162.刈りの時間2
「あら、早かったわね」
「うん。ちょっとね」
「今度は何?」
「うーん、大したことはないよ。ただうちの村にはあまり関係ないけど、あったら喜ぶ人いるだろうなって言う海草見つけたんだけど・・・」
「けど?」
「あたしとしては普通に食料として求めてたというか・・・。見てもらった方が早いから見せるね」
あの七色に光る海草をリュックから取り出して母さんに見せた。
「また凄いのが出てきたわね」
「え、知ってるの?」
「幻の海草と言われてるものよ。どういう仕組みなのかわからないけど、いつもは緑色の海草でしかなくて、七色になった時にとらないと薬用にならないからクエスト達成が難しいとされる依頼だったわ」
「へえ・・・。受けたことあるの?」
「水の加護が強かったからもしかしたらと一緒に言ってくれと言われて言ったことがあったけど、緑色の群生はあっても三日間、七色に変わることはなかったわ」
「そうなんだ・・・。精霊の加護で出来た島だからあったのかもね」
「ああ・・・そうかもしれないわね。・・・確かにマリーだったら食べるに偏りそうだけど、マーティンさんあたりには喜ばれんじゃない?あなたが迷惑かけているアシルさんとか」
「あ、ああ・・・そうだね・・・わかめ・・・」
「それが取り続けられるのか、確認してからでもいいんじゃないの?」
「うん。午後確認する。ファーストでも浅瀬に出られるなら見てみる」
少しだけ落ち着いた。
わかめが食べたかっただけなんだけどな。冒険者にしたら一攫千金になるやつだったとは。この世界はやっぱり不思議が詰まっている。
お昼を食べながらみんなに七色草について話をした。
父さんは母さんと同じことを言ったので、その分は取ってこようと決める。ただ他の海を知らないから判断が難しい。まずはセカンドの浅瀬を探検することにしよう。
「マリー、私も行くわ」
「テーレ?」
「七色草が生えている場所には精霊がいるはずなの。だから普通の海ではただの海草しかないの。色々と聞いてみたいことがあるから一緒に行く」
「え、精霊って海の精霊ってことだよね?」
「そうよ。だからわたしとグンミが行くわ」
「そうなんだ・・・それは幻と呼ばれるはずね。でも母さんが依頼されたということは、そこの海で一度はあった、ってことでしょ?居なくなったのかな?」
「ああ、かなり昔の文献で見つかったというだけだったから、今は難しいのかもね。貴族様の娘さんの病気を治したくてだされたクエストだって言ってたから」
「そっ・・・か。みんな精霊がいないと出来ないなんて知らないから。昔人間がやらかしてしまったことの弊害かぁ。こればかりは因果応報って奴だから同情はするけど、自分たちがしてきた歴史だから仕方ないよね」
父さんと母さんが何とも言えない顔をしたが、気付かない振りをした。
考え方が人間よりも精霊よりだという自覚はあるよ。この小さな手に乗るだけの小さな世界でしか、今は物事を見る気はない。みんなが幸せになる世界なんて、何処にもないことを残念ながら知っている。
テーレたち精霊が居てくれたから、今の幸せがあるのだから。
少しばかりしんみりしながらも、エディは既に興味は移っていて船に乗りたいと顔に書いてある。
いや、エディだけじゃなくてみんなか。
結局家族総出で海に出ることになった。
ソル、ミミ宜しくね。二人が暴れても大丈夫な物を作って。
声に出せないので強く念じれば、心得たとばかりに胸を叩いて頷いた。
あ、今可愛かったから、写真撮りたかった。
新しいことをする時って、意外に大人の方がはしゃぐ。一瞬童心に還るのか、大人という枷が解き放たれるのか。ブランコの時は子供よりもハッスルしたからね。海に落ちなかったらいいよ。
落ちても大丈夫なようにシャンスも連れて行こうかな。浮いてくれてさえいれば、シャンスが咥えて助けてもらえるしね。
シャンスは嬉しそうに尻尾を振って了解した。
これで準備はOK。
さて、どうなるか。
セカンドについてすぐに、ソルとミミが中心になって連れてきた地の精たちは、作ってあった船よりも遥かに大きな船を作り出した。父さんと母さんが暴れ・・・ハッスルしても大丈夫にとあたしが言ったからだと思うけど、ミスリルが船底と側面に使われている時点で、この二人がどれだけパワーがあると思われているのかよくわかる。
『大きい箱』
シャンスが中に入ってみたそうに見上げている。
シャンスが見上げている。子供とはいえ、今はもう座った状態で2mはあるというのに、見上げてるのだ。イメージはスーパージェットより一回り小さい感じ?
あ、エディがフラフラし始めた。ミミが使う魔力が大きいみたい。
「ミミ、ストップ!」
「エディ、果実水飲んで」
「他の地の精達も一旦作業止めて、クッキー取りに来て」
聖女の森で作られた魔力たっぷりなチョコ掛けクッキー。これを食べて精霊たちは魔力回復してもらいたい。あたしの場合杖があるからまだ大丈夫だけど、無限にあたしたちから魔力取られたらエディがもたない。魔力の無いセカンドでの作業は大変だということを忘れてたよ。
母さんに横目で見られたので、取りあえずみんなに3つずつ渡した。
ご褒美のものなんだから!
人間が食べるように作ってないの!
だって母さん、魔力消費してないよね?
座り込んだエディを見ながら目で訴えれば、シレッと顔を逸らされた。
やっぱりチョコは魔性だった。
食べて魔力回復した地の精達は、最後の仕上げだとばかりにつぶらな瞳をキラキラと輝かせて、モフっとした体を揺らしながら楽しそうにしている。本当に物を作るのが好きなんだね。
『昔はドワーフと契約している者も多かったからな』
「そうなんだ。分かる気がするよ」
少しばかり遠い目をしながら、出来上がった舟をあたしは溜息交じりに見つめた。
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