王都騎士団の片手剣②
本日投稿二度目です。ご注意ください
☆
『なんだなんだ?』
『頑固職人のとこで武器商が頑張ってるらしいぞ』
『それでどうして街の外に行ってんだ』
聞こえてくる他のNPCの声。
騒ぎを聞きつけたのか、街の外に繰り出した俺達に着いてきたようだ。
まあ、ある意味都合が良いか。
『おい! ここまで連れ出して何するってんだよ!?』
「に、ニシキさん……?」
トーンリとエリアが俺を眺める。
そこは道路から外れた草原。
そして――
《スライム LEVEL39》
当然、さっき見た様にモンスターが居る。
『おいアンタ! そのスライムは危険だぞ!』
「ああ、よく知ってる――じゃ、行くぞ」
その声には、インベントリからスチールソードを取り出しながら答えた。
「――『スウィング』!」
『……ギギ!?』
そしてその片手剣をスライムへと振り下ろし――、青いエフェクトの軌跡が刃を伝う。
片手剣武技、スウィング。今のところ使えるのはこの武技だけだ。
アレから片手剣を使う練習もしていたところ、片手剣スキルを取得しコレも手に入った。
片手斧で言うスラッシュみたいなもんだろう。
リキャストも短く消費MPも少ない便利な基礎武技だ。
『ピギィ!』
「――っと、らあ!」
『ギィ!?』
コイツとは何度も戦った経験がある。
加えてレベル差もあり、正直余裕だ。
でもやっぱり、片手斧じゃないからダメージは稼げないな。
☆
『ギィ』
『ギィ』
「ふう、ようやくココまで来たか」
王都ヴィクトリア名物、スライムの分身。
「あー、すまない待たせた、今からスチールソードじゃなく――『コイツ』で戦ってみるぞ!」
『あ、ああ……』
「ニシキさまぁ~! がんばれ~!」
トーンリは珍しく素直な様子で頷く。後ろにはエリアの声援も。
そしてそれを浴びながら――俺は『王都騎士団の片手剣』を装備した。
商品を使うのはためらうが買ってもらわない事には意味無いからな!
どうせ在庫処分だ、好きに使わせて貰おう。
「……うん、全然違う――『スウィング』」
装備した瞬間、身体は軽くなり更に力が増すのを感じた。
派手な装飾に美しい刃のその剣を――スライムへと一振り。
『ギィ!?』
『おいおいあの剣装備した瞬間動きが見違えたぞ!』
『威力もすげーぞ』
『なんの剣なんだ?』
『武器商が持ってるって事は商品か!?』
《報酬額が増加しました》
アナウンス、観衆の声を聞く限り、やはり見ている分でも違う様だ。
実演販売――これはやってて正解だったな。
☆
「『スウィング』――っと!」
『ギィ……』
《経験値を取得しました》
「ニシキ様かっこいーですー!」
『良いぞ~兄ちゃん!』
『あの武器見た目だけじゃねーな』
「はは、ありがとう――らあ!」
『ギィ……』
《経験値を取得しました》
「ふう……どうだトーンリ、コレの価値は分かったか?」
「……取りあえず店まで来い。話はそこからだ」
「ああ、分かった」
商品を右手で指して彼に声を掛ければ――そんな返答だった。
さてさて、どうなるかな。
☆
見ていた観衆は引き上げて、俺達はトーンリの店まで戻っていた。
分からないがエリアは何だか上機嫌だ。
『……ったく。アンタ自分の商品を何だと思ってんだ』
「すまん、まずかったか?」
『そりゃそうだろうよ、ほら貸してみろ』
「? 分かった」
《王都騎士団の片手剣をトーンリに譲渡しました》
『――ったくよぉ、コレは俺の店の商品にもなるんだから気を付けて貰わなきゃ困るぜ』
「……ん?」
今、『俺の店の商品』って言ったよな。
それって――
「って事は買い取ってくれるのか?」
『ガハハハッ、アンタ今更かぁ!? あそこまでされて断る訳もねえっての』
「……そうか、ありがとう」
『アンタがスライムをコレでぶっ倒したおかげで、この商品は明日から争奪戦だぜ』
「! そりゃ良かった」
どうやら実演販売は成功だったらしい。
数にしてもあんまり無いし、確かに奪い合いかもな。
「……『ニシキ』か。アンタほど肝が据わった武器商は初めてだ。名前を覚えておいてやる」
「はは、どうも」
「ニシキさまは凄いんですよー!!」
「オメーは何もして――いや、一応してたな……」
「ははは」
トーンリとエリアの会話を聞きながら笑う。
どうやら、今回の交易クエストも上手くいった様だった。
☆
「……今日はありがとうなエリア、助かったよ」
「えへへ~どういたしました!」
「はは」
空になった荷車を押して、ガーネットの店までエリアを送り届ける。
どうやら売り払った時点でクエストクリアではないらしい。しっかり送ってやれって事だな。
「なあ、エリア」
「はい?」
「俺、弟子が出来たんだ」
「!」
「はは、驚いたか?」
ゲームの世界といえど、何となくエリアには言ってみたかった。
正真正銘エリアはガーネットの弟子だからな。
「……いえ! ニシキさまならいずれと思ってました!」
「そうか、そんなもんか?」
「はい! ニシキさまは凄いので!」
「はは、エリアは理想の弟子だな」
「へぇ?」
「尊敬してくれて、優しくて、元気で、素直で、後は――」
「――わ、わあー! お止めくださーい! 恥ずかしいですよー!!」
「ははは」
言葉を続ける度に顔を紅くしていく様子は、申し訳ないが面白かった。
この様子じゃ、ガーネットの所でも楽しくやっているんだろうな。
☆
《ガーネットの工房》
「じゃ、元気でな」
「はーい!」
辿り着いたそこへ、エリアを送り届けてやる。
商売が終わってもクエストが終了しなかったのは、彼女が居たからだろう。
こうして無事に帰還するのもソレの内って事だ。
「――戻りましたーガーネットさま!」
「おっそい!! ニシキと遊びすぎだよ!」
「ふっふん! 違います、わたしはおしごとをしてきたんですよ――」
夕焼け空――その扉を開ければカラカラと鳴る鈴の様な音。
手を振った彼女は、やがてガーネットの声に迎えられた。
これで一つエリアも成長しただろう。
……って訳で。
クエスト、クリア。
《交易クエストを達成しました!》
《報酬として400,000ゴールドを取得しました!》
《特別報酬として商人の知識(武器)スキルの経験値を取得しました!》
《商人の知識(武器)スキルのレベルが上がりました!》
《クエストをクリアした事により特殊クエストが発生しました》
《称号:『エリアの仕事仲間』を取得しました!》
☆
1:名前:名無しの戦士
久しぶり 恐らく今日でこの板ともお別れだと思う
そう……俺はアレから『色々と』あったんだよ
あっ勝手に語らせてもらいますね
2:名前:名無しの戦士
アレからエリアちゃんを見る事は無くなった
ゲームと割り切って、俺は普通にRLを楽しんだんだよ
でも……駄目だった
彼女を忘れる事は出来なかった
それは彼女が天使の様に、自分の娘かと思う程に 庇護欲を掻き立てられていたのもあった
でも違ったんだ。ここまで引きずっているのは、結局あの時の『後悔』だった
クエストで、彼女を置いて死んでしまった自分へのそれがずっと残っていたんだ
だから俺はそれを清算する為に、ずっと避けていた謝罪をする事にした
もうエリアちゃんには会えないけど、その保護者であったロアスって婆さんには会える
そこで自分は、彼女へできる限り納得できる言い訳を考えて、許しを請う事にした
もっと早くしろなんて声があると思うが……俺にはその一歩が中々踏み出せなかったんだ
3:名前:名無しの戦士
……そこへは、案外クエストなんて無くても入る事が出来た
中に入ると――穏やかではあるが、『怒り』ってのが分かる顔をした婆さんがいた
その時にはもう当初考えていた台詞なんて真っ白になった
そりゃそうだよな。孫娘を守るなんて言って何も出来なかったんだし
俺は思わず、ゲームなんて事も忘れて土下座と謝罪の言葉を並べた
ずっと必死に謝って、ふと頭を上げると笑っていた婆さんが居た。
「安心しな。エリアは無事で、今は王都で頑張ってる」
「またあの子から頼み事あったらお願いすると思うさね」
そう言ってくれたんだ
4:名前:名無しの戦士
そして今、どうして俺がスレを立てたと思う?
そう――なんとたった今、エリアちゃんとのクエストが発生したんだよ!!
本当にありがとう!
皆も諦めずに、勇気を出せば良い結果が待ってるはずだ 小細工なんてしなくても、ストレートに思いを言葉にすればきっと伝わる
俺が言いたかったのはこれだけ!
もう恋愛板にお世話になる事もないだろう、本当にありがとう!!!
5:名前:恋する名無しさん
……もう、板間違いを指摘する気も起きませんね(笑
おめでとうございます
6:名前:名無しの戦士
ありがとう!!!
7:名前:恋する名無しさん
>>6
いえいえ 貴方に幸せが訪れますように
8:名前:名無しの戦士
ははは、板違いの野郎に付き合ってもらってごめん
でもこの会話も最後と思うと寂しくなるな
9:名前:恋する名無しさん
別に 私は最後じゃなくても良いんですよ
10:名前:名無しの戦士
えっ
11:名前:名無しの戦士
あの、それはどういう意味で……?
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と、いうわけで生存報告のエリアちゃん回でした。短いですがお付き合いくださりありがとうございました!
本日二巻発売というわけで、ハルハルが表紙にドドーンと出ております!
本編には無いシルバー回、また私書き下ろしの特別短編小説、ハルちゃんが商人の少女を助ける為頑張るお話が載っております。ぜひぜひ。
こちらの本編の方は、7割以上完成しており春頃には投稿できると思います。読者様のおかげで1000万PVも達成し嬉しい限り……頑張って書きますのでまた読んでもらえると幸いです。
それではまた。





