184.ツェルスト公国跡地
お腹いっぱいに食べ、お風呂も入ってもう寝るぞという時間に、父さんに話しかけた。
「父さん、明日ツェルスト公国があった場所に行ってみようと思う」
「アルバンティス王国でなく?」
「えーと、まあ…あそこも気になるんだけど、個人では収拾つかない気がして」
「ああ、わかってるならいい」
「うん…気になるけど、最後まで責任取れないから」
「――そうだな」
そういって父さんは頭を撫でてくれた。
何処の国でも弱きものが切り捨てられる。だから本当は一番助けが必要だと思うけど、内部干渉をしたくない。それこそ、個人で責任が取れる話じゃなくなる。村を巻き込むわけにはいかない。
「それで、何故ツェルスト公国なんだ」
「あれから1年の月日が経ったし、もしかしたら戻って来てる人もいるんじゃないかと、思って」
「…パオロさんには」
「行って状況が分かってから伝えようと思って。一応遺品は村で埋葬したし土地は浄化もしたけど、出来れば慰霊碑でも立てて土地の穢れを防げたらとも思ってる」
「そうか」
「ちゃんとシエロとシャンスを連れて行くよ」
「わかった。夕方には戻ってきなさい」
「うん、じゃあ明日朝ごはん食べたら行ってくる」
久しぶりにシエロに乗ってツェルスト公国があった場所へ転移した。
えっ!
「ねえ、シエロ」
「なに?マリー」
「この状況、知ってて連れてきたわね?」
「まあね」
村と呼べるほどの家が建っている。
大規模な浄化をした後だからなのか、魔素はそれなりにあるし、土地にもそれなりに含まれているからか、それなりに野菜たちも育っている。
パッと見る限り、人々に悲壮感はない。一昔前の精霊村のような、貧しいけれど日々生活できるだけの力はあり、助け合って生きている。そんな感じだ。
きっとそう見える事実だけが真実ではないのだと、過去の災害を思い出しても知っている。だけど、少しでも前に進んでいる人がいるという事実は、少しだけ心の重りを降ろしてくれた。
じゃあ、今の自分にこの人たちに何が出来るのだろうか。
「シエロ、ゆっくりと近づいてくれる?」
子供のあたしが突然現れたら、びっくりさせるよね。知ってたら父さんについてきてもらったのに。子供が白馬に乗って、大きな狼を連れてたら、怪しさ満点。
それでも行かないという選択肢はない。あそこで土を耕していた人に声を掛けてみよう。
大きな声で、元気よく挨拶から!
「こんにちは!」
「え、え?子供?狼!!」
「あ、驚かせてごめんなさい。あたしの契約獣なんで、―――大丈夫……です」
って、聞こえてないよね。どこかに走って行っちゃった。
今までこんなパターンはなかったからどうしたらいいかわからない。あたし一人現れたらもっと可笑しいし、このまま進むのは気が引ける。
どうするのが正解変わらなくて、近くの様子を探る。
何となく同じように作業していた人たちが、先ほどのおじさんのところに集まっているけど、武器を持ってやってくる人はいないから、敵だとは思われていない。
フム。
取りあえず、食べ物だしてみようかな。いきなりお肉出しても微妙だから、原形があるもの。
野菜はありそうだから、果物かな。
即席でカゴを作り、その上に色々と出してみる。
ポム(りんご)フルート(キウイ)、ペラ(梨)マンダリン(みかん) セレサ(さくらんぼ)
このあたりが元々森にも生えた果物だから妥当かな。
あ、なんか風格のある人が先ほどの人と一緒にやって来た。どうやら取り纏めをしている人っぽい。
レオナルド ・ヘンネベリ 元ツェルスト公国 伯爵家当主
どうやら貴族だった人のようだ。しかも普通に慕われているところを見ると、いい人ぽい。
人民の避難に尽力した人格者。
ほうほう。こういう人が居てくれるのは、みんな凄く安心するし復興も早くなる。支援もしやすくなりそうで、凄くホッとした。
同時に、これから自分の立場を考えて行動することの意味を、しっかりと考えていなければと思う。こういう教育をしてくれる人がいるなら、その内受けておきたいかも。
パオロさんに今度聞いてみよう。
レオナルドさんは、シエロとシャンスを見てあたしに視線を戻して、この組み合わせに首を傾げている。どう声を掛けていいのかわからないんだろうな。
取りあえず、初対面は挨拶から。
「こんにちは!」
「こんにちは」
返ってきた声はとても穏やかで、優しい声。この人が治める場所は、いい場所だと確信できるほどに涼やかなオーラを持っている。
「あの…これ食べてください」
「食料を頂けるのはとても有難いのですが、どういう意図…いやどうして」
「すみません。突然で驚きますよね。ここはツェルスト公国の首都があった場所であってますよね?この地を浄化して1年経ったので、もしかしたら誰か戻って来てるのではないかと思ったので、見に来たんです。もしも人が戻って来ているなら土地が穢れないように、慰霊碑を立てたいと思ったのと、支援できることがあるならば、したいと思っています。あ、申し遅れました、私は精霊村のマリー。この天馬が神の御使いのシエロとフェンリルのシャンス。誰かに危害を与えることはないので、安心して下さい」
「あ、あああ……、聖女様でしたか」
「聖女様?」
「あの方が?」
「聖女?」
呟きが多くなるたびに、どこからか人が増えていく。
今も尚、地上に家がないから、地下に住んでいるのかもしれない。
うん。それなりに人がいる。これはいろんなものを出した方がいいかも。
「巷ではそう、呼ばれていることもありますね。でも今はただの精霊村のマリーです」
「わかりました。マリーさん。皆の心を軽くするためにも、慰霊碑は是非お願いしたいです」
「はい。立てたい場所に案内して頂いたら、そこに建てます」
多分お城があった場所なんだろうなと、向かう方角を見て思う。作業をしていた者も、慰霊碑という言葉を聞き、手を止めて後ろから付いてきた。人々に先ほどまでの笑顔はなく、故人を忍ぶような顔になっていた。
これは慰霊祭をした方がいいかも。
一度村に帰って、パオロさん呼んできた方がいい気がしてきた。
読んで頂きありがとうございました。
書きかけの物を仕上げました。
これからも暫くは、こっそりとアップしていきます。




