃん。


 どうやら着実に俺の居場所は無くなりつつあるようだ。


(本当に俺このパーティにいるのかなぁ……?)


 どうも弟子たちも含めて、俺たちの実力は魔王軍と比べてなおぶっちぎりのようだ。


 だからぶっちゃけ、カノちゃんとテキナさんが居れば戦力的には十分すぎる。


 その二人へ指示を出すのも俺がするよりシヨちゃんがするほうが遥かに効率的だ……行動の善悪はさせといてだ。


(けど俺には切り札が……あれを使わないといけない場面も多いし……俺はいらない子なんかじゃないんだぞ……)


 とりあえず内心で自分に言い聞かせる……じゃないと、もう心が折れそうだ。


「まさか本当に魔王軍が攻めて来ておったとは……」


「魔王軍は狡猾で油断のならない相手なんですよぉ、だから対策のためにも是非とも王様と会談したいんですけどぉ……この無力な勇者サーボ様一行にどうかフウリ様のお力をお貸しいただけないでしょうかぁ?」


(下手にでるときだけ俺の名前を使いやがって……まあもうどうでもいいけどさぁ……)


 勝手に交渉を始めているシヨちゃんだが、もう俺は止めようとは思わなかった。


 そのほうがきっと魔王軍への対策としてはきっと上手く行くはずなのだから。


(それ以外の面じゃとんでもないことになりそうだけど……どーせ俺じゃあ止められねぇよぉ……)


「お、おおっ!! このフウリ様の力が必要かっ!! ふふん、まあ仕方あるまいっ!! 特別に手を貸してやろうではないかっ!!」


「ふ、フウリ様……勝手に王様との会談を約束するのは不味いのでは?」


「ええい、構わぬっ!! このフウリ様が決めたことだっ!! 何も問題ないのだっ!!」


 冷静そうな副官らしい兵士の男の言葉を切り捨て、俺たちへの居力を約束してくれるフウリ様。


 どうやらこれだけの実力を見せつけた勇者に頼りにされたことでいい気になっているようだ。


(初見でフウリ様の見栄っ張りな性格を見抜いて下手にでたわけか……やっぱりこいつの頭はどうかしてる……)


「それはそれはとても頼りになりますぅ、流石はフウリ様……この国の王女と見間違わんばかりの才覚ですぅ」


「ふふん、実はフウリ様はこの国の王女だったのだっ!! 貴様はなかなか見る目があるではないかっ!!」


(まあその歳でそれだけ威張ってて、軍権も握ってるとなれば王族の関係者だろうと簡単に想像できるけどなぁ)


 俺が見抜けていることをシヨちゃんが見抜けていないわけがない。


「そうだったんですかぁ、これはサーボ様が王女様に大変失礼な真似をしてしまいましたぁ……ほらサーボ様、謝りましょう」


「えぇ……どうし……いやそうですね、失礼いたしました王女フウリ様……」


 もう考えるのも面倒で、シヨちゃんに言われるまま王女に対する礼儀を示すことにした。


 目の前で跪いて適当に謝辞を述べる。


「うむ、苦しゅうないぞっ!!」


 そう言って手を差し伸べるフウリ様。


(……手を取ってキスでもしろってかぁ、マジかよ?)


 ちらりとシヨちゃんを見ると頷いている。


 もうここまで来て抵抗するのも虚しい……俺はカノちゃんに見られないよう角度を気をつけつつフウリ様の手の甲に口づけをした。


「ひゃぁっ!? な、な、な、なにをなにをなにをぉおおおおっ!?」


「さ、サーボ様ぁっ!? な、なにしてるんですかぁっ!?」


「えぇ……だって礼儀としてその……」


「ふ、ふ、フウリ様にな、何たる……こ、この狼藉者ぉっ!!」


(ど、どうなってんのこれ……?)


 顔を真っ赤にして手のひらを抑えて後ずさるフウリ様。


「サーボ様ぁ、なぁにをしたのかなぁ? 僕に教えてほしいなぁ?」


「ひぃっ!? か、か、カノちゃん顔が近いよぉっ!?」


「そ、その不埒ものはこ、このフウリ様の差し出した手に……た、立ち上がらせようとした手を取るどころかく、口づけを……はぅぅ……」


「っ!?」


(そ、そういうことだったのかぁっ!? というか普通に考えればソレしかないだろうが俺ぇえええっ!!)


 どうやら精神をやられ過ぎて正常な判断ができなかったようだ。


「サーボ様サーボ様どうしてどうしてどうしてねぇ僕にもしてくれないのにどうしてねぇおかしいよねぇ何考えてるのサーボ様ねえ僕の目を見てちゃんと答えてねえサーボ様どうしてねえおかしいよねぇねぇねぇ……」


 血走った目で俺に迫ってくるカノちゃん。


(怖すぎて直視できませぇん……)


「サーボ様ぁ……うふふ、やっぱりそろそろ調教始めたほうが良さそうですねぇ……駄目な子にはふさわしい振る舞いをシヨがしっかりと調教してぇ……」


「さ、サーボ様……やはりあのような女性が好みなのですね……くぅ、育ち過ぎたこの身が憎い……どうぞサーボ様、この無駄に駄肉へと育たせてしまった愚かな私を存分に嬲りくださいませっ!!」


 更にシヨちゃんとテキナさんまで襲い掛かってきた。


 三人同時は久しぶりだ。


(まさか手の甲のキスでこうなるとは……何だかんだで俺ってこいつらにちゃんと好かれてたんだなぁ、よかったぁ……あははぁ……はぁ……どうしようこれ?)


 前みたいに切り札で何とかしようかとも考えた。


 しかしその前に、カノちゃんが手首を返して俺の両首を締め上げてきた。


「駄目だよサーボ様ぁに臥さない逃がさない絶対逃がさないもう絶対離さないだってサーボ様は僕の物で僕だけのもので僕だけを見てればいいんだからさぁ……」


(もう完全に読まれてる……こんな密着されてたらどうしようもない……しかも結構力が入ってますよカノさん……苦しいっす……)


 冗談抜きで首が締まり、呼吸が苦しくなってくる。


 しかし暴走している三弟子たちは、全く俺の状態に気づいてくれない。


(こ、これ本当に死ぬんじゃないか俺?)


 どうやら俺の冒険はここまでのようだ。


(まさか魔王軍ではなく、弟子たちにやられようとは……)


「え、ええいっ!! このフウリ様を置いてはしゃぐではな……っ!?」


「うるさい邪魔するならお前から始末するよねえいいのねえぼくとサーボ様の仲を邪魔して勝手にキスまでされてお前何様なのねぇ何なのお前ねねぇねぇ……」


「ひぅうっ!?」


 間に入ろうとしたフウリ様は、しかしカノちゃんの殺意混じりの血走った目で睨みつけられて悲鳴を上げた。


 しかしお陰でカノちゃんの手が僅かに緩み、呼吸ができるようになる。


(た、助かった……ありがたやフウリ様……しかしこれ以上巻き込むわけにはいかない……)


「だ、大丈夫ですから……ふ、フウリ様は気になさらないで……」


「うぅ……し、しかし……と、とにかく離れんか貴様らぁっ!!」


「ああもぉいいや、さっさと黙らせ……っ!?」


時間停止(タイムストップ)


 完全に俺からフウリ様へターゲットを移したカノちゃん、お陰で何とか振り払って切り札を使うことができた。

  

(マジで危なかった……もう一対一じゃ敵わないかもなぁ……)


 尤も本気の本気で、それこそ殺す気で掛かれば恐らくまだ俺のほうが強いだろう。


 しかしそんなこと出来るはずがない……本当に大切な弟子たちなのだから。


(何だかんだでこの騒がしい日々も俺は気に入ってるのかもなぁ……なんか懐かし……っ!?)


 ふと思う、俺は本当に自分の意志でこの子たちを大切に思っているのだろうか。


 周りを見回し、三弟子の顔を見て入り口で人力車を守っているムートン君を思い……近くにいるフウリ様へと視線を移す。


 全員俺が初対面で胸の高まりを感じた、そして大切に思っている人達。


(そうだ、俺は出会った時点からこいつらを……それこそ今はフウリ様のことすら俺は大切な存在だと思っている……まだろくに会話も交わしてないのに……)


 前にも何度か考えたこと、俺はこいつらに会ったことがあるんじゃないかという推測。


(けどアイさんの名づけの件もある、だからこれは単純に過去に会ったことを忘れてるんじゃない……恐らくは人生そのものを俺は……やり直しているんじゃないか?)


 もう一つ思い出す、少し前に考えたこと……三弟子たちのとびぬけた才能について。


(こいつらも俺以上にぶっ飛んだ才能の持ち主だった……だけど産まれたばかりの時は他の奴らと横並びだった……)


 それに対して俺は当時から勇者コンテスト優勝者を上回る異常な実力を持っていた。


 更にスキルや切り札も、いつのまにか自然と習得してしまっていた……まるで知っていたかのように。


(いやスキル名からしても恐らく俺は知っていたんだ……経験したことがあったんだよ……事前に……つまり……生まれる前に……だ)


 改めてこいつらと旅してから後悔するたびに何度か頭をよぎった単語を思い返す。


(やり直したい……一からやり直す……生まれた時から……だけどそんな方法……俺には、あるよなぁ……)


 使いたい効果の魔法を作り出すことができる、俺の切り札。


 実際に時間まで止めて見せているのだ、なら巻き戻すことも不可能じゃないだろう。


(つまり……俺は前にも魔王退治の旅をして……修行の果てにこの能力を身に着けて……やり直してんだ……)


 何故その記憶が残っていないのかは分からない……何度か切り札で思い出そうと試みてたがこればかりは無理だった。


(だけどところどころは、それこそこの子たちのことだけは覚えていた……何でだ?)


 多分何かしらで必死にそれだけは守り抜いたのか……あるいはとても印象深い相手だったのだろう。


(……それが事実として、だけどその記憶は本当に俺のものだと言っていいのか?)


 前の俺がどんな人生を送ってどのような果てにやり直すことを決意したかは分からない。


 しかしそっちの俺にもそれなりのエピソードがあったはずだ。


(まあ今の俺よりは波乱万丈じゃないと思うが……とにかくそっちの俺が経験した人生の果てにこいつらのことが印象付いていて、今の俺も影響を受けている……だけどそれは本当に俺の感情なのか?)


 三弟子を見る、俺に迷惑ばかりかけて騒がしく……鬱陶しいと思うこともある弟子たち。


 大切だからと自分に言い聞かせてきたが、こんな奴らを俺は本当に大事だと思っているのだろうか。


(そんなの…………大事に決まってるんだよなぁ)


 そこまで考えておいて、俺の出した結論は今までと変わらないものだった。


 確かに初対面の胸の高鳴りがなければ、最初の時点でお別れになっていたかもしれない。


 だけどそれからずっと行動を共にしてきて、散々酷い目にあわされてなお一緒に居るのは……今の俺が判断したことだ。


(いや、まあ逃げたいときは何度もあるけどなぁ……どうせカノちゃんは追いついてくるだろうし……)


 血走った目で呪文を唱えた俺につかみかかろうとしたまま固まっている彼女を見て、何故か俺は少しだけ笑ってしまった。


(こんな俺にこんな必死になっちゃってさぁ……こいつらは産まれた時の能力から判断してもやり直してないはずなのに……それでも俺を慕ってくれてる……今の俺がしていることを見て慕うと判断してくれてるんだ……)


 だからこそ、こんな厄介な弟子たちが愛おしく思えるのだろう。


(ただ俺の実力はやり直しが前提の強さだからなぁ、ある意味で誤解して……っ!?)


 さらにそこである事実に気づく。


(これだけ実力がついて、そしてこんな可愛い……み、見た目だけは文句なく魅力的な女性たちに囲まれていながら人生をやり直すことにした……ま、まさか俺たちって魔王に負けたのかぁっ!?)


 恐ろしい推測だったが、多分正しいだろう。


 もしも普通に魔王に勝利しているのならば、その子たちを置いて俺は逃げたりしないはずだ……今の俺がぎりぎりでやり直しの誘惑を振り切っているようにだ。


 何よりあれほどの実力をわざわざ引き継いでやり直していることがその証拠だ。

 

(いや未来でこいつらが大暴れしてやり直したいって思った……んなら、ここまでの実力は引き継ぐ必要ないもんなぁ……まさか事故って間違えて戻ったってわけでもないだろうし……不味いのかこれっ!?)


 どうやら魔王軍が雑魚だと高を括っていたが、実は残るやつらがぶっちぎりでヤバい相手かもしれない。


(これは気を緩めてる場合じゃねぇ……一刻も早く仲間たちと相談しないとっ!!)


 魔王軍の脅威を悟った俺は、改めて仲間たちと協力してやっていこうと決意を固め魔法を解いた。


「あぁああサーボ様ぁ……あっ!?」


「ふぇっ!? あ、あれサーボ様ぁ?」


「さ、サーボ様? 移動なされなかったのですか?」


 時間停止を解除してなお、この場に立つ俺を三弟子たちが不思議そうに見つめている。


 そんな彼女たちに俺は真面目にこれからのことを語ろうと口を開くのだった。


「いいかい君た……っ!?」


「捕まえた捕まえた今度こそ逃がさない逃がさない捕まえたもう逃がさない逃がさない絶対逃がさないサーボ様サーボ様サーボ様サーボ様……」


「うふふぅ、ようやく覚悟を決めたんですねぇ……いいですよぉ、やさしぃくシヨが調教してあげますからぁ」


「サーボ様だけに苦難を味わわせたりは致しません、どうかこのテキナも共に……」


(や、やっぱり……こんな奴らとやって行けるかぁああああっ!!)


 一瞬で自分の判断を後悔する俺。


「え、ええいっ!! いい加減にフウリ様の婿から離れるがよいっ!!」


「ちょぉっ!? な、何でそんなこと言ってんのぉっ!?」


 急に訳の分からないことを言い出したフウリ様。


 よく見ると顔は先ほどから赤いままだが、俺が口づけした手を愛おしそうに摩っている。


「か、仮にも王族であるフウリ様の柔肌に傷をつけたのだっ!! せ、責任は取ってもらうぞサーボよっ!! わ、分かったら離れるがよいっ!! そのものはフウリ様の物なのだっ!!」


「はぁああああっ!! 何ほざいてんのお前ねぇお前流石に許さない絶対に許さない許さない許さないぃいいいいいいっ!!」


「た、時間停止(タイムストップ)ぅううっ!!」


 フウリ様に飛び掛かろうとしたカノちゃんを制すべく、俺は改めて切り札を解き放つのだった。


(ああっ!! もぉいやぁああっ!! やり直してぇえええええええっ!!)

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