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44.予知夢

ここはどこ?

どうやってこの洞窟にやってきたのか、探検することになったのかわからない。

シャンスに跨って、精霊達と一緒に洞窟の中を進む。


その洞窟は以前種を見つけた洞窟のように澄んだ空気ではなく、酷く淀んで湿っぽい。それだけなら良かったのだが、どこか腐臭のような臭いもする。動物か何かが死んで腐っているのだろうか。袖で鼻を押さえると少しは楽だが、消えるわけじゃない。

シャンスも臭いでこの鼻が曲がるのか、顔をずっと顰めて睨んだように前に進む。


シャンス、ごめんね。シャンスの方が鼻がいいから、きついよね。

そう思っていた時にグンミがやってきて、辺り一面に浄化を掛けてくれた。淀んでいた空気が澄んだものになると、凄く息がしやすくて楽になった。


「グンミ、ありがとう」

「これから先も暫く続くみたいだから、魔道具発動させておいて。出来るだけ魔力も温存しよう」

ソルと一緒に作った魔道具(光鉱石を使用)を発動。魔道具の範囲5mほどは効いているらしく、目先が少し明るく見える。


どれぐらい歩いたのかわからない。ただ何もない薄暗い洞窟の中を歩くのは、精神的に疲れる。あたし的には光を出して進みたかったが、逆に何かを引き付けるかもしれないからと、精霊たちに止められている。


ようやく目の前が壁になった。どうやらここがこの洞窟の終点のようだ。

「何もなかったね」

淀んだ空気だけで何もないとか、ちょっと拍子抜けだ。


「いや、僅かだが空気の流れを感じる。そして仲間だったモノの残存がある」

「火の精の仲間がここに居たということ?」

「多分、火の精の証が洞窟のどこかにあった」


その言葉に息を呑んだ。

リュビの額にあるアレキサンドライトのような美しい宝石。これを巡って人間は酷いことをしたことをしっている。それがここで行われたということなのだろうか?

リュビをギュッと抱きしめる。絶対に守るよ!


「マリー、そうじゃない。憶測でしかないが、多分ここは空の精が守っていたエリクサーがあったんだ」

「エリクサーって、あのエリクサーだよね?でも火の精の証がここにあったって・・・」

まさか。

「その、まさか。人間にとって火の大精霊のもつ証はエリクサーにもなる。だから余計に狙われた。火の精にとって大精霊の証とは今までの英知を引き継ぎ、精霊王を守るためにある。だから空が管理していたはずなのだが」


辺りを見渡すリュビと同じように、みんなで近くの壁を見渡す。

「マリー、僕が見つけるからまどうぐ、消して」

「シャンス、大丈夫?」

「鼻で風のにおいを見つけるよ」


魔道具を消すと、すぐに視界に靄が掛かるが、洞窟の中程の酷い匂いはない。どうやら僅かだけど風が流れているようだ。


シャンスが鼻をクンクンと嗅ぎまわる。すぐに場所を見つけたようで、一つの場所に前足を掛けた。

「ここだよ。開かないけど」


シャンスがタシタシと叩くが壁はどうにもなりそうにない。

シャンスが開けられないものを、非力なあたしたちが開けられるわけがない。

魔力のごり押しとかして、洞窟が壊れるのは嫌なのでまずは調べることにした。


「まずは怪しい箇所がないか、みんなで探そう」

リュビに火を出してもらって洞窟内を明るくし、更に火をいろんな場所に向けてもらう。

火の揺らぎを一番感じる場所に、みんなで集まった。


「流石にボタンとかゲームじゃないからないか」

「ボタンはないけど、穴ならあるよ」

グンミがここだと羽で示した。


本当に小さな穴だった。覗いてみたけれど真っ暗だしただの丸い穴でしかない。鍵の形をしているのなら、その鍵を探さなければならいけれど、そんな感じでもない。


ソルが掘れるかどうかチャレンジしているが、その壁だけはどうやら掘れないらしく小さく唸っている。

「わしに掘れないものがあるだと?!」


グンミは穴に向けて水を放つ。

水は戻ってくることなく中に入っていくようで、向こうに部屋があることは確定のようだ。

リュビは無言で穴を睨んでいる。

何故か付いてきた謎獣の黒助は、なにをするでもなく佇む。


あたしはやることがないので、ブスッと穴に指を突っ込んでみた。

・・・・・・何も起こらなかった。

この穴じゃないのか、謎の呪文を唱えないといけないのか、全くわからない。


ここは諦めて一度戻った方がいいかもしれない。

そう思い始めた時、リュビの額の宝石が輝きだした。


「リュビ!」

リュビを抱きしめると、そのまま一緒に壁に吸い込まれていった。


恐る恐る目を開けると、そこは――――――‼

「リュビっ」

「ああ、まずい。このままだと魔物化する」

「グンミに浄化して貰ったらっ」

「いや、手遅れだな。これを回収してサクヤの根元に埋め、時間をかけて浄化するしかない」

「わかった。早く村に戻ろう」


―――目が覚めた。

ここはいつも寝ている家のベッド。

ということはあれは夢?

これがただの夢なはずはない。


洞窟のすえた臭いも、穴に指を入れた感触もまだ体に残っている。

あんなリアルな夢がそうそうあるわけない。

と、いうことは。

予知夢?


黒助が枕もとでユラユラと揺れていた。


次回「疑惑と絆」


読んで頂き、ありがとうございました。

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