0032 陸海空に連星の散ず
5/8 …… イータとシータのずれを修正しました。
7/17 …… 隠身蛇の技能を調整
ル・ベリによる小醜鬼を餌にした肉食獣の誘引は大成功であった。
その成果として、俺が迷宮の構築を進める間に、根喰い熊や葉隠れ狼、鎧モグラといった動物系の『因子』の回収が一気に進む。
さらに獣調教師の『継承技能』による鳥獣との親和性により、特に『血吸カワセミ』を群れ単位で追い込んで捕らえることに成功した。また、泉や小川での小魚の集中的な採取により、新しい因子の定義には至っていなかったが、さらにいくつかの『因子』を解析完了とすることができた。
【因子解析状況】
・解析完了済
強筋、葉緑、魔素適応、命素適応、拡腔、酸蝕、垂露、伸縮筋、水和、猛毒
・解析完了(NEW!!!)
硬殻、重骨、隠形、酒精、空棲、水棲
・肥大脳:19.5%
・瞬発筋:10.1% ← UP!!!
・鋭利:13.3% ← UP!!!
・豊毳:7.4% ← UP!!!
・軽骨:12.2% ← UP!!!
・血統:20.2%
・擬装:8.5% ← UP!!!
・共生:93% ← UP!!!
・土棲:89% ← UP!!!
・噴霧:21.8% ← UP!!!
・粘腺:37.3%
・汽泉:8.4% ← UP!!!
・生晶:2.1%
・紋光:5%
・強機動:32% ← UP!!!
・水穣:25.6% ← UP!!!
・風属性:5.8%
現在判明している「走狗蟲ルート」の第2世代については、その全部が、進化に必要な因子の解析が完了していた。
その時点で、満を持して、称号『連星の絆』によって結ばれた連携能力を持つ3体の"名付き"であるゼータ、イータ、シータをそれぞれ『隠身蛇』、『遊拐小鳥』、『突牙小魚』への"進化"を俺から命じたのが約1日前である。
果たして、【人世】側の"異界の裂け目"からの帰りの途、俺は戦線獣アルファを伴い、悪路を越えた後に道中どこからともなく転がってきた噴酸蛆のベータとイプシロンと合流する。
そして1人と3体で『司令室(仮)』まで戻ってきた、まさにそのタイミングで、「エイリアン的肉塊繭」を引き千切りながら姿を表す、ゼータ達3体の"進化"の瞬間に立ち会うことができたのであった。
○隠身蛇(ゼータ)
"蛇"という名からも明らかなように、その胴体は異様に長く伸びている。他方、走狗蟲時代のあれだけ強靭であった後ろ脚はすっかり退化しているのか、見る陰も無い――とそこまで観察して、俺はあることに気づいた。
ごくわずかにであるが、長く太い蛇のような下半身の付け根、腰の付近。
そこに縦に3本の切れ込みのような、筋肉と筋肉の狭間で皮膚と皮がよじれたような"跡"があることに俺は気づいたのである。それが気になって、さらに近づいてよく見てみれば、その下半身の蛇体の腰の辺りの"少し膨らんだ"筋肉は、ちょうどかつての走狗蟲の後ろ脚の強靭な太腿の筋肉そのものであることがわかったのだ。
つまり海洋哺乳類の尾ビレのように、"進化"の中で後ろ脚が尾と完全に融合して一体化した、とでも言うべき形態であった。
小さい頃に、自分の両足をバスタオルでぐるぐる巻きにして「人魚ごっこ」をしたことがある者もあるかもしれないが、それに近い。走狗蟲時代の強靭な後ろ脚は消えたのではなく、そのまま肉と皮によって太い尾と融合して「ぐるぐる巻き」になったかのように、一体となっていたわけである。
故に、その"尾"は単なる蛇の胴体と言うにはいささか強靭過ぎた。
元の後ろ脚と尾の筋力がそのまま足し算されていると見え、その蛇体による締め付ける力が破壊的なものであることは、一目瞭然かと思われた。
一方、隠身蛇の上半身はというと――喩えるならば「カマキリ型エイリアン」であろうか。
両の前肢は指全体が爪になったかのような鎌状に発達。
頭部は、ややしゅっとした針金のようなフォルムとなり、走狗蟲のトレードマークたる「十字牙顎」は相変わらずのように維持されている。瞳孔が黄色く、全身にびっしり生えた細かい"鱗"の存在によって爬虫類みが増したが、上顎と下顎、左右の鋏状の牙が十字に四方向に大きく開かれる様は、否が応でも「エイリアン」であることを忘れさせないものであった。
そのような上半身が1メートル、下半身に至っては限界まで伸ばせば2メートルを誇る。
筋力だけで直立しようとすれば体高は2m50cmを維持でき、かと思えば、しゅるしゅるとまるでヤドカリやカタツムリが自身の殻に身体を収めるかのように"とぐろ"を巻いて小さくなることができ、見た目から想像できる以上に狭い地形に忍び込むことも可能であった。
そして極めつきが、その「登攀」能力だ。
きめ細かな"鱗"は特に体の前面、蛇体の腹の部分に集中している。そしてびっしりと生えたそれらは、1つ1つが鉤状となっていて、身体をくねらせるように這わせるだけで壁の微細な凹凸をしっかりと引っ掛けて捉え、張り付くかのようにするすると登攀してしまうことが可能なのであった。
6本足によって器用に壁や天井の突起にしがみつく労役蟲も決して登攀が苦手ではないが、それでも水滴で濡れた場所では時折、足を滑らせて墜落するという事故も何度も起きている。
しかし、そのような難所であっても隠身蛇ならば音も無く"這い登る"ことが可能なのだ。
さらに、駄目押しとばかり、その一見すると"鎌"とも見紛う前肢の正体は――ぴったりと指を合わせたフック上の"鉤爪"であった。
この状態から、隠身蛇は指同士を離すことで、湾曲した5本の「フック」の形状に自身の鉤爪を変形させることができるのである。それはちょうど、時代劇などで忍びの者が城壁を越える際に、投げて引っ掛ける時に使う道具に似ていた。
指を合わせれば"鎌"となり対峙する者の首を掻き切る。
指を離せば5叉の"フック"となり、しかもそれは指の動きの繊細さを合わせ持った高感度の"フック"であるため、どのような崖だろうが壁だろうが引っ掛けて登攀してみせる――という意思すらを感じさせられる造型だ。
そして最後の特徴が、『因子:隠形』の獲得元となった葉隠れ狼も顔負けの"隠密性"である。
腹にびっしりと生えた鉤状のきめ細かな鱗も、蛇体を形成するしなやかで柔軟かつ強靭過ぎる筋肉も、その身を動かすことで生じるどんなわずかな音をも分散し、あるいは吸収してしまうためのものである。隠身蛇は絶対の「隠密」を体現するエイリアン系統であった。
走力では走狗蟲には敵わない。
だが、遠く離した地点に行かせたり、【魔素操作】【命素操作】で意図的に供給を断った状態で、じっと動かずに一切の気配を断って待機させる場合などには、絶食した状態で数日すらも耐えることができるため、理想の監視・偵察役であるとも言えた。
ただし、正面からの戦闘力では走狗蟲になんとか勝てるかどうか、といったところである。
前肢の爪を"鎌"モードとした場合には、鎧を持たない生身の生物が相手であれば、その喉や頸動脈を掻き切ることは造作も無く、奇襲や不意討ちが有りという状況ならば大いに役立つだろう。それでも、例えば戦線獣のような露骨な重量級を初撃で仕留められる可能性は低いと見え、やはり奇をてらうのではなくその隠密力を生かした運用をするべきであろう、と俺は考えていた。
隠身蛇の維持コストや、習得することができる『系統技能』は次の通りである。
【維持コスト】
・生成魔素:210
・生成命素:280
・維持魔素:11
・維持命素:27
【系統技能】
・擬態強化
・気配減衰
・不動少食
・壁這う蛇腹
ゼータのビルド方針は、種族技能を中心とした強化のビルドで行くことに俺は決めた。
『隠身蛇』としての強みや運用が「監視・偵察役」であるのは良いが、それは"名付き"に求められる役割ではなかったからである。監視や偵察を隠密に実際に行う役割は、必要に応じて"名無し"を数体、隠身蛇とすればよい。
ゼータは"名付き"として、さらに先行して次の世代へ進んでいくことが期待されている。
例えば単純な戦闘力のみであれば『切裂蛇』などもまた魅力的な選択肢だと思えた。その意味で、"名付き"としての戦闘能力・指揮能力、そして特にイータ、シータとの連携力を重視したビルド構想というわけである。
○突牙小魚(シータ)
名前からも『因子』からも、この世代から明らかに水中遊泳能力を獲得したと思しき系統である。
「第2世代」で早くも"水中型"となったということは、つまり突牙小魚から先の進化では――さらに様々なバリエーションに富んだ「水中型エイリアン」の登場が期待される。
そして、今はまだ多少時期が尚早かもしれなかったが、早期の多頭竜蛇対策として、あらかじめ「水中型」の特性や何ができて何ができないのか、ということを俺は確かめる必要があった。
その結果として、シータに白羽の矢が立ったのだ。
なお、『因子:水棲』をまだ解析完了させる前は、「水中型」になってしまったら"えら呼吸"になって陸上で活動できなくなるのではないか、という先入観があった。だが、こうして解析が完了した際に俺の一気に頭の中に流れ込んできた「水棲」のイメージは、全く、そういうものではなかった。
それは端的に、水中に棲息するという能、そのような器官や性質や特徴を生物として得るという"現象"である。この解釈ならば、水中への棲息に「えら呼吸」は必須の器官ではない。現に「水棲」でありながら、当然のように肺で呼吸をする海洋哺乳類や一部の魚があるのだから。
――そういう確信が得られたため、俺はシータを『突牙小魚』に進化させても、陸上での行動への悪影響は最小限だろうと推測していた。
そしてその確信の通り、シータは"魚"と化しても特段呼吸の問題は無かったのである。
なお、そんな突牙小魚の姿形であるが、一言で述べるならば「ヒレのついた走狗蟲」としか言いようの無い、繭から間違えて早く出てしまったのか、と言わんばかりの過渡期的な造型であった。
太い尾は平らになり、皮が広がって芭蕉扇かと見紛う巨大な"尾ビレ"となっている。
体表は撥水性のきめ細かな皮膚に変化しており、若干の丸みを帯びているが、それは噴酸蛆のような肥育されたかのような脂肪や筋肉による丸みではない。水の抵抗をわずかでも抑えようという流線型の姿態から導き出された、合理的な「丸っこい」形状なのだ。
そして、その強靭な後ろ脚はカカトの辺りで1本だけ爪が変化した"ヒレ"へ変わっており、前肢は発達して大きくなり、水かきが生えてきた。
走狗蟲としての走行力は落ちたと見えるが、しかし、地を蹴る後ろ脚は「半分」は、まだ陸上走破のための形態が残っていたのである。
だが――このような"過渡期"的な変化した姿であったとしても、その水泳能力は高いだろう、と俺は予感した。
丸みと撥水性を帯びた皮膚もそうであるが、やはり巨大な尾ビレの存在が大きく、あれを上手に水中で動かせば、多少の「魚らしくない出っ張り」の有無は大した問題とはならないだろう。そしてそれが、今後、第3世代以降ではより水中での移動に特化した器官に変わっていくように思えた。
なお、名前である『突牙』とは、エイリアン的「十字牙顎」のうちの左右の牙が変化したものである。それらが、ちょうど口の中から真っ直ぐに前方に2本突き出した状態で固定されているのであった。
まるで俺が元いた世界の「イッカク」のように、口の中から槍のように突き出した"直牙"。その脅威は、水流の勢いを借りることができる水中での恐ろしさは言うに及ばず、たとえ地上であっても、助走をつけて顔面ごとその"直牙"を突き立てられれば、薄い鎧なら貫通してしまうことだろう。
さながら、生きた銛である。集団によって連携させることができれば、水場に引き込んだ大型の獣が相手であっても滅多刺しにしてしまうことができるのかもしれない。
俺はこの時、割と本気で迷宮内に水場と水路を引く、ということも検討に入れたのであった。
そして、そんなシータの維持コストや系統技能は次の通り。
【維持コスト】
・生成魔素:190
・生成命素:240
・維持魔素:13
・維持命素:45
【系統技能】
・流体加速
・潜水強化
・牙突の構え
『三連星』としての連携も大事であるが、シータにはゆくゆくは「水中型」を任せていく。
そのため、ビルド方針としては、明らかに水中での活動に資する『系統技能』の3種を中心に点振りをしていくことに俺は決めた。
なお、そんなことをしてしまっては将来的に他のエイリアンや"名付き"達と連携しづらいのではないか、という懸念があるかもしれない。
しかし、この世界には『魔法』がある。
例えば、水の無い場所にも大規模な水を生み出すことが『魔法』によってできるならば――それはシータの得意なフィールドを能動的にその場に出現させる行為に他ならなかった。何となれば、場合によってはシータ自身が、そういう【水】属性の魔法を使うことができるような"進化"をするかもしれないのである。
○遊拐小鳥(イータ)
シータを進化させた突牙小魚が「水中型」の基点種であるならば、同じようにイータを進化させた『遊拐小鳥』は「飛行型」の基点種であると言うことができ、走狗蟲からの"進化の過渡期"であるかのような姿となっていたところも同じである。
まず、走狗蟲の象徴とも言える強靭な後ろ脚が、同じく強靭であった尻尾と共に退化して小さくなっていた。さすがに噴酸蛆のように見えなくなるほど小さくなったというわけではなく、また隠身蛇のように尾と一体化したわけでもないが――本当に、遊拐小鳥は走狗蟲時代の強靭で恐ろしき爪を備えた後ろ脚を、退化させてしまったのである。
後ろ脚の方は明らかに三回りばかり、骨格ごと縮んだように見える。
前肢もまた一回りだけ、少し成長することで、四肢のサイズがちょうど釣り合った、とは言うことができるかもしれない。
しかしそのために走狗蟲のように後ろ脚2本で直立することができなくなり、遊拐小鳥は地上では常に"四つん這い"の体勢を余儀なくされた。
そしてこのことに加え、遊拐小鳥はその身体も走狗蟲時代と比べれば、しぼんで成長を逆転させられたかのように、ほっそりと肉がこそげ落ちて、元の走狗蟲よりも小柄な体格に変化していたのであった。
このような胴体と足の部分の変化だけを見れば、これは進化どころか弱体化や矮小化のようにも思えるだろう。
だが、遊拐小鳥は「飛行型」の基点種である。
身体を縮めさせ、尾も後ろ脚も縮めさせた代償に、まるでちょうどその分の体積と、進化によって新たに獲得したエネルギーの全ては――背中から前肢の付け根にかけて生えた身体と同じほども大きな"翼"の形成に注ぎ込まれたようであった。
まるで子供が大人用の大きな傘を背中に背負ったかのような、広げたパラシュートをマントにしたかのような不格好さではあったが、それでもそれは確かに"翼"の用を成す骨格と筋肉の配置であり、さらには黒く微細な"羽毛"を模したかのような、皮膚が変化した細かな毛で覆われていた。
それで実際に、イータは俺の目の前で羽ばたいて飛んで見せた。
決して、本家本元の"鳥"のように優雅な飛び方ではない。
しかし、滑空やその他の外力に頼った飛び方ではなく、自身の意思によって羽ばたいて気流を生み出しそれを捉え、後ろ脚は走狗蟲時代の強靭さを思わせる力強い跳躍によって飛び立ち、それで悠然と空中を舞うのだ。
しかも身体構造としては、翼は前肢が変化したものではなく新たに背中から生えたものである――つまり「4つ足」が自由であり、飛びながら「掴む」動作をかなり自由自在に行うことができる。それは、獲物を掴んで飛び上がることも然ることながら、たとえば武器を直接その前肢に持たせることで、走狗蟲以下になった体格と戦闘力を十分以上に補ううることを意味していた。
また、その他にも遊拐小鳥は「十字牙顎」に変化があった。
"鳥"に近づいているのか、あるいはそれを「現象」として再現しようとしているのか、上顎と下顎が鋭く突き出してやや硬質化して「嘴」を形成していたのである。
左右の鋏状の牙こそ維持されてはいるが、牙もまた若干小型化をしており、どちらかというと「十字嘴牙」という方がしっくりくるような外観に変化していた。
なお、そのようなイータのエイリアン系統としての維持コストや系統技能は、次の通りである。
【維持コスト】
・生成魔素:250
・生成命素:220
・維持魔素:16
・維持命素:37
【系統技能】
・風乗り
・好奇心強化
・握力強化
イータのビルドについては、これもシータと考え方は同じで、系統技能を中心に取っていく方向が良いと俺は考えた。
たとえば、既に現時点で、解析未完了因子を通して確認できる『風斬燕』などは、明らかに飛行能力が高いエイリアン系統であると予想できるが、系統技能【風乗り】などは取得したとしても、進化後も腐らずに力となることだろう。
ゼータ、イータ、シータの1体1体へのじっくりとした観察を終え、俺は改めて今回3体をそれぞれ異なる「第2世代」にあえて進化させた、俺自身の狙いについて自分の中で再確認を行う。
元々この3体は、アルファからイプシロンという"名付き"の「第1陣」の次に、走狗蟲達を連携して管理させるために名前を与えた「三つ子」であった。
走狗蟲のまま"名付き"とし、"名無し"達を統制させつつ、重要な場面では3体にお互いを意識しながら連携させてきたことで、彼ら3体の連携は走狗蟲3体分以上の働きとなる、ということを俺は観察の中でちゃんと把握していた。
だからその意味では、もし単にこの『連星の三つ子』を強化するだけならば、例えば3体とも遊拐小鳥にした方がずっと良かったのである。その呼吸や心臓音までもが連動しているかのような連携から、三位一体の攻撃でも編み出していたかもしれない。
――だが、そんな彼らだからこそ、俺はあえて、あえてゼータ達を別々の、しかも身体構造も能力も得意なことも運動神経すらもが大きく異なる系統に分けて進化させた。
「その中にあって、お前達三つ子は、お前達『連星』は、それでも元の走狗蟲だった頃の高度な"連携"を維持できるか? それどころかもっと高度な連携を達成できてしまうだろうか?」
隠身蛇のゼータ。
遊拐小鳥のイータ。
突牙小魚のシータ。
3体を次々に見やり、俺は問いかけるように、謎を掛け、その謎に答えることを期待するスフィンクスにでもなったような気分で、言葉を掛けた。
ゼータはとぐろを巻いて身を丸まらせ、シータも魚のように四肢を引っ込めて尾ビレをぱたぱたと振り、イータが2体の頭上を羽ばたきながら、3体3対の"名付き"の自我ありし双眸が俺に向けられている。そこにあるのは、俺が彼らにどのような"役割"を期待しているのかを、清冽なまでの純粋さで汲み取ろうとする「意思」であった。
「陸、海、空。一見してバラバラだ、お前達はたった3体で諸兵科連合を組んでいるような状態だ。そうせざるを得ない、だって"三つ子"なのだから。『称号』にそのような"生き方"を期待されてしまっているのだから――だが、もしもお前達が高度な連携を、実際に成し遂げたら? やり遂げることが、できてしまったなら?」
隠身蛇のゼータが不意討ちで先制を仕掛ける。
そこに、突牙小魚のシータが時に水流の力を借りてその直牙で猛然と突撃する。最後に、遊拐小鳥のイータが空中から襲いかかって止めを刺す――というような連携攻撃や、連携作業を淀みなくできるようになるのか。
「もし、もしもだ。お前達がそれを実現したら、お前達はその"連携"の妙を、お前達の周りに広げていくことができる。『連星』から他の"名付き"へ。そして"名無し"達へ。そしてひいては、エイリアン以外の生物とすらも」
ゼータ達『連星の絆』の三つ子の"名付き"をあえて大きく異なる系統同士に進化させておきながらも、彼らに連携を強いるという俺の狙いとは、すなわち、エイリアン達の"群体知性"に、今のうちから、別系統のエイリアン同士の連携を学習させることであった。
そして、その連携を実際に実践させる舞台となる次の「作戦」への準備は、現在も着々と進んでいる。
労役蟲約90体による、最果て島の地下を覆うこの巨大鍾乳洞の迷宮化は、俺の号令一下、今も加速しているのであった。
読んでいただき、ありがとうございます。
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