表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/258

餓鬼王からの挑戦状③

本日投稿二回目です。



「『スラッシュ』――らあ!」



襲い掛かる一匹へ武技を。

背後から鉄斧を振ろうとする一匹へ蹴りを入れる。



「――っ、がっ……『スラッシュ』!!」



足に掴みかかって来るハイゴブリンを払おうとすれば、右からまた違う一匹が突進。


避け切れず食らう――が、怯んでいる暇は無い。

左から攻撃しようとするハイゴブリンへ武技を入れる。



《経験値を取得しました》



『「『ギャギャア!!』」』



「まだまだ――」



いっこうに減らない奴ら。


それに対し、俺のHPは徐々に減少していく。

当然制限時間も。ポーションを飲む暇何て無い。


……このままじゃ駄目だ。

もっと『効率的』に。もっともっと集中しろ!



『ギャ――』『――ギャギャ!!』


「『パワースウィング』」



前から迫る二匹。遅れて左右から二匹。

前方のゴブリンの攻撃タイミングは同時。



二匹へと高威力のカウンターをお見舞いし――吹っ飛んでいくハイゴブリン達。

そして。



「――っ、食らえ! 」



武技を終えた魂斧を地面へと放り、右から来ていたゴブリンの首元を掴む。


そのまま、左から鉄斧を振りかぶったゴブリンへそれを押し付けた。



『ギャ!?』『ギャギャ――』



その餓鬼の盾は、鉄斧を身を以て防いでくれる。

尋常ではない減りのHP。どうやらかなり効くらしく――



《経験値を取得しました》



『ギャギャ……!』『ギャギャギャ!!』『ギャギャ』



「――はは、怒ってるのが良く分かるよ」



ゴブリンでも、怒りは湧くものらしい。

同士討ちをさせたからか、単純にゲームシステム的にそうなっているのかは分からない。



だが――そんな事はどうでも良い。



今、奴らが何かをやろうとしている。



『「『ギャ……!』」』



静かに鳴くと共に、俺を取り囲む様並んでいく。


全方位、逃げられない。

ハイゴブリンの包囲網。


……武技で攻撃するか?いや――



『「『ギャ――!』」』



迷う間もなく、周囲360度からのゴブリンの突撃。

攻撃タイミングはほぼ同じ。


でも――武技を同時に当てられるのは精々三匹か。



俺のHP残量は約半分。

ゴブリンの残りは十匹。

十から三匹引いても――七匹の攻撃を食らえば間違いなく『死』。



……なら、避けるか?


いや。


今。

試したい事がある。

成功すれば――これで終わりの。



「――『高速戦闘』」



スローの世界。

ゴブリンが迫る中、魂斧を地面に刺して二つの毒を取り出す。


一つは『攻勢の毒薬』。

二つは『増幅毒』。



……増幅毒。

浴びるか口にしてしまうと、次に食らう特定の『状態異常』をより深刻なモノにするという特殊な毒。

取引掲示板で攻勢の毒薬を買おうとした時、偶然目に映ったそれ。


本来の用途とはかけ離れているが――構わない。



「――っ」



まずは右手の増幅毒を身体にかけながら。

遅れて左手の攻勢の毒薬を、可能な限り早く口にした。



《状態異常:猛毒となりました》



聞こえるアナウンス。

尋常ではない減りのHP。

紫色のオーラも気のせいか大きくなっていた。



……これなら、『間に合う』。



ドクドクと鼓動が早まる。

それを押さえつける様に、俺は『居合』の精神統一を。

同時に魂斧を左手で取りだし、構えた。



「――『瞑想』」



《瞑想状態となりました》



重心を下に。左の膝を地面に。

魂斧を、右の腰に付ける。



そして俺は――目を閉じた。

暗闇の世界に身を落とす。


思い出す、『瞑想VR』。

兄の姿。




《黒の変質が発動します》




脳内に響くアナウンス。

そして周囲全方位の殺意が――近付いてくるのが分かった。

そんな状況とは裏腹に、俺の脳が過去を掘り起こす。



時間が、止まった様にゆっくりとなって。



《――「あはは、またボクの真似をしているのかい?」――》


《――「うん!でもオレのは兄さんのとはちょっと違うんだ!分かるだろ?」――》


《――「ああ、そうだね。間違いなくそれはボクとは違う。それがもし完成したら」――》



幼少の頃。

俺が、まだ『左』を使えていた頃の事。

ずっとずっと昔の……商人なんていう職業を知らない頃。



半ば『お遊び』で。

半ば『本気』で。



必死に練習していた大昔。

瞑想VRのおかげで、その記憶が蘇っていた。

あの時の兄の言葉が――そっくりそのまま頭に響く。





《――「君だけの、たった一つの『構え』だよ」――》





暗闇の中、映し出した兄の姿。

憧れのそれを、少し変えた『左』のそれ。


叶う事の無かった――昔の『夢』。


これはゲームだ。

だからこそ、それを補助してくれる。

現実じゃ到底不可能でも――この世界なら。



「――――――」



変質した魂斧。

刀身を右手で握り込み、無理矢理に『鞘』を創った。



――そして。

命令する。

己の身体、全てへと。





――構えを振り解く。

――先ず動くのは左手。ほぼ同時に足。

――右手を切り裂く微かな感覚。風が鳴る音。

――目標は、奴ら全て。

――『憧れ』と、同じ様に――









――切り裂け。

この、者共を。











「――『黄金の一撃』――」




殺気がすぐ傍に達した時、刀を抜く。


周囲全方位、360度。

それは刹那。円を描く様に。

ゆっくり、ゆっくり動く世界の中。


左が放つ黄金の一閃を――迫るハイゴブリン全てへと振るったのだった。



《経験値を取得しました》

《経験値を取得しました》

《経験値を取得しました》

《経験値を取得しました》

《経験値を取得しました》

《経験値を取得しました》

《経験値を取得しました》

《経験値を取得しました》

《経験値を取得しました》

《経験値を取得しました》




《第10ウェーブをクリア》


《失ったHPとMPを回復します》


《状態異常:猛毒が回復しました》


《レベルが上がりました。任意のステータスにポイントを振ってください》


《餓鬼王からの挑戦状をクリアしました!》


《報酬として経験値を取得しました》


《レベルが上がりました。任意のステータスにポイントを振ってください》


《餓鬼王の印を取得しました》


《不屈スキルを取得しました》


《逆境スキルを取得しました》


《称号:大富豪と不屈スキル・逆境スキルを取得した事で、黄金の意思スキルを取得しました》


《称号:餓鬼王から認められし者を取得しました》


《クリア後退出を選択しない場合次ウェーブが開始されます》


《なお、次ウェーブからは報酬が得られません》


《続けますか?》

いつも応援、誤字脱字報告ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


コミカライズ単行本1.2巻が発売中! よろしくお願いいたします

↓新作のVRMMOモノです。↓
罠士の大罪人~不人気職、『落とし穴』で最前線を駆け巡る~



小説家になろう 勝手にランキング

作者ツイッター 322106000445.jpg
― 新着の感想 ―
[一言] うおお………なんか色々来たけどウェーブは抜けない限り続くんかい!
[気になる点] 《称号:大富豪と不屈スキル・逆境スキルを取得した事で、黄金の意思スキルを取得しました》 黄金の意思はスキル?称号じゃなく?
[一言] これ無限に経験値を獲得出来そうですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ