156.首を突っ込んじゃった…。
「アシルさん、それでは足りないと思うのでこれを」
あたしと同じ、タコ飯のおにぎりを渡した。お肉争奪戦が行われているのを遠い目をしてみた後、嬉しそうに受け取った。
美味しい物を食べると人間気が緩む。かなり神経を削ってここまで来たのだろう。顔色が良くなっていくのを見ていた。
「少し休憩を入れたら、王都まで連れていきますね」
「それは・・・」
「この盗賊たちとあの喚いている人をここに置いて行くわけにいかないでしょ?」
ずっと喚いている人を冷めた目で見た。
「・・・そうですね」
喚いている貴族が王様の側近でないことを祈るよ。
それにしてもこの国、大丈夫ですか?とは流石に聞かないけど、ヤバいよね。派閥争いなんてしている場合じゃないと思うけど、パオロさんが精霊村にいること自体が、異常だし。
それにまあ・・・あたし、しょっぱなにやってしまったし?
今更チートだということを誤魔化しても無理でしょ。捕縛した時点で身バレしてるし、リュックからあり得ないほどの食材や鉄板なんて出しちゃったし、ここまでやっちゃったら王都まで行ってしまえばいい。そこからは早く食材探しに自由に動いちゃうけどね。
「じゃあ、アシルさん王都の前まで行きますよ」
「よろしくお願いいたします」
シエロに面倒なのも全部、王都の城門前に転移してもらうことにした。
「シエロお願い」
『うーん、一杯人がいるよ』
「え、城門前大渋滞?」
『なんか揉めてる』
「じゃあ、お城の庭とかは?」
『いいんじゃないかな。ちょうどいるみたいだし』
何がいるのかと聞く前に、シエロは転移していた。
着いた先は見渡す限り薔薇が咲き誇る庭園だったようで、フワッと薫ってくる懐かしい香りに思わず頬が緩む。
「マ、マリー様」
呼ばれて振り向くとアシルさんを筆頭に騎士たちもみんなが青ざめていた。
「どうかしたの?」
「こ、ここは・・・」
「お城のどこかの薔薇の庭園?」
そう答えてすぐに、あちらこちらかから、武装した騎士らしき人達がやって来た。どうやら入ったらダメな場所に来たっぽい。王族専用の庭かな?着いてすぐに反応しているなんて、凄く優秀。侵入者を知らせる魔道具とかあるんだろうね。
「何者だ!!」
まあ、怪しいよね。
アシルさんと騎士たちはわかるけど、盗賊らしき悪人面十数人と子供だもんね。
「私は精霊村のマリー。この子は御使いのシエロ。そしてボルテモンテの町の長アシルさんとその騎士。アシルさん達を襲ってた盗賊と盗賊にリークした裏切り者」
「確かにアシル殿とその騎士たちなのは確認できたが・・・裏切者・・・?」
「アシルさんやっぱり凄い人なんだね」
蒼くなって跪いているのをみると申し訳ないと思うけど、起きてしまったものは仕方ない。しかもシエロはここがどこか分かって突っ込んでる。面倒ごとが起きるとは予測出来てなかったみたいだけど。
「あ、いや、そういうことではなく」
ぐるぐる巻きにされている悪党たちは、すぐにやって来た騎士たちに回収され、アシルさん達を確認した後すぐにこちらに向けていた敵意は下げられた。いや、シエロに睨まれて向けていた者は首を垂れさせられた、が正解だろうか。
「詳しいことはアシルさんに聞いてください。あたしはちょっと急いでいるので、戻ります」
ニッコリ笑ってその場を去った。
そう、急いでいるのだ。
「マーティンさん、大丈夫ですか?」
シエロが言っていた城門前でのひと騒動。どうやらマーティンさんの荷物が原因らしい。ここどこだと鑑定してたら、知ってた気を感知したから見てみたけど、まさかここで会うとは思わなかった。
「マリー・・・様」
流石優秀な商人。こういう時咄嗟に対応できる人って凄い。
「なんだ、この子供は!」
荷物を差し押さえしようとしていた役人とは違う、門番らしきものがやって来た。
よくわからないけど、頑張って精霊村まで来てここまで運んできた荷物を差し押さえるとか、国が主体でやっているのだとしたら、この国を見捨てる。助けたい街だけ助ける。だけど何で王都まで?ブレイロットで商売してるんじゃなかったの?
あたしに手を伸ばした門番は否応なしに弾き飛ばされた。まあ、仕方ない。たかが10歳の可愛い子供にメンチ切るやくざな奴は、飛ばされても仕方ない。
「なんでここに?」「どうしてこちらに」
あたしとマーティンさんの声が被った。
「理由は後で、ところであの荷物精霊村からの荷物?」
「そうです。ブレイロットで全部捌かせる予定だったのですが、王都に収めよと」
「で、仕方なくもってきたら、没収?」
「・・・調べると」
「ああ、前のボルテモンテの町と同じかぁ。ほんと、腐ってるね。うちから卸したものが殆どで、今以上に面倒になるなら、あたしが補填出来るから中身はあげちゃう?」
「それは・・・」
「お金はいらないし、荷物だけの問題なら、そうさせて。この王都がこのマリーを敵に回しただけのこと。馬車だけ返してもらって、ブレイロットに行こう?あたしここに長く居たくないし。ゴーランさん、ブレイロットに帰りますよ」
まあ、無茶苦茶している自覚はある。だけど正直あまり関わりたくない。国の中枢を正すなんてことは内政干渉になるしね。触らぬ神に祟りなしだ。
「え、マリーさん?」
「そう、マリーさんですよ。マーティンさんと一緒に帰りましょう」
「そうしたいのは、山々ですが・・・。荷物を届けないことには・・・」
証明書を貰っておかなければ、納品されてないってことでまた請求されるのだと説明された。
「ああ、依頼失敗を狙っての依頼ってことか。ここの貴族酷いな。マーティンさん、ところで荷物搬入の命令は、誰からですか?」
「エードルフ様です」
「ああ、あの悪党貴族。少し前にぐるぐる巻きにして捕まえて、お城の庭に置いてきたなぁ」
その手下の役人なら捕まえてもいい気がしてきた。だけどこれ以上騒ぎになるのも・・・。
「グラン!グレイト!」
ポン!と目の前に現れたグランとグレイトは、嬉しそうにあたしの両肩に停まって頭を頬に寄せた。
可愛いしぐさにほっこりしながら、なでなで。
「グレイト、アシルさんのところに行ってくれる?あたしの声届けて欲しいんだけど」
すぐに了承の意を示して、飛んで行った。
最初に降り立った庭を過ぎ、そのまま建物の中に入っていった。
あ、もしかして国王に謁見中?
紅い高級そうな絨毯が敷き詰められている場所に、アシルさんとあの悪党が並んでいた。あの悪党の縄を解くとか、何考えているのか。まあ・・・身分と法が邪魔をしているのかもしれないけど、これが通常ならばこの国はダメだ。
それでも形式は大事ってことかな?・・・茶番劇の途中なら邪魔をしてもいいよね。
「アシルさん、マリーです。精霊村からブレイロットに卸した食材を、そこの悪党が巻き上げようとしてたんだけど、どうしたらいい?持ち帰ってもいい?それとも受け取りのサインをしてくれる?」
「え、マリー様?!」
「うん。そこにいる鳥さん、グレイトが伝達してくれているの。今すぐどうしたらがいいか返事して欲しい。アシルさんが難しいなら、国王様でもいいけど」
雑音が混ざっているけど、そこは無視。というか、グレイトとグレイが雑音を遮断したぽい。本当小悪党程よく吠える。
あ、静かになった。
「書類にサインを」
細いながらも、芯の通った声が聞こえた。
王様の言質がとれたので、目の前の役人に軽い威圧をしてサインを貰った。
その後にちょっと気になったからグレイトを通して王様の方を見た。
ああ、なるほど。王様はまだ十代の若者だったのか。色々振り回されてきたのだろう。可哀そうにやせ細って顔色が悪い。というか、何かの病気?いや、これは・・・。ただの傀儡じゃないって、酷いな。それにこの人は基本善の人だ。傀儡として育てられたから、知恵がつかぬよう教育されていないだけの、可哀そうな人。
放って置けば死を迎えると知ってしまえば、放っておけない。愚かでない王なら、これから頑張って欲しい。
「マーティンさん、ちょっとだけ寄り道してきますので、待っていてください」
すぐにシエロと共に転移して王様の前に立った。
「私は精霊村のマリー、この子は神の御使いシエロ。あなたの体の中にある毒を消します」
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ゆっくりですが、更新します。




