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暗い。狭い。汚い。寒い。臭い。怖い。
そんな、絶望の檻の中に、私達2匹は鎖で繋がれて居た。
────檻は鉄格子で囲われ、逃げられないようにされた厳重な作りだった。
ふざけんな。
────周りには私と同じ状況の仲間の犬が何千匹と居た。みんなボロボロで、元気な仲間なんて居なかった。
そんなのどうだっていい。
────あるのは〝絶望〟の匂いと近づく〝死〟の匂いだけだった。
絶望? 死?
早く来てよ。どうして私達を置いて行くの! こんな所に入れられる位ならあの時死にたかった!
どうして、私の大切なご主人様とあずきを奪っていくの。
あずきは私にとって、お兄ちゃん・家族・相棒・親友・戦友どの言葉でも表しきれないくらい親しくて......わたしは大好きだった。
でもあの日から、あずきは変わっちゃったんだ。あずきは気づいてないかもしれないけど、ね。
私の自慢でもあったあずきの綺麗な毛並みはちりぢりになって、くすんでしまっていた。ぜんぜんご飯も食べられないのに、貰えるご飯をほとんど私にあげようとするから痩せこけている。
こんな時でも、私のことを想ってくれている事に嬉しく思っている自分がちょっと気に食わない。けど嬉しいものは嬉しいもんね。
────君は記憶を失っても私を想ってくれるんだね。
そう。あれから、あの日からあずきと話してて違和感があったんだ。
彼はご主人様の事を覚えてない。
でも、そっちの方が幸せなのかもね。
この場所がどこかは分からないけど、どういう場所かは知ってる。確かほけんじょ?つていうんだっけ。
首輪をしないと連れてかれるぞってご主人様に脅されたのを少しだけおぼえてる。
たしか、ご主人様がいない私達みたいなのを捕まえて、新しいご主人様に遣わすか私達を......殺す、ところ、だよ、ね。
でも、まだ大丈夫な筈だ。ちくちく布に入れられて連れてかれたのはどれも私達より前に連れてこられた子達だった。
あずきは優しいから、連れてかれちゃった子の心配で気づいてないようだ。でも、それでいいのかもね。いや、その方がいい。
冷めた私は「あずきの生きる時間を伸ばせるのはあとどのくらいかな?」なんて考えてしまった。我ながら嫌になるけど、でもはっきり言っちゃえば私にとってあずき以外はどの子も無価値だ。
まあ、結果から言うと私達に時間はそんなに無い。
でも、そんな結果を私は絶対に認めない。どんな手を使ってでもあずきの命だけは助けてみせる。
この命に変えたとしても。
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────扉を開く音が響き渡り、1人の人間が入ってくる。
ッ!? この音は今日の処分!?
いや、いつもはこの時間じゃない筈だ。いつもは、もう少し遅い時間にやって来るはずだ。だとすると、これはなんだろう......? 予定が変わった? それとも単に気まぐれ?
考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ
もう奪われるのは嫌だ! 私の大好きなあずきが傷つくのは嫌なんだ! なんで! なんで! 私達は死ななきゃならないの!
どす黒い感情に呑まれそうになる。よくわからないけど足に力が......入ら、ない?はぁ、もうだめなんだよ。もう、全てを放り投げて......しに......た......ふぇあ!?
私が思考の渦に飲まれ、楽になりたいななんて考えちゃった時あずきは私にくっついててきた。
あずきの優しい体温で私ははっ、とし顔を上げる。
あずきの体温がじんわりと私の心に入ってくるようなふわふわした感覚になる。
あず......き?
そして、そんな優しくてかっこよくて、私の大好きなあずきは......泣いていた。
そうだよね、ごめんね。辛いのは私だけじゃないもんね。
もう、私のよわっちい心なんかに負けない。ここの人間にだって絶対に負けない。
どうにかして、あずきをあずきを......幸せにしてみせるんだから!!!
犬だからって愛のパワーを見くびらないでよね
このの温もりは絶対に失わせないんだから。
私達が体を擦り寄らせ、不安を隠しているとあずきは私の耳元でそっと呟いた。
「今までありがとう。僕の大切な相棒さん。」
その声は消えそうなくらい震えていて、でも伝えないとというあずきの強い意思を感じられた。
私はその言葉に嬉しい気持ちと、別れを意識しているあずきの言葉に胸が締め付けられた。私は、あずきに顔をスリスリした。そして一言こう伝えた。
「あずき。大好きだったよわ。今まで一緒に居られて幸せだったよ。死んでもずっと、」
────死んでもずっと、好きだから1人でも生きて
本当はそう言いたかったけど辞めた。あずきが許してくれなさそうだからね。
────とうとう檻が開き、人間が入ってくる。
さぁ、人間。
私を殺すのは良いけど、あずきは絶対に傷つけさせないからね?




