二人の弟子(候補)①
短めです。
なんと、やがて最強のPKキラー、コミカライズ版一巻が重版致しました……!
皆様のおかげです。本当にありがとうございます。
デッドゾーンから出た後、鳴り響くそのメッセージ。
『こ、こんにちは。今お時間よろしいですか』
『ん?ああ。どこかで待ち合わせしようか』
『……はい、お願いします』
聞こえてきたのは、緊張した固い声。
……現実でもゲームでももう会った事あるから、そんな身構えなくても。
いや、緊張するのかもな……完全に俺彼女よりも年上だったから。
『それじゃ、王都の露店前で』
『分かりました……後、もう一人居るんですが良いですか』
……ん?一人じゃないのか。
『ああ。別に構わない」
『ありがとうございます。待ってます』
☆
……で。
見えたのは、二人の姿だった。
『レン 魔操士 LEVEL40』
『ドク 僧侶 LEVEL40』
魔操士に僧侶。
これまでにあんまり見た事のない職業だな。
レンはアレから装備が豪華になっており。
もう一人のドクは……盾に片手槌か?
ふわふわなピンクのボブカットに穏やかそうな顔。
持つ武器に対して、かなりほんわかとした雰囲気だ。
「……」
「あ、あの方がニシキ様ですかぁ?」
あっちも俺に気付いたか、視線をこっちにやる。
気のせいか……いや、気のせいじゃない。
滅茶苦茶緊張してるな、彼女たち。
「あー、久しぶりだな。それに君も初めまして」
「!あ、ありがとうございます。この度は来ていただいて……」
「に、ニシキ様!お話はレンちゃんからかねがね……」
恐縮しているのか、かなり他人行儀な二人。
……いくらなんでも、これはやりにくい。
「別に軽い感じで良いよ。それで……俺はどうしたらいい?」
「すいません……その、メール通りで――私達を鍛えて欲しいんです」
「――お、お願いしますぅ!」
二人して俺に頭を下げる。
「……具体的には?」
「ニシキさんは、PK職との闘いが上手だと思うので。PK職との闘い方を、教えて欲しいんです」
「噂はレンちゃんから聞いてて。ぜひともぉ……私達二人で、三人のPK職に勝てるぐらいには強くなりたいんです」
そりゃPK職とは何度も闘ってきたが 、余裕の勝利ではない。数の不利があるなら尚更。
というか。そんな鍛えるっていっても教えるなんて経験無いんだよな。
「……二対三って、完全に君達が不利じゃないか」
「!分かってます。でもそれぐらいには強くなりたくて……」
「前金として千万Gもお渡しします。駄目でしょうか」
「お願いしますぅ……」
「!」
い、一千万か。
って思わず反応してしまったが、当然それに見合った教えを彼女達にしてあげなくちゃダメなんだよな。
彼女二人で数の不利を覆せる程の力を付けて……と。
そう考えると、プレッシャーが凄い。
《――「ああ。簡単な話、『一番強いと思った人』に弟子入りでもすれば強くなる可能性は高いだろ?そういう事だ」――》
彼女に言った台詞。
……流石に忘れたなんて言わない。彼女にとって、俺は一番強いと思ったプレイヤーなんだ。
それで断ってしまえば、それこそレンが可哀そうになってしまう。
「俺は人に教えたことなんてない。だから前金なんて受け取れないぞ」
「!そ、そんな」
「うぅ……」
「あーいや!別に鍛えるのを拒否してるわけじゃないからな!」
「え?」
「そ、それじゃ!」
一喜一憂する彼女達。
そんなに、俺に教わりたいものなのか?
……まあいいか。
そりゃあ拘束時間にもよるが。
何より、彼女達は『本気』だ。
あんなことを言った手前無碍には出来ない。
「とりあえずお試しで……それで良いか?」
「は、はい」
「やったぁー!」
喜ぶ二人――こうして俺に『弟子候補』が来てくれたわけなんだけど。
「ちなみに両方上位職なんだよな?」
「はい」
「そうですぅ!」
「分かった。それじゃ今から俺をキルしてくれ」
まずは、彼女達がどこまで出来るか見てやらないとな。
PVも9,000.000&ユニーク1,000,000を達成!
中々至らない点多くありますが、いつも読んで頂いて本当に感謝です。





